魔法少女大戦 プロローグ |
魔法少女大戦
世界は二度'改変'された。
一度は一人の純朴な少女の献身に依り。
そしてもう一度、名も知らぬ何者かの手に依り。
概念と化した少女のシステムは大部分を覆されたのみならず更なる苦難を魔法少女に招き、その代償として少女'鹿目まどか'の意思は消失した。
それは三巡目の世界。
ある少女はたった一人の友達を救うため。
ある少年は命を賭しても失えない恋人を護るため。
歪んでいく世界の中で、彼らは世界を越えてゆく。
此れは、混沌に歪められた愛と勇気のストーリー。
君を護る、僕が君を忘れても。
0話 緋色の太陽
それは茜色に染まる空を仰いだ秋の夕暮れの事。彼は冴えない体操着に身を包み、乗って行けばいいはずの自転車を両手で押しながら歩いていた。
手で押している理由だが、タイヤがパンクしたとか言う大した話では無く、一緒に歩いている、同じく体操着姿の女子と歩幅を合わせるためだった。彼女の荷物をかごに乗せて。何と言うかこれだけでも二人の力関係は推して知るべしと言う所なのだが、いつもの事なのだから仕方がない。太陽は東から昇る。兎は寂しいと体調にもろに出る。夏場のそうめんは美味しい。それと同じかそれ以上に、彼が彼女の荷物を入れて自転車を押すのは絶対的な真理だと言っても差し支えないかもしれない。
「でもよかったよな、俺ら優勝できてさ」
「せやねー、でもうちらそんな何もしてないけど」
「…確かに」
短い髪を申し訳程度に軽く整えただけの髪型。健康的ですらっとした、しなやかな筋肉を持つ彼女はそうやって言葉を返す。
今日は高校の体育祭で、服装はその名残と言える。一応学校からは体操着下校は禁止されているのだが、あれだけ疲れた後で誰が制服に身を包んで帰ろうと思う物か。最後の体育祭のテンションできっと馬鹿やる学生だって出てくるだろうから多めに見て欲しい(ちなみに彼らは誘われなかったのではなくめんどかっただけで、別段ハブられているとかではない、念のため)。
正直総合点で優勝できたのは明らかに下級生と上級生の異常なスペックのお陰だ。それでも、優勝は素直に嬉しいらしく帰りのHRは大盛況だった。
炎天下の生き地獄を命からがら耐え抜いた肉体はぼろぼろで汗もだらだらだったのだが、この時間帯の街に吹く夕風は心地よく、汗はその心地よさを増強してくれる。田舎すぎて閑散とした通り道だが、その自然めいた美しさを彼らは愛していた。
「てかあれやね、これから徐々に受験まっしぐらやね」
「だよな?、受験な?。木村さんどうなん、志望校の判定は」
「ん、そこそこ。うちが受けるレベルのとこだし。真田くんは?」
「分かんね、K大は二次勝負だし。模試の判定なんて当てにならん」
「じゃあなんで訊いてきたし」
「いや、多分優位に立てるんじゃないかなと」
「ないわー」
呆れ顔で棒読み気味に、彼女は嘆息する。そして、お互いに顔を見合わせ笑った。そうこうしているうちにバス停だ。彼女はかごから荷物を取り出すと、何食わぬ顔で。いつもの顔で。
「じゃあ、また明日学校で」
「ん、それじゃまた」
彼は彼女と別れ自転車を漕ぐ。この、学校からバス停までの僅かな時間が彼の彼女と二人きりで過ごせる時間だった。学校はお互い別々のコミュニティがある。この機会くらいしか誰にも気兼ねなく話す事の出来る時間がないのだ。
それでも彼は良かった。自転車でありながら徒歩で、空いているかごに彼女の荷物を入れ、早く帰りたい時でもゆっくりと歩き。彼女と共に居られるなら、彼はそれで良かった。
理由など言うまでも無い。彼は、健康的で活発な彼女が好きなのだから。想い続けた時間と質は疑いようのないかけがえのない宝物で、その純粋な気持ちは誰も咎める事は無いくらい澄んでいた。
今日もこうして下らない事を話しながら帰る。いつまでもそうしていられない事は分かっていたけれど、今はそのかけがえのない時間を楽しんでいたかった。
また明日学校で。
それじゃまた。
それが、男子高校生真田恭(さなだきょう)と女子高生木村鳴(きむらめい)の最後に交わした言葉となった。
彼女の存在は消え、世界が彼女を否定した。彼女は一瞬にして、人間としての全ての権利を剥奪されたのだった……
1章 Invisible-Girl
説明 | ||
どうも、早くも始めました新作『魔法少女大戦』、冒頭はじっくりやりながらもバトル大好き日常いらねぇな方々にも楽しんでいけるよう作っていけたらと思います。 ちなみに主人公とヒロインはよく知ってる人をモデルにしてます。主人公は私で、ヒロインは高校時代のクラスメイトです。高校時代の私が、彼女の事を好きだった体で物語作ってます。あと、呼称が現実準拠。 |
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