IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode158 隼人の過去
(着いたぜ。ここが最初に到着点だ)
(・・・・)
しばらく移動していたリインフォースと闇隼人はそこに付くと、周囲に景色が広がる。
(ここが・・・)
リインフォースと闇隼人が居たのはとある街の歩道で、目の前に道路と反対側の歩道があった。
(ここはあいつの記憶の中だ。それも前世のな)
(ここが・・・隼人の前世の記憶・・・)
リインフォースは周囲の景色を見る。
(俺達はその記憶を見るだけで、記憶自体には介入出来ない)
(そうか。分かった)
(まぁ色々と悩む所があるかもしれんが、我慢しろよ)
(・・・・)
(さてと、しばらくは見物だ。ゆっくりとするか)
闇隼人は電柱にもたれかかって記憶を見る。
(しかし・・・果たしてリインフォースは堪えれるかな。これから見る記憶の数々を・・・)
そう思いながらリインフォースを見る。
(あいつにはかなり苦しいものになるかもしれんな・・・・・・それで精神的にまずい事に陥らなければいいが・・・)
少しリインフォースの心配をして深くゆっくり息を吐いた。
(・・・・)
近くにいたリインフォースは周囲を見渡す。
(ここが隼人の前世の記憶・・・・・・今の世界とはどこか違うな)
今の世界とは違って、女尊男卑の風習がなく、技術的にもまだ発達して無い・・・
(そういえばこの景色・・・どこかここに見覚えが・・・)
と、辺りを見ていると――――
(・・・?)
リインフォースの隣に一人の男性が立ち止まる。
ちょうど立っていた場所は横断歩道の前の歩道であった。
(・・・・)
その男性を見てリインフォースは目をぱちくりとさせる。
(・・・隼人?)
男性の容姿がどこか隼人に似ていた。しかし眼帯はしておらず、どこか今とは違う・・・
(それがあいつの前世の姿だ)
(・・・これが前世の隼人・・・)
(今と容姿は少し違うだろ。今の容姿はあいつの理想像だ。まぁ髪や眼帯をしてない以外大して変わって無いが)
(・・・・)
(前世のあいつは・・・あんまりいいものじゃなかったな)
(そうなのか?)
リインフォースは怪訝そうな表情で聞く。
(あぁ。まぁ今と変わらずの所はあるが、あいつの性格が歪んだ原因でもある)
(・・・・)
(あいつは頭は良かった。だが、今と違って力なんぞなかった。悪運はあったみたいだがな)
(・・・今と違う・・・隼人)
リインフォースはそんな隼人を想像出来なかった。
(自分に関係する人を守りたいと言う気持ちはこの時からあった。まぁ現実って言うのはうまくいくもんじゃない。力の無かったこの時なら尚更の事だ)
(・・・・)
(それに、善人ぶってるとからかわれたり、それを逆に利用する輩が多かった)
(・・・・)
(それでもあいつは芯を曲げなかった。この時からしぶとい根性があった)
(・・・・)
(まぁ、この時からあいつは不幸な出来事が降り注いでいた)
(不幸な出来事?)
(まずは友達がたくさん目の前で死に、両親の死だな)
(・・・・!)
(皮肉にも今と前世も同じ時期に両親が死んだ)
(・・・・)
(それに伴う不幸な出来事によってあいつの友人も巻き込まれた。それであいつは疫病神扱いになって虐められた)
(・・・・)
(そして三つ子の妹二人との別れだ。あいつは一人となって、誰にも声を掛けてもらえず、ずっと一人で生きていた)
(・・・・)
(あいつの性格の一部が歪んだのも、こういった事があったからだ)
(性格が歪んだ・・・最もな原因・・・)
(そして・・・あの日がやって来た)
(・・・なに?)
(そろそろだな)
(・・・まさか!?)
キャァァァァァァァァッ!!!
と、向こうの歩道近くで女性の悲鳴が上がる。
(っ!?)
リインフォースは悲鳴が上がった方を見る。
(・・・あ・・・あぁ・・・!)
それを見てリインフォースは目を見開いて呆然とする。
彼女の視界には、一人の男性が血まみれになって道路に倒れ込んでいた。
それはさっき見た前世の隼人であった。
(これは・・・これは・・・)
リインフォースは数歩後ろに下がる。
近くには、前世の自分だと思われる少女が目を見開いて呆然としていた。
(あいつの最後の時さ。最も前世の記憶がこれしか無いって言うと、それほど前世は記憶に刻まれている思い出なんか無かったんだろうな)
(っ!貴様!)
リインフォースは闇隼人の胸倉を掴む。
(こんな・・・こんなものを見せて何が楽しいんだ!!)
(言った筈だぞ。お前にとっては耐え難いもののあるかもしれないって)
(・・・・)
リインフォースは冷静になって、闇隼人の胸倉を離す。
(そう・・・だったな。すまなかった)
(まぁこうなるとは思っていた。あいつが死んだ原因はお前にあるのだからな。それが本来の死でなくてもだ)
(・・・・)
追い討ちを掛けられたかのようにリインフォースは俯く。
(これは始まりに過ぎない。これくらいでその様子じゃ無事に辿り着けるか分からないぞ)
(・・・・)
(覚悟して行くしかない。今はそれしか出来ないのだからな)
(・・・そう・・・だな)
そうして闇の隼人とリインフォースはそこから浮かび上がっていく。
リインフォースはチラッと道路に倒れこんでいる前世の隼人を見て、涙を流すもすぐに拭い、その記憶から出る。
(しかし、なぜこのような記憶が隼人にある。その時はもう死んでいるはずでは・・・)
移動しながらリインフォースは闇の隼人に問い掛ける。
(一時的な臨死体験ってやつだ。身体から魂が離れて、ちゃんと風景として記憶はされていたようだな。まぁ蘇生される事なくすぐにお陀仏になったが)
(・・・・)
(でもって、後々でこれは神のミスによって、あいつの本来の死じゃなかったと言うのが発覚する)
(そうだったな)
(あいつの要望を取り入れて・・・この世界に転生するようになった。色々と策略が交じり合ってな)
(・・・・)
(最も言えば、向こうもあいつがこの世界に転生して欲しいと頼み込んだのは嬉しい誤算だったようだ)
(嬉しい誤算?)
(この世界にバインドは潜んでいるのは神々も分かっていた)
(だからと言って、隼人だけにナハトヴァールを仕込ませる理由と言うのは・・・)
(お前は聞いているだろ。ナハトヴァールの覚醒要因を)
(・・・確か怒りと悲しみ、そして絶望のはず・・・)
(そうだ。しかし普通のやつじゃ条件を満たすほどの怒り、悲しみ、絶望を受けないんだ)
(なんだと?)
(で、それを満たせるのはあいつのように性格が歪んだやつなんだよ。それも多くの親しかった人間が目の前で死んだのを目の当たりにしたあいつが特に適任だったんだ)
(・・・それで、隼人にナハトヴァールを仕込んで・・・)
(そう言うこった。神々連中の多くはわがままな連中が多いのさ)
(・・・・)
(自分の都合が悪くなれば、それをいい方向にする為に無理やり矯正させる。それに伴う被害など全く気にしない)
(・・・・)
(あいつはバインド殲滅と言う神々の策略に巻き込まれてしまったのさ)
(・・・・)
リインフォースは拳を握り締める。
(私のせいだ。私があの時愚かな真似をしなければ・・・こんな事には・・・)
(もしそうだったとしても、どの道起こる事だったんだ。それがあいつに担われただけだ)
(だからと言って・・・こんなのはあまりにも・・・!)
(・・・それに、もしお前が自殺なんかを図らなかったら、確かにあいつは生きていたかも知れんな。だが、どっちにしろあいつには幸せなど訪れない)
(・・・・)
(ちなみに言うと、あいつはあそこで死ななくても、すぐに死ぬ事になっていた)
(な、なんだと?)
リインフォースは驚きの表情を浮かべて闇隼人を見る。
(あいつは自殺を考えていたんだ。それもすぐにな)
(・・・馬鹿な!?そんな事が!)
(考えてみろ。ずっと自分の不幸で友人が巻き込まれ、死者も出したことで疫病神と蔑まれ、更には両親が死に、妹二人と離れ離れになった。その後も自分の正義を認めてもらえず、ずっと孤独だったあいつの気持ちを」
(そ、それは・・・)
リインフォースは何も言えなかった。
(俺はずっとあいつと一緒だった。だから分かるのさ。あいつが抱えていた苦しみや・・・闇を・・・)
(・・・・)
(むしろ、今の世界の方があいつにとってもいい方だったかも知れんな)
(それは・・・・・・)
リインフォースは言い返そうとするが、闇隼人が言った前世の隼人を思い出す。
(前世と似たような状況があったが、それでもあいつにとってはいい事が多くなった)
(・・・・)
(力が手に入った事で、あいつは本当に変わったよ)
(・・・・)
(まぁ、俺はその変化を内面的に感じていただけで、外見じゃどうなっていたかは分からん)
(そういえば・・・お前はなぜ隼人と別々になっていたのだ)
(あいつを転生させた神が闇の心の俺があいつと一緒に居ると早期にナハトヴァールを呼び覚ます可能性があった。だからあいつと一部の力と闇の心を別々にしたんだ)
(そうだったのか・・・だが、一つになってしまっては・・・結局何も変わらないでは無いか)
(どの道バインドとの戦いとなれば、俺の力は必須となる。これも想定されていた事さ)
(想定されていた・・・)
(お前と妹だって、そうなんだろ)
(それは・・・そうだが・・・)
リインフォースは俯くと拳を軽く握る。
(だが、私は隼人の力になりたい。そう願って転生した。だが、このような形では・・・)
(だが、どんなに言った所で、お前やあいつの運命が変わるわけじゃないんだ)
(・・・・)
(・・・・)
(さて、次の記憶だ。ここからは連続でいくぞ。気を引き締めろよ)
(あぁ・・・)
リインフォースは覚悟を決めて赴いた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・くぅ・・・!」
一夏とナハトヴァールが激しく戦っている間に、箒は海に落ちたラウラとセシリアを岸まで連れてくると二人を横にする。
インフィニットジャスティスの左腕は爆発で黒こげ、リフターも損失していた。
「二人共・・・!しっかりしろ!」
箒は二人を揺さぶって起こす。
「ほ、箒・・・さん」
「す、すまない・・・助かった」
セシリアとラウラは意識を取り戻して箒に礼を言う。
「だが・・・なんてやつだ」
ラウラは半身を起こしてナハトヴァールを見る。
背中に背負っていたセラフィムを失ったことで大幅に出力が低下して、もはや戦闘する余力も残ってない。
「たった一撃で落とされるなんて・・・・・・不覚ですわ」
セシリアは後頭部を押さえながら上を見上げる。
ドラグーンは海に落としたまま回収をしておらず、ストライクフリーダムの後頭部に少し亀裂が入っていた。
「だが・・・一夏の身に何があったのだ?」
「分からない。私も気が付いた時には、こうなっている」
箒は以前専用機持ちタッグマッチの時に現れた闇一夏を思い出す。
「だが、なぜ一夏のGモードが・・・あの時のバインドの姿に・・・」
「それも気になるが、何より・・・一夏の動きだ」
ラウラは一夏の動きの変化を見抜いていた。
「・・・そういえば・・・どことなく一夏さんの動きに・・・違和感が」
「違和感?」
箒はセシリアとラウラを見る。
「多少の動きは似ているが、少しばかり動きが違う箇所が多い」
「えぇ。いくら隼人さんに鍛え上げられてるとは言っても、あれだけの動き・・・今までの一夏さんにはありませんでしたわ」
「・・・・」
「ナハトヴァールにようやく追い付いている・・・と言った所だろうな」
「一夏が・・・」
「・・・だが、今はもう見守るしか出来ん」
「悔しいですが、その通りですわね」
「・・・あぁ」
箒はインフィニティーを見る。
(こんな時に何も出来ない私が悔しいが・・・今は一夏・・・・・・頑張ってくれ)
無意識に拳を握り締める。
「酷くやられたようだな」
と、シノンは宙に浮かんで静止している颯に近寄る。
エネルギー弾の直撃を受けて増加アーマーや一部の装甲が破壊されてしまったが、本体部にはそれほど深い損傷を受けてないが、武装は殆ど失っている。
「・・・・」
しかし颯からの反応は無い。
(無理も無い。リインフォースが目の前でやつによって消されたのなら、ショックを受けても仕方が無い、か)
「・・・・」
シノンは深く息を吐くと、颯の顔面を殴りつける。
「っ!?」
それによってようやく意識が戻る。
「しっかりしろ。戦闘中にボサッと動きを止めるなど、死ぬような物だぞ」
「・・・ね、姉さん」
「・・・負傷兵がここにいても邪魔なだけだ。こっちに来い」
と、シノンは颯の左腕を持って岸に方へと向かう。
「最も言えば、武装を失った兵士も邪魔になるがな」
「・・・・」
「今は信じようではないか、皆を」
「・・・・」
「そして・・・ゼロをな」
「姉さん」
「ぐぅ・・・」
吹き飛ばされたマドカは近くの岸まで何とか辿り着く。
装甲の大半が吹き飛んでいるも、損失している所は無いが、センサー類は殆どやられてひびが入っていた。
(予想以上の威力だ。こうも簡単に戦闘不能になるとはな)
そのまま仰向けになると、ナハトヴァールを見る。
(だが、やつの身に何が起きたのだ。機体が急に変わったと思えば、やつと追いついた戦いを見せる・・・)
ナハトヴァールに追いついて戦う一夏にマドカは驚く。
(だが、今はやつとあの二体が頼りとなるか)
マドカは息をゆっくりと吐いてインフィニティーを見る。
「ふっ・・・」
(ここまで問題は無いな)
(そうだな・・・今は、な)
そうしてリインフォースと闇の隼人はある程度記憶を進めて行って次の記憶に向かっていた。
この世界に転生してから、小学生時代における一夏や箒、鈴との出会い・・・
中学時代で一夏と鈴を襲っていた不良達に激昂し、全員を半殺しにし、その後左目を失い、更に両親までも失った・・・
そしてISを手に入れたその時までを・・・・・・
(だが、改めて知ったな。あいつの仲間想いを作った要因というのは・・・)
(・・・・)
(あいつが仲間を失うのを恐れているのは・・・・・・トラウマから来ていたのだからな)
(トラウマ・・・)
リインフォースはさっき見てきた記憶を思い出す。
(今世でも友達を目の前で失い、両親も失った。ここからもうナハトヴァールへの覚醒の下準備が施されているな)
(・・・・)
(死なせた友達の中には自分のせいで死なせた者も居た。それが拍車を掛けていたようだな)
(・・・・)
(だからあいつはずっと責任を自分だけに負わせてきた。誰も傷つけないように)
(・・・前世でも、今世でも、こんな惨い事ばかりを・・・)
(まぁ、あいつは力を得た事で自分が前世ではなしえなかった事を出来るようになった。だが、逆にその力を誤った使い方をしてしまう事もあったな)
(織斑と凰が不良に絡まれていた所を隼人が助けに入る所か・・・)
(そうだな。転生によって力を得て、不良共を一蹴したんだからな。その時はさぞ嬉しかったんだろうな)
(・・・・)
(まぁそれが隙を生んで、不良に取り押さえ込まれられてしまうんだよな)
(・・・・)
(で、あいつの目の前で鈴が不良共に捕まれて犯されそうになり、それであいつの怒りが頂点に達した)
(・・・・)
(あいつは戦闘機人としての力を一部解放し、不良共をフルボッコ。命乞いするやつにも容赦なく叩きのめして全員を半殺しにした。さすがにあれは結構やらかしたな)
(他人事の様に言うな)
(・・・・)
(・・・まぁ、お前がその時に居なかったのが不幸中の幸いだな。お前が居れば力を増した状態で、不良達を殺しかねなかった)
(かもしれんな。まぁそれであいつは力の在り方を改めて考えるようになった)
(・・・・)
(力だけの正義など・・・本当の正義じゃないとな)
(・・・・)
(それから一年後ぐらいに、あいつの左目が失うきっかけとなった事件が起きた)
(・・・強盗事件・・・だったな)
(あぁ。しかもその発端がまた鈴と言うのがな・・・。お陰で鈴に対する気持ちというのが他の者より少し特別なものになった)
(それが・・・このような事態を生み出したのか・・・)
(そういう事だ。あいつにとっては鈴はある意味一番親しかった友人だ。相談相手にも、相談されるのも・・・鈴だからな)
(・・・・)
(・・・やっぱり・・・もう隼人の左目は・・・戻らないのか)
(タイプゼロの戦闘機人って言っても、皮膚組織は再生できるが、目と言うほど複雑な物は再生できない。そこは普通の人間と同じさ。再生速度が速い事以外はな)
(・・・・)
(最も、再生されるものが取り除かれてしまえば、再生できないな)
(そうか・・・)
(それに、あいつが望んでやったことだ。友人を救えて左目を失うのなら、本望だろうしよ。別に後悔はしてないんだろう)
(・・・そうかもしれないだが、それが凰に重荷を背負わせることになってしまった)
(仕方ねぇだろうな・・・。当時は今ほどの実力など無かったのだからな)
(・・・・)
闇隼人の言い方に少しムッとする。
(そして、この世界の最強と謳われるISを手に入れた)
(バンシィを手に入れた・・・あの日か)
(あいつにとっては憧れの機体と最強の力を手に入れたのだから、さぞ今までの中でも一番嬉しかったんだろうな)
(・・・・)
(皮肉にも、破壊の王としての力を増した事になるがな)
(・・・・)
(さてと、ここからは一気に深層部付近まで向かうぞ。時間がもう迫っている)
(分かった)
そうして二人は一気にそこから飛び出した。
(隼人・・・・・・待っていてください)
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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