超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編 |
ーーー巨体が飛ぶ。
全長5mはある。その生物は、両手に血色の錆が付いている大斧と共に俺達の頭上から落ちてくる。
一瞬、俺はネプテューヌとアイエフと視線を合わせて頷く。
まず、この中で一番足が遅く遠距離タイプ&サポート役であるコンパをこいつから引き離すことだ。
一番近くにいた俺はコンパを抱きかかえ、その場を飛び、ネプテューヌは背後で浮遊している機械的な蝶のような翼からブーストを吹かし、俺と同じようにその場を離れ、アイエフは持ち前のスピードでモンスターの一撃から避ける。
誰もいなくなったその場所に、鬼のようなモンスターは落下した瞬間、その重量から生み出されるエネルギーが轟音と共に周囲に砂塵が爆発するように舞った。
「あんなの、一発喰らえばゲームオーバーだな……」
砂煙ではっきりと見えないが、地面に走っている破砕痕はその威力を語っている。
「ねぷねぷは……」
「大丈夫、無事に避けている」
黒曜日を両手に持って正眼に構える。
俺とネプテューヌは左右に違う方向だ。さぁ、どっちにくる…?
「■■■■■■■ッッッ!!」
「こっちか…ッ」
向かってきたのはこちら側だった。
しかも、好都合に俺狙いらしく、コンパに目を向けることもせず弾丸の様に直球に突っ込んでくる。
コンパにサポートを頼んで、俺は左に移動する。
勿論、モンスターも俺を目掛けて突進してくる。
だが、モンスターは右から突如として襲ってきた攻撃に意識が逸れた。
「わ、私だって戦えるんです!」
「−−−ナイス、コンパ!」
注射器から圧縮された液体は、弾丸となってモンスターを襲い、足を止めた。
その瞬間、地面を蹴りモンスターと一気に距離を詰める。
向こうでは、ネプテューヌがモンスターの頭上から刀を振り下ろしてくる。
ガキンッッッ!!!
俺達の挟み撃ちは、モンスターの大斧によって塞がれた。
見た目から暴れ狂う獣として見ていたが、冷静に状況を判断する理性があるのか…!。
「私を忘れていない?」
その言葉が消えてきた瞬間、カタールを手に土煙から疾走してくる影。
モンスターは驚く様に声を零すが、既に遅い。
なぜなら、両手は俺とネプテューヌが抑えているからだ!
二つの刃は、モンスターの肉体に傷を量産させる。
「■■■■■■■ッッッッ!!!」
怒りの咆哮を上げると同時にモンスターは自分の体を回転させ、俺達を吹き飛ばした!
俺は、魔力で足に地面と固定させ、少しだけ下がっただけだった。
ネプテューヌ達も、それぞれ対処している。
「−−−魔神剣・斬刀ッ!!」
モンスターは無理な体制で回転した所為か、体制を崩している!
この隙を逃さず、魔力を剣から噴出して加速して、一気に振り下ろす!
「■■■■■■ッッッッッ!!」
俺の一撃は胸部を切り裂いた。
だが、モンスターも俺の斬撃に反応して、微かに後ろに飛んでいたので傷は浅い。
「中々、理性のある行動ね」
「……嗚呼、全くだ」
「決定的なダメージが与えれないわね」
まるで、武術を習っている人のような動きだ。
ダメージは確かに与えられているが、微々たるものでこれじゃ俺達のスタミナが切れるほうが先かもしれない。
ネプテューヌ達と顔を合わせて、何か作戦はないか考えていると……
「ねぷねぷー!あいちゃんー!こぅさんー!モンスターさんの様子がおかしいですーー!!」
「「「!?」」」
コンパの声に俺達は一斉にモンスターの方へ視線を戻す。
モンスターは、沸騰したかのように肉体を赤く染め、体中の血管が浮き出てきた。
「トラ○ザム?」
「ステータスが三倍に上がるチート?」
「なにそれ恐い」
ガ○ダムネタはあまり知らないが、そんなチートがあるのか…。
「■■■■■■■ッッッッ!!!」
モンスターが今までより更に爆音の咆哮を上げた。その瞬間、モンスターは((消えた|・・・))。
「−−−かはっ!?」
そして、認識の時間すら与えられず俺は吹き飛ばされた。
壁に激突して、岩の雪崩が体中に強打する。
痛みで意識が飛びそうになった。
『ニヒルッ!?』
「だ、大丈夫…!」
反射的にか、偶然か、奴の大斧の一撃に黒曜日を割り込まれたおかげで吹き飛ばさただけで済んだ。
もし、これがなければ、俺の肉体の一部は、天に飛翔していただろう。
生き埋め状態から眼前の岩石を蹴り飛ばして戦闘場に復帰する。
ネプテューヌは、アイエフを抱えながら、逃げ回っていた。
コンパも射撃するが、モンスターが速すぎて掠りもしない。
「ネプテューヌ!!」
「紅夜っ、大丈夫!?」
「問題なし、だ!」
ネプテューヌを攻撃するために動きが止まるの瞬間を狙って突撃する。
モンスターは、その速さで躱すが、様子を見る為か、動きが止まった。
コンパの近くに移動して構えて、俺達を視線だけを合わせる。
「あのモンスター、本当に強いわね」
「足には自信はあったけど、あんなスピードは出せないわ」
「元からパワーは危険なのに、更にあのスピードは、正に鬼に金棒だな」
「こ、こぅさん!あ、頭から血が…!」
あっ?俺は頭に手を置いて、見てみると手が血で染まった。
岩石の雪崩の時にいいのを一発、貰ったな。
「ネプテューヌ、奴に付いていけるか?」
「……悔しいけど、無理だわ。姿を捉えることはできるけど、避けるのが精一杯ね」
「せめて、動きが止まれば……」
……デペア、聞きたいことがある。
『鎧』で奴のスピードに抵抗できるか?
ーーー速さは近くづくことができるけど同じくらいには出せないね、おまけにパワーも若干負けている。
足止めには十分か?
ーーー『鎧』の稼働時間は30秒が限界、出来るは出来る。けどそれは理論上の話で問題は君のガッツ。
「みんな、俺が奴の動きを止めるから、その瞬間に最大の一撃を叩き込め」
「紅夜…出来るの?」
「俺はこれでも、数々のモンスターを仕留めて来たんだぜ?ちょっとした裏技ぐらいある」
黒曜日を大剣から双剣に分けて、大きく息を吸って吐く。
「こぅさん、怪我の治療を!」
「後でいい、あいつがいつ襲ってくるか分からないからな」
心配してくれてありがとうコンパ。
けど、こんな怪我は既に((治って|・・・))いるから大丈夫だ。さてーーー、
鬼のような名もなきモンスター……俺はお前を絶対に倒す。
『いつでもどうぞ!』
俺の目的の為にーーー誰もが笑顔で居られる為に、
「デペア、オーバーブーストォッ!!」
『((Armageddon|アルマゲドン)) ((Dragon|ドラゴン)) ((ovre|オーバー)) ((booster|ブースト))!!!』
手の甲に浮き出ている宝玉から黒い閃光が放たれる。
この空間を埋め尽くすほどの強い光。俺の体に漆黒のオーラに包まれる。
ーーー莫大な力が流れ込んでくる。
ーーー禍々しいデペアの本質的な力が
『何度も言うけど、君はまだ30秒が限界だよ。それ以上は((?まれる|・・・・))』
分かっているよ。耳が腫れる程、言われ続けてきたからな。
『よし、ならば行こう。全身全霊ーー』
全力全開にーー。
「喰らい尽くすぜッ!!」
漆黒のオーラは形を成す。
黒い鎧だ。ドラゴンの姿を模ったかのような全身鎧。
全体的に荒々しいフォルムだ。角が生えた兜の後ろからは尻尾のような刃の付いた鞭がある。
両手に二つ、肩に二つ、足の関節に二つ、翼の様な突起物に二つ、胸に一つ、合計九つの宝玉が煌々と輝く。
ドラゴンの力で変化した斬るというより砕くという表現が正しい、分厚い刃となった黒曜日を握り締めた。
「……紅夜?」
「これは三十秒しか使えない。だからーーー見逃すなよッ!」
背中から伸びた刺々しい突起物から、腕と足の装甲が一部開き、一斉に魔力の火を噴かせた。
「■■■■■■■■ッ!?」
モンスターは俺のスピードに驚愕するが−−−遅い。
感情の乱れは戦いの中では致命的な隙を作り出すことになる。
双剣になった黒曜日で攻撃する。モンスターは、反応に遅れ僅かに防御姿勢を取るが吹き飛ばす。血らしき液体を飛ばしながら壁に激突する。お返しだ
だが、モンスターは先ほどと同じように怒りの咆哮を上げると、俺を上回るスピードで突っ込んでくる。
脚部のブーストを吹かして遠心力を体に纏わせながら、俺とモンスターはぶつかる。
「−−−ッ」
俺とモンスターがぶつかった衝撃波は一瞬にして地面を破砕する。
体が悲鳴を上げている。自分ではない誰かの意思が俺の体を浸食するように広がっている。
歯噛みしながら、ブーストを全開にする。
三十秒ーーーその長そうで短い時間の中で、俺はこいつに決定的な隙を作らなければいけない。
兜から生えた先端に刃が生えた鞭をモンスターの腕に突き刺す。
『((Deain|ドレイン))!!!』
「■■■■■■■ッッ!!」
苦悶の声を零すモンスター。
鍔迫り合いを力づくで解除され、鞭を抜かれ、距離を取られる。チッ……勘が鋭い。
この鎧ーーー『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))』の特殊能力は『敵の力を吸収して、自分の力を増幅させる』と一見すれば強く見えるが、色々と条件がある。
まず、兜から生えている鞭を刺さないとダメ。
そして、刺して秒ごとに相手の力を吸収するが、チャージが必要であり最低でも三秒は刺された状態と保たないといけない。
勿論、生物じゃないと吸収できないし、吸収力をうまく調整しないと暴発する危険もなる。
更に……相手は生物で勿論、痛覚ありだから多少脳のある奴は、三秒あれば平気で抜かれる。
相手が理性なしの暴れ馬ならともかく、相手はかなり冷静な知能の持ち主だ。
さっきので次から鞭を警戒するから当てることすら微妙だ。
相手が強ければ強いほど注意が必要、弱い相手ならこの鎧の能力だけで問題ないが……ぶっちゃけて、言えば合っても無くても、あまり変わらない。俺自身はたまにこの能力を忘れる時があるぐらいだ。
「■■■■■ッッ!!」
全身を血の如く赤に染め、突進してくるモンスター。
あんな突撃なら、鞭を刺す前にぶっ飛ばされる。避ける手もあるが、時間の無駄だ。
「デペアーー!!!」
『術式解放『((黒竜撃|ドラグーン・デストラクション))』』
『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))』の九つの宝玉が禍々しい妖気を放ち、黒曜日に集中する。
やっぱり、パワーにはパワーにしかない。
元から、ステータス的に負けているんだ。
充填された荒れ狂う魔力を螺旋に描いて纏っている黒曜日を後ろに下げる。
狙いは、大地を駆ける紅い流星となったモンスターだ。
嵐の如く、轟音と爆風の演奏を鳴らす黒曜日を俺は大きな一歩と共に突きだす!!
「いけぇぇぇぇ!!!!」
放たれた漆黒の竜巻。
地面を抉りながら突き進む魔力の螺旋は、モンスターと直撃してーーー爆発する。
「−−−ぐっ」
一番の衝撃破に俺の体は軽々しく宙を飛び、地面に体を叩きつけられる。
『|漆黒の皇神鎧《アーリマン・ディメイザスケイルメイル》』を展開してなければ骨折確定だった。
ここで、限界時間が来たのかデペアが強制的に鎧を解除した。
元のサイズになった黒曜日を杖代わりになんとか立ち上がり、俺達の衝突で出来たクレーターの先のモンスターはーーー健在していた。
「■■、■■■ッ……」
全身から夥しいほどの出血が見えた。
それでも、モンスターは倒れない。
それに対して、俺は立っているのがやっとーーー俺が((一人|・・))なら、ここで敗北だったな。
「これで、十分か……?」
俺の横を駆け抜けていった二人に向かって口を開く。聞こえていないかも、と思ったが、アイエフは微笑み、ネプテューヌは唇を動かした。
「十分よ。ここからか私たちのターンよ」
そうかい、それじゃ、後は頼む。
俺がそう呟いた直後、頭上に何かが、通過した。
「■■■■■!?」
コンパの放った圧縮を越した超圧縮された弾丸は、弱ったモンスターの体制を崩すには十分だった。
「そこッ!」
持ち前のスピードで、アイエフは縦横無尽にモンスターの肉体を切り裂く。
モンスターは痛みに吠えながら、地面を蹴りアイエフと距離を取るがーーー
「これでーーー終わりッ!!!」
空から流星の如く落下する閃光に、モンスターは反撃すら、防御姿勢すら許されず。一刀両断に切り裂かれた。
「■…、■■■……」
ネプテューヌが刀にこびり付いた液体を振り落すと同時にモンスターは粒子となり、消えていった。
そして、その瞬間を持って、俺達は勝利に歓喜した。
「フフ♪」
全て、見られていたことを知らず。
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