超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編 |
廃棄工場の中は、数十年は人が入っていなかったように埃だらけだった。
窓ガラスは割れて、機材は散乱しており、俺達はそれを避けながら進んでいく。
「…………」
「…………」
俺と共に同行しているノワールだが、俺をかなり警戒されているらしく話しかけても睨まれて会話終了する始末だ。
一部、崩れ落ちた天井から降り注ぐ陽光のおかげで、只でさえ暗い空間がなんとか見える程度だ。
俺達が歩く音だけが、耳に聞こえてくる。恐いぐらいの静寂だ。
目を凝らしても、あの純白は見えず、一体どこまで進めばいいか分からないまま足を進ませる。
ーーーねぇ、今からでも遅くないんだよ?
頭の中でデペアがそう語りかけてくる。
だけど、俺は既に行動している。今更引き返すなんて選択肢はない。
ーーーマジか……
お前は、俺に何も言ってくれないだろう?
ーーーあー、もう! 知らない方が幸せなことがあるって分かってよ!
自分のことを知ることは悪いことなのか?
ーーー悪い!君は君でキャプテンはキャプテンだ!((別人|・・))だ!知る必要なんて……ないよ
そのキャプテンと言われる奴が俺の過去か。
ーーーしまった!?
いや、お前ことある事に言ってるぞ。様々な場面で
それにしても、お前の口調から察するに異世界の神様と関係が合ったと言うことは、俺は元々この世界の住民じゃないだな。
ーーー…………
別に黙らなくても、これぐらいは予想出来た。
まだ世界で、一年だけの時間の中を過ごしたが、俺のことを知っている人は誰もいなかった。
だから、俺は心の中で、自分はこの世界の者じゃないと思っていたんだ。
ーーー一生、後悔するかもよ?
何もしないで後悔するよりはマシだ。
デペアは最後に『((魔龍|ジェノサイド・ドライブ))を使う様な展開にならないことを祈るよ』と言葉を残して黙り込んだ。
初めて聞く言葉だったが、それは今、気にすることではないことで切り捨てる。
それからしばらく、歩くと広い空間に出た。そして、そこに俺達が探していた人物は無造作に立っていた。
「要約、見つけたわよッ…!」
隣にいるノワールは既に戦闘態勢だ。
世界から孤立しているほど真っ白なコートで全身を隠した女性か男性か判断できない誰かは、こちらに振り向いた。容姿は分からないフードで隠れて見えないからだ。
「……へぇ、君から来たのか」
だが、そいつは横のノワールは眼中に無くハープのような綺麗な美声で俺を見てきた。
「デペアは……止めただろうね。だとすれば、君は僕の知っている紅夜じゃない……ということになるんだね」
「!!」
あっさりと、呆気にとられるほど、俺のことを見抜いてきた。
「驚いた顔をしているけど、簡単だよ。僕は((君のことを君自身より知っている|・・・・・・・・・・・・・・・))……ただそれだけ」
「俺の過去を……知っているのか」
「勿論」
小さく、フードの奥でそいつは呟いた。
「知りたい?」
「…………ああ」
微かな笑い声と共に、そいつは真っ直ぐ迷いなく俺に近づいてきた。
体が危険信号を発しているが動かない。複雑な感情がグルグルと回る。
「私を無視しているんじゃないわよ…!」
閃光が瞬いた。
隣いるノワールが地面を蹴り、一瞬で奴との距離を詰め、レイピアの刺衝を繰り出したのだ!
だが、その一撃は奴の((二つの指で止められた|・・・・・・・・・・))。
「……遅いよ。((ブラックハート|・・・・・・・))」
「なっ!?」
ブラックハートーーーこのラステイションの((女神|・・))が、なんでこんなところに!?
「っーーー!」
「…っと」
引いても押しても動かないレイピアを離して、ノワールは奴の顔部目掛けて回し蹴りを放った。
それも、奴はそう来ることを((あらかじめ分かっていた|・・・・・・・・・・・))ように片手で受け流し、空中に放り投げた。
そして、宙を舞ったノワールの舌打ちが聞こえた瞬間、彼女の体が光に包まれ、黒色をベースにしたレオタードのような服装になり黒髪のツインデールは銀髪のストレートなって、周囲には重厚な鎧をう装備した俺が一目見たことがある。この重厚なる黒の大地、ラステイションの女神ブラックハートへと変身した。
「あなたに聞きたいことが山ほどあるわ」
「やめな、君じゃ僕には勝てないよ」
呆れたようにため息を吐くその動作に、ノワールーーーいや、ブラックハートは額に青筋を立て
「そんなセリフはーーー」
ブラックハートの手に光が満ち、形を作り、それは巨大な大剣となった。
「−−−私を倒せてから言いなさいよ!!」
バックから伸びた合計六本の翼からブーストを吹かし、一気に奴との距離を肉薄する。
「はぁぁぁあぁぁ!!!」
振り下ろされる剛烈の一撃。
それに、奴は突然、袖から剣が飛び出しそれを手にブラックハートの一撃ごと((弾き飛ばした|・・・・・・))。
「−−かはっ!?」
俺の真横をブラックハートは通過して、壁に叩きつけられ遠雷のような轟音を立てながら、腐朽の壁は崩れ落ち、瞬く間にブラックハートは生き埋めになった。
「…………」
その一連を俺は黙って見ることしか出来なった。
女神が、この世界の頂点に立つ存在が、赤子の手を捻るようにやられた……?
「さて、話の続きをしようか紅夜」
何事もなかったように袖に剣を入れて、そいつはまた俺との距離を詰める。
『((Armageddon|アルマゲドン)) ((Dragon|ドラゴン)) ((ovre|オーバー)) ((booster|ブースト))!!!』』
「!?」
突然、俺は漆黒のオーラに包まれ、ドラゴンを模った全身鎧を装着した。デペア、お前どうしたんだ!?
『忠告だ。破壊神、キャプテンの命令により、君がニヒルの前に姿を現した時、|魔龍《ジェノサイド・ドライブ》を持って徹底抗戦に移る』
「……よほど、嫌われたんだね」
『当たり前だ、と言っておくよ』
深いため息を奴は付いて、フードに手を掛けゆっくりとその容姿を見せた。
「−−−っ」
最初に見たのは、黄金色の髪だった。
背中まで伸びたストレートの髪、威圧と畏怖感を覚える精細にして、神々しい黄金。
ゆっくりと瞳が開く。その色は黄金とは対極の銀色でありそれは、全てを拒絶し己の力だけで光る力を感じる美しい瞳だ。
容姿は、徹底的に計算され造形されたような無駄のない顔つき、それは信仰を誘う様な神秘と魅惑に満ち溢れ正に人智を超えた存在だと本能が確信する。
「ちゃんと、名乗った方がいいね……僕は((夜天|やてん)) ((空|そら))。デペアに聞いたかもしれないけど、破壊を司っている神様だよ」
「…………っ」
空と名乗ったそいつに、俺は一つの結論が頭に浮かんだ。
((絶対に勝てない|・・・・・・・))。例え、ゲイムギョウ界のモンスター、人、女神が総結集したとしても、こいつにとっては、塵も等しい。ただ、底知れぬ力が肌で感じられた。
「デペア、それは脅迫かい?」
『そうだね。そう思ってくれた方がやりやすいよ』
「いつもの僕なら、よしかかって来いや。オラぁー……なんだけどね。僕は((ゲイムギョウ界の味方|・・・・・・・・・・))だし、本当に((魔龍|ジェノサイド・ドライブ))を使われた場合、止める過程でラステイションが滅びる可能性もある」
……はっ?((魔龍|ジェノサイド・ドライブ))?さっきデペアが言っていたが、なんだそれは………ラステイションを滅ぼすって……どんだけ危ないんだそれは!?
『……なるほど、多大な君の情報を貰ったよ』
「僕も紅夜の情報を貰ったからね。ギブ&テイクだよ」
俺の感じることが出来ない次元で、空とデペアの腹の探り合いが行われている。
と、その瞬間、俺の背後で爆発でもしたかのような爆音が轟いた。
「よくも、やってくたわね……!」
姿を現したのは鬼の形相をしたブラックハートだった。
「うわぁ、面倒だな」
頭を掻きながら、空はため息を付く。
「しょうがない。へいカモーン」
力が込められていない声で、空は指を鳴らすと地面に紅い魔法陣が展開される。
「さぁ、協力してもいいからちゃんと倒してね。昨日の様に」
「ちょ!?お前は……!!」
焔のように紅い魔法陣を更に光を放ち、凄まじい熱気が溢れてくる。
俺は思わず、後ろに下がる。空はニッコリと笑顔で手を振っている。
「待ちなさい!」
「待てと言われて正直に待つようなバカじゃありませーん」
遂に魔法陣から炎が溢れる。
莫大な熱量は、廃棄工場を焼き天井の一部が落ちてきた!
「っと!?」
落ちてきた壁を黒曜日で切り裂き、急いで外に出る。
ブラックハートも苦虫を噛み潰したような表情で、脱出した。
いつの間にか流れてきた汗を手で掃いながら、俺は黒曜日を両手に構える。昨日の感じがする。あの、鬼のようなモンスターと対峙した同じ感じが!
「ギャァアアアァァァァァァアーーー!!!!!」
「「!?」」
火炎から姿を現したのは、全長10mはある巨大なモンスターだった。
手には先ほど奇襲を掛けてきた円状の槍、もう片方には丸く分厚い装甲をした盾を持っており、真紅の翼と鱗をしたーーーその外形は、間違いなくドラゴンだった。
「モンスターを召喚した!?」
横のブラックハートも声を上げた。
頭に過ったのは、噂になっている『ユニミテス』の存在だ。
しかし、あれはディスクにより召喚だった筈だが、あいつはただ指を鳴らすだけで召喚した…。一体どういうことだ!?
『二人とも!いろいろと疑問は尽きないかもしれないかも、今はこのモンスターの対処が最優先だ!ニヒル、鎧は一時的に解除するよ。数分待ってね!』
『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))』に切れ目が入りバラバラに砕け散った。
そういえば、さっきデペアが勝手に使ったから稼働時間が直ぐに終ってしまうところだったんだ!
「あなたは傭兵とはいえ、民間人よ。モンスターを倒すのは女神の役目だわ!」
「そんな理屈しるか!」
「はっ!?」
女神とは言え、女性に背を向けて逃げれるか!
それに、昨日戦った奴と、このドラゴンモンスターが同格ならブラックハートが危ないからな!
「どうなっても、知らないわよ!」
「それはこっちのセリフだ!お前こそ怪我するなよ!」
「心配ご無用だわ!私がこんなところで挫けるほど軟じゃない!」
互いに獲物を強く握りしめ、紅のドラゴンの咆哮と共に、俺達は戦闘を開始した。
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