ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮 〜海原往く大鷲の航跡〜 序章 大鷲の古き記憶 |
海原往く大鷲の航跡 序章 大鷲の古き記憶
寒流の海に面した首都シュヴァンブルグの港町、今は夜景が彩る港町の一角に海軍が所有する艦船のドックがあった。
ドリルの甲高い金属音や、バチバチッといった溶接機の音はほんの数週間前には聞こえていたが今はもう聞こえない。
その証拠に、薄明かりの灯ったドックの中には完成された独特のフォルムを持つ軍艦が静かに大海原に繰り出される時を待っている。
いずれの国の艦船設計規格にも合わず、全く新しい船体を持って生まれた彼女は、まるでどこかの神が作りたもうた船のような威厳を放っても居るが、実際は洪水を逃れたあの神話の船だってやはり人の手でつくられている。
そんな事を考えて発言しては、昔よく友人に「君は哲学者になれる」などとからかわれたものだと思いながら、彼はそのドックに入って来た。
前を閉めていないトレンチコートにサングラスの風貌、まるでどこかのスパイのようだ。
カンカンカンと艦左舷に続くタラップを踏みしめながら、彼は艦内から唯一明かりが漏れている艦橋(ブリッジ)を目指す。
「いやはぁ、お疲れ〜い!! 今日を以て、この艦の工事工程は終了だ。」
「いやいや、技師長こそ! 俺たち、お世話になりました!」
祝杯を上げながら、豪快に笑う不精髭の職人風貌の男の周りを若い技師たちが囲む。
「私からも、皆本当に御苦労だった。」
その時艦橋に響いた場違いな声の主、先程の彼が艦橋の鋼鉄の扉を押しあけて現れた。
「ち、中佐・・・! あ、いえ・・・ゴホン」
咳ばらいをした技術科の技師長も軍人の端くれである以上、反射神経が作動したように両足の踵を揃えて背筋を伸ばす。
「艦長、到着されました!」
酒の匂いが艦橋に充満している、おそらく始めてもう30分ほどは経過しているだろう。
もう酔いが回って来た技師も居るだろう、しかしそれを感じさせないほどに、技師長の掛声と共に彼らの敬礼は士官達のそれと比べても見劣りしない統制が取れたものだった。
それに対して、自分も高級士官らしい対応をせねば佐官の肩書が涙目になるのは間違いだろう。
艦長こと、カイト・A・トライトンもサングラスを外してキリッとした敬礼を彼等に返した。
「時に技師長・・・私は邪魔だったかな?」
「いえいえ、そんな事ありませんが・・・」
「が?」
「むしろ、嬉しいですね。 海軍の消えかけた伝統をご存じなんて。」
「艦内の工事が完了した時に、艦長が訪れて慰労する。と言う物ですか? 実はそれ、バクスター司令に教えて貰ったんですよ。」
「ああ、なるほど、あの司令オヤジなら知ってるでしょうな。」
「“司令オヤジ”、ね・・・。」
「あ、いや失礼・・・第11艦隊司令官殿でしたな。」
酔った勢いであだ名を言ってしまった技師長が、慌てて言い直したのを聞いて苦笑する一同。
「ははは・・・大丈夫ですよ、何も聞かなかった事にしますから。」
「それより艦長、どうですか・・・是非とも、一杯。」
こう勧められて、未成年でもましてや下戸を公言しているわけでもない以上、こういう時に飲まないのはまさしく愚の骨頂ならぬKYの骨頂。
カイトは未使用の紙コップを手に取ると、技師長が差し出す一升瓶にそれを向けた。
「こいつぁ、日本から直輸入の米焼酎でさぁ。 さあさあ、お飲みになってください!」
「では、いただきます。」
とだけ言うと、カイトはそれをすぐさま胃の中に流し込んだ。
首都海軍省でデスクワークを終えてきたばかりで疲れがたまっていたが、この胃の底から湧きあがる熱がそれを吹き飛ばしてくれるようだ。
造船技師達が、目を丸くしている。
どう見ても、武官には見えない面構えの自分が、グイッといったのだから。
さて、皆の注意を引いたところで言う事は言っておくかとカイト。
「諸君、明日は士官だけでなく、艦隊司令官も到着されて試験などを行う。 それに支障がないように・・・」
「おっと、その事なんですがね艦長・・・私も含めて、ここの技師の半分くらいが明日此処を発つんですよ。」
「ん? そうだったのか? 私は初耳だな。」
「ええ、なんでも他国に出張だそうで・・・。」
「ほう、それは滅多にない良い機会だろう。各員精一杯精進に励むように。 ところで、行先は同盟国の日本か? それとも、技術交流の為にドイツとかかな?」
「それが、あっしにもよく分からんのですが、行先はアイスランドだそうで・・・。」
首をかしげて言う技師長、それを聞いたカイトも聞きなれないワードに当然ながら眉を顰める。
「・・・アイスランド? イギリス北西の寒い島国に、一体何の為にだ?」
「理由や内容はこっちが聞いても、担当の士官が『造船や設計に優れた君達にまたとない機会だ』の一点張りで・・・。
それでも問い詰めると、あのヴァイセンベルガー大将直々に威令なさった任務だとか言って、煩わしそうな表情をして去りましたが。」
「ふむ・・・ヴァイセンベルガー大将直々に令達された任務か、内容は推し量りかねるが技師長は実は随分と出世してたんじゃないのかな?」
「だと、良いのですがね・・・。 話は飛びましたが艦長、今日だけは・・・どうかどんちゃん騒ぎも見逃してやって下さいませんかね? どうか、一つ・・・。」
ははーっと土下座のようなマネをしつつ、それでいて言っている事に真剣さを帯びさせたまま技師長は語る。
「はは良いだろう、言っておくが私はそこまで堅物じゃない。 だが間違っても、巡航ミサイルを首都に向けて誤射したりはしないでくれよ。」
「それじゃ、主砲くらいだったらOKですかな? 祝砲として、ここも一つ・・・。」
先程と同じような土下座の構えを見せる技師長、だが・・・
「私の返答は、もう分かってると思うが・・・。」
「はい、分かってますよ。 ほんの冗談であります!」
笑いが取り巻く艦橋。
こんな風に、艦橋が笑いで包まれることはこの先、この艦が廃艦処分される時や想像したくはないが沈没する時に至っても無いだろう。
だが、運命と言うのはいつも残酷か悲劇かハッピーだ。
この場合は、残酷にあたるのだろうか・・・。
あんな冗談を言い合うような仲だった技師長、しかし彼はこれから先に起こる悪魔の所業を成す兵器を作り出すことになるとは、この時誰が予想できただろうか・・・
それから1年後、いよいよ大鷲が大海原を飛びまわる日がやって来る。
だが、その日のあの出来事はまるで濃霧の中から現れた氷山のように突然起こった。
続く
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文体はこんな感じで良いでしょうか? 何せ書きものに於いていろいろと自信が無いものでOTL(文才が無い辺りが特に)
一応、年代設定(ゲーム内)は物語は1939年3月から始まり、今回の話はそれから一年前の出来事です。
ん?1939年!? そんな時代に、ミサイルとかコンピューターとかねえだろっ! とか思われている方、是非とも一度プレイされるか
ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮のホームページをご覧ください。
こちら→http://www.gamecity.ne.jp/wg2/
ミサイルとかの現代兵器が、懐かしいものに思えるくらいの世界ですからwww
多分、コンピューターとかは普通にあるんじゃない?(てけとー)
それから、ミリヲタ垂涎の専門用語とかを使っていく予定ですが、出来るだけ分かりやすいように解説します。
それでも分からない方は、コメしたり、調べるなり、諦めるなりの方向でよろしくです。
とか、もし誤字や間違ったエセ軍ヲタ知識を披露していた場合、じゃんじゃん指摘しちゃってください。
泣いて反省しますんで(ぉ
説明 | ||
序章です。 ゲーム本編で、シュルツ達があの出来事に遭遇する約1年前のウィルキア王国首都シュヴァンブルグでの出来事です。 それにしても皆さん、お酒は20歳からですよ。 |
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