真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ三十九
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「本日はお招き下さり、光栄に存じます」

 

 南陽の円卓の間にて、蓮華は上座の俺に向かってそう礼を述べる。

 

 先日、孫呉より『南陽の視察をしたいので是非ともお願いしたい』との打

 

 診があり、特に断る理由も無かったので了承したのだが、蓮華だけでなく

 

 雪蓮・冥琳・思春・明命までやってくるという事態に少々こちら側として

 

 は驚いていたのであった。

 

(但し明命が猫喫茶目当てだというのは最初から分かってはいたのだが)

 

「いえ、こちらこそあまり参考にならないかもしれませんが、思う存分見て

 

 いってください」

 

 俺は迎える側の主人としてそう答えたが、何か孫呉の…というより雪蓮と

 

 冥琳と思春の眼が怖いと感じるのは気のせいだろうか?

 

 ・・・・・・・

 

「取りあえず、此処まで入り込む事は出来たわね」

 

 迎賓館(一刀が来賓を迎える為に造った)の一室に入った雪蓮はそう冥琳

 

 に話しかける。

 

「ああ、だが此処で性急に事を構えると失敗するどころか蓮華様の不興を被

 

 るだけになりかねない。此処での滞在は十日、事を起こすのは…」

 

「最終二日間って所ね」

 

「ああ、それまではしっかり公務をこなすぞ。私としても北郷や朱里の政を

 

 眼に出来る絶好の機会だからな。我らの政にどれだけ生かせるか存分に見

 

 せてもらうとしよう」

 

 冥琳はそう不敵に笑い、雪蓮もまた楽しそうに微笑んでいた。

 

「でもさっき朱里の姿は見かけなかったわね。何時もなら一刀の側にしっか

 

 りいるのに」

 

「何せ身重なのだから、気分が優れない日もあるのだろう。おそらく朱里は

 

 無理してでも出ると言ったんだろうが、北郷が強引に止めたという所だろ

 

 うさ」

 

「へぇ〜、愛されてるのね」

 

「ああ、だが朱里があまり表に出て来ないのはこちらとしては好都合だ」

 

 

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 それから数日、俺は蓮華達を連れて領内を回っていた。

 

 本当は朱里も同行する予定だったのだが、此処の所気分が優れず、華佗か

 

 ら『しばらく静養に努めるように』と言われたので、休んでもらっていた。

 

「あの山から水を引いて水路を作り、それを街中に巡らせるようにしてある。

 

 それとは別に排泄物を流す下水溝を作り、それを数箇所溜めておく場所を

 

 作って、それを田畑の肥料にしているんだ」

 

「成程な…あえて川の水ではなく山からの水を利用するという事か」

 

「その方が安定して取水出来るしね」

 

 俺がそう説明すると冥琳は感心したように頷く。

 

「それを伸ばす事によって、今まで水が近くに無かった関係で耕地を大きく

 

 出来なかった場所にも田畑を広げる事が出来たんだよ」

 

「う〜む、それで元々豊かな土地であった所がさらに豊かになったのだな」

 

「冥琳、こういう水路はこっちでも使えるんじゃない?」

 

 蓮華のその言葉に冥琳は頷いていた。

 

「確かに。そもそも揚州は水の豊かな所、元々ある川や水路を繋ぎ合わせれ

 

 ばやり易くはありますね」

 

 それから蓮華と冥琳は俺がいろいろ案内する度に自分の所にどう取り込ん

 

 でいこうかと話し合っていたのだが、その後ろで雪蓮は興味無さそうに歩

 

 いているだけだった。

 

「雪蓮、お前も少しは話に加われ。幾ら今は蓮華様が当主とはいえ、お前も

 

 政と無縁というわけにはいかないんだぞ!」

 

「ええ〜っ、そういうのは現当主と大都督の話し合いで十分でしょ〜?」

 

 そう言っていた雪蓮は心底から嫌そうな顔をし、それを見た冥琳の眉間に

 

 はとてつもない程の皺が寄っていたのであった。

 

 

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 それから、南陽郡・南郷郡を見て回り、芸の村では天和達の歌や涼の演歌

 

 を聞き、歓迎の宴では雪蓮が霞と一緒に焼酎をウワバミのように飲み平ら

 

 げたり、明命は猫喫茶に入り浸りになったりなど視察団の面々は思い思い

 

 に楽しんでもらったのであった。そして七日目の夜…。

 

「ふう、此処まで楽しかったわね」

 

「ああ、これからの政にいろいろと役立ちそうな事も見る事が出来たしな」

 

 雪蓮と冥琳は迎賓館の宿舎の部屋でそう話をしていた。

 

「さて、それじゃこれからが本番の開始ね」

 

「明日の晩に事を起こせれば完璧だな」

 

「ちょうど朱里の体調も回復してないようだし、此処で勝負を決めちゃい

 

 ましょ」

 

「蓮華様と思春は?」

 

「お風呂よ。此処はほぼ毎日入れるしすっかりハマったみたいよ」

 

「この風呂の構造も帰ったらすぐに作成可能か技師達に図ってみないとな。

 

 ダメだったらすぐにこちらから購入する事も考えなくてはならん」

 

「そうね、お風呂に毎日入れるのは私も賛成よ」

 

 雪蓮達が南陽に来て最も驚いた事の一つが風呂であった。

 

 これもまた一刀、いや朱里が現代で得た知識を基に作り出したボイラー

 

 と水道がもたらした結果であった。その完成により、安定した水の供給

 

 と少量の薪で水を沸かす事が出来るようになり、一刀の領内では各都市

 

 毎に公衆浴場が設置されている。当然、迎賓館にも設置されているので

 

 雪蓮達は喜んでそれに入っており、特に蓮華はお気に入りであった。

 

 ちなみにこの技術は洛陽にも導入され、劉弁はここぞとばかりに宮中に

 

 真っ先に設置したのは言うまでも無かった。

 

 

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 次の日の朝。

 

「おはようございます。雪蓮さん、冥琳さん」

 

 雪蓮達が食堂に現れると、朱里がいたのであった。

 

「おはよう…体の具合はもういいのか?」

 

「ご心配をおかけしましたけど、もう大丈夫です。昨晩華佗さんに診ても

 

 らって『激しい運動を避ければ問題無い』と言われてますので」

 

「そう、それは良かったわね」

 

 雪蓮達は一応そうは言ったものの、

 

(これはまずいわね…間違いなく朱里が一日一刀の側に張り付いているん

 

 だろうし…)

 

(此処は如何に朱里を引き離すかだな…何とか夕方までには考えておかな

 

 いとならんな…)

 

 心の中ではそんな事を考えていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 そしてその日の夕方。

 

「それでは明日は最後の夜という事で宴を開きますので、今日はゆっくり

 

 お休みください」

 

 朱里はそう言って蓮華達を送り出すと、一刀と一緒に部屋へと戻ろうと

 

 する。その時、

 

「すまぬ朱里、少し聞きたい事があるのだが良いだろうか?」

 

 冥琳が朱里を呼び止める。

 

「はあ、大丈夫ですけど…?」

 

 突然呼び止められた事に、朱里は少し訝しげな顔をするも冥琳と一緒に

 

 別室へと入っていった。

 

 そして冥琳は別室に入る瞬間、雪蓮に眼で合図を送る。

 

 それを見た雪蓮は嬉々として蓮華達の部屋へと向かっていった。

 

 

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「蓮華、思春、いる?」

 

 雪蓮は蓮華達の部屋に入って来た。

 

「姉様…どうされたのですか?」

 

 蓮華は訝しげな顔でそう答えるが、思春は狼狽の度合いを強める。

 

「二人に是非来てもらいたい所があるの♪」

 

「こんな時間にですか?あまり夜遅くから出歩くのは一刀達に迷惑になる

 

 のではないですか?」

 

「大丈夫、大丈夫♪」

 

 雪蓮はそう言って二人を連れ出す。

 

 そして雪蓮達は城内の奥へと入って行く。

 

「姉様、こっちは一刀達の私室がある所ではないですか。客である私達が

 

 勝手に入っていい場所では…」

 

「だから行くのよ♪」

 

 雪蓮のその言葉で、蓮華は何処へ行くのか思い当たったらしく、驚きに

 

 満ちた顔になっていき、そして思春はずっと黙ったままであった。

 

 しかし、その一歩手前に来た所で、

 

「何であんたらが此処におるんや?ここはウチらの私的な場所、幾ら客と

 

 はいっても勝手に入っていい場所ちゃうで!」

 

 霞に見つかってしまった。

 

「あら、私達は一刀に呼ばれて来たのよ?」

 

 雪蓮はしれっとそう言い返していた。

 

「そんならウチらにも何らかの連絡が来んとおかしいやろ。嘘もたいがい

 

 にしい!」

 

 その言葉に霞は激昂する。

 

 

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「あら、そんな事言ってもいいのかしら?もしかしたらあなたが聞いてい

 

 ないだけかもしれないじゃない?」

 

 雪蓮がそう言うと霞の眼が少し泳ぐ。

 

(よし、これはもう少し強気で押せば…)

 

 雪蓮はそう思い口を開こうとしたその時、

 

「おやー?霞さん、どうされたのですかー?」

 

 そこに風が現れる。

 

「おおっ!風、ええとこに来た。雪蓮達が一刀に呼ばれて来たって言うて

 

 るんやけど、風は聞いてるか?」

 

 霞の質問に風の眼が鋭く光る。

 

「聞いてません。それに此処はあくまでも私的な場所。呼ぶにしても必ず

 

 応接間へ通すのが規則です。まさかお兄さんが自分で作った規則を自分

 

 で破るわけがありません。もし本当にお兄さんが呼んだというのなら、

 

 今から風が確認してきますので、霞さんは絶対にこの人達を此処から先

 

 に行かせないで下さい。雪蓮さんの言ってる事が正しかった時は、如何

 

 なる処罰でもお受けいたしますので」

 

 風のその言葉を聞いた雪蓮は押し黙ったままになってしまった。

 

(まずいわね…此処で一刀に話がいったら計画が台無しよね…仕方ないか)

 

「いえ、それには及ばないわ。蓮華、思春、戻るわよ」

 

 雪蓮は戸惑ったままの蓮華達を連れて迎賓館へと戻っていった。

 

「何や一体…あいつら何しに来たんや?」

 

「霞さん、あの人達…特に雪蓮さんと冥琳さんには気をつけて下さい。風

 

 の考えが正しければ多分…」

 

 風の考えを聞いた霞の顔色が変わる。

 

「…何やてぇ!?あいつらぁ…此処で叩っ斬ってやる!!」

 

「待ってください、完全にそうだという証拠を掴んだわけではありません。

 

 それにどうせ明後日には建業へ帰るのです。それまで公務以外で近づけ

 

 させなければ良いだけの事です」

 

 そう言った風の眼は鋭く光ったままであった。

 

 

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「では失敗したという事か」

 

「くっ、霞だけならどうにか出来たんだけど、風まで出て来られちゃった

 

 のが痛かったわね」

 

 部屋に戻った雪蓮は同じく朱里の足止めから戻って来た冥琳に事情を説

 

 明していた。

 

「…という事はだ。おそらくこちらの意図は読まれていると思って間違い

 

 はなさそうだな」

 

「それじゃ既に向こうには知られているという事!?」

 

「向こうも完全に証拠を掴んだわけでは無い以上、そんなに手荒な真似は

 

 してこないだろうが…公務以外で北郷に近付くのは難しくなったな」

 

 冥琳はそう苦々しげに言った。

 

「どうするの?」

 

「どうするもこうするも…機会はもう明日の夜しか無い。そこで何とか…

 

 しかし風達が朱里に話をしていたら手詰まりだ。諦めるしか無くなる」

 

 冥琳はそこで再び考え込む。しかし雪蓮は、

 

「きっとそれは大丈夫よ」

 

 そうはっきりと言い切った。

 

「ほう、それはお前の勘か?」

 

「それもあるけど…おそらく霞も風も同じものを狙っているのは間違いな

 

 いはず。そういう意味では、朱里にそれを知られてまずいっていうのは

 

 一緒って事よね?」

 

「なるほど…ならば風達は独自で動くという事か。ならばまだ勝機は残さ

 

 れているな」

 

 冥琳はそう言ってほくそ笑んでいた。

 

 

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 そして次の日。

 

「ありがとう一刀、いろいろ見せてもらって。こっちでも参考にさせても

 

 らうわ。冥琳、帰ったら早速お風呂作りから始めるわよ」

 

「ふふ、蓮華様はすっかりお風呂がお気に入りですね」

 

「ええ、やっぱり何時も体を綺麗にはしておきたいじゃない。それは冥琳

 

 も同じだと思ってたけど?」

 

 蓮華と冥琳はそう言って笑いあっていた。

 

 とりあえずは最終日まで何事も無く、和やかな雰囲気で進んだのは重畳

 

 なのだけど…どうも霞と風の様子がおかしい。

 

 霞は雪蓮達を睨みつけているし、風も表面上は何時も通りに見えるけど、

 

 その眼は本気モードの時の鋭さになっている。

 

「なあ、朱里。何かあったのか?」

 

「私も気になって聞いてはみたのですけど『何も無い』の一点張りで…」

 

 朱里にも分からないのか…後で直接聞いてみるしか無いか。

 

 ・・・・・・・

 

「何も無いですよー」

 

 俺は霞と風を呼んで問いただしてみたものの、予想通りの答えしか返っ

 

 てこなかった。しかも霞は何もしゃべらず、風はこのように終始はぐら

 

 かすような返事であった。

 

「何も無いのなら何故あんな態度で接するんだ?仮にも客に対して取って

 

 いい態度じゃない事は二人も分かっているはずだろう?」

 

「客やなくて敵やからや!」

 

 俺の問いに霞がそう苛立ち紛れに答える。

 

「敵…?どういう事だ。大陸が陛下の下で統一された以上、敵は存在しな

 

 い。しかも孫呉はずっと一緒に戦って来た仲、敵などという言葉はふさ

 

 わしくない!」

 

 

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「お兄さんにはおそらく一生分からないですよ」

 

「分からない?そりゃ何も言ってくれなければ分からないな。俺は朱里み

 

 たいに顔色だけで全て判断出来ないからな」

 

 風の呟きに俺はムッとした表情でそう言い返す。

 

「そうやな、一刀はいっつも朱里ばかりやしな…ああ、そういえば陛下も

 

 含まれるんやったな」

 

「霞!…確かに陛下の事については俺の責任だ。それについてどうこうと

 

 言い訳するつもりも無いが…だけどそれとこれとは別だ!今は何故雪蓮

 

 達を敵呼ばわりするのかを聞いているんだ!!」

 

 それに霞が皮肉を込めたような言葉で返して来たので、つい俺も声を荒

 

 げてしまう。

 

 それに対し霞は仏頂面のままそっぽを向いてしまい、それ以上何も言わ

 

 ない。

 

「お兄さん、お兄さんが鈍いのは風達もよく分かっていますので状況を察

 

 してくれとは言いません。でも風達の邪魔はしないでください」

 

「雪蓮達に危害を加えなければな」

 

「風達にそのつもりはありませんよ。でも向こうの出方次第ですね」

 

 風はそう言うとそれ以上何も言わず、下がっていった。

 

「朱里、どう思う?今の風達の態度」

 

 俺が声をかけると後ろから朱里が出てくる。自分自身でも鈍い事は分か

 

 っているので、朱里に隠れて聞いてもらっていたのだ。

 

「風さん達は私にも知らせずにやろうと…私が知っては自分達にも悪影響

 

 が出ると判断したのでしょうけど」

 

「?…どういう事だ?」

 

「ご主人様は知らなくて良い事です。でもこのままではいけませんね…」

 

 朱里は少し考えてから番兵に声をかける。

 

「至急、丁奉さんを呼んで来てください」

 

「丁奉さん?どうするんだ、一体?」

 

「それは後のお楽しみです」

 

 朱里はそう言ってにっこりと微笑んでいた。

 

 

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 そしてその夜。迎賓館にて無事視察を終えた蓮華達を労う為の宴を催し

 

 ていた。

 

 時々、雪蓮と霞が酔った勢いで喧嘩しようとするのを、丁奉さんと梓美

 

 さんが止めていた以外は特にこれといって何事も無く、宴は終わりを迎

 

 えようとしていた。

 

「それじゃ蓮華達は明日の昼にはこっちを出るわけだし、今日の所はこの

 

 辺でお開きにしようか」

 

 俺がそう皆に声をかけると、皆は部屋へ戻っていった。

 

「そういえば、迎賓館の空き部屋の扉が一個壊れていたな…」

 

 俺はその部屋へと向かっていった。

 

 ・・・・・・・

 

「雪蓮、北郷はあの部屋へ向かっていったぞ」

 

「よし、後はそこに二人を放り込むだけね」

 

 雪蓮と冥琳は今度こそはと拳を握り締めていた。

 

 実はその部屋の扉は壊れかかっていたのを雪蓮達がさらに壊して、わざ

 

 と一刀の眼に止まるように仕向けたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「ね、姉様…やめましょうよ、こんな事は…」

 

「何言ってるの、蓮華は一刀の子が欲しくないの?」

 

「そ、それは…その」

 

「欲しいのなら此処しか狙い目は無いわよ」

 

 雪蓮は蓮華にそう言いながら一刀がいるであろう部屋へと向かっていた。

 

 そしてその部屋の前に来たその時、

 

「雪蓮様、中から声が聞こえます」

 

 思春のその言葉に雪蓮と蓮華は壁に耳をつけて中の声を聞いてみる。

 

「これは…一刀と…丁奉の声のようだけど…?」

 

 

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『ああっ、ダメです!ご主人様、そこは…』

 

『いいじゃねぇか、それにお前の尻の穴はそんなに嫌がっているようには

 

 感じないけどなぁ〜』

 

『そんな…それはご主人様が何時も挿れられるからで…』

 

『そうだろう、既にお前の尻は俺の手で開発済ってわけだ。ここなら誰も

 

 見てないから、気兼ねなくヤッちまえるしな』

 

『しかし、お客様に見られたら…』

 

『大丈夫、今日は宴だ、みんな疲れて寝ちまってる。さあ、四の五の言っ

 

 てないでこっちに尻を向けな。何時お前とヤれるかそればかりを楽しみ

 

 にしてたんだ。自分の部屋でシようとするとあいつがうるさいしな』

 

『ああっ…ご主人様…』

 

 それからはずっと丁奉のくぐもった喘ぎ声のようなものだけが聞こえて

 

 きていた。

 

 雪蓮達は慌ててその場を立ち去ったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「なっ、何?何なの、今の!?一刀と丁奉ってそういう関係だったわけ?」

 

「私にもそれは分かりかねます…」

 

 部屋に戻った蓮華はパニック状態のままで思春にそう聞くが、思春も顔

 

 を真っ赤にしたままそれ以上何も言わなかった。

 

「まさか…朱里と陛下に妊娠させておいて実は丁奉がって事なのかしら?」

 

 さすがの雪蓮も混乱したまま、結局それ以上何も出来ずに部屋に戻った

 

 のであった。雪蓮から話を聞いた冥琳も判断を下す事が出来なかったの

 

 は言うまでもない。

 

 

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「ご主人様、丁奉さん、ありがとうございました」

 

 雪蓮達が去った後、部屋の中で朱里が一刀と丁奉にそう声をかける。

 

「なあ、朱里?これって…」

 

「やっぱりこれって、かの『八百一』とかいうものなのですか、北郷様?」

 

「ああ、内容からいって間違いないだろうけど…何故今此処でこれを朗読

 

 する必要があったんだ?しかも丁奉さんと二人でなんて…」

 

「いえいえ、此処で丁奉さんと二人で朗読してもらう事に意味があったん

 

 ですよ。今日、こっちの方が場面が合ってましたからね」

 

 朱里は微笑んだままそれ以上何も言わなかった。

 

 言われるままやってはみたものの…結局、朱里の意図は俺達には分から

 

 ずじまいであったのである。

 

「ふふ、これでもう雪蓮さん達はご主人様に近付かないでしょうし、私は

 

 次回作の構想が練れて一石二鳥ですね♪」

 

 朱里のその呟きを俺が聞く事は無かったのであった。

 

 ちなみに、その部屋の雪蓮達がいた場所の反対側には…。

 

「むむむ、これは一大事ですね…霞さん、撤退です」

 

 雪蓮達が来たら一戦交えるつもりで来ていた風と霞がいたのであったが、

 

 雪蓮達の突然の撤退により、引き揚げたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 次の日、蓮華達は建業へと帰っていったのだが…何か俺と丁奉さんを見

 

 る眼がおかしいのは気のせいだったのだろうか?

 

「なあ、一刀。蓮華達の様子がおかしかったみたいやけど、昨日とか何か

 

 したんか?」

 

「いや、何も。宴の後で分かれたきりだったけど?」

 

「そうなんか?まあ、何も無かったらええんやけどな」

 

 霞はそう言いながらも首を捻ったままであった。

 

「むう、結局朱里ちゃんにしてやられたようですね…これは風も本気でか

 

 からなければなりませんね」

 

 風は朱里に挑戦的な眼を向けていたのであった。

 

 

                                           続く?

 

 

 

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 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は女の戦い編の最初という事で、蓮華さんに登場して

 

 もらったのですが…何か最初に思い描いていた話と違った

 

 展開になってしまいました。恐るべし伏龍…。

 

 という事で次回は誰かがまた一刀に近付こうとします。

 

 一刀は今度こそ流されるのか?

 

 はたまた朱里が防ぐのか?

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ四十でお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 どうやら思った以上に完結は伸びそうになってきました。

 

    ちなみにここでの丁奉さんのビジュアルイメージは『〇崎

 

    出雲の事情』に登場する加〇斗君です。一応参考までに…。

 

説明

 お待たせしました!

 朱里だけでなく、命の懐妊も知られた事により

 一刀を慕う他の恋姫達の情念に火がつきました。

 まずは先陣を切って蓮華が姉の支援を受けて

 やってきます。(雪蓮は勝手にやってるだけですが)

 果たして一刀はその想いに応えるのか?

 それとも場の雰囲気に流されるのか?

 それではご覧ください。
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コメント
PON様、ありがとうございます。確かに通常の恋姫では一刀は皆を平等に愛するのでこういう事はあまり起きませんね。オリ主か…次回作の構想に入れておきます。(mokiti1976-2010)
前原 悠様、ありがとうございます。まさしく…orzな展開ですね。(mokiti1976-2010)
naku様、ありがとうございます。大丈夫です、ここの一刀は既に朱里によって調教され済ですから(オイ。(mokiti1976-2010)
summon様、ありがとうございます。久しぶりに策士孔明の知謀全開です。そしておそらく江東ではその噂がもの凄い勢いで広まっているに違いない。(mokiti1976-2010)
ヒトヤの蟲惑魔様、ありがとうございます。うむ、確かに出雲は可愛いですね。女装状態なら私もいける(マテ。(mokiti1976-2010)
きまお様、ありがとうございます。ここでは祭さんはほぼ空気的な存在です、今回も留守番でしたし…。でもそれ以上に空気な孫家の末妹とかいますけどね。(mokiti1976-2010)
何気にめずらしいよな、半分ギャグでも険悪になるのって。恋姫無双に於いて特定の女性しか愛さない場合、こういう落とし穴があるんだよな。オリ主で一刀がいる場合、その辺で色々謀略できそうで面白い。(PON)
・・・orz(前原 悠)
朱里は見事(?)な防衛策を講じましたね。しかし、何というか知らぬ間にそういう関係になったと誤解された一刀さんたちご愁傷様ですw(summon)
外見が主人公の出雲だったら俺が男だったら抱くね!性別なんぞ飾りだね!(親善大使ヒトヤ犬)
牛乳魔人さん>ちっがーう!恋姫的には紫苑・桔梗・祭のジェットストリームフェ○ックだよ!(萌将伝公式HPの祭さんのページ参照w)でも祭さん帰っちゃったしなあ・・・。(きまお)
平野水様、ありがとうございます。いえいえ、そっちには行きませんから…今の所。(mokiti1976-2010)
牛乳魔人様、ありがとうございます。その三人がジェットストリームアタックを仕掛ければ勝ち目は薄いですが…朱里による三人の分断作戦が始まるとかいう噂も。(mokiti1976-2010)
しかし如何に孔明といえど、紫苑・桔梗・水鏡のジェットストリームアタックは防げないのではなかろうか(牛乳魔人)
ataroreo78様、ありがとうございます。大陸の戦乱は治まりましたが、一刀の胤を巡る戦いの始まりです。(mokiti1976-2010)
NEOじゅん様、ありがとうございます。急いては事を仕損じるという事です。そして…本当に女の戦いって怖いです。私も書いていてどうしようとか思った位でして。(mokiti1976-2010)
観珪様、ありがとうございます。正直、一刀と丁奉さんには苦痛と戸惑いしか無かったとさ。朱里はそれも込みでお楽しみだったようです。(mokiti1976-2010)
一丸様、ありがとうございます。そうです、孔明の罠に落ちました。そして、明命はずっとお猫様をモフモフし続けていただけなもので…本人は満足してお帰りになったそうです。(mokiti1976-2010)
まだ戦乱は終わってなかったんや!(ataroreo78)
終始、戦々恐々として読ませてもらいました。やはり女の闘いは恐ろしい……とはいえ、正攻法で行けば霞や風の怒りを買わず、なんとかなった可能性もあったのになー、もったいない。ま、その可能性も1割あるかないかぐらいですけどね(笑)(じゅんwithジュン)
BL本を音読させられるとか、多趣味な人間じゃないと、一種の拷問とかわらないww そんなことをやらせる朱里ちゃんに痺れる憧れる!(神余 雛)
雪蓮、冥琳、蓮華、思春・・・それは、「孔明の罠だ!!」ww・・・・・あれ?せっかく一緒に来たのに、明命の出番がまったくないwwちょっとぐらい「お猫様あああ〜?」という、描写を入れてあげもよかったのでは?ww・・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。(一丸)
殴って退場様、ありがとうございます。多分、雛里と輝里には違う手を使うのは間違いないかと。そして、風達は揺さぶりはかけるでしょうけど…さて?(mokiti1976-2010)
きまお様、ありがとうございます。大丈夫です、そういう方面に目覚める人は此処にはいませんから…多分。次は北郷陣営の誰かの予定です。(mokiti1976-2010)
そっち(八百一)の方では雛里が喰いつく恐れがあるから、その手は雛里には通用しそうにないなww。風らは一刀に泣き落としなどして揺さ振りをかけるか?(殴って退場)
ちょ、これで女装?が趣味な誰かが目覚めたら(何に?)どうするんだ!しゅりりんもなんだか黒い所が久々にwそしてふうたんとしぇあたんあーーんど北郷陣営の面々がどう動くか楽しみだ。(きまお)
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