超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編
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人間不信なサンジュと別れ、俺はネプテューヌ達に招待される形で、ラステイションの街を歩いている。

聞くに最近出会って仲良くなり、是非俺にも紹介したいとのことだ。

さっき、風邪なのかとにかく高熱でぶっ倒れたコンパは、俺が今背負っている。

お姫様だっこも考えたが、流石に町中を歩くことを考えれば恥ずかしいからな。

背中に二つの柔らかい感触に、鼻血が出そうになったが気合で止血した。デペアは興奮している。

 

今更だが、俺とデペアは感覚が一部共有している。

触覚と視覚、そして聴覚だ。

当初は、何だか自分の体が別の物に寄生されているような気がして鬱陶しがっていたが、気づけば慣れていた。

 

「なぁ、アイエフ、お前たちがお世話になっている奴ってどんな奴なんだ?」

 

ネプテューヌにも聞いても頓珍漢な返事が返ってきそうだったので、俺はアイエフに声を掛けた。彼女は振り向いて少しうねる様に声を漏らして、口を開いた。

 

「そうね、紅夜よりちょっと年上かしら……、小さい工場の社長をしているわよ」

「へぇ……やっぱり、依頼関係で知り合ったのか?」

「そうよ。昨日は流石に疲れていたけど、こうやって旅をするなら出費がバカにならないから、一つだけ依頼を受けた時の相手が彼だったのよ」

 

なるほどな。

俺は旅というより出張だけど、回復アイテムとか宿代とかお金は出来るだけ合った方がいい。

そんなこんなでアイエフと話していると、背負っていたコンパがモゾモゾと動き始めた。目が覚めたか?

 

「はふっ……温かいですぅ……」

 

このコート、常に温度が最適化されているから寒い所なら温かく、熱い所なら涼しくなる親切設計なんだよな。どういう仕組か分からないけど

その様子を見ていたアイエフは、小悪魔のように笑みを浮かべた。

 

「愛しい彼の背中の居心地はどうかしら?」

「すごく気持ちいいですですぅ……まるでマシュマロのような柔らかさですぅ……」

 

えっ?そんなに柔らかいのか?

俺はコートの下には一枚黒いシャツぐらいしか着ていない。

 

『それは、そのコートの特殊機能だよ。そのコートを着たままで女性を背負うと、自動的に発動する魔法だよ』

「なにそれ……」

 

初めて、聞いたぞ。

過去の俺はこれをどこで買ったんだ?もしくはどんな想いで作ったんだ?

 

『………元気かな、あの娘は』

「ん?何か言ったかデペア」

『なんでもないよ……』

 

一応、こいつとは一年の付き合いだ。

だから、分かる。いまこいつは昔のことを思い出しているんだろうと、声に儚さと悲しさが感じた。

 

「お目覚めか、お姫様?」

「……?」

 

コンパは目を白黒させ周囲を何度も見渡して、最後に振り向いた俺と目を合わせると顔を真っ赤に染めた。

 

「あぅぅ!?こ、こ、こぅさん!」

「直ぐに起きなかったんでな。運ばせてもらっているぞ」

 

まさか、いきなり高熱を出してその場で倒れるとは思わなかった。

コンパは目をクルクルさせ、忙しく手を振るう。どうしたんだろう?

 

「あ、あ、あ、の、の、の!?」

「まずは、落ち着け」

 

そんな不安定な口調だと、伝えたいことが分からない。

暫く、コンパが落ち着くまで、ニヤニヤするアイエフ(ネプテューヌは先に行った)の後を付いていくと、消えそうな声でコンパは口を開いた。

 

「重くないですか……?」

「全然」

 

俺は即答した。

コンパと体重と俺の使っている黒曜日を天秤に掛ければ、黒曜日の方が重い。そのことをコンパに伝えると安心したようにため息を付いた。

熱は大丈夫かと聞くと、大丈夫とのことなので、俺はコンパを下ろした。周囲の視線がとても、恥ずかしかったからある意味で助かった。

 

「ここよ」

 

アイエフが見上げるそこは、どこにでもありそうな食堂だった。

とりあえず、特徴を上げるとすれば、どことなく親近さを感じ古風な雰囲気を持つ木造の飲食店だ。

あと隣にそこそこの大きさな工場がある。見たところ繋がっているようで、恐らく元から飲食店兼自宅を改築したんだろう。

中からは、ネプテューヌと青年くらいの男性の声が聞こえた。

アイエフが引き戸を開け、コンパも付いていき、俺もお邪魔しますと声を出して入室した。

 

「おっ、噂はすればなんとやらだな」

「こぅちゃんー!こっちこっち!」

 

中は思ったより広かった。

六人が座れるほど大きな木造のテーブルが二つ、四人が乗れるほどの大きな木造のテーブルは四つほどで、奥には七人分のカウンター席もある。

壁には一つ、一つメニューが書かれた板が掛けられている。

俺は、カウンター席に座って手を振っているネプテューヌに近づく、少し前までネプテューヌと楽しく会話していたであろう青年はキッチンから顔を出している。

 

「おまえが、かの有名なハンター、『黒閃』か!」

「あんたは…?」

 

業務用の服装をした俺より年上、大体20歳前半と言ったところの青年は俺に広げた手を指しだしてきた。

 

「隣の工場の社長をしているシアンって言うんだ。よろしくな!」

「あ、ああ……俺は紅夜だ。よろしく」

 

俺も手を伸ばして、手を重ねる。握手だ。

実と言うと、俺……年の近い同性と真正面に話して握手なんてしたことないかもしれない。

 

 

ーーー君も、なんだかんだ友達、少ないよね。

 

 

……出会いが、ないんだよ。

だって、俺と言う存在が生まれたのは一年前で、そのうちの三分の一くらいは他国のスパイではないかとずっと疑われて、ケイブ先輩の元で監視&お手伝いをしていた時間なんだぞ?

そして、二か月くらいはリーンボックスのダンジョンでモンスターを鍛錬目的で狩りまくって、あとはずっと四大陸を回っていたんだぞ?

鋼鉄の様な体のおっさん達(同じ仕事の人)とは知り合いがそれなりいるけど、あっちは俺を化物扱いだしな。

 

 

ーーーそれは、そうだろうね。………人間の肉体と罪遺物の器を比べるなんて悲しすぎる。

 

 

 

後半は凄く小さい声だったので聞こえなかったが、また俺の過去のことなんだろうな……問い詰めても絶対に答えてくれないけど

挨拶の握手を終え、俺はネプテューヌの隣に座った。後に続いてコンパが俺の隣にコンパの隣にアイエフが椅子に腰を下ろした。

 

「ネプテューヌから聞いたぞ。お前の武勇伝を」

「武勇伝…?」

 

シアンはニヤリと口を細めた。

 

「コンパの為にあのサンジュと真正面から言い争ったじゃないか?『機械に人間ほどの発想力があるか?』とか全くその通りだ!ありがとうなんだかスッキリした!」

 

激を飛ばしたと思ったら、感謝された。

それにしても、お前の口調からあのサンジュと知り合いなのか?そんな疑問が浮かんだので、本人に聞いてみると、不愉快そうな顔で語り始めた。

 

「アイツ、俺がいた学校のOBだったんだ。その時も講義で人間に機械ほどの正確さがあるか…?とか当たり前のように言っていたんだ」

 

悔しそうに顔を歪めるシアン。

俺は黙って、苦渋を舐めたような声を最後まで耳を傾ける。

 

「……アイツは、技術者の腕を否定する。だから嫌いだ。それだけじゃないけど……嫌いだ」

 

確かに、サンジュの言うとおり、人間は機械ほど正確ではない。

けど、人間にはそれ以上の才能と可能性がある。

俺からすれば、サンジュはただ失敗を恐れているだけ、そして成功が当たり前だと思っている。それが俺が最もに気に入らないところだ。

俺の目の前いるシアンは、少なくても自分の得た技術や知識に自信があるんだろう。

今のラステイションは、中小企業なんて大企業に仕事を取られ最後には潰される世の中だ。

その中で、苦労をしながら隣の工業で社長しているということは、シアンには人を引き付ける何かがあるんだろう。そして、それは絶対にサンジュが持っていない物だ。

 

「俺もあいつは嫌いだな。ところで聞きたいことがあるんだが」

「なんだ?」

「お前もやっぱり出るのか?総合技術博覧会」

「当たり前だ!」

 

顔が急接近してきた、思わず退く。

総合技術博覧会は、四年に一度、ラステイション内で起こる企業と企業の技術対決で、優勝者には女神から直々にトロフィーが渡されるとか、そんなことを聞いたことがある。

 

「俺はなんとしても、今回の博覧会に優勝して女神さまに今の不平等な惨状を訴えるんだ。……今回が最後のチャンスなんだッ」

「そうか……」

 

焦燥を感じる。

確かに、今のラステイションのほとんどの仕事はアヴニールが支配している。

そんな中で、利益を維持するのはかなりキツイと思っていい。

 

「ねぇねぇ、私たちはシアンのお手伝いしているんだけど、こぅちゃんもやらない?」

 

横からのネプテューヌの声に俺は腕を組む。

個人的には、こんな人柄のいいやつの為に働けるのはとてもやる気が溢れる。

 

「おいおい、流石に黒閃を雇うほど、ウチの工場に余裕はねぇぞ」

「大丈夫!こぅちゃんならボランティア感覚で無償で手伝うよね!?」

「……流石にそれは、無理だな」

 

俺も働いて身だし、報酬を貰わないと困る。

ネプテューヌは頬を膨らませ、コンパは顔を伏せて、アイエフは理解したように頷いている。

シアンは苦笑で、それはそうだと言っている、

俺は、カウンターをトントン叩いた。

 

「まぁ、依頼ひとつで、ここでただ飯なら考えてもいいけど?」

「…………えっ」

 

シアンが声を漏らした。

ネプテューヌ達は目を丸くした。

 

「等価交換だ。これならいいだろう」

 

そして、俺は悪戯っぽく笑った。

 

 

「……そりゃ、高いな」

「だろう?……っで、買うか?」

「勿論、買わせてもらう!」

 

俺は拳を作って、シアンに向けた。

シアンは笑って答えるように俺の拳を軽くぶつけた。

 

「これって何だか若々しいね〜」

「ねぷ子、あんたその発言は親父臭いわよ」

 

隣でネプテューヌとアイエフが口を開く。

コンパは顔を合わせただけで真っ赤になって顔を逸らされた。……俺、悪いことしたか?

 

『ーーー放送の途中ですが、ここで協会からの公共情報をお送りします』

 

耳に入る淡々とした女性の声だ。

思わず、その方向へ向くと壁際に置かれたラジオから発せられていた。

 

『例年により大分発表の遅れていた総合技術博覧会に関してですが、教院関係者の話では今年の開幕は見送られることが明らかになりました』

「……ッオイ!待ってくれよ!」

 

血相を変え、縋るようにシアンは声を上げた。

 

「教院側は参加企業の減少を原因として挙げていますが、民間の実行委員会からは教院主動の大陸行事に対し、国政院による圧力があったのではないか、との意見が強く、今度の方針について十分な審議がなされるのかどうかにも、疑問の……』

「ふざけるなっ!今やらなくていつやるってんだ!四年後まで待っていたら参加する工場なんて本当に、一つもなくなっちまうんだぞ!!!!」

 

シアンはカウンターを力強く叩き、怒りに震えながら、声を上げた。

 

「ちょっ、シアン、落ち着いてよ!」

 

鎮めるようにネプテューヌが声を出すが、シアンは崩れ散る様に腰が下がる。

俺達は直ぐにその場を立ち上がり、シアンの傍に移動した。そこには、

 

「この工場にとっても……もう今年が最後のチャンスかも知れないのに……!」

 

泣きそうな、絞り上げるように嘆くシアンの姿だった。

 

 

「………っ」

 

無駄だと分かっても、俺は淡々とした声を発するラジオを睨みつけた。それしか、俺にできることはなかった。

 

 

 

 

 

 

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