魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第六十九話 とある少女達のカミングアウト
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 小学校最後の夏休みも終わり、ついに2学期が始まった。

 クラスの皆は日焼けしてる奴もいれば肌が白い奴もいる。

 俺は日焼けするのはあまり好きじゃないので肌は白いままだ。

 直博、謙介は日焼けしており、誠悟は俺同様に肌は白い。

 

 「お前等、ちゃんと外に出て身体動かしてたのか?引き籠もってばかりだと健康に悪いぞ?」

 

 「俺は日焼けしたくなかったから日焼け止め塗ってた。ちゃんと外出はしてたぞ」

 

 直博は俺と誠悟の肌が白いから『夏休みの間は外出せず、引き籠もっていた』と思っているらしい。

 

 「俺は家でやる事が多過ぎて外に出るヒマが無かった」

 

 「何をやっていたんだい?」

 

 「宿題と自宅警備員の仕事」

 

 小学生が自宅警備員とか言うなよ。

 

 「自宅警備員か…大変そうだな。なら仕方ないか」

 

 「「『仕方ない』じゃねーよ(『仕方ない』じゃないだろう)」」

 

 誠悟の言い分に直博が頷いて納得しているのに対し、俺と謙介が突っ込む。

 自宅警備員の正確な意味を知らないんだろうな。

 

 「それはそうと今日は席替えだな」

 

 「ああ、そうだな」

 

 「君達と離れ離れになるね」

 

 直博の『席替え』という単語を聞いて誠悟、謙介が返事する。

 クラスにとっては何気に楽しみな行事の一つ。

 このクラスの当たり席は窓側、廊下側、男子限定でテレサ周辺ってところか。

 

 キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン…

 

 あ、予鈴だ。

 友達同士で喋っているクラスメイトも自分の席に戻り、先生が来るのを待つ。

 そして本鈴が鳴る少し前に担任の先生が教室に入ってくる。

 

 「皆さん、おはようございます」

 

 「「「「「「「「「「おはようございまーす」」」」」」」」」」

 

 「これから体育館で始業式がありますので廊下に出席番号順で並んで下さーい」

 

 「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」

 

 元気な声で返事をするクラスメイトに続き、俺も廊下に出て列に並ぶ。

 それが終わったらいつも通りに教室に戻ってきてSHR。本格的に授業が始まるのは明日からだから今日は帰ってゆっくり出来る。

 

 「(昨日は結構仕事で忙しかったからな)」

 

 実はまだ昨日の疲れが若干残っていたりする。

 レポートを纏めるのに人手が足りないという事で自然保護隊へ手伝いに行ってた訳だ。

 残業こそしてはいないものの調査班に人を割いている分、ベースキャンプに残っている3人の局員と俺の合計4人で対応しなければならなかった。

 それだけならまだしも肉食で獰猛な現地生物が現れ、『高ランク魔導師の戦力を現地に寄越してくれ』って言われ、俺が現地に赴いて退治した。

 意外に魔力を使ったのもあって疲労がちょっと半端無かった。

 家に着いて夕食と風呂を済ませた後はすぐに寝たんだけど…。

 

 「ふあぁ…」

 

 思わず欠伸が出てしまう。

 

 「何だ長谷川?眠そうだな?」

 

 俺の前に並んでいる生徒が振り返って尋ねてくる。

 

 「ああ…昨日あまり寝れなかったんだ」

 

 とりあえずそう言っておく。

 

 「夜更かしか?」

 

 「いや、単に寝付けなかっただけ」

 

 歩きながらも前の生徒との会話を続けていく。

 その後、体育館に着くまで2〜3回程欠伸をしてしまい、始業式の間俺は睡魔と必死に戦うのだった………。

 

 

 

 「それでは今日はこれで終わります」

 

 「起立……礼…」

 

 「「「「「「「「「「さようなら」」」」」」」」」」

 

 SHRと帰りの挨拶が終わって生徒達の声で賑わい始める教室内。

 俺はとっとと席を立ち、ランドセルを背負って帰る準備をする。

 

 「もう帰るの?」

 

 声を掛けてきたのはテレサ。

 今回の席替えで俺の前の席になった彼女である。

 振り返って尋ねてきたテレサに俺も答える。

 

 「ん、正直眠いから帰って寝たいかな」

 

 「そう…気を付けてね」

 

 「ありがと」

 

 軽く挨拶を済ませ、俺は教室を出る。

 帰宅中…

 

 〜〜♪〜〜♪

 

 俺の携帯に着信が鳴る。

 画面に表示されてるのは夏休みの縁日で知り合った『遠山キンジ』その人である。

 

 ピッ

 

 「もしもし?」

 

 『もしもし…勇紀か……助けてくれ……』

 

 何やら諦めてる様な低い声色で電話越しにキンジさんの声が。更に…

 

 『この泥棒猫!!いい加減キンちゃんの前から消えろーー!!』

 

 ガキインッ!…キインッ!

 

 『五月蠅いわね!!あ、あたしが何処にいようが勝手でしょうが!!あんたに言われる筋合いはないわ!!』

 

 ガアンッ!…ガアンッ!

 

 ……電話越しに聞こえるキンジさん以外の2人分の声とBGM代わりに聞こえてくる物騒な音。

 どうやら向こうでは((幼馴染み|白雪))と((ツンデレ|アリア))がガチバトルをやらかしている様だ。

 

 「…とりあえずソコを離れて落ち着ける場所に行く事をお勧めします」

 

 『そんな場所が俺の周りにあるなら電話しないさ…ハア〜…』

 

 「じゃあ、街に出てみては?一般人の人目がある場所なら流石にバトるような状況にはならないと思うんですが…」

 

 少なくとも武器を使ったバトルには…。

 

 『…そうだな、そうするよ。悪いな突然電話して』

 

 「いえいえ、それでは」

 

 電話を切って一息吐く。

 実はこの人と知り合ってからはしょっちゅう今回の様に電話で助けを求められる。

 『ストレスの種がすぐ近くに、しかも大量に存在しているから』との事。

 武偵っていうのは大変なんだなぁ…。

 あ、あれから調べてみたんだけどこの世界に『武偵』という職業は存在してました。

 …ついでに『イ・ウー』も。

 もっとも警防に所属している父さんを始め、人外とも言える隊長クラスの人達がほぼ叩き潰し、現在は完全壊滅とまではいかないものの暗躍するだけでも一苦労する様な被害を受けているとの事。これは父さんに聞いて確認した事だ。

 『イ・ウー』トップの教授も逮捕され、現在は刑務所の一室の片隅で体育座りをしながらブルブル震え、何かに怯えているらしい。

 ま、警防に目をつけられ、父さん達を相手にした『イ・ウー』乙としか言い様がないな。

 …あれ?これだと緋弾の継承出来なくね?それとももう継承イベント終了してるんだろうか?

 …まあいいや。俺としては『リリカルなのは』だけで一杯一杯だ。他作品の原作にまでは流石に介入したくないぞ。

 

 「そもそも『リリカルなのは』側からすれば『緋弾のアリア』なんて質量兵器満載の死亡フラグ大量発生作品じゃねーか」

 

 非殺傷設定なんてありゃしない世界だ。絶対に関わりたくない。

 俺は歩きながら『緋弾の世界には足を踏み入れない』と心に誓う。

 そっちに関してはキンジさんに丸投げだ。

 悪く思うなキンジさん………。

 

 

 

 〜〜椿姫視点〜〜

 

 「という事でカミングアウト大会を始めたいと思います」

 

 私は始業式が終わるとシュテル達を連れて翠屋に来ていた。

 勿論シュテル達だけじゃない。聖祥に通っているなのは達も呼び寄せてある。

 

 「いやいや!何が『という事で』なの!?いきなり過ぎて意味が分からないんだけど?」

 

 「愚問ねアリシア。この夏休み、私は皆にあまり会わなかったからどう過ごしていたのかカミングアウトしてもらおうと思って」

 

 「それ、貴女に言うする義務あります?」

 

 「勿論!この中の誰かが『誰かさん』との距離を縮める事が出来たのか凄く気になるもの♪」

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 私のその一言で皆がそれぞれ顔を見合わせる。

 私の勘としては何かあったと思うのよね。

 そんな中、ディアーチェが優越感を漂わせる雰囲気を出して喋り出す。

 

 「ふっ、椿姫。貴様に言う必要は無いが我は気分が良いから特別に教えてやろう」

 

 「何々?」

 

 「我はこの夏休みにユウキとき、キスを済ませたのだ////」

 

 「何ですって!?」

 

 「言っとくが嘘でも夢でもないぞ。ここにいる者全員が証人だからな//」

 

 てっきりデートした程度だと思ってたのに。

 キスなんて凄い火種じゃない!!これは大きな修羅場を生み出せるいい材料だわ♪

 

 「じゃあ、ディアーチェが皆を抜いて先頭に立ったという訳ね?」

 

 「まあ、そういう事だな////」

 

 皆を見渡し、ドヤ顔するディアーチェ。

 反対に皆の表情は険しいものに…あら?

 

 「なのはとアリサは何だか余裕そうね?」

 

 サラリとディアーチェの言葉を受け流しているなのはとアリサ。

 これは強がっているのかそれとも…。

 

 「残念だけどディアーチェは終わったも同然なの♪今はなのはの時代なんだよ♪」

 

 「何だと?」

 

 ドヤ顔から一転、顔を顰めたディアーチェ。

 何?この状況を覆す何かがあるというの?

 

 「夏休みに勇紀君が翠屋のお手伝いをしてくれた時になのはも勇紀君とき、キスしたもん////」

 

 「「「「「「「「えええええええぇぇぇぇぇぇっっっっっっっ!!!!?」」」」」」」」

 

 ディアーチェだけじゃなくてなのはも!?原作主人公も勇紀とキスしちゃったの!!?

 

 「な、なのは!!どういう事!!?」

 

 「今言った通りだよフェイトちゃん。勇来君とキスしたのはディアーチェだけじゃないんだ♪////」

 

 「は、ははは……。なのはちゃんも面白い冗談言うんやなぁ」

 

 乾いた笑いで返すはやて。

 けどなのはは静かに携帯を取り出し、机の上に置く。

 携帯の待ち受け画面には

 

 「「「「「「「「なあああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!?」」」」」」」」

 

 勇紀となのはがキスをしている確かな証拠が映っていた。

 

 「あの時は5分ぐらいキスしてたかなぁ?…幸せな時間だったの////」

 

 『えへへ』と笑った後、うっとりとした顔をするなのは。当時の余韻を思い出しているみたいね。

 それからクリスマスの時、ほっぺにキスした事もカミングアウト。

 流石は未来の『エース・オブ・エース』ね。常に誰よりも一歩二歩進もうと…いえ、実際にこのメンバーの中では一歩二歩先に進んでいるわ。

 皆はなのはを親の仇でも見る様な鋭い目で睨んでるけど。

 そんな中…

 

 「わ、私だって…//」

 

 すずかが絞り出す様に声をやや震わせながら上げる。

 『二度ある事は三度ある』っていうけどまさか…

 

 「わ、私だって勇紀君とキスしたよ!!////」

 

 キターーーーーーーーーーーーー!!!!!

 3人目のキス告白キターーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 「すずかちゃんもかいな!?」

 

 「私は夏休みよりも前に勇紀君とキスしてるんだから!この中で勇紀君と最初にキスしたのは私だよ!////」

 

 「「「「「「「「何だってええええぇぇぇぇぇっっっっっっっ!!!!?」」」」」」」」

 

 しかもこのメンバーの中で最初に勇紀とキスしてたなんて!!

 なのはも叫んだ時に表情が変わったわね。どうやら『最初』にキスした事を羨ましがってる様な感じ。

 来てる!来てるわ!修羅場がすぐそこまで来てるのを感じるわ!!

 けどここで遂に今まで沈黙を保ち、静観と傍聴に徹していたアリサが動き出した。

 

 「ふ、ふん!私だって勇紀とキスぐらいしたんだからね。しかも((コレ|・・))だってあるし…////」

 

 アリサが手で掬い取るのは首にかけてある装飾品。

 

 「それって指輪だよね?」

 

 「そうよレヴィ」

 

 「何で指輪をリボンに通して首から掛けてるのアリサ?」

 

 「指輪のサイズが合わないから仕方ないのよ」

 

 「そう言えばアリサちゃんは朝からその指輪見てニヤけてたの」

 

 レヴィの質問に答え、なのはの指摘を聞くと少し赤かった頬の赤みが更に増す。

 指輪を見て嬉しそうなアリサ。これって…

 

 「もしかしてその指輪、勇紀から貰ったとか?」

 

 「「「「「「「「「っっ!!!!?」」」」」」」」」

 

 私はアリサにストレートに尋ねてみる。

 

 「な、中々鋭いじゃない椿姫。その通りよ////」

 

 プレゼントーーーーーーー!!!指輪のプレゼントーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

 「そ、それこそ冗談でしょうアリサ。ユウキからプレゼントを貰うのはまだしもそれが指輪というのは…」

 

 「事実よシュテル。この指輪は勇紀から貰ったのよ//////」

 

 声が震えてるわよシュテル。普段冷静な貴女がここまで動揺するなんて余程精神的にキテるみたいね。

 けどもうひと押し…火に油を注いでおきましょう。

 

 「つまりアリサは勇紀にプロポーズされたって事かしら?♪」

 

 私は爆弾発言を落としておく。

 

 「ぷ、ぷぷぷプロポーズだなんてそんな………そりゃぁ、勇紀にされたいとは思うし………してくれたら私も…////////」

 

 両手の人差し指同士をツンツンと突き合わせ、頬を真っ赤にしながらアリサは喋る。

 

 「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」

 

 いつしか瞳から光は消え、ただ闇を背負っているだけのなのは達。

 これでお膳立ては充分ね♪

 後は当人を呼んで、これから起きる修羅場をゆっくりと眺めて堪能しましょうか♪

 

 

 

 〜〜椿姫視点終了〜〜

 

 昼食を食べ終え、『さあ寝るか』と思っていた矢先に椿姫からメールが届いた。

 アイツに会うと大抵ロクでもない目に遭うのは分かっているんだが

 

 『翠屋でシュテル達が大変なの』

 

 こんな文面のメール送られたら気になって仕方が無い。

 また銀髪トリオの誰かにでも遭遇して面倒事になっているのか?

 …それは無いな。あそこには警報システムが搭載されてるからアイツ等が翠屋に近付けばシステムが作動して皆に知らせる筈。

 なら性質の悪い客にでも絡まれてるのか?

 …少しは有り得そうだ。けどそれぐらいで呼ぶとも思えないんだよなぁ。

 士郎さんは常に翠屋にいるだろうし、恭也さんとか美由希もシフトに入ってたら万全に近い態勢だと思うし。

 ………うーん。

 首を捻ってみるが特に大変そうな理由が浮かばないなぁ。

 直接確かめるしかないか。

 やがてお馴染みの喫茶店を視界に捉え始め、中に入った瞬間理解した。

 

 「(………確かに大変な事になってるな)」

 

 いつもの席に座ってる面々(アリサと椿姫除く)からはドス黒い瘴気が噴出し、周囲の空間を歪ませている様な錯覚さえ覚える。

 店の中に他の客はいない。元々来ていなかったのかあそこにいる連中を見て足早に去って行ったのか…。

 

 「……帰るか」

 

 あの暗黒世界に足を進める程俺は無謀ではない。

 チート能力を貰った転生者とて、強靭・無敵・最強ではないのだ。

 あそこに行くには死を覚悟しなければならない。生憎俺はまだ死にたくないんでね。

 踵を返して店を出ようとした所

 

 ガシッ

 

 「少し…聞きたい事があるのですがいいですか?」

 

 「………………はい」

 

 シュテルに捕獲され、俺は逃げるのを諦めた。

 そのまま連行され、席に座らされる俺を見つめる面々。

 

 「ユウキ、今から聞く質問に『はい』か『Yes』の二択で正直に答えて下さい」

 

 「もうそれ既に二択じゃないよね!!?」

 

 俺の突込みを無視してシュテルは質問をしてくる。

 

 「ユウキ、ユウキはなのはとキスしたんですよね?」

 

 「き、キス…ですか?」

 

 思わずなのはの方に視線を向けるとなのはは瞳に光を取り戻し、頬を染めていた。

 

 「ど・う・な・ん・で・す・か?」

 

 「はい!!しました!!ていうかされました!!」

 

 シュテルが力強く俺の肩を掴む。

 

 「何故なのはに…見た目なら私だって同じなのに何故なのはに…」(ブツブツ)

 

 俯き何か小声で呟いてるけど

 

 「じゃあ、次の質問だよ」

 

 今度はフェイトから聞かれる。

 

 「すずかともキスしたっていうのは本当なのかな?」

 

 「はい?」

 

 すずかと?

 

 「それは『No』だな」

 

 「でもすずかは『キスした』って言ってたよ?それも夏休みに入る前に」

 

 「すずかさん!?俺の記憶に無い事なんですけど!!?」

 

 急いですずかの方を見るけど当の本人はなのは同様に頬を染めている。

 何でそんな表情浮かべてんの!?

 

 「可笑しいね?二人の意見が分かれてる」

 

 「どっちかが嘘を吐いてるって事ですね」

 

 アリシア、ユーリ。何故視線は俺に向けたままそんな事言うんだ?

 

 「勇紀君、本当の事言おうや?」

 

 「嘘吐いてるの俺だと決めつけるのは早計じゃないですかねえ、はやてさん!!?」

 

 「だがこういう場合、誤魔化したり嘘を吐くのは男だと相場が決まっておるのだぞ?」

 

 「ディアーチェ、そんな常識は捨ててしまえ!!」

 

 お前は家族の事を信用しないのか?

 というより俺の味方はいないのか?

 そう思っていた矢先に

 

 「ユウ君は嘘吐いていないよ」

 

 俺のデバイス、ダイダロスが弁護してくれる。

 その言葉に俺を含め、皆の視線がダイダロスに集まる。

 流石俺の頼りになる相棒。俺の味方は君だけだよ。

 

 「て事は嘘吐いてるのはすずかって事?」

 

 「それも違うよ。すずかちゃんも嘘は言ってないから」

 

 アリサの言葉をやんわりと否定するダイダロス。

 

 「「「「「「「「「「???」」」」」」」」」」

 

 すずか以外の面々(俺、椿姫含む)が一斉に首を傾げた。

 俺の記憶には無いのにキスはしてる?どういうこっちゃ?

 ダイダロスの言葉は矛盾しているとしか思えない。

 まさか夜の一族の能力で俺の記憶が失われているとか?

 …流石にそんな事は無いと思うが。

 

 「すずかちゃんがキスした時ユウ君は寝ていたからね。ユウ君に憶えが無いのも当然なんだよ」

 

 あ、なーるほど。寝てる間にキスされてたらその矛盾は解決されるな。

 そうかー。すずかも俺にキスしてたのかー。

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 ナンデスト?

 

 「ちょっと待って!すずかが寝てるユウにキスしたって事はすずかはユウと一緒の布団に潜り込んで寝てたっていう事なの!!?」

 

 「「「「「「「「っ!!!?」」」」」」」」

 

 レヴィが気付いた様に叫び、その言葉に過剰反応する皆さん。

 そしてバッと振り返りすずかを見るが

 

 「……………………////////」(ドヤァ)

 

 物凄いドヤ顔を浮かべていた。

 すずかのドヤ顔初めて見た気がする。

 

 「夜這い!!?すずかは勇紀に夜這いを仕掛けたのね!!!?♪♪♪」

 

 『ガタッ!』と音を立て、椅子から立ち上がって机に両手をついて身を乗り出す椿姫は目を爛々と輝かせ、とんでもない事を言い出した。

 

 「そ、そんな事してないよ椿姫ちゃん!!!//////」

 

 顔を真っ赤にして反論するすずか。

 そんなすずかを見て皆は『ギリリ』と奥歯を噛み締める。

 さっきまでまともだったアリサも周りに感化され黒くなり始めてる。

 女の子がそんな形相するもんじゃありませんよ。

 

 「そ、その追及は後でするとしてやな…」

 

 はやてが再び顔を向ける。

 

 「勇紀君がアリサちゃんに指輪を贈ったっちゅうんはホンマなんか?」

 

 指輪…夏休みの縁日で買ったヤツの事だよな?

 

 「『Yes』だけ…ど……」

 

 「ソウナンヤ。ホンマニオクッテタンヤネ…」

 

 そのカタコトで喋るの止めようマジで。

 もう震えが止まらないんだよさっきから。

 

 「とりあえず…外に行きましょうか」

 

 「…………はい」

 

 腕を組まれ、シュテルに引っ張られる俺の後を椿姫、アリサを除いた皆がついてくる。

 

 「頑張ってね〜♪」

 

 呑気に応援しやがる椿姫を一睨みして俺達は翠屋を出る。

 やっぱアイツの呼び出しはロクな事にならん。

 で、翠屋を出た瞬間…

 

 ダッ!!

 

 シュテルの腕組みを強引に解き、俺は逃走する。

 

 「逃げたぞ!!追えー!!」

 

 「「「「「「「「ユウキー!!!(勇紀君ー!!!)(勇紀ー!!!)」」」」」」」」

 

 『振り返るな!!振り返るヒマがあるなら前だけを見てひたすら逃げろ!!』

 

 俺の本能がそう叫んでいる様な気がするのでおれはその言葉に従いひたすら逃げる。

 後ろからは鬼神と化した連中が迫ってくるのを背中越しに感じながら。

 俺は携帯を取り出し、電話を掛ける。

 

 プルルルル…プルルルル…ガチャ

 

 「もしもしキンジさん!!?助けてくれませんか!!?」

 

 『お掛けになった電話は、現在電波の届かない所におられるか、電源が入って…』

 

 繋がらねえええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっ!!!!!!!!!!

 

 こうなりゃ次は…

 

 プルルルル…プルルルル…ガチャ

 

 『もしもし山田です』

 

 「タエさんですか!!?俺です!!俺俺!!」

 

 『…オレオレ詐欺なら間に合ってます』

 

 「冗談言わないでタエさん!!!俺今スッゲーピンチなんです!!!」

 

 『やけに焦ってるみたいだけど、どうしたの?』

 

 「今、鬼神と化した連中に追い掛けられてるんです!!『アイギス』に護衛の依頼を要請します!!助けて下さいお願いします!!」

 

 『うーん…無理だと思うよ』

 

 「何で!!?」

 

 『私は既に任務中だし、現場で動けるメンバーも他の要人の護衛についてるみたいだから人手が無いのよ』

 

 マジかよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!

 

 『だから申し訳ないんだけど…あ、そろそろ用事があるから切るね。勇紀君の健闘を祈ってるよ』

 

 電話を切られ、他にも掛けてみるが誰一人として『無理』との事。

 その間も後ろから追ってくる連中とは付かず離れずの距離を保っている。

 

 「ええい!!埒がアカン!!シュテル!!我と先行してユウキの足を止めるぞ!!」

 

 「分かりました!!」

 

 先行!!?魔法で身体強化でもするのか!!?なら((唯我独尊|オンリーワンフラワー))使って魔法の無力化を…

 

 「「『剃』!!!」」

 

 背後にいたシュテルとディアーチェの気配が凄い速度で俺を追い越し、俺の前方に突如現れる。

 

 って『剃』ううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!?

 

 「何でお前等が『剃』使えんだよおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!!!!!!?」

 

 「「リョウタに習ったからですよ!!(習ったからだ!!)」」

 

 亮太ああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ!!!!!!!何勝手にシュテルとディアーチェ魔改造してんだよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!!!!!!!

 

 前方に立ち塞がった2人をそれでも躱して逃げまくる。

 俺はひたすら街中を縦横無尽に駆け回ったのだった………。

 

 

 

 「…という訳でしてすみませんが御厄介になれませんか?」

 

 「俺は構わないぜ?ギンガ、スバル。お前等はどうだ?」

 

 「私もいいですよ」

 

 「おにいちゃんお泊りしていくの?」

 

 「スバルが良いならな」

 

 「わーい!!おにいちゃんがお泊りー♪」

 

 ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶ姿のスバルは見ていて微笑ましいです。

 あれから俺は転移魔法を使ってミッドに逃げてきました。

 転移先はかつての配属先だった陸士108部隊。

 で、ゲンさんにお願いして今日からナカジマ家に御厄介になる事にした(メガーヌさんには連絡済み)。宝物庫には着替えがちゃんとあるからな。

 夕食とお風呂を頂き、ベッドに横になるとすぐに睡魔が一気に襲ってきて俺は意識をシャットダウンした。

 だからこそ部屋に誰か入って来た事には気付く事が無かった………。

 

 

 

 〜〜スバル視点〜〜

 

 今日はおにいちゃんがお泊りしにお家に来てくれた。

 凄く嬉しい♪

 お父さんの働いてる職場から別のところに行っちゃったって聞いたからもう二度とお家には来ないと思ってたけど時々は遊びに来てくれるし美味しいご飯も作ってくれる。

 初めて会った時には面と向かってお話する事が出来なかったけど今はそんな事も無いし、むしろおにいちゃんが大好きだ。

 でもいつも遊びに来た時は遅くなる前に自分のお家に帰るからおにいちゃんとお別れする際は少し寂しかったりする。

 今日お泊りにきた理由は『自分の世界にいたら『鬼神』に追い掛けられるから』らしい。

 『鬼神って何?』って聞いたので答えてくれた。

 何でも『理不尽な事で怒って命を奪おうとする犯罪者よりも強くて怖い存在』だって言ってた。

 うう…『そんなのがこの世界にいるんだ』って思ってその姿を想像しちゃったら怖くなってきたのでこうしておにいちゃんの側で寝ようって思った。

 

 ゴソゴソ

 

 「えへへ…////」

 

 おにいちゃん、温かいなぁ。

 それにおにいちゃんの側に来たらさっきまで怖かったのがどっかに飛んでいっちゃった。

 おにいちゃん、私のお家でずっと一緒に暮らせたらいいのに。

 

 「ふあぁ…」

 

 私はおにいちゃんの腕を枕代わりにしてゆっくりと目を瞑る。

 今日は良い夢が見られそうだなぁ………。

 

 

 

 〜〜スバル視点終了〜〜

 

 〜〜ギンガ視点〜〜

 

 スバルが『おにいちゃんと一緒に寝たい』っていうから私もこうして勇紀さんが寝ている客室にこっそりお邪魔しに来た訳だけど。

 

 「(爆睡してる…余程疲れてたんだなぁ)」

 

 試しに軽く揺すってみたけど全く起きる気配が無い。

 スバルも勇紀さんが寝ているベッドに忍び込むとすぐに寝息を立てて寝ちゃったし。

 ホント、スバルったら初めて会った時からは想像出来ないぐらいに今は勇紀さんに心を開いて懐いちゃってるわね。

 勿論、私は始めから勇紀さんとは緊張したりする事無くお喋り出来たけど。

 

 「(スバルだけじゃなく私にとってもお兄さんみたいな人だしなぁ)」

 

 勇紀さんには家事を習ったり、私がやってるストライクアーツの基礎を見て貰ったりしている。

 勇紀さん、ストライクアーツに関しては『何も知らない』って前に言ってたけど

 

 『俺には((悪魔図書館|あくまとしょかん))っていうあらゆる事を調べられるレアスキルがあるからね。それを使えばストライクアーツの知識もすぐに得る事が出来るぞ』

 

 って言ってた。

 勇紀さんって管理局では『複数の((希少技能保有者|レアスキルホルダー))』って言う事で結構有名みたい。

 やっぱり凄い人だなぁ。

 

 「(そんな凄い人と知り合いだっていうのが何だか嬉しいな)」

 

 私はスバルと反対側に潜り込んで布団を被る。

 すると何だか心地良い感覚に包まれるみたいな感じがして

 

 「(勇紀さんの側に居ると何だか安心出来るなぁ)」

 

 そんな事を思い、目を閉じて睡魔に身を委ねていった………。

 

 

 

 〜〜ギンガ視点終了〜〜

 

 今回、流石に理不尽な怒りを向けられるのには我慢ならなくなってきたので俺はしばらくナカジマ家に居候させてもらい(この間、毎日スバルとギンガとは一緒の布団で寝ていた)、ミッドから学校に通っていた。

 しかも教室、街中、翠屋等々場所を問わずにシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、なのは、フェイト、はやて、アリシア、すずかの9人には徹底的にガン無視した。まるでソコに存在していないかの様に。

 アリサはあの時、唯一追い掛けて来なかったからいつも通りの対応だけどな。

 最初はガン無視してる俺に対し、ブーたれていたが段々語気も弱くなり2週間程経ってから

 

 『ボクの事、忘れて下さい』

 

 と、とある名作の『うぐぅ少女』が言った名ゼリフをアリサ以外の皆にメールで送信してやった。

 すると皆ガチ泣きして俺に許しを請うてきたね。

 意外に効果あったのは俺自身驚いているが。

 今後のO☆HA☆NA☆SHI対策にはこの手でいこうと思う。

 けど今度は『ルーテシアが俺がいない事に寂しさを感じ始めた』とメガーヌさんから連絡が入ったので今回はこれで皆の事を許してやる事にし、俺のプチ家出は終了を告げたのだった。

 あ、それから今回の騒動にやっぱり噛んでいた椿姫は燃やして黙らせた。

 俺、椿姫が相手なら顔面をボコボコにしても罪悪感を感じない気がするんだ………。

 

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 〜〜あとがき〜〜

 

 勇紀が『理不尽なO☆HA☆NA☆SHI』に対抗する対策を身に付けました。

 勇紀にガン無視されるのは『効果は抜群だ』っていうぐらいシュテル達に効きます。

 それと今回『剃』を使ったのはシュテルとディアーチェだけですがレヴィ、ユーリ、そして椿姫も『剃』は習得済みです(椿姫は((完成|ジ エンド))によって『剃』どころか『六式』全てと『覇気』も習得しています)。

 習得したのは第六十八話で語った首都防衛隊の強化訓練の時です。

 この時亮太はその他の局員にも『六式』や『覇気』を教え、皆揃って現在も練習中という訳です。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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おぉ・・・ついに理不尽O☆HA☆NA☆SHI返し&椿姫制裁を成し遂げましたかwww天晴れである!(海平?)
たしか血反吐吐くほどの努力と時間が必要だったような(ya)
六式ってそんな簡単に習得できる技術では無いような。身体強化とかもしていいっぽいし。(匿名希望)
↓未来から殺しに来てないだけ、まだマシではwwww(黒咲白亜)
ここまで読んできて思ったんですが、勇紀って衛宮士郎以上の人格破綻者なのでは? そうでなければここまでされて好意に気付けないなんて有り得ないような。 まぁ、それは他人を愉悦の餌にする椿姫や、理不尽なO☆HA☆NA☆SHIを実行するヒロインズにもいえることですが。(匿名希望)
・・・椿姫はハーレムに入れずに、勇紀の事を『ご主人様』と呼ぶほどにベタ惚れした暁をハーレムに入れて欲しいですね。そうなった時の周りの反応が楽しみなんで。(俊)
何か椿姫のハーレム入りを望む声多いなぁ(匿名希望)
そういえばディアナはいつ出てくんだ?(匿名希望)
カルピスウォーターさん、椿姫をヒロインに!早よ!(匿名希望)
↓まあまあのんびりと見守りましょうよ (匿名希望)
全部敵さ(匿名希望)
ダメだ…今迄が今迄なせいか、椿姫なんざ最早論外としても、ヒロインズへの対応がどうにも手ぬる過ぎるように感じられて仕方ない…亮太も亮太でちゃんと勇紀にも教えておけよ…全部が勇紀の敵に見えてくる…(匿名希望)
↓勇紀に好意を寄せたら案外ツンデレになりそうですね椿姫は(匿名希望)
↓私もそう思います ['椿姫が誰に好意を寄せるのか'について] /&/ できれば最終的に勇紀さんに好意を! (deltago)
久しぶりに登場した椿姫…相変わらずの奴ですね〜。個人的には椿姫が誰に好意を寄せるのか気になります。(アラル)
↓それは幾ら何でも無理が……そもそもO☆HA☆NA☆SHIされる原因が鈍感の所為であると言う事は事実だし、対策を立てるのは違う気がする……そも他の人間の好意に気付いて自分のは気付かないのも可笑しな話しの様な……(匿名希望)
↓同意。実は気づいているという裏設定の予感(匿名希望)
ぶっちゃけ…これだけの少女逹の気持ちに気付かずに平穏に暮らすのは無理だと思う。唇にキスで友達ってのは無理があるだろ…(匿名希望)
ついにO☆HA☆NA☆SHI対策Getかー久しぶりに椿姫登場回!相変わらずで安心。だけどそろそろ椿姫攻略して欲しい(にゃん死神)
しかし、武偵やイ・ウーも存在してたって事は、この世界は多重クロスした世界なんですね。なんか他にも色々クロスしてそうだな。案外型月の世界観も混じってたりして?(俊)
アリサが一歩リードと見ていいかな?(ohatiyo)
頑張ったよユウキ!よくやった!!・・・・・そしてキンジさんや、助けてやりや・・・・・・・・・・(アサシン)
いっその事、高校は「おまもりひまり」の主人公の天河優人の通う高校に通うために一人暮らししたら如何だろうか?そうすればくえすや各々森姉妹と再会しやすいでしょうに。(俊)
亮太はシュテル達には六式や覇気を教えてるのに勇紀には教えないんだろうか?しかし、相変わらず椿姫は自分の楽しみの為に勇紀で遊んでますよね。そろそろ痛い目に遭うべきだと思うんですけど。そして勇紀は優しいですね、ここまで理不尽な行動されても結果的には許すんですから。(俊)
首都防衛隊が六式や覇気を使えるようになれば、原作とは違いレジアス中将がグレーラインを飛び越える必要が無くなりますね!(kaji)
言っちゃいけない事かも知れないが椿姫氏んでください(slash)
椿姫さん,ひさしぶり! そして、まったく変わっていませんね~ /&/ 椿姫さん,この日楽しい時間を過ごしだだろ[燃やしてボコボコされでも] /&/ この災害のおかげで ギンガさん&スバルさん ユウキさんへの 思い,レベルアップ?(deltago)
椿姫よ…………ユウキの平和を脅かし、無垢な少女たちを火種として利用する………まさに下種の極み!!(匿名希望)
自分的には無視だけでなく、もっと怒るとかしてもいいと思います(匿名希望)
ヒロイン達が色々話していますが、結局の所キスしたり指輪貰ったりした程度では別にリードしたわけではないのが悲しいところ。まず勇紀に異性(恋愛対象)として認識されないと。(chocolate)
見事なO☆HA☆NA☆SHI対策。やっぱりこれが一番効きますよね。もっとも勇紀は何故効果があったのかもよく解っていないだろうけれど。(chocolate)
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