魔導師シャ・ノワール無印偏 第二十四話 家族
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次に目が覚めると見たことのある部屋のベッドで寝ていた。

部屋の装飾はやや可愛らしく。勉強机にカラフルなクッションが置かれてる

まさしくそれは、高町なのはの部屋だった。

 

「やられた・・・」

 

いろんな意味を込めたその言葉を吐き。悩むのもバカらしくなり。

起こしていた体を再びそのベッドへ投げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、よく決心してくれたね。ノワール」

 

「・・・知ってるか?誘拐って言葉」

 

「さあ?どうだったかな?なあ、桃子?」

 

「さあ?どうだったかしら?士郎さん」

 

「ふざけやがって・・・」

 

二度寝というかダメージを回復する為に寝ていた。

そんな俺の様子を身に来た、高町夫婦に気が付いて目を覚まし。

 

俺は二人を睨むが。まるで俺が自分から来たかのように言われたので。

思わず悪態をついたが。やはり、この高町家の人には通用しなかった。

 

「さてと、下で夕食が出来てるよ。嫌なら「行けばいいんだろ?行けばよ」」

 

どうせ拒否したところで説得されるか。食事が運ばれてくるだけだ。

多分だが、「はい、あ〜ん」などを強要されるに決まっている。

そうなったら自分で行くより面倒が増えるに違いない。

 

 

二人は「いい子だ」といい。夫婦そろって頭を撫でようと伸ばしてきた手を叩き落とし。

先に部屋の扉を開けて廊下に向かう。

 

「ははっ機嫌の悪い猫そっくりだな〜」

 

「ええ、本当にねぇ〜♪」

 

微笑みながら俺の後ろをぴったりと付いて部屋から出て。一階の居間へと降りる。

 

 

「ノワールくん!」

「・・・」

 

居間に入ったところでこちらを見つけたのか

エプロン姿の高町なのはが駆け寄ってきた。それを無言で睨み返す

 

「もしかして・・・怒ってる?」

 

「別に・・・」

 

「嘘。ノワールくん怒ってるよね?」

 

「別に、模擬戦が一対一じゃなかったとか。そっちには4人の動きを管制する指揮官が居たとか。

 俺のデバイスが反乱を起こしたとか。目が覚めたら行き成りなのはの家に居るとか・・・。

 俺は全然!全然怒ってない!怒るわけがないだろう!ハハハ!・・・ケッ!」

 

「それ!怒ってるよね!?絶対、怒ってるよね!?」

 

実際のところは模擬戦は実戦を想定した戦いである為、俺はそれほど怒ってはいない。

 

実戦はなにが起こるか分からない。その場その場の状況に合わせて戦わなければならない。

 

あの状況では速度についてくるフェイトを引き付け孤立させて、撃墜して。

チームの足並みを崩せば勝てただろうし。

 

または、サポートをしていたアルフとユーノ・スクライアを先に潰せばよかった。

 

なのはは撃墜するのに時間が掛かる為、どの手でも一番最後だ。

 

と、まあ、作戦は幾つも考えられるが。どちらにしても勝つことは難しい。

そうとなればまた違う作戦もあるが。終わったことだ。

 

なのはに対して行った態度はただの当てつけだ。

 

 

「おっ?ノワールくん気がついたんだ。よかったよかった」

 

「おじゃましてます。美由希さん」

 

「なのはは無視なの!?」

 

 

ひょっこりと現れた高町 美由希さんに頭を下げる。なのはが騒いでいるが無視する。

 

 

「ノンノン!なのはから話は聞いてるよ。そこは、これからお世話になりますじゃないかな?」

 

「べつに・・・俺はあんたらに迷惑を掛けるつもりは...!?」

 

《ギュ!ギュ!ギュ!バタン!》

 

左右からなのはと美由希さんが腕を捕まえるように抱き付き。

後ろからも桃子さんが俺の首に腕を絡めるようにして拘束し。

さらに廊下へと続く後ろの扉が士郎の手で閉められた。

 

「「「・・・」」」

「いや・・・別に逃げないから。警戒しなくても」

 

 

「逃げないの?ノワールくん?」

「逃げないのね?ノワールちゃん」

「逃げないのかい?ノワール?」

 

「無視しないで・・・」

 

俺を一体どういう奴だと思ってるんだお前らは・・・。

 

あと、なのは。俺は別に無視してないぞ。ただの当てつけだ

 

「いい加減離せ。それと、なのは。俺は別に怒っても無視もしてないから」

 

体をもがいて、纏わり付いているこいつらを振りほどく。

 

「仕方ないわねぇ」

「まあ、これからもずっと一緒だからいいかな?」

 

「うんっ!」

 

桃子さんと美由希さんはやや残念そうに離れてキッチンへと向かう。

なのはも笑顔をこちらに向けてからキッチンへ向かった。

俺と士郎はテーブルの椅子へと座る。

 

「おい、見てないで助けてくれてもよかったんじゃないか?」

 

ズズズッと音を立てながら先にテーブルに付いてお茶を啜っていた高町 恭也に問いただすが。

 

 

「俺が窓を固めに行かなかっただけありがたく思ってくれ。

 既に何通りも君が逃げようとした時に包囲するフォーメーションが組まれてる。

 俺はノワールが子供みたいにタダを捏ねて逃げようする奴だと思ってないから動かないが」

 

 

なるほど、こちらを挑発して。行動を制限しようというのか。

 

 

「ああ、そうかい。ったく子供相手に心理戦まで普通するか?」

 

「流石に気が付いたか。これを考えたのは父さんだ」

 

《ザッ!》

俺の正面の恭也の隣に座っていた士郎が俺から即座に顔を背ける。

 

「よーし!お前らの俺に対する考えはよく分かった。これからは「さあ!ご飯が出来たわよ!」

 コンビネーションは完璧か・・・。」

 

いろいろと敗北した気がしてうな垂れるが。すっと目の前にシチューが置かれる。

 

「まあ、これでも食べて元気を出してください。マスター」

 

「ああ、そうす....なにしてるんだ?おまえは」

 

ナチュラルに答えそうになったが、声が桃子でも美由希さんでもなのはでもない女性の声がして

顔を上げると人間形態のアリスが自然と立っていた。当然、獣の耳も尻尾も隠している(人間形態ではいつもだが)

 

「いや〜高町家の皆さんはいい人ばかりですねぇ。マスターだけではなく。

 私も一緒に住んでいいそうですよ。ずっと傍に居られますね!マスター!」

 

座っている俺に抱き付きながら頬ずりしてくるアリスに思わずこめかみがひくついた。

 

 

そうこうしていると肉や魚など豪華な食事の準備が整い合唱。

 

「新たな家族に...」

 

「「「「かんぱーい!」」」」

 

「わわっ!よかったですね!マスター!」

「いただきます・・・」

 

高町家の祝福を受けながら矢鱈と賑やかな食卓に。まあ、こんなのも悪くないと思いつつ夕食を平らげた。

俺が一口、一口、料理を口に入れた瞬間、料理の美味しさに表情が緩みそうになるのを笑顔で見つめてくる。

こいつらの所為で食べる速度は何時もより遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事が終わると一家の母である高町桃子は片付けに台所に入り。アリスもそれに続く。

 

息子と娘である。高町恭也と高町美由希は道場へ。

 

リビングにはこの家の大黒柱である高町士郎と俺がここに居る理由を作った高町なのはが残っていた。

居間のソファーに俺となのはが並んで座り。対面の一人掛けソファーには士郎が座った。

 

「それで?改めて聞きたいんだが、なんで俺がここにいる?」

 

「それはノワールがなのはに負けたからじゃなかったのかい?」

 

「俺はそういう意味で言ったんじゃない。なんで俺を家族に向かい入れる?」

 

 

前にも家族にしてやるとは言われていたが。

俺自体はまだ一言も家族に入れて欲しいなどと言った記憶はない。

 

 

「その辺りはなのはからも事情を聞いているし」

 

「ばっちり伝えたから大丈夫だよ!ノワールくん!」

 

「どの辺りがばっちりなのか一字一句問いただしたいが「それとね」あ?」

 

士郎が徐に小さな封筒を取り出し。中に入っていた紙を広げた。

 

「それは?」

 

「差出人は分からないが。ポストに入っていてね。内容は...」

 

 

 

『俺はある組織の団長をしている者だ。

 あんたら家族に最近、接触してる黒猫がいると思う。

 詳しい内容は話せないが。近々その黒猫は住処を失う。

 勝手な言い分でだが良ければ家族にしてやってもらえないだろうか?

 やや背伸びして大人びているが。根は子供だ。それは君達もよく分かっていると思う。

 口では何とでも言うだろうが。あいつは人の温かさに飢えている筈だ。

 俺達ではその温かさを十分に与えることはできなかった。

 無理を承知でお願いしたい。あいつの事を頼む。』

 

 

 

これは、手を打っておいてやるという事の一つか。

なら、俺は...

 

「出て行きます」

「ノワールくん!?」

 

「幾ら住むところが無いからと言って。犯罪者を住まわせるのはまずいでしょう。

 それに俺は誰かに借りを作るのは嫌いなんだ」

 

有無を言わせないように殺気を混ぜてにらみ付け立ち上がる。正確には、立ち上がろうとした。

 

「・・・なのは」

 

「・・・だめ」

 

なのはが俺の腰にしがみ付いて立てなかった。

 

「ノワールくんは本当に出て行きたいの?」

 

「・・・」

 

俺はすぐに答える事はできなかった。

 

「どうせノワールの事だ。僕達に迷惑が掛かるとか思ってるんじゃないかな?」

 

「それは・・・」

 

士郎の指摘は図星だった。

 

どうなったかはまだ分からないが。俺がエングレイブ傭兵団で戦っていたことは事実だ。

どれほどの恨みを買っていたか分からない。もしも俺が傭兵団から抜けた者だとばれれば。

傭兵団を狙っている者は俺を捕らえ尋問し。アジトの場所など情報を引き出そうとするに違いない。

 

この世界は魔法文化が進歩していない世界なので気づかれる可能性は無いに等しいが

 

次元震などの事件でこの世界は目立っている。

 

「でも俺は...《ガーンッ!》えぁ?・・・」

 

後頭部に衝撃が奔り、意識が朦朧として倒れる寸前、

俺の後ろにはフライパンを持ち満面の笑みという仮面に隠された怒った顔のアリスが映っていた・・・。

 

 

 

ノワールside out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わー!ノワールくん!しっかりしてー!」

 

「・・・やりすぎじゃないかい?アリスさん」

 

気絶したノワールを抱きとめ慌てているなのはに。アリスの過激な行動に呆れる士郎。

 

「いいんですよ。マスターはバカですから。多少、手荒なくらいで丁度いいんです」

 

そういうとアリスはなのはからノワールを受け取り腕に抱く。

 

「悪いんですけど、またなのはさんのベッドでマスターを寝かしてもいいでしょうか?」

 

「え、あ、はいっ。それは全然構わないんですけど・・・」

 

なのはは、タンコブを作って気絶しているノワールを見て。目が覚めれば黙ってどこか遠くへ

行ってしまいそうで言葉が詰まった。

 

「心配なんですね?ノワールが」

 

「はい。まだ知り合ってそれほど長く一緒に居たわけじゃないですけど。

 ノワールくんがいい子で。辛い思いをしてきたってのは知ってます。

 わたしも一人で辛い思いをしたことがありますから・・・」

 

「なのはさん」「なのは・・・」

 

士郎は静かに優しくなのはの頭を撫で。なのはは頬を緩めて静かに目じりに涙を溜めた。

 

アリスもそれを見て、この人達ならノワールと本当の家族になれるだろうと確信した。

 

士郎がなのはの頭を撫でるのをやめてからアリスが口を開く。

 

「ではここは一つ、なのはさんにお願いしてもいいですか?」

 

「え?は、はい。わたしに出来ることならなんでも言ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノワールside

 

 

 

 

 

 

「ぐっ・・・」

 

目が覚めると頭が痛み。おまけに体もなぜか重く温かい。

 

部屋はどうやらまた、なのはの部屋のようで。既に窓からは日が斜めに差していた。

 

昨日の記憶を辿ると。最後にアリスにフライパンで頭を殴られた事を思い出す。

 

「マスターを攻撃する使い魔なんて始めて聞いたぞ・・・ん?」

 

たしかに頭はアリスにやられたが。体が重く温かいのは関係が無い。

 

「んん・・・ふにゅ〜♪」

 

「・・・・」

 

布団を捲るとそこには俺に抱きつくようになのはが寝ていた。

頬を緩ませ。口から少量の涎を垂らして寝ている姿は微笑ましいが。

 

《ゴンッ!》

 

「ふわっ!?痛ッ!な、なんなの!?」

 

「なんなのじゃない!抱きついて寝るな!鬱陶しい!」

 

「えー!酷いよー!」

 

軽く頭を殴られたなのはは、涙目で騒ぐが。無視する。

 

「というか。なんで俺がここで寝ているんだ?」

 

別に部屋なら他にもあるだろうし。なんなら居間のソファーで寝ていてもいいはずだ。

態々俺がなのはの部屋でさらに一緒に寝ている意味が分からない。

 

「え、えっとそれは、ノワールくんとなのはの部屋だからだよ?」

 

「・・・一緒の部屋?」

 

「そう、二人のお部屋になったの♪

 (見張る意味も込めてアリスさんに頼まれたなんて、口が裂けても言えないけど・・・)」

 

 

 

なんでお前達はそうしてまで俺を・・・。

 

 

 

「どうしても俺を家族にするつもりか?危ない目に遭うかも知れないんだぞ?」

 

「多分それは平気だよ。リンディさん達が上手くやってくれているから」

 

 

なぜ管理局の彼らの名前が出てくるんだろう?

 

 

「お父さんもその辺は心配しなくていいって言ってるし。それに...」

 

「それに?」

 

「なにか危なくなったらなのはが守るよ?お父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも。

 もちろんノワールくんもアリスさんも。だってもう家族だもん。多分、みんな同じこと言うと思うよ?」

 

 

まったく・・・この家のやつは

 

 

「なら、俺も同じだ。士郎も桃子さんも恭也さんも美由希さんもそれに...」

 

言葉を続ける度に、ジーっと真っ直ぐ見つめてくるなのはを直視できなくなり。

顔を背けて小さく続きを口にした。

 

「なのは・・・お前もついでに守ってやる」

 

「えー!ついでなんてあんまりだよー!」

 

「わっ!わかったから!ちゃんと守ってやるから!」

 

「ありがとうノワールくんっ!」

 

抱きついたままポカポカとなのはに胸を叩かれ。思わず修正すると

すぐに機嫌が直ったのか笑って微笑んだ。

 

「はぁ・・・さてと、起きるか」

 

「うんっ!」

 

 

 

 

 

そうして、高町家での生活が始まったのだが....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいこら!なんだこのフリフリで可愛らしい服はッ!?」

 

「なにって・・・着替えかな?」

 

 

前途多難である。

 

 

 

 

 

 

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やったねノワール!家族が出来たよ!

只者ではない人達ばかりですが・・・。

 

 

 

なんとか作者も今日からGWの連休に入りました。(彼是一ヶ月ぶりの休み)

出来れば連休中に次回の投稿もできればと思っています。

 

そして、沢山のコメントをありがとうございます。

コメントを頂けるとやる気がMAXになります(;゚∀゚)=3

些細なことでもいただければ幸いです。

 

では皆さん良いGWを!

 

 

説明
神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。
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コメント
お疲れ様でした。次も楽しみなので、頑張ってください。(Fols)
祝・復活・おめでとさん(匿名希望)
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