日常
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 自殺は駄目だという意見が一般的なのは何故だろう。自分が死にたいと思ったのだから死ぬのは自由なのではないだろうか。

 親に恩を仇で返す? そんなことを言ったらまず、自分を産んでくれなんて頼んでいない。そういって返すと屁理屈だのなんだの、貧困な人達を例にあげてもっと苦しんでいる人達がいると詭弁を垂れる。

 ここは地獄だ。道徳観などとは名ばかりの洗脳が施されている。行き届いている。僕のような考えがまるで異常者、『異端者』と言った方が正しいか。そんな扱いを受けるのだ。宗教だ。この社会は宗教だ。僕は神など信仰していないし、何も信じたくはない。他人も動物も僕自身さえも。何もかも疑っていたい。何かだからといって、考えなしに受け入れることは僕にはできないばかりか、理解すらできない。そんな無心の許容はするべきものなのか。わからない。答えは出ない。出たとしても信じない。こうやって考えることに、僕が疑うことにこそ意味がある。

 手に持つ包丁の切っ先は僕の喉元数センチ手前で止まっている。あとほんの少し突き入れるだけで僕は血を流し絶命できることだろう。それでも、やらない。こうやって包丁を突きたて死のうと思えばすぐに死ねるのだと、認識する。死は近い。すぐそばに。刹那やってくることもある。

『ユウ、いるー?』

 玄関から聞こえるのはいつも通りの彼女の声。僕はそれを聞くと、包丁をゆっくりと片付ける。側に置いていた鞄を肩にかけると玄関を開けて彼女の顔を拝む。

「おはよう」

『おはよう。いつも私が来るまでユウって何してるの?』

「特に何もしてないよ。それより早く学校に行こうよ。このままだと遅れちゃう」

『ユウが遅かったからじゃない。ま、いいんだけどさ』

 僕はそうやっていつも通り学校に向かって行く。

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 ありふれた日常。
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