魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第七十話 運動会、始まります(6年生編)
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 「悪いが今年の優勝は((1組|我等))が貰うぞ!」

 

 「「「「「「「「「「然り!然り!然り!」」」」」」」」」」

 

 「違うね。((2組|僕達))が優勝して最高の思い出を飾るんだ!」

 

 「「「「「「「「「「ガンホー!ガンホー!ガンホー!」」」」」」」」」」

 

 「…で、勇紀。貴方は((3組|青組))代表として何か言わないの?」

 

 「俺も何か言わないといかんのか?特に無いんだけど」

 

 「「「「「「「「「「チッ!何も言えないとは使えねえクズめ」」」」」」」」」」

 

 「そこまで言うか!!?」

 

 盛り上がってるディアーチェとレヴィ、及びそのクラス連中とは違い、俺はクラスの男子達に舌打ちされ、クズ扱いされる。

 …はい、時間が進んで10月。今年もやってきました運動会…っと。

 去年と違って今年は家族全員が敵なんだよねぇ。

 ((赤組|1組))にはシュテルとディアーチェ、((白組|2組))にはレヴィとユーリ。

 コイツ等、家に居た時からライバル心バリバリだったからな。

 食事の際もお互いに、俺を挟んで威嚇し合うぐらいだし。

 そこまでする必要は無いと思うんだけどな。家にいる時ぐらいは仲良くしろよ。

 ルーテシアに

 

 『けんかしちゃ、めっ!』

 

 何て言われて怒られる事も何回かあったし。幼女に怒られるなんて…。

 

 「しかし、赤組も白組も強敵だね」

 

 「シュテルさんとディアーチェさんはバランスの良い運動神経、ユーリさんは無視していても問題無いがレヴィさんの身体能力はそれを補って尚余りあるぐらい突出してるからな」

 

 冷静に相手の戦力を分析していく誠悟。流石と言わざるを得ない。

 けど個人競技で出場出来るのは去年同様1つだけだから全員参加の綱引き、玉入れさえ上位で押さえておけば俺達でも充分勝機はある。

 

 「ていうかそろそろ開会式始まるからお前等戻れよ」

 

 他の学年はもう行進の準備してるぞ。

 

 「むっ、そうだな。戻るぞシュテル」

 

 「ユーリ。アッチ行こう」

 

 「「じゃあユウキ。また後で」」

 

 「おー、お互い頑張ろうな」

 

 去っていく4人に手を振って俺達も所定の位置に戻る。

 それからすぐに開会式が始まり、俺達6年生にとっては海小最後の運動会が幕を上げた………。

 

 

 

 「さて…まずは100メートル走な訳だが」

 

 「直博ならトップは確実だろうね」

 

 「ていうか出来るだけトップ多く取って点数に差を付けておけたら全員参加の競技で負けても安心出来るんだがな…」

 

 「勇紀にも100メートル走に参加して貰いたかったって事だね誠悟」

 

 謙介と誠悟にやり取りが聞こえ、2人揃ってコチラを見る。

 

 「あー…済まんね。でも俺はどうしても障害物競争に出たかったんだよ」

 

 今年は障害物競争にエントリーする事が出来た。立候補した人数が俺含めて丁度だったのでクジ引きもジャンケンも行われなかったからな。

 これで個人種目の参加は6年間通してコンプリートだぜ。

 ちなみに誠悟は去年同様騎馬戦で謙介もこれまた去年同様のクラス対抗リレーだ。

 

 「まあ、俺も絶対トップ取ってやるからそこは寛容な目で見てくれや」

 

 「「当然だ(当たり前だね)。これでトップ取れなかったらクラスの皆からフルボッコされると思え(思いなよ)」」

 

 え?そこまで重い刑なの?

 せっかくの運動会なんだからソコはほら…大目に見るとか。

 

 「そんな事より始まってるわよ100メートル走。応援しなくていいの?」

 

 テレサの言葉で俺達はグラウンドに視線を戻すと、確かに始まっていた。

 1年生の生徒達は結構実力の差が激しいな。ここで少しでも上位を取って貰わないと俺達上級生が厳しくなる。

 

 「…白組には足の速い生徒が多いですね」

 

 「そうだな……って、何でシュテルはここにいんの?」

 

 いつの間にやら我がクラスに交じって一緒に観戦していた。

 

 「別にどこで応援しても良いと思うのですが?」

 

 「…一応敵同士だよ?俺達」

 

 「心配しなくても良いんですよ。偵察やスパイではありませんから」

 

 良いのだろうか?

 少なくとも去年は運動会で暴君と化していたディアーチェが許すとは思えないんだけど。

 

 「もし何か言ってくるならちゃんとO☆HA☆NA☆SHIしますから問題有りません」

 

 「問題あるよ!?家族で味方なんだからそこは仲良くしよう!?」

 

 「いや、むしろシュテルさんが自軍の主戦力を潰してくれるなら好都合だ」

 

 誠悟……お前の言う事はもっともなんだが俺としてはそんな事で家族の仲が悪くなるのだけは避けたいんだよ。

 

 「勇紀。非情になれ。最早これは戦争と言っても過言ではない」

 

 「つーか何でお前、今年はそんなやる気に満ちてんの?」

 

 「今年優勝したらお袋が俺の『小遣いアップ』と『新作ゲーム』を買ってくれる約束をしてくれたんだ」

 

 「あー…」

 

 そりゃやる気出る訳だ。

 

 「俺はそんなメリット無いからなぁ。優勝したら晩ご飯を豪勢な物にしてもらうか」

 

 久しぶりにステーキとか食ってみたいね。肉は松坂牛とか近江牛みたいな高級な肉で。

 …うん、悪くないかもしれない。

 

 「良いのですか?普段からは節約を心掛けているのでしょう?」

 

 「優勝出来たら…だよ。そういった特典でもあればやる気入るし」

 

 という訳で今からは『楽しむ』事よりも『勝つ』事を前提にして運動会に挑むとしよう。

 

 「それとユウキ。ユーリも100メートル走みたいですよ?」

 

 「何?」

 

 シュテルが指差すので俺も改めて参加選手の待機場所を見ると確かに我が家の運動音痴担当のユーリの姿があった。

 

 「何だ?白組はユーリを早めに切っておいて、残りの種目で上位を狙うのか?」

 

 「その割には余裕そうな表情を浮かべてますよ?」

 

 「ホントだ。何か秘策でもあるのかな?」

 

 「案外自信があるのでは?」

 

 「自信ねぇ…」

 

 ま、ユーリが自分で立候補したのかどうかは知らないがあそこにいるのは変えようの無い事実な訳だし、あの自信たっぷりな表情を浮かべている理由は気になるので何をしでかすのか見せて貰いますか。

 しばらくは流れる様に他の生徒達の100メートル走が進み、ついに6年生…ユーリの出番が来た。直博とはぶつからなかったか。

 

 「ふふふ…」

 

 不敵な笑みを浮かべ今か今かと始まるのを待っている。

 そしてその時が来た。

 

 「位置について…よーい……」

 

 パアンッ

 

 スタートの合図を皮切りに一斉に走り出す。

 

 「「「「「「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉっっっっっ!!!!ユーリさああああああぁぁぁぁぁんんんんんっっっっっっっ!!!!!」」」」」」」」」」

 

 トラックの外からはユーリを応援する男子達の声が。

 けど肝心のユーリの順位は最下位だ。やっぱり白組にとっては捨て駒か?

 俺はお茶を飲みながら様子を見ていた。

 だがコーナーを回り終え、直線のストレートになった時、ユーリが動いた。

 

 「もはや私は過去の私と違うんです!!…『剃』!!!」

 

 ビュンッ!

 

 「ぶふっ!」

 

 「わっ!勇紀が茶を吹いた!!」

 

 「勇紀、汚いじゃないか」

 

 誠悟と直博が何か言ってるが俺は『ゴホッ…ゴホッ…』と咳き込むだけ。

 肝心のユーリは

 

 ズザザザザザザアアアアアアァァァァァッッッッッッ!!!!!

 

 ゴールテープを切らず、その真下をヘッドスライディングで通過していく。ただし顔は母なる大地と熱いキスを交わしている状態で。

 順位的には1位だけど本人はゴール地点からかなり離れた所まで滑っていた。

 

 「きゅううううぅぅぅぅっ」

 

 んで気絶してるし。

 あれだけ勢いよく滑っていったんだ。地面で擦れていた顔は摩擦で大変な事になってそうだな。

 

 「アイツ…一体何してんだよ」

 

 俺は咽た後で即座に口を開く。

 運動会で『剃』とかアホか!?アホなのか!!?

 しかも滑ったという事は『剃』中に足を躓かせたんだろう。『剃』はあくまで高速ダッシュ…転移や瞬間移動じゃないからな。

 その後、ユーリは回収され、1位の待機場所まで運ばれる。

 

 「…うーん。ユーリさんが1位とか予想外だったな」

 

 「ああ。これはとんでもない大番狂わせだ」

 

 「ユーリさん、凄い努力してたんだろうな」

 

 「「いや!!いきなり消えた事には何の疑問も思い浮かばないのかよ!!?」」

 

 至極真面な正論で俺と誠悟はクラスの男子達に突っ込む。

 『努力してた』って言うのはあながち間違いじゃ無いんだろうけどその結果、人が消えた様に見えた事には普通訝しむものだろ?

 

 「「「「「「「「「「何を言うか!!!可愛い子は何をしようとも!!何があろうとも許されるのだ!!!!」」」」」」」」」」

 

 一字一句違わず声を揃える男子達。

 

 「…じゃあここにいるシュテルが『実は魔法少女だったんです』とか言って変身したらお前等どう思うよ?」

 

 「「「「「「「「「「夜のオカズにします!ご馳走様ですシュテルさん!!」」」」」」」」」」

 

 「……………………」

 

 「お前等絶対シュテルには近付かせないからな!!」

 

 シュテルが汚物を見る様な目で男子達を眺めながら俺の服の裾を掴む。

 俺は庇う様にシュテルの前に立つ。

 ごめんシュテル。今のはあんな質問した俺が悪かった。

 不快な思いをしてるであろう家族に心の中で謝る。

 つか『夜のオカズ』の意味を知ってそうなコイツ等は本当に小学生か?

 

 「で、勇紀は知ってるんじゃないのか?ユーリさんが突然消えた現象について」

 

 「知らねーよ。初めて見た」

 

 「本当か?お前の家族だろ?」

 

 「家族だからって何でも知ってる訳じゃねーし。他人のプライベートまで深く踏み込む事はしねーよ」

 

 「……そうか」

 

 誠悟はまだ多少疑ってる様な感じだがとりあえずは納得して引いてくれた。

 嘘は言ってないぞ?ユーリの『剃』を((見たのは今回が初めて|・・・・・・・・・・))なんだから。

 それにしても『六式』や『覇気』って意外と厄介なんだよねぇ。俺の((唯我独尊|オンリーワンフラワー))で無効化出来ないし。

 ((唯我独尊|オンリーワンフラワー))はあくまで『異能』『特殊能力』を打ち消す事ができる能力であって純粋な体術である『六式』、気合や気迫の類である『覇気』には一切の効果を示さない。

 これは以前亮太と軽い模擬戦の際に試してみて判明した事実だ。

 『武装色』の覇気なんか魔力消費無しで身体強化の魔法と同等かそれ以上の効果があるから使い勝手良過ぎ。しかも身体強化と同時に使用して相乗効果も見込めるし。

 …俺も『武装色』の覇気は亮太に習っておくか。魔法や((天火布武|テンマオウ))、宝具の攻撃力が底上げ出来る技術は使える様になっておいて損は無い。

 

 「流石にユーリさんが1位を取るのは予想出来なかったが直博も1位を取ったし、他の皆も頑張って上位に食い込んでくれた結果で良しとするか」

 

 誠悟がそう締め括ったのと同時に100メートル走は終えた。

 次は二人三脚か。

 

 「そう言えばシュテルは結局何の競技に出るんだ?」

 

 家にいる時は『敵同士である以上当日まで情報は開示しません』なんて言って教えてくれなかったんだよな。

 これはレヴィ、ディアーチェ、ユーリも同様だ。だからユーリが100メートル走にエントリーされてたのも知らんかったし。

 

 「そろそろ教えても構いませんね。私とディアーチェはクラス対抗リレーに出ます」

 

 「主戦力は1つの競技に固めているという事か…」

 

 聞き耳を立てていた誠悟は冷静に情報を分析する。

 

 「俺達のクラス対抗リレーで主戦力って確か…」

 

 「アリサさんと謙介だね」

 

 だよな。しかもテレサはアンカー。ウチのクラスの女子で一番速いし。

 謙介は去年みたいな最後のポカミスさえしなければ戦力としては申し分無い。

 

 「レヴィの奴が走るとすればやっぱりクラス対抗リレー…か?」

 

 障害物競争や借り物競争という可能性もあるけど。

 

 「そうだろうね。レヴィさんの足の速さなら多少の距離でも巻き返せる。ならば障害物が無く運の要素も絡まない純粋な競争に出るのが妥当だろうね」

 

 「そう考えるとさっきの100メートル走に出てなかった以上、クラス対抗リレーに出てると考えるのが妥当だ」

 

 「確かにそうですね。レヴィが二人三脚や騎馬戦に出るとも思えませんし」

 

 「出たら出てくれたで嬉しい誤算なんだがな」

 

 シュテルも会話に加わり、俺達は冷静にレヴィの参加する競技を予想する。

 アイツはチームプレイより個人プレイで参加させた方がチームに貢献できるタイプだし。

 それとシュテルさん?さっきも言ったけどアンタ俺達の敵だからね?

 あまりここの雰囲気に馴染むのもどうかと思いますよ?

 違和感なくこの場にいるシュテルを見て俺はそう思った………。

 

 

 

 二人三脚も滞りなく進み、遂に出番が来ました。

 障害物競争。小学校最後の運動会にしてやっと参加出来る競技。

 出番が来るまで俺は待機場所で柔軟体操をして身体をほぐす。

 障害物は去年の運動会と全く同じ物が設置されている。

 現在は3年生の順番だが1番苦戦してるのはやはり平均台か。外から6人の係がボールを投げてくるせいで避けるだけで一苦労っぽいし。

 でもあれぐらいだったら俺なら余裕かな。

 

 「やっぱり皆、平均台で止まるねー」

 

 「…何でお前が障害物競争に出てるんだレヴィ?」

 

 レヴィが障害物競争、しかも俺と同じ番の走者だった。

 

 「だって…」

 

 レヴィがある一点を指差す。その先にはぶら下がってるパンが…

 

 「美味しいパンがありそうだもん♪」

 

 食欲優先かよ。優勝したいならクラス対抗リレーに参加すればいいというのに。

 俺達からすればさっき言った様に、現状が嬉しい誤算なんだがな。

 

 「負けないからねユウ!」

 

 「…言っとくがユーリみたいに『剃』使うなよ?」

 

 「…………分かってるよ」

 

 その間が既に怪しいんですけど!?

 そんなやりとりを終え、しばらく待っていると遂に俺とレヴィの出番がやってきた。

 隣のレヴィは腕をグルグル回して気合十分な姿をアピールする。

 俺達がスタートラインに立った瞬間

 

 「「「「「「「「勇紀くーん(勇紀ー)(おにーちゃーん)(勇紀さーん)」」」」」」」」

 

 「ん?」

 

 聞き覚えのある声が。

 保護者を始めとする一般人の観客側の方には見知った顔が。

 

 「ファイトなのー」

 

 「え、えっと…が、頑張ってー//」

 

 「フェイト、声小っちゃいよ。もっと大きく出さなきゃ。ヤッホー勇紀ー、応援してるよー」

 

 「怪我せんようになー」

 

 「1位取りなさいよー」

 

 「負けないでー」

 

 「おにーーちゃーーーん!!」

 

 「勇紀さーん!リインも応援してるですぅーーー」

 

 聖祥組にリイン、ルーテシアとメガーヌさんの姿を発見した。

 ああ…そう言えばなのは達も『応援しに行くから』って言ってたけど本当に来たんだ。

 ルーテシアとリインもブンブンと手を振って応援してくれてるし。

 

 「「「「「「「「「「長谷川ーーーー!!!!!テメーはやっぱり俺達の敵だーーーー!!!!!」」」」」」」」」」

 

 …((敵地|アウェー))だ。俺にとっては物凄く((敵地|アウェー))だここは。

 『ハア〜』と溜め息を吐いた後、障害物競争に集中する。

 

 「位置について…よーい……」

 

 パアンッ

 

 皆一斉に飛び出す。現在はレヴィが1位で俺は2位。最初の障害物、木製バットは難なくクリア。レヴィの奴はフラフラして俺に抜かれ、2位に転落。

 俺は若干フラフラしつつも次の障害物、網潜りに挑む。

 

 「余裕余裕♪」

 

 網の中を素早く潜り、身体を網から出したところで

 

 「負けるかああああっっっ!!!」

 

 声がしたので振り返ると怒涛の勢いで網を潜るレヴィがいた。

 ちぃっ!やはり引き離して差をつけるのは無理か。

 すぐさま走りだし平均台にまで辿り着くが

 

 「「「「「「「「「「長谷川!!テメーだけは死んでも通さねえ!!!」」」」」」」」」」

 

 「てか増えてるじゃねえか!!?」

 

 両サイドからボールを投げる係の人員が明らかにさっきまでの走者の時より増えていた。

 左に10人、右に10人の合計20人。

 目はギラギラと輝かせ、敵意、殺意を隠そうともしていない。

 コイツ等はここで俺を殺る気満々だ。

 俺の顔面やら急所やらを狙い、完膚なきまでに叩き潰そうという魂胆が丸分かりだな。

 連中にとっては『ボールを走者にぶつける』という係の役目を全うしているに過ぎないから俺一人を集中フルボッコしても『係の役目』という大義名分の元、罪に問われる事は無い。

 むぅ…小学生の運動会で((天目反射|サードアイ))使う事を考慮せねばならんとは。

 しかし回避し続けても進めるかは微妙だし。

 

 「お先に失礼〜♪」

 

 そんな俺の横をレヴィが通り過ぎる。

 当然連中はレヴィにボールを投げようとはしない。

 『天使』に怪我をさせたら他の男子達から粛清の対象になるしな。

 ……待てよ?コレ、使えるな。

 俺は口の端を少し吊り上げて薄く笑うとそのまま平均台にのった直後のレヴィの背後に回り

 

 「こうすれば問題解決だ」

 

 「にゃっ!!?」

 

 「「「「「「「「「「っ!!?き、貴様ぁーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 レヴィを背後から羽交い絞めにし、身体を密着させて盾代わりにする。

 

 「これなら俺を狙えまい」

 

 レヴィの肩越しに不敵な笑みを浮かべ、係の連中を見る。

 

 「何て外道!!貴様それでも男か!!」

 

 「正々堂々渡ろうとしやがれ!!」

 

 「悪いが今の俺は使えるものは何でも使わせて貰う。ほれ、狙えるものなら狙ってみな」

 

 「「「「「「「「「「ぐぬぬぬぬぬ……」」」」」」」」」」

 

 ギリギリと歯軋りの音を鳴らし、コチラを睨みながらも俺(とレヴィ)を狙う事が出来ない係一同。

 

 「あ、ああああのゆゆゆ、ユウ!!!?(く、くっついてる!ユウが僕に凄くくっついてる!!!)////」

 

 「レヴィ、暴れたら2人揃って平均台から落ちるぞ。大人しくしてくれた方がお互いのためだと思うんだが?」

 

 「そ、そうだね…(うう…ユウの息が耳に当たって……にゅふふ…し、幸せだよ♪)//////」

 

 意外に聞き訳が良いな。

 俺を振り解いて先に進めばいいのに肩の力を抜いて何かもたれかかり気味だし。

 

 「くっ!!おい、反対側から狙えよ!!」

 

 「馬鹿言うな!!長谷川が落ちたらレヴィさんまで巻き添えになっちまうだろうが!!」

 

 「だがあんなに密着してる長谷川は許せん!!」

 

 「こうなったら平均台から下りて2人が離れた所を集中砲火してやるのはどうだ!?」

 

 「「「「「「「「「「それだ!!!」」」」」」」」」」

 

 『それだ!!!』じゃねーよ。

 そもそもマジで決行しようものなら俺はひたすらレヴィを盾にして進んでいくだけだ。

 俺はレヴィを羽交い絞めにしたまま少しずつ平均台を進んでいく。

 連中は一応ボールをすぐにでも投げられる様に構えてコチラの隙、もしくはレヴィから離れる瞬間を窺っている。

 

 「どうしたぁ?こんままだと渡り切ってしまうぜぇ?」

 

 偶には悪役っぽく振舞ってみる。

 

 「「「「「「「「「「海小男子全員の敵め!!平均台を渡り終えたら覚えてやがれ!!!」」」」」」」」」」

 

 手が出せず、吼える事しか出来ない連中を見ながらも平均台を進む。

 しかしコイツ等、平均台を渡り終わった後に手を出せば大義名分は使えず集団イジメ扱いになる事はちゃんと理解してるんだろうか?

 …してないだろうし、そんな事は関係無いんだろうな。先生に注意されようが親に怒られようがそんなのお構いなしとでも言わんばかりの殺気放ってるし。

 

 「にゅ〜////」

 

 レヴィは変な鳴き声出してるし。

 やがて平均台を渡り終え、再びグラウンドに足をつけた所でレヴィを解放する。

 連中に動きは無い。さっきのはハッタリだったのか?何にせよこれなら大丈夫そうだ。

 

 「じゃあなレヴィ。助かった」

 

 簡単にお礼を言い、すかさず走り出すと

 

 「逃がすなああああっっっ!!!!長谷川の息の根を止めるおおおおおっっっっ!!!!」

 

 「「「「「「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!」」」」」」」」」」

 

 俺に対する一斉砲撃が始まった。

 ちいっ!!やはり見逃してくれるつもりはなかったか。俺がレヴィから距離を取るのを待ってやがったな!!

 

 「お前等!!最早係の…役目を守ってないし…これは指導もんだぞ…っと」

 

 避けながら喋りつつ前に進む俺。

 

 「オラオラオラアァッ!!」

 

 「当たりやがれえええぇぇぇっっっっ!!!!!!!」

 

 「男なんていうのはなぁ。元々指導なんざ恐れちゃいねえんだよおっっ!!!」

 

 「たかが一教師が指導だと?((我|オレ))を指導したければその3倍の地位の奴を連れて来い!!」

 

 「…ご覧の通り貴様が挑むのは無限の嫉妬に塗れた連中!嫉妬の極致に至りし者達だ!!恐れずして逃げ切ってみよ!!」

 

 一部の男子生徒が((青い槍兵|ランサー))、((英雄王|金ピカ))、((赤い弓兵|アーチャー))の台詞をアレンジした様な言葉を発しているのが非常に気になるが…。

 

 「よっ…はっ…ほっ」

 

 最早、俺1人をひたすら狙い、ボールが無くなると己の身体を武器にして突撃してくる連中を捌きながら俺は障害物競争で1位をもぎ取った。

 ちなみにレヴィの奴は

 

 「えへ、えへへへ////」

 

 何か身体をクネクネしながら悶えていたため他の選手にも抜かれ最下位でゴールする羽目になっていた………。

 

 

 

 昼休み…。

 俺達は応援に来てくれていたなのは達と合流し、皆でシートの上に座り、昼食を摂っていた。

 メンバーは俺、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、なのは、フェイト、はやて、アリシア、アリサ、すずか、リイン、ルーテシア、メガーヌさん、亮太、椿姫、テレサ。

 合計17人の大所帯。

 

 「それにしてもええ勝負しとるなぁ」

 

 はやてがおにぎりを口にしながら得点が掲示されてるボードに目を向ける。

 

 「点数はほぼ横並び…これは午後の競技次第で優勝が決まりそうだね」

 

 「そだねー。あ、フェイトー、そのミートボール取ってー」

 

 「これ?…はいレヴィ」

 

 「ありがとー」

 

 「勇紀も災難だったね」

 

 「流石にな(後半はマジで((天目反射|サードアイ))使いかけたし)」

 

 「僕でもアレは避けきれないかも(あんな状況になったら『見聞色』使うだろうなぁ)」

 

 やはり亮太でも避けるのが厳しい様な状況に見えていたのか。

 

 「レヴィを抱きしめていた時の勇紀は悪役っぽかったわね」

 

 「椿姫、抱きしめていた様に視えたなら眼科行け。俺は羽交い絞めにしてレヴィを盾代わりにしただけだ」

 

 弁当箱の中にある肉巻きポテトを味わいながら椿姫の言葉に訂正をかける。

 

 「「「「「「「「「そう言えば抱きしめてましたよね(抱きしめていたな)(抱きしめていたよね)(抱きしめとったなぁ)(抱きしめてたわね)」」」」」」」」」

 

 「いや、だからね…」

 

 途端に不機嫌になる皆に少しタジタジ気味な俺である。

 あれを抱きしめてる様に視えていたなら皆も眼科に行く事を勧めるべきだよね?

 

 「あれは…良かったなぁ//」

 

 羽交い絞めにされてた本人は何かうっとりしてるし。

 

 「けどあそこでレヴィが上位に食い込まなかったおかげで白組の独走を許さずに済んだけどね」

 

 うむ。テレサの言う通り、レヴィが2位にでもなっていたら白組が頭一つ分ぐらいは抜き出ていたかも。

 

 「勇紀君、お昼からの競技は何に出るの?」

 

 「ん?俺が出るのは綱引きと玉入れ。もう個人競技には出ないから」

 

 すずかの質問に答えながらエビフライを取って食べる。

 

 「わたしもいっしょにやりたいなー」

 

 「リインもですぅ」

 

 すっかり運動会の虜になっているリインとルーテシアの2人。俺達が出ていない間の競技中も凄くはしゃいでいたとか。

 

 「まあ、こればっかりは学校の生徒じゃないとな」

 

 前世の時に通っていた小学校の時と違い、海小は保護者や教師が参加する競技無いんだよねー。

 

 「ママー、わたしもがっこうにかよいたい」

 

 「はやてちゃん、リインも通いたいですぅ」

 

 「もうちょっと大きくなってからねルー」

 

 「リインもかぁ。皆に聞いてみんとなぁ」

 

 ルーテシアはともかくリインも学校に興味を示したか。

 見た目はともかく学力はどうなんだろうか?

 小学校1年生から始めるならはやてがミッドに移住する時までしか通えないから、卒業出来ないまま小学校生活を終えてしまうな。

 

 「まあルーは幼稚園から通う事になるでしょうね」

 

 「だな。来年から通うのもアリではないか?」

 

 シュテルとディアーチェはそういうと俺の方見てくるけど

 

 「そこら辺はメガーヌさんとルーの判断に任せるんで」

 

 ルーが幼稚園に通いたくてメガーヌさんが『いい』と言うなら俺は反対するつもり無いし。

 

 「ようちえん…ママ、わたしようちえんにいきたい!」

 

 「良いの?幼稚園にいる間はママは一緒にいられないわよ?」

 

 「そうなの?」

 

 首を傾げるルーテシア。けどすぐに

 

 「でもいきたい!」

 

 元気良く返事するのだった。

 

 「この近くの幼稚園っていえば…」

 

 「臨海公園の近くにある『海鳴臨海幼稚園』かな」

 

 臨海公園から徒歩3分という位置にある幼稚園。

 俺がルーテシアぐらいの年齢の時は父さんに連れられて各地を回ってたからなぁ。

 前世の頃は普通に通ってたけどほとんど記憶に無いし。

 それからも昼休みが終わるまでは和気藹々とした時間を過ごしていた………。

 

 

 

 午後の競技も開始早々激戦だった。

 まず騎馬戦だが…

 

 「突撃だあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

 「あの騎馬を囲めええええぇぇぇぇぇっっっっっっ!!!!!!」

 

 「オーール・ハーーイル・ブリターーニアーー!!!!」

 

 「少し、頭冷やそうか…」

 

 「お前も聞いただろう。((神風|かぜ))の((清響|こえ))を…」

 

 「………勝ったな」

 

 相変わらず参加してる生徒達の叫びは((混沌|カオス))だなぁ。

 途中でSts版なのはのセリフが出た時は当の本人探しちまったよ。ボイスがそっくりだったもん。この学園にシュテル以外のゆかりんボイスの持ち主が存在していたとは…。

 それと最後の奴は何もせずゲンドウスタイルで冬月のセリフ言って戦況見てるだけだし……てか誠悟だし。

 

 「でもセイゴの指示って的確だよねー」

 

 「私達のクラスにあそこまで指示を上手に出せる生徒っていませんからねー」

 

 「…お前等も当たり前の様にいるんだなレヴィ、ユーリ」

 

 君達もアレだね?俺達が敵同士だって自覚無いよね?

 

 「僕の個人出場はもう終わりだからねー」

 

 「私もです。だから自陣にいてもヒマでヒマで…」

 

 いや、白組の応援してやれよ?ここは青組なんだからさ。

 

 「むー、シュテるんだって午前中いたんでしょ?なら良いじゃん」

 

 「そうですよ。あ、ユウキ、私にもお茶下さい」

 

 「僕りんごジュース」

 

 何このくつろぎモード。

 

 「どうぞユーリさん。お茶です」

 

 「レヴィさん。ご所望の品です」

 

 「お前等準備良過ぎ!!」

 

 コイツ等が欲しい物を言って3秒も経ってないのに。

 

 「「「「「「「「「「天使の願いを聞き届けずしたら男が廃るわ!!!」」」」」」」」」」

 

 駄目だ…もう救い様がねえわ。

 しかも俺の側でワイワイやってる内に騎馬戦終わったし。

 青組が勝てたのは良かったけど。

 …誠悟、動けよ。最初にグラウンドの端まで言って声上げて指示飛ばすだけって。

 しかも後半からはゲンドウスタイル保って傍観って。

 午前中のやる気に満ちていたお前は何処行った?

 

 「勇紀、言いたい事は分かるけどここは結果良しって事で」

 

 「…そうだな」

 

 アイツは的確な指示で青組を勝利に導いた…その結果を出した事に納得しておくか………。

 

 

 

 「美味い美味い♪」(パクパク)

 

 「「「「……………………」」」」(ゴクッ)

 

 運動会も終わり、自宅に帰ってきての夕食。

 俺は自分で決めた優勝特典のステーキ(松坂牛)を堪能している。

 勝ったからね((俺達青組|・・・・))が。

 

 「ユウ、ズルいよ!!僕、そんなご馳走が貰えるって知ってたらクラス対抗リレーにエントリーしたのに!」

 

 「決めたの今日の運動会中だからな」

 

 「おにーちゃん、おにくたべたい」

 

 「ん?いいよ。熱いから少し冷ましてから食べるんだよ?」

 

 「うん!」

 

 肉を少し切ってルーテシアの小皿に入れる。

 

 「メガーヌさんもどうぞ」

 

 「あら?いいの?」

 

 「まだ肉はたっぷりあるんで」

 

 「じゃあ遠慮無く♪」

 

 「「「…ユウキ、私にも(我にも)」」」

 

 「レヴィだけじゃなくお前等も敗者」

 

 「「「むう〜〜〜」」」

 

 可愛らしく唸ってる。

 別にやってもいいんだけどねぇ…。

 

 「(俺がコイツ等に優位になれる機会っていほとんど無いからな)」

 

 もうしばらくはこの状況を堪能しておこう。

 偶には優越感に浸るのも悪くはないもんだ………。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
いや〜松阪牛のステーキは極上やでぇ?やっぱ牛肉は国内産に限るわなぁ♪(海平?)
↓何それ!?ステキ?♪(アサシン)
↓ユウキが応援に行く→銀髪キレる→ユウキ「じゃあ帰るわ」→なのは、銀髪にスターライトブチ込む→平和な運動会(匿名希望)
聖祥は銀髪達が魔法で身体強化して暴れそうで怖い(妖精の尻尾)
さすがユーリだ、期待を裏切らない。というかマジこの学校いいな皆楽しそうだ。次は聖祥の運動会かな?(にゃん死神)
今回は聖祥と運動会の日程が同じでは無かった様で、なのは達が応援に来てましたね。コレは聖祥の運動会にも応援に行かないと不公平でしょう。運動会の結果は勇紀が所属してた青組だった様で、自分で決めた優勝特典の松坂牛のステーキを堪能したみたいですね。そう言えば、フグは食べに行ったんだろうか?(俊)
小学生がこれをやっていると思うと笑えるw(匿名希望)
勇紀がドンドン悪にwww(黒咲白亜)
なのは達が応援に来ていた=なのは達の応援に行かなくてはならないフラグ(ohatiyo)
ユーリは本当に期待を裏切らないですね。結局、転ぶとは(アラル)
運動会編来た〜♪!ユーリさん!?剃はダメでしょ!!てか結局転ぶって、ドジッ娘スキルA+あるのか!?(アサシン)
最近、更新が早くて見ごたえがあるよね!!(匿名希望)
フェイトとのキスはまだ先か・・・・・・・・・・・・個人的には、はやてとしてほしいけど(匿名希望)
ユーリさん, 'つまずきなし'に基づいてランニング練習を勧めます (-.-;;;) [痛そう~ / しかしながら,100メートル走1位おめでとう! ] /&/ オンリーワンフラワーにも弱点,か~ /&/ 再び、迅速な更新ありがとうございます, カルピスウォーターさん!(deltago)
↓ 確かに ['主人公なんだからたまには優位に立ってもいいのです'について] /&/ 良かったですね, レヴィさん! /&/ 今回も混沌セリフs, 面白かったです!(deltago)
運動会お疲れ様。今年は聖祥と日程が違ったのですね。勇紀優勝おめでとう。主人公なんだからたまには優位に立ってもいいのです。(chocolate)
ところで…そろそろユーリにいい目見せてあげても良くない?なんか最近空気orヒドイ目ばっかりな気がしてるんだけど…(プロフェッサー.Y)
ささやかだ…あまりにもささやかすぎる…勇紀ェ…(匿名希望)
優越感というより愉悦の領域な気がw(アヌビス)
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