さいごのけじめ・・後編
[全14ページ]
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翌朝・廃工場

 

「手間を掛けさせてくれるな。・・あとは奴を追い込めば世界は新たな扉を開く。」

「ぐ、ぐぅぅ・・。」

 

恐竜グリードの追跡から身を隠していたパラノだったが見つかってしまい、残りのコアメダルを全て投入されてしまった。

恐竜グリードは飛び立ち、その場には踞るパラノだけが残った。

 

「うう、うぐぁぁ!」

 

周辺の廃車や廃バイクを取り込みながらパラノは姿を変え、何やら四角い立方体の様な形に変化。

コアメダルの過剰摂取による暴走形態だ。

立方体下部から大量のクズヤミーが降ってくる。

さらに建物や車等がセルメダルとなり、暴走体に吸収されていく。

それにより都市周辺では大パニックが起こる。

 

「あれは・・!卑怯者にありったけのコアメダルを投入した暴走形態か・・!?」

 

それを見た唯は走りながらスキャン無しでプトティラに変身。

降り立つクズヤミーを倒しながら暴走体を目指す。

 

「ちくしょうが!数が多すぎる!これじゃ奴に近づけない!」

 

その時、三つのエネルギー弾がクズヤミーにヒット。

オーズはその方向を見るとダブルバースと奏がやってきた。

 

「唯くん、ここは私たちが!」

「ムチャしないでね!皆も頑張ってるから!」

「みんなで必ず生きて帰るんだから!」

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北方面

 

「・・負けてなるものか!力ばかりに囚われていた私は嫁に救われた!その恩を返しきれていない!・・そこだ!」

 

ラウラはレールキャノンを撃ちつつ唯に助けられた事を思い出す。

 

西方面

 

「私は・・唯さんに教えられ、愚かな考えを正してもらいました!特訓に付き合ってもらい、フレキシブルを少しですけどマスターしました。いつか共に飛翔する日が来るまで負けません!」

 

ビットを飛ばしつつ動きながらライフルを発射、たまにレーザーが曲がったりする。

これも唯が特訓してくれたおかげ。

 

東方面

 

「僕は・・唯に居場所をもらったんだ!僕は唯のために戦う!」

 

シャルロットは武装を切り替えながら居場所をくれた唯を思っていた。

 

「・・私に姉さんとは違う力をくれた。その恩をまだ返してないから負けない!」

 

背中合わせに立ち、タクティカルアームズを手にしている簪も唯を思っていた。

全員の心は一つ・・唯を助けること!

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空から箒がやってきた。

 

「行くぞ唯!リミッターを外した紅椿ならば奴に敵わなくても援護位はできる!」

「・・一夏たち、ここは任せる!」

 

規約違反を恐れず、こんな半端者の自分と一緒に戦ってくれる事を嬉しく思いつつオーズは箒と共に飛翔、滞空している恐竜グリードの元へ向かう。

 

「・・来たか。なぜ愚かな人間に味方する?世の中の女たちは自分が偉いと愚かな考えを持ち、男は虐げられるばかりだ。」

「・・確かに今の世の中はそんな誤った思想を持っている奴が多い。けどな・・!誰も人の未来を奪う事なんてできやしない!」

「くだらんな。」

 

オーズと箒、恐竜グリードとの激しい空中戦が始まる。

オーズはテイルディバイダーやガブリューを駆使して攻撃、箒は二刀を駆使して援護するが・・。

 

「邪魔だ。お前は落ちていろ。」

「・・うああ!」

「箒!・・このやろう!」

 

攻撃を受けてしまい紅椿はほぼ全壊、オーズは恐竜グリードに組み付いて切りもみ落下。

 

「・・ぐはっ。」

 

箒も落下、機体がクッションとなるが全身を打ち付けてしまう。

絶対防御を越えたダメージを全身に受けながらも何とか立ち上がり、機能チェックを行う。

 

(雨月を残して他はもう動けないか・・!その雨月も斬波一回だけしか使えない・・!)

 

「はあぁ!」

「・・甘いな。」

「ガハッ・・。」

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オーズはガブリューを手に突っ込むが恐竜グリードはそれをうけながし、オーズの体に手を突っ込む。

 

「さあ内なる欲望を解き放て。」

「・・はは。そうはいくかよ・・!」

 

ガシッ

 

オーズは恐竜グリードの左手を掴み、腕を介して足元を凍らせる。

これにより二人は拘束状態になる。

 

「・・捕まえたぜぇ。凍らせたから飛ぶ事もできまい・・!」

「・・この時を狙っていたのか!」

 

オーズがガブリューを振り上げると体から大量のセルメダルが宙を舞う。

 

ガブガブガブガブガブガブ

 

それは全てガブリューに飲み込まれていく。

 

「今の俺の中にはテメェを確実に殺す為の力がある!」

「唯・・まさかお前この時のためにセルメダルを・・?」

「や、やめろ。それで攻撃すればお前も只では済まないぞ・・!」

 

箒はオーズの目を見てしまった。

オーズの目はこう言っていた。

 

(・・あとは任せる。)

(・・・!)

 

「・・セイヤァァー!」

 

力一杯ガブリューを振り回すとエネルギーの刃があたり一面を塵に還した。

超強化グランドオブレイジを受けた恐竜グリード。

 

「・・うわっ!」

 

オーズは反動で吹き飛び、変身が解ける。

しかし・・。

 

「・・そんな!?」

「バカな!?」

 

暴走体から放たれているエネルギーによって恐竜グリードは守られていた。

しかも無傷で。

 

「・・残念だったな。なかなかいい作戦だったが・・世界は新たな神の誕生を望んでいるようだ。」

「「・・・。」」

 

唯と箒は呆然と恐竜グリードを見ていた。

そして・・。

 

「そして、あれだけ強力な力を解き放ったお前はもう・・。」

「ちくしょう・・!ぐ、グオァァ!!」

 

立ち上がった唯の体から禍々しいオーラが吹き出す。

それを見ていた箒。

 

(・・今こそ姉さんから託されたアレを使うときだ!)

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決戦前、箒は束から呼び出されていた。

 

「箒ちゃん、これを託すよ。」

「これは・・コアメダル!?どうして私に!?」

「・・ゆいにゃんといっしょに戦えるのは箒ちゃんだけ。いっくんやりーちゃんは他のみんなといっしょに地上の戦力として当たってもらう予定。リミッターを外して唯一あいつに追い付けるのは箒ちゃんの紅椿だけなんだよ。」

 

束はそれにと付け加える。

 

「ギリギリまでゆいにゃんにそれを持っている事を悟らせないでね。渡すタイミングは・・箒ちゃんがよくわかってると思うから・・。」

 

今なら束が言いたかった事がわかる。

今の唯はかつての自分と同じだ。

ただ力を求めるだけの戦士・・。

唯は自分にその考えが違うということを教えてもらった。

 

(今私にできること・・!それは・・!)

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決意した箒は雨月を振り上げ、唯に向けて最後の斬波を放つ。

これにより紅椿は完全に機能停止して解除される。

斬波を本能で避け、我に帰った唯は箒の方を見る。

 

「唯!よせ!・・これを使え!姉さんから託された最後のコアメダルだ!」

 

箒はコアメダルを投げ渡す。

唯はそれを受けとると鼓動を感じた。

 

「・・サンキュー。みんなの想い、確かに受け取った。」

 

唯はドライバーにメダルを嵌めていく。

 

「・・俺はあいつらとは違う。俺にはみんながいる。今回も助けられた・・。」

 

最後のメダルを見つめたあと、ドライバーに嵌める。

 

「みんなの力を貸してくれ・・!変身!」

 

(タカ!)

 

箒とセシリアの声が響き・・。

 

(クジャク!)

 

シャルロットとラウラの声が響き・・。

 

(コンドル!)

 

簪と奏の声が響く。

 

(タ〜ジャ〜ドル〜♪)

 

唯の体が炎に優しく包まれ、タジャドルコンボに変身。

 

BGM:Time Judged All (歌:織斑唯・篠ノ乃箒)

 

いつもと違って六本の炎の羽が生え、神々しさを引き出していた。

 

「・・はぁ!」

「ムゥ、まさかまだ隠し持っていたとは・・だがそれでは私には勝てん。」

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オーズと恐竜グリードはラッシュを繰り出す。

オーズが放ったパンチと共に・・。

 

『やらせないよ!』

『唯を守る!』

 

一夏と箒の幻影が恐竜グリードに攻撃。

 

「一夏、箒・・!」

「・・・?」

 

オーズは横に並び立つ二人の幻影に一瞬目を向けたあと恐竜グリードに立ち向かう。

 

『させません!』

『唯はやらせないわ!』

 

さらにセシリアと鈴の幻影が攻撃を繰り出す。

 

「セシル、鈴・・!」

「・・ぐお!」

 

すると恐竜グリードが突然吹き飛ぶ。

横にはライフルを構えているシャルロットとレールキャノンを放ったラウラがいた。

 

『唯、頑張って!』

『嫁はやらせん!』

 

先程から起こっている現象に恐竜グリードは混乱する。

 

「なんだ、これは・・奴は一人しかいないはず、だが何かの力を感じる・・!一体何をした!?」

「・・狂ったコンピューターに従うしか能のないお前にはわからないだろうな・・!俺にはみんながいる。みんなが俺に力を与えてくれる!」

 

奏と簪の手がオーズの左手を包み込むと一夏たちの手も上に乗せられる。

 

『織斑くん・・!』

『唯くん、今です!』

 

オーズはプトティラとは別の力が沸き上がってくるのを感じた。

プトティラは凍りつかせ、あらゆるものを壊すだけだったが今感じている力は暖かみがあり、それは唯の心を解してくれる。

 

「・・おおぉ!」

「ぬうぅ・・!ここは退くか。」

 

八人の魂が宿ったタジャスピナーのパンチを受け、恐竜グリードは飛翔する。

 

「・・逃がさない!」

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その時ユリの声が響く。

 

(ボクの力を使って!それで全てを終わらせるんだ!)

「・・ああ!」

 

オーズは体から恐竜メダル七枚を出し、タジャスピナーにセット。

スキャンしながら飛翔を開始。

 

(プテラ!・トリケラ!・ティラノ!・プテラ!・トリケラ!・ティラノ!・ギガスキャン!)

 

オーズはそのまま暴走体内部に入り込む。

 

「・・しつこい!」

「・・しまった!」

 

火炎弾がヒットする瞬間、オーズの前に立ち水流弾を放って守ってくれた・・。

 

「愛琉・・!」

『・・唯、決着よ!全てを終わらせなさい!』

「・・おおぉ、セイヤァー!」

 

恐竜コアメダル七枚のギガスキャン技・ロストブレイズを放つ。

愛琉も同時に水流弾を放つ。

 

「・・ふん!」

 

恐竜グリードは火炎弾を放つが水流弾とロストブレイズが重なりあった攻撃に掻き消され、ヒット。

 

「ぐわぁぁ・・!」

 

小型ブラックホールが発生して恐竜グリードの四肢を破壊する。

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地上では一ヶ所に集めたクズヤミーに向かって・・。

 

「一斉攻撃だ、集中しろ!」

「オッケー、ラウラ!」

「了解です!」

 

ダブルバースとラウラたちはラウラの指示で一斉射撃を放つ。

すると爆発が起こり、残りのクズヤミーも爆散。

空から爆発音が聞こえ、奏が空を見ると暴走体があちこちで爆発を起こしつつ形が凹んでいた。

 

「・・唯くん。」

 

内部では・・。

 

「・・バカな、ドロシーの生み出す新たなる世界が・・!」

 

四肢は破壊され、コアメダルと共にブラックホールの向こうへと消えていく。

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???

 

(唯、終わったね。・・くぅ!)

(ああ。・・ところでお前がさっきから抑え込んでいるのは何だ?)

 

ユリが懸命に紫の何かを抑え込んでいた。

その何かとは邪悪な意思だという。

 

(・・紫の邪悪な意思でプトティラの力の源。破壊衝動とかそういうね・・。これはボクが連れていくよ。)

(何でだ!?それを持っていかれたら俺は・・!)

(ううん、唯は十分強いよ。シャルちゃんやラウラちゃんを導いたじゃない。)

(あれは・・俺の力じゃない!いろんな人から教えてもらった事をそのまま言っただけだ!)

 

唯はシャルロットやラウラを導いた。

でもそれはいろんな人の教えから引き出した物に過ぎないと唯は言う。

 

(そんな事に力は必要ないよ。唯はいろんな出会いと別れを経験してる。それが唯を強くしてるよ。)

 

ユリはそれにと言う。

 

(ボクは元々無のグリード。名前なんかなかった。でも唯はボクに名前をくれた・・初めての感情に戸惑って・・共存していつか唯を奪おうと考えた・・でもできなかった。)

(・・・。)

(・・いっちゃんやほーちゃんたちを守ってね♪多分多妻になるだろうから子供もたくさん作ってね♪)

 

唯の意識はそこで途切れる。

 

「・・あ!」

 

タジャスピナーが勝手に開き、恐竜コアメダルが割れて吸い込まれ・・。

 

『・・・。』

「愛流ー!」

 

パキン

 

手を伸ばすが割れるシャチコア。

タジャドルのメダルも吸い込まれてオーズの変身が解け、落下していく。

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『・・唯、起きなさい!死んじゃうわよ!』

 

愛流が唯の頬をペシペシと叩いて起こす。

 

「・・愛流。もういいよ・・。」

『私は満足したわ、いろんな人と触れあって・・大切な物も手に入ったわ・・。』

「それって命だろ・・?死んじまったら・・。」

『ええそうよ、ただのメダルの塊が死ぬ寸前まで来た・・こんなに面白くて楽しい事はないわ。』

 

愛流はそれにと付け加える。

 

『あなたが掴むのは・・私の手じゃない。』

 

唯は目一杯手を伸ばし、掴んだのは・・。

 

「・・愛流ー!」

 

割れたシャチコアの片割れだった。

 

束の研究所

 

サクッ

 

束は割れたシャチコアの片割れを拾う。

千冬もそれを見ていた。

 

「・・いるちゃん。ありがと・・。」

「水城、束を変えてくれて・・本当に感謝している・・。」

 

千冬は親友を変えてくれた愛流に感謝の念を送る。

二人は空を見上げる。

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「唯ー!」

「・・?」

 

声のした方を向くとバースがカッターウイングで飛行、手を差し出していた。

 

「何でも一人で抱え込まないでよ!お姉ちゃんたちがいる!私たちの手を掴んで!」

(・・俺は。)

 

唯は地上を見ると箒たちが手を伸ばしていた。

 

「一人でやることが強い事じゃない!」

「だから手を掴んでよ!」

「僕達も唯の苦しみを背負わせて!」

「嫁、私の手を掴め!」

 

それを見て唯は嬉しかった。

それと同時に自分が欲しかった力がわかった。

 

(そっか、俺が欲しかったのは・・どこまでも届く・・俺の腕・・こうすれば、簡単に掴めたんだ・・。)

 

唯はバースの手を掴み、ゆっくりと着地。

そこへ箒たちが駆け寄る。

 

「全く・・。」

「一夏がいなかったら潰れたトマトみたいになってたわよ。」

「終わったね。」

「唯くん・・やりましたね。」

 

いろんな声が聞こえるなか、唯と束は割れたシャチコアを手に空を見上げる。

 

「・・愛流。」

 

唯はこの戦いの後、恐竜コアメダルが無くなった事で五感を取り戻す。

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「シャルロット・・お前にこんな事をさせてしまって・・本当にすまない・・!」

「お父さん・・!」

(・・ったく、オッサンは不器用だからなぁ・・けどもう心配はいらないな。)

 

シャルロットをフランス・デュノア社へ連れていき、シャルロット・デュノアの解放の依頼人である社長との会合に立ち会い、二人の和解を実現。

 

とあるスタジオ

 

帰国した唯は一夏のマネージャーから渡されたスケジュール帳を見つつ、撮影終わりの一夏の荷物を持つ。

 

「おら、一夏行くぞ。マネージャーさんが夏風邪で倒れて三日間のスケジュール管理を任されたからな。」

「待ってよ〜。」

「お前は代表候補生だが人気モデルでもあるんだ。今日も結構詰まってるから覚悟しとけ。」

「ふぁ〜い・・。」

 

一夏の臨時マネージャーをやったり・・。

 

篠ノ乃神社

 

「・・約束だったからな。お前が巫女の舞を舞える時になれば見に行くって。」

「唯・・///」

 

箒の巫女の舞を見に行ったりしてそれなりに充実した夏休みを過ごした。

唯は人間を取り戻し、過去の戦いのケジメを着けた。

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とりあえず壊すものと守るものの物語はここで一端の結末を迎えます。

 

この後はどうなるかは・・まだ未定です。

 

長い間ありがとうございました!

説明
一応の完結です。

ここまで来るのにえらい時間かかったな・・。
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タグ
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