仮面ライダー Rainbow of the oblivion―忘却の虹― 16話 |
「ッ!」
未確認生命体が振りかざす腕を見て、クロームは思わず目をつぶってしまう。
回りには戦闘ができない者と攻撃に間に合わない者しかいない。
絶体絶命……クロームは死を覚悟してしまった。
だが、
「おおおおおおおおおおっ!!!!」
「グガッ!?」
高速移動してきた超死ぬ気ツナによって阻まれた。
未確認生命体はツナに突き飛ばされたがすぐに起きようとする。
だがその前にツナは未確認生命体を上に高く放り投げた。
さらにそこからツナは特殊な体制に入る。
それはツナにとって最大の技、その名を……………
「X……BERNAR………!!!」
それを食らった未確認生命体は跡形もなく消し飛んだ。
勝利を確信したツナは通常モードになり、リト達に駆け寄る。
「みんな!ケガしてない?」
「ボス…私は平気…」
「…ランボとイーピンも大丈夫」
「……………………」
「よかった、みんな無事で…」
ほっと一息ついたツナだったが、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。
おそらく近所から連絡があったのだろう。
リト達は騒ぎにならないように学校から離れていった。
――――――――。
「ふう…ここまで来れば大丈夫だよね」
「…ツナ…ひさしぶり…」
「あ、そうだね…ひさしぶり、リト」
「ボス…いつ帰って来たの?」
「ついさっき。骸が並中にいるって言うから急いで来たんだ」
「!骸様、いるの!?」
「うん、それで二人ともきてほしい所があるんだけど……勿論、ランボとイーピンも」
「行く…」
「…おつかい…」
「おつかいしてたの!?でも後で行けるから大丈夫だと思うよ?」
「…じゃあ行く」
「それでボス…どこに行くの?」
「うん、まあ…ついて来ればわかるよ…」
ツナはリト達を連れてとある高層ビルに連れていった。
ツナはメモを見ながらエレベーターに乗り、ボタンを押していく。
暫くして目的の階につき、エレベーターから降りる。
そこはビルの中とは思えない、まるで西洋の城のような廊下だった。
「…これは……」
「キャッスルドランの中だって……俺も日本に帰る時に乗っけてもらったんだ」
「すごい…」
「えっと……ここだよね…」
メモを再び見ながらツナはとある部屋の扉を開ける。
そしてそこにいたのは――
「お帰り、綱吉クン♪ちゃんとつれてきたみたいだね♪」
「クフフ…お早いお着きですね、沢田綱吉」
紅茶を飲んでいる白蘭と骸、真六弔花、それにこの場にはふさわしくないこたつにうつぶせで入っている長髪の男。
「…白蘭……と…パイナップル?」
「待ちなさい平沢梨斗、君はこの頭を見てそういったんですか!?それだと彼女も同じではないですか。それよりも先程も会いましたよね!?」
「骸…様…」
「…骸だったの?」
「全く…口調や声で判断してほしいものですね。それよりこちらには反応しないのですか?」
「ああ〜?」
だるそうな声を出しながら男は顔を上げる。
その顔を見て、リト達は大変驚いた。
何故ならばその顔は白蘭と瓜二つだったからだ。
「…白…蘭…?」
「似てる…」
「そっくりだもんね!!」
「ビックリ!!」
「ああ、紹介するよ、彼はGhost。僕の兄さんさ♪」
「…兄弟…いたんだ」
「うん♪」
「おい白蘭……チューチューゼリーまだか?いい加減腹へった」
「まだ時間かかるってさ……お腹へってるんなら他のもの食べれば?」
「噛むのめんどくせぇ…」
「はは♪こんなふうにめんどくさがりなんだ♪」
正直言って、顔以外似てないだろ…
そんなことを言いたいツナだったがそこは我慢してリト達につれてきた目的を話す。
「ここにつれてきたのは検査のためなんだ」
「…検査?」
「うん…リボーンと同じアルコバレーノのヴェルデって言うやつがきてその…仮面ライダーってやつについて調べさせろって言って来たんだ。それでリボーンも承諾しちゃって今も獄寺君達や途中で捕まったモモタロスさん達も検査を受けて…」
「ええ、彼らももうそろそろ帰って来るでしょう」
そそれから数分後…扉から獄寺達が戻って来た……なぜか身ぐるみを剥がされたように。
彼らの顔には生気がなく、何があったか一番まともそうな山本に聞いてみると、
「ははははははははははは……生き地獄……なのな…はは…ははははははははははは(ry」
だそうだ。
一番まともでもかなりひどかった。
「なんだ、もう続きやってたのか」
「リボーン!それにヒバリさん!?」
獄寺達を介抱して数十分…リボーンはヒバリをつれて来た。
何故ヒバリがここにいるかと言うと、リボーンが検査を受けると好きな相手と戦えると約束したからであった。
「群れるのは嫌いだけど好きな相手と戦えるからね……ちなみに戦うのは小動物だよ」
「お、俺ですか!?」
「一度あの状態の君と戦いたいと思ってたんだ……容赦はしないよ」
「むむむ、無理ですよそんな急に!」
「…なあ獄寺」
「何ですか、リトさん?」
「…ヒバリってツナのこと好きなの?」
シィーーーーーーーーーーーーン……
その瞬間、その部屋から音が消えた。
「あの…リトさん?そういう意味じゃなくて……」
「…いつもヒバリの側に小動物いるから小動物好きなんじゃない?……ツナのこと小動物っていってたからツナも好きってことじゃあ…」
「だが平沢、ヒバリも沢田も男だぞ?」
「…好きな人に性別は関係ないってママンさんが言ってた」
「なにしてんだよあの人!!?」
「 」
「クハハハハハ!傑作ですね雲雀恭弥、同性愛とは!」
「…骸もじゃないの?」
「は?」
「…好きな人ほどいじめたいってママンさんが言ってた」
「本当なにしてんだよあの人……」
「骸のはイジメのレベルじゃねーけどな」
いきなりのことにヒバリは恐ろしいほど無表情になり、骸は顔が硬直していた。
すると扉から一人の赤ん坊が表れた。
「おい、リボーン……新しい研究対称はまだか」
「待ってろヴェルデ、すぐに連れていく」
その赤ん坊はヴェルデであった。
彼はしびれを切らして自分から来たようだ。
「ホラ、行くぞリト」
「…うん…ヒバリと骸は?」
「連れてこい」
「…うん」
「あ〜リト…死なないでね…」
「?…うん」
数十分後…
「オデノカラダハボドボドダァァァァ…」
「リトォォォォォォォォ!!!」
「平沢死ぬなあああああ!!」
「キズは浅いぞ!!」
「心肺蘇生するんだ!!」
「生きろ!!生きろぉぉぉぉ!!!!」
検査後、リトの状態はかなりひどかった。
特にアパート組が今つきっきりで看病している。
ヒバリと骸に関しては先程の一言で精神がつきかけているようだ。
「……………」
「クハハハハハ…」
「うわ、すっげー顔…」
「骸様……」
「それでは検査の結果を報告しよう」
「あれスルーすんのかよ!!」
ヴェルデは被害者については全く気にせずに報告した。
「まず、君たちのあの姿にはフォームチェンジ…つまり形態を変える力がある」
「リトさんが青くなった時だな」
「だが、山本武とある意味アパート暮らしの君たちはできないがね」
「えっマジで?」
「ねぇねぇ!何でボクたちできないの?」
「野上性の君たちと桜井性の君たちは別々の仮面ライダーの別のフォームということだ」
「どういうこっちゃ」
「話を続けよう……私はそのフォームと君たちの変身する姿の名前を考えた。使いたければ使うがいい」
そういってヴェルデは一人一人に紙を渡す。
「あと平沢梨斗について面白いことがわかった」
「…俺?」
「君の身に付けているベルトから神経状のものが出てきて体中に張り巡らされている。それにより身体能力と五感が一般人よりかなり優れている他、あらゆる毒や細菌の耐性ができる体質なようだ……実に面白い」
「(ビアンキの料理でも大丈夫なのか…ちょっとうらやましいかも…)」
「だが、どうにも納得が行かないことがある…」
「なんだ?」
「初代ボンゴレが作ったのが平沢梨斗の変身する姿なら何故それと同じではなく、『別々のタイプ』にしたのか全く理解できない」
「そういやそうだな……どれも全く別の姿だったけな」
「まあ、そんなところだ……まあせいぜい頑張りたまえ」
そう言いながらヴェルデは部屋を出てしまった。
「んじゃそろそろ帰っか、明日から学校だろ?」
「そうだった!早く寝ないと…」
「…ツナ、リング……貸してくれない?」
「えっ…あ、そっかリトって作れるんだよね…仮面ライダーの力」
「…うん…だから作っておかないと…」
「じゃあ…はい」
そういってツナはリングを外し、リトに預ける。
「できたとしても、それを使うにはまだはえーぞ、ツナ」
「リボーン!」
「…どうして?」
「ツナはいま焦ってる状態だ。そんな生半可な覚悟じゃやられるからな」
「わかったよ…」
まだ納得が行かないがひくツナ。
その場にいた全員が帰る支度をしていると、正気に戻った骸がクロームと話始めた。
「クローム、少し話が有ります」
「?骸様…?」
「君はもう黒陽に居ては行けません…」
「!?どうして…」
「僕たちはいままでは互いを求めあう生き方をしていました…ですがもう僕は自由となり、その必要はなくなった。これにより、君は霧の守護者ではなくなるでしょう」
「……………」
「君には僕の代わりとしてよくやってくれました、これからも内臓を幻覚で作りましょう…だから凪……君はもう、マフィアと関わるのはやめなさい」
「………ッ!」
突然、クロームは部屋を出てしまった。
ツナはその一瞬でクロームの片方しかない目から涙を流しているように見えた。
「クローム!」
「ツナ、追いかけろ!」
「わかった!」
「十代目!俺も…」
「獄寺はいい…ツナで十分だ…」
「ですが!」
「いいよ獄寺君、俺だけで大丈夫…」
「……十代目がそうおっしゃるのなら…」
ツナは軽く獄寺を説得し、クロームのあとを追いかける。
「あい変わらず甘い人間だ、沢田綱吉…」
「…骸…」
「どうかしましたか?平沢梨斗」
「…お前…優しいな…」
「………何を言っているのですか?」
「…クロームにああいったのはわざと自分から関わらせないようにするためだろ?そうじゃなきゃあんな言い方しないよ……」
「まあそう言うことにしますか……おっと、いい忘れるところでした、アルコバレーノ」
「なんだ?」
「クロームを預かってはくれませんか?彼女は住む場所がない…できれば沢田綱吉の家に住まわせてほしい」
「そういってツナの体を手に入れるつもりだろ」
「クフフ…ばれましたか…あわよくば、ですけどね」
「…獄寺……何か骸が変態に見える…」
「リトさん、変態じゃなくて変人です」
「おいチューチューゼリーまだか、もう我慢できないぞ…」
「あー……それなんだけど交通渋滞で二時間かかるって」
「(ブチィ!)おい、二世……出掛けるぞ」
『フム……どこへ?』
「渋滞だ……いい加減腹へった、もうまってらんねぇ…」
『後でスイカを食わせろ』
「ああ……………しゃぁぁぁぁぁぁぁ!いぃぃくぜぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「「「なにあいつ、性格ちがくね!?」
「兄さん怒ると怖いからね♪」
ツナは必死にクロームを探していた。
最初に出ていった時と時間差があり、どこにいるかわからずにいた。
「はあ…はあ……どこにいっちゃったんだろ…」
走り続けて約五分……体力がないツナはすぐに息切れしてしまった。
クロームが行く場所などあまり接点がないため、予想できない。
もう近くにいないのでは、と考えたがなぜか足が進むのをやめない。
そして近くの公園に入っていった。
「あ…ボス…」
「クローム!」
そして目の前にいたのはブランコに乗ったクロームであった。
「どこいってたんだよ!心配したよ!」
「……………」
「クローム?」
ツナは話かけるが顔を伏せたまま黙っているクローム。
「ボス…あのね、私誰かに必要とされたのたの骸様が初めてなの」
「えっ?」
「私……事故で内臓を無くしたときに、ママから臓器移植をされなかったの……」
「…………」
「それでね……夢の中で骸様に会ったの……その時から骸様の……力になりたいって……思…って」
「ちょっ…な、泣かないで…」
「でも……もう、必……要…ないって…」
「………それは違うと思う」
「ボ…ス…?」
「本当に必要ないって思ったらそうすなおに言うと思うよ、骸なら。それに感謝してるって言ってたじゃないか。たぶん君をこれ以上危険にさせたくないからいったんだよ」
「でも……」
「クロームを必要としている人なら他にもいるよ?獄寺君に山本、お兄さんにランボ、たぶんヒバリさんにイーピン、京子ちゃんにハル、ビアンキに母さん、それに俺も」
「ボス…も?」
「勿論!マフィアに関わっても関わらなくても、俺たちはクロームと一緒にいたいと思ってるよ?友達として」
「友達……」
「だからクローム………君は俺達にも骸にも必要なんだ。……これからも一緒にいる友達として」
「っ!!ボス………」
嬉しかった………骸以外にも必要としてくれる人がいて。
自分は骸の言う通りボンゴレファミリーになった。
それは骸の力になりたいと思ったからだ。
だが、自分と接してくれる人がたくさんいて、自分を必要と思ってくれている。
それだけでクロームの心は満たされた。
左目から涙が先程より多く溢れてくる。
そして思わずツナの胸に顔を押し付けて泣いてしまった。
「あっ…えーと………」
こういう状況は初めてなのでツナは身動きがとれないでいた。
当然、きていた服は涙で濡れてしまっていたが、気にするほど余裕がなかった。
唯一できたことは、彼女の頭を撫でることだけだった。
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