一刀の晋王転生録 第四章十一話 |
姓:司馬 名:昭 性別:男
字:子上
真名:一刀(カズト)
北郷一刀が転生した者。
姓:司馬 名:懿 性別:女
字:仲達
真名:理鎖(リサ)
一刀と瑠理の偉大なる母。第三章で死亡した。
姓:司馬 名:師 性別:女
字:子元
真名:瑠理(ルリ)
母を目標にする一刀の姉。一刀を異性として愛す。
姓:張 名:春華 性別:男
真名:解刀(カイト)
一刀と瑠理の父にして、一刀の師。
姓:王 名:元姫 性別:女
真名:美華(ミカ)
一刀に異常なまでに執着する一刀の妻。
姓:ケ 名:艾 性別:女
字:士載
真名:江里香(エリカ)
後の司馬家軍の宿将。司馬家に対して恩を感じている。
姓:賈 名:充 性別:女
字:公閭
真名:闇那(アンナ)
司馬家の隠密。一刀のために働くことを生きがいとする。
姓:王 名:濬 性別:女
字:士治
真名:澪羅(レイラ)
後の司馬家の水軍の将。一刀を気に入り、司馬家のために戦う。
姓:司馬 名:望 性別:女
字:子初
真名:理奈(リナ)
一刀達親戚で、一刀と瑠理とっては義姉という立場。
姓:杜 名:預 性別:女
字:元凱
真名:綺羅(キラ)
一刀とは同期。親同士の仲は良くないが、当人達の仲は良い。
両軍、特に変化のある動きをせず、戦い続けている。
一刀、姜維は互いに突破口を見つけられず次第に焦りが大きくなる。
(不味い! 兵達も大分気力が目に見えて衰えている!)
(ち! やはり消耗が激しい! このままでは洛陽まで持たん!)
一刀はこのままだと負けると思っている故に、姜維は勝てたとしても洛陽に着かなければ無意味だと思う故に。
「姜維! 今度こそ倒して見せる!」
「来たか! 確か、 ケ艾と言ったか」
ここまで来ると流石に彼女の名前は嫌でも覚える。
姜維は一刀と討つために、江里香は一刀を彼から守るために何度も戦った。
(くそが! こいつが居なければ少しは楽になるんだが)
自分と互角に打ち合う者がいるだけでここまで上手くいかないのかと彼は思い知らされる。
「そこです!」
さらにまたも理奈による援護射撃が彼に襲い掛かる。
(ち! こいつも絶妙なところで攻撃してきやがる!)
この日も無理でと判断した彼は、撤退する。
「! 逃がさんぞ姜維!」
それを見た解刀が彼を討つため、すぐさま追いかける。
「解刀様!」
それに慌てた江里香、そして理奈は解刀を追う。
「てや!」
姜維に追いついた解刀は彼に剣による斬撃を繰り出し、姜維はそれを受け流す。
「お前は危険だ! 何としても討つ! 息子達の未来のために!」
(何!? こいつ、司馬昭の父親か!)
姜維はここで解刀が一刀の父親であることを知る。
「ふん!」
そのことに驚きつつも、彼は打拳を放つ。
「く!」
解刀は後ろに下がって回避した。
その隙をつく形で、姜維は前線から撤退に成功する。
「解刀様、無茶はやめてください!」
「江里香の言うとおりです。ご自重ください」
「……すまない」
彼は二人に謝罪するも、姜維を討とうとする姿勢を改めることは出来ないでいた。
(またも逃がしたか……状況判断も良い、さらに武も智もあると来た……何としてもこの戦で討ち取らねば!)
解刀は父親として、一刀達の将来のために、この先間違いなく一刀達の大きな壁となり、行く手を阻む存在になる彼を放っておく訳
には行かないからだ。
(次こそは何としても!)
彼をそう決意し、自分達の陣に戻る。
陣に戻った姜維は解刀の行動について考える。
(奴め、司馬昭のために俺を討とうと躍起になっているようだな)
解刀が姜維を追って来たのはこれが初めてではない。最初こそは深追いしなかったが、姜維の実力を把握した解刀は彼を捨て置けな
くなり、次第に追撃が増えていた。
(あの男……ひょっとしたら罠にかけることが出来るかもしれん)
どんな罠を仕掛け、その後はどうするべきかを考える。そして至った、ある策に。考え付いた彼の表情は獰猛な笑みを浮かべる。
(……くくく、これなら一気に洛陽まで行けるかもしれんな)
早速彼は、部下に作戦を伝える。
(そうだ、洛陽に着く算段が出来れば司馬昭を討つことにこだわる必要は無い)
その翌日、姜維はまた司馬昭の元に一直線で向かう。当然、江里香、理奈、そして解刀がそれを阻む。
(来たか……)
姜維は三人に立ち向かっていく。
――何度か打ち合っていると姜維は撤退する。
(今度こそ!)
解刀はすぐさま彼を追う。
「ま、待ってください!」
「解刀様!」
二人は必死に解刀に追いつこうとするが、そこに五胡の兵が立ちふさがった。
(し、しまった!)
(これは……罠!)
二人はこれが姜維の罠であることを瞬時に理解した。
「く! 退きなさい!」
「邪魔です!」
二人は一刻も早く五胡兵を打つ。
手遅れになる前に。
解刀が姜維を追い続けていると、ついに彼に接触する。
「そこだ!」
解刀は剣を縦に振る。
「ふん!」
姜維はそれを腕で弾く。
(く、やはり厄介だな、その氣は)
彼は何度も剣を振るう。そして姜維はそれを何度も弾く。しばらくそれが続いた。
だが、ついにその均衡は破れる。
「ぬ!」
姜維は体勢を崩してしまったのだ。
「今だぁー!」
その隙に解刀は剣に渾身の力を入れて振るった。
「かかったな!」
「何!?」
その時、ドスっという感覚が解刀の身体を襲う。
(矢……だと……)
ここでようやく解刀は自身が罠に掛かった事を理解した。
「その矢には痺れ毒が縫ってある。死にはしないが数日はまともに動けない代物だ」
(ぐ……)
すでに痺れ毒は解刀の身体を蝕み、まともに口を動かすこともままならなかった。
「こいつを連れて行け」
解刀は姜維達に連れ去られてしまった。
――少しして、その場所に江里香と理奈が辿り着いたが、そこには解刀の剣だけがあった。
(そんな……)
(遅すぎましたか……)
二人は表情に悔しさを滲ませながら、解刀の剣を持ち、陣に戻った。