乱れる |
闇の奥底から静かに落ちくる雪を、外に面した障子の隙間から腕を伸ばして手のひらで受けた。
形を持っていたのは一瞬で、肌に触れたと思う間もなく冷たい水へと変わった。
白い雪を見つめながら、先ほどまで触れていた同じ色をした細い背中を思う。
首筋に手を這わせ、そのままゆっくりと背中へと滑らせると女の口から堪えきれない悲鳴が漏れた。
肌に触れるたびに全身が震え、その振動で複雑に結い上げられた髪が少しずつ乱れていく。
――からり、ことん。
髪を彩る無数の飾りが耐え切れずに次々と畳の上へと落ちていく。
一つ落ちるたびに、女の抵抗が緩んでいくようで、声に出さず密やかに笑った。
「存外、佳い声で鳴いた」
喉の奥を震わせるようにして低く笑うと、静かに振り返り、開け放したままの襖へと視線を走らせた。
「閉めてもいかなかったか。……よほど慌てていたとみえる」
かろうじて体に掛かっている、というしどけない姿のまま、あの女は怒りに燃える目で俺を見据えていた。
「…何故こんなことを、か。そんなこと、言わずとも分かるだろうに」
――もう、私に関わらないで。
屈辱と羞恥で輝く瞳を、素直に美しいと思った。
「聞けぬな。そもそもお前がそんな姿形で俺の前に現れるのが悪い」
――勝手なこと、言わないで。
「お前は俺に触れられて、何も感じなかったか?体を震わせていたのは、嫌悪だけではなかったようだが?」
強引に連れ込んだ部屋で、女の酌で酒を舐めているうちに、ふと心に湧き起った戯れが促すまま、女の艶やかな紅の着物の襟元を大きく開いた。
細くなよやかな首筋と、ふっくらと盛り上がった鎖骨が蝋燭の灯りを受けて仄かに輝くのを見つめていると、突然のことに呆然としていた女の唇が大きく開かれるのに気付いて、強引に唇を合わせて声が漏れるのを防いだ。
女の腕が少しでも遠ざけようと胸を両手で押してくる。その儚い抵抗が可笑しくて、細い腰に片腕を回して強く引き寄せると、さらに深く唇を重ねた。
呼吸が思うように出来ないのか、腕の中の女が逃れようと必死に身じろぐのを、喉の奥で笑いながらも許さずにいると、少しずつ抵抗の力が緩んで最後に諦めたように両腕が下へと落ちた。
その隙を逃さずに女の上半身から着物を全て剥ぐと、重い着物が腰周りに力なく垂れた。
「いやっ」
女の口から小さな悲鳴が漏れたかと思うと、素早く身を翻して外へと逃れようとするのを、腕を掴んで止めた。
「…どうして、こんなことを?」
「気が向いたからだ」
一言で返すと、女の体が細かく震えた。
「…そんな、そんな理由で」
悲しそうな声で呟きを落とす女を無視して、手を伸ばして華奢な首筋にそっと触れた。滑らかな肌を実感して、思わず溜息を吐いた。手だけでは飽き足らず、唇を寄せると、くびの付け根に軽く歯を立てた。
掠れた悲鳴を漏らした女が、そんな己を恥じるように手で口を覆った。そしてくびだけで振り返ると、怒りと悲しみで濡れた目でこちらを睨めつけてくる。
真っ直ぐに向けられた目の中に、楽しそうに笑う男の顔が映っていた。
「そうだ、もっと俺を見ろ」
そう言って手と唇で背中をなぞっていくと、琥珀色の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「どうして…そんなことを言うんですか?」
「さぁな。…そんなこと、わざわざ口に出すまでもない」
「あなたは…いつもそう。肝心なことは言わず、要求だけ。私にどうして欲しいの?」
そう言って苛立った表情を浮かべる女を見据えながら、「相変わらず察しが悪い」と言った。そしてむき出しの二つの膨らみに触れると、両手にぐっと力を込めた
【了】
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風×千 島原の辺り。ち様が酷いやつです。閲覧注意。 | ||
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