一刀の晋王転生録 第四章十三話 |
姓:司馬 名:昭 性別:男
字:子上
真名:一刀(カズト)
北郷一刀が転生した者。
姓:司馬 名:懿 性別:女
字:仲達
真名:理鎖(リサ)
一刀と瑠理の偉大なる母。第三章で死亡した。
姓:司馬 名:師 性別:女
字:子元
真名:瑠理(ルリ)
母を目標にする一刀の姉。一刀を異性として愛す。
姓:張 名:春華 性別:男
真名:解刀(カイト)
一刀と瑠理の父にして、一刀の師。
姓:王 名:元姫 性別:女
真名:美華(ミカ)
一刀に異常なまでに執着する一刀の妻。
姓:ケ 名:艾 性別:女
字:士載
真名:江里香(エリカ)
後の司馬家軍の宿将。司馬家に対して恩を感じている。
姓:賈 名:充 性別:女
字:公閭
真名:闇那(アンナ)
司馬家の隠密。一刀のために働くことを生きがいとする。
姓:王 名:濬 性別:女
字:士治
真名:澪羅(レイラ)
後の司馬家の水軍の将。一刀を気に入り、司馬家のために戦う。
姓:司馬 名:望 性別:女
字:子初
真名:理奈(リナ)
一刀達親戚で、一刀と瑠理とっては義姉という立場。
姓:杜 名:預 性別:女
字:元凱
真名:綺羅(キラ)
一刀とは同期。親同士の仲は良くないが、当人達の仲は良い。
(俺は……一体……どうすれば?……)
一刀は脳内での激しい混乱の果てに、頭が真っ白になっていく。
(姉上……母上……教えてくれ……どうすれば良いんだ?)
そして彼は自分で決断することを止め、他者にそれを求めた。
(父上……)
人質にされている父にすら答えを求めようとしたその時である。
(なぁ、一刀……お前はその剣術で、その軍略で、いずれ得る権力で何を守りたい?)
一刀の脳裏にある場面が浮かぶ。それは、解刀から幼いころに武を教えてくれた頃の時である。
「皆を守りたい!」
「皆とは?」
「母上、父上、姉上、そしてここに住んでる人達を守りたい!」
解刀は盛大に笑った。
「はっはっは! 欲張りだな! 一刀は」
「助けることに欲張ったらだめなの?」
「いや、大いに結構だ。俺だってそうだからな! だからむしろ欲張れ!」
「うん!」
幼い一刀は万遍な笑みを浮かべた。これに解刀もつられて微笑む。
「一刀」
解刀は一刀の両肩に手を置いた。
「そう、俺だってそうなんだ……お前と同じで俺も出来るだけ多くの人達を助けたいし守りたいんだ。そして」
肩に置いた手が少し力がこもる。
「お前や理鎖、瑠理のことは自分が死んでも守りたいと思っている。自分が死ぬことでお前達が助かるなら俺は平気で命を差し出すだ
ろう」
それは解刀の覚悟だった。
だが、一刀は言葉に対して泣き出してしまう。
「父上が死ぬのは嫌だー!」
幼い一刀ではこの時、父が死んだら嫌だとしか思わなかった。
「あぁ、今の一刀じゃ難しかったか? ほら泣き止めって……」
解刀は何とか一刀を泣き止ませようとする。
「それぐらいお前達が愛おしいってことだからさ……なっ」
その後、何とか泣き止んだ一刀は解刀との鍛錬を始める。解刀の覚悟をあまり理解できないまま。
(俺と同じように……皆を守りたい、自分の命を差し出してでも……守りたい……)
今、一刀はあの時の事を思い出し、解刀のあの時の覚悟を理解した。
(俺が……俺がここにいる理由は……)
そして思い直す。己が此処にいる理由を、使命を。
(俺は……俺は!)
一刀は立ち上がった。
「理奈様、貴女の武器を貸してください……」
「え? でも一体何のために?」
「いいから貸してください! 急いで!」
「だから一体」
「貸せ! 理奈!」
「! は、はい!」
呼び捨てで怒鳴られた事と、その時の一刀の気迫に理奈は反射的に弩を渡す。
「出陣の準備をしろ! 今すぐに! 馬騰殿にも伝えろ!」
「は、はい!」
此処にいる全員がそう返事をして準備に取り掛かる。
(父上……俺は……)
一刀も準備を始める。その瞳には、ある決意が込められていた。
一刀達はついに姜維に追いついた。
「貴様等止まれ! この男が! そしてこれが分からないか!」
やはり姜維は自分と同じ馬に乗せてある解刀に刃を突きつけ、一刀達を脅した。
「これ以上動けばこいつの命は無いぞ!」
姜維は不適に笑う。前回から今回まで観察した一刀の性格を考えるとこの時点で解刀を見殺しなど出来ないと思っていた。
「姜維! 俺は! 父上は! お前に屈しない!」
あろう事か、一刀は理奈から借りた弩を構える。
一刀の動きに此処にいる味方が、敵が全員驚く。
「一刀! まさか貴方は!」
「一刀様! 無茶です!」
「一刀様! 此処は私が隠密行動で!」
「お頭!」
「ちょっと! いくらなんでも無理よ!」
五人は一刀を止めようとする。
(あいつ! やけになってここから俺を狙うつもりか! だが無意味だ! 借りに打ったとしてもこいつを盾にするだけだ! それが
わからん貴様ではあるまい!)
姜維は驚きながらも、冷静さを保っている。
だが次の一刀の言葉でその冷静さも失うこととなった。
「父上……俺は……貴方を殺す! 国を……民を……何より……姉上を守るために!」
一刀は涙しながら宣言した。
(な!?)
異常、そんな言葉が姜維の頭の中を走り回る。
一刀の部下の五人は唖然として止まってしまっている。
(そうだ……それで良い、一刀)
解刀は目を一刀に向ける。その時、自分の口が動かせるのが分かった。分かった直後、解刀は力の限り叫ぶ。
「そうだ! 打て! 打て一刀ぉ! これ以上奴らを進ませるなぁー! 俺を人質としてでは無く将として死なせろぉー!」
続いて一刀が味方に叫ぶ。
「皆ぁ! 弓を構えろぉ! 父上ごと奴等を打てぇー!」
「し、しかし一刀!」
理奈が躊躇いの言葉を、全員の代弁を言う。
「頼むぅ! 打ってくれぇ! 父に……洛陽襲撃のきっかけになったなどと言う不名誉を付けないためにも! 父上が守りたいと思っ
ている民のためにも打ってくれぇ! それに奴等に父上の命を奪われるくらいなら俺が貰う! 頼むぅ!」
「一刀……」
涙ながらに訴える一刀にその理奈もまた涙し決断する。
「! 構えよ!」
「畜生! 畜生!」
「くそう! 張様!」
弓を構えた全員が涙する。そして……
「打てぇー!」
一刀が矢を放ったのを合図に、弓兵全員が矢を放った。
(ぐあ……)
そして姜維の盾にされた解刀の身体に無数の矢が突き刺さった。
第十三話
「第二次五胡撃退戦 一刀、悲しみの決断」
説明 | ||
一刀の決断。それは…… | ||
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コメント | ||
コメントありがとうございます。 やっぱり似てますか、伊達政宗に。しかし一刀に訪れた最大級の試練というものを考えたらこのようなことに……。(k3) これ見て真っ先に伊達政宗が思いつきました。(ヨシユキ) あぁ、やっぱりこの展開になりましたか。前回例に出した漫画、最後の方は父殺しの因果が巡っていましたからどうなることやら……(h995) お父さん遂に死す、司馬氏は2つの柱を一気に失った。この機会を華琳が見逃すだろうか?(ohatiyo) まるで伊達政宗だな、この一刀。(デューク) 父を討つとはそういう意味だったか。しかし姜維、これでお前は外道だ。人の命を平気で盾にする奴にもはや大義はないし、あったとしても世界は認めない。(BLACK) |
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