超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編
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『………キナ臭いね。この世の中』

「…………」

 

俺は、不貞腐れながらベットの上で寝転んでいた。

理由は、少し前にあったことだ。

神出鬼没なあの空から、まるで未来予知のように教えてくれた。総合技術博覧会の再会をシアンに伝えるために大急ぎで彼の工場に向かうと、そこには既にネプテューヌ達もいた。

どうして彼女たちが?と疑問が浮かぶが、聞く話によると依頼主がアヴニールの関係者であり、そこから聞いらしい。

とにかく、そのことをシアンに伝えると、天に昇るほど喜んだ。

しかし、それを一気に地獄に付き落とす様な狙ったと思うほどのラジオの放送が流れた。

その内容は、総合技術博覧会が再会されると喜ばしい内容に思えたが、主催が国政院に移ったのだ。

これが、どういう意味を成すのか……少し考えれば、分かる。

 

まだ、確たる証拠はないが、アヴニールと国政院は影で繋がっている。

何故なら、アヴニールは民意の塊で国政院は、それを欲しがっている。

そして、アヴニールは自分たちの支配市場を維持するために国政院の権利が必要だ。

お互いの欲は、うまく絡まって、結ばれてしまい、ラステイションの政治と市場を手中に収めてしまったのだ。

 

あのアヴニールの話題が出た時の神宮寺の反応から推測するすれば、恐らく監視の目があると思っていい。

幾ら権力があろうと、権限があろうと、それを発するのは一人の人間でしかない。

教祖になっとしても、下が動けなければ全く意味がない。

かと言って自分が動こうとすれば、国政院は餓えた欲望の邪魔となるため彼らに動きを阻害されていると思っていい。

 

話は戻すが、今回の総合技術博覧会のテーマは『兵器』だとシアンが言っていた。

そして、それは今年に伝えられたことーーーそして、アイエフは言っていた。

アヴニールは((三年前|・・・))から準備をしていたと。

 

後は、もうため息を吐くしかない。

恐らく、アヴニールが国政院にあらかじめジャンルを決めさせていたのだろう。自分たちがゆっくり確実に優勝を狙うための時間を、そして他の物に圧倒的不利の状況を造らせるために。

 

 

『人の欲望は、どこの世界でも深くて、ため息が出るよ』

 

デペアの発言に俺は、誘われるようにため息を吐いた。

シアンは、とりあえず博覧会が再開されるだけで喜んでいたし、自分の全ての注ぐだけだと言っていたが、そもそも博覧会は、((女神だけ|・・・・))が評価するものじゃない。

調べたところ、特別枠が存在していたが、評価するのは女神と教会の連中だ。

つまり、今現在に置いて、辺境の地へと追い詰められている教院派がいない国政院派が無双状態のこんなときうに((公平な評価|・・・・・))なんてされるかどうか………。

 

『ニヒル、君の考えは十中八九正解だろうね。もしあのシアンがアヴニールっていう会社の造る物より、凄い物を造れたとしても、評価されるかどうか……ぶっちゃけ、最初から全部そういう風に計算されたんだよね』

「………どうすればいい?」

『今から国政院の連中が((不幸な出来事|・・・・・・)9で倒れるとか、そんな偶然が起こらない限りは、どう足掻いても、結末が決められているね。』

 

デペア……俺に((暗殺者|アサシン))のスキルとかないぞ。あと、毒とかにも詳しくない。

 

『だよねー。君はモンスターに敵、人間に味方と善と悪がはっきり分かれているからね。でも、いいの?』

「…………」

 

デペアの言葉に俺は口を閉じた。

このことを俺は、ネプテューヌ達にシアンに言っていない。

彼女たちのやる気の満ちた笑顔を見ただけで、俺は何も言えなくなってしまった。

 

『それは、優しさとも言う、ただ現実を早く教えてあげた方がいいと思うよ。残酷な現実を叩きつけられる前に、教えてあげるのも優しさと言うからね』

「俺に、あの笑顔を壊せと……?」

『………君がしていることは天国見せて、地獄に落す。蝋で固めた天使の翼を付けた人間を最後に太陽に燃える結末を知っていながら、何も告げず傍観することだよ?』

 

……………俺は、

 

『はぁ……こういう時ほど、感情って面倒だよね』

 

呆れるようにため息を吐いて、デペアの声が消える。眠ったんだろう。

 

 

「………はぁ」

 

徐に自分の手を見た。

とても無力だ。剣を握っているだけの幾多に人々からモンスターの脅威から守ってきた……そんなことをしても、俺は結局、命しか守れていない。

モンスターによって、肉親を奪われた泣き叫ぶ家族を見たことがある。

モンスターによって、恋人を喰われモンスターを呪詛を吐く人物を見たことがある。

 

 

「俺じゃ……人の心を救えない……守れないッ」

 

 

その役目は……この世界の希望である女神の仕事。

俺如きじゃ、決して入ることが出来ない未知の領域。

 

 

「………ん?」

 

今日は何だか凄く疲れたと思い一息睡眠をしようとしたところ、ノック音が耳に届いた。誰だ?と言う前にドアがバンッ!と強引に開けられ、そこには呆れた顔のアイエフと笑顔のネプテューヌがいた。

 

 

「た の も ー !」

「…………」

 

出来れば、会いたくなかった。

俺は、お前らに大切なことを黙っているのだから。

 

「こぅちゃん!こぅちゃん!ちょっと頼みごとがあるんだけど!」

「………なんだ」

 

邪険に相手にしちゃダメだろうと、内心呟いて俺は重たくなっていた腰を上げる。

 

「ねぷ子……あなた、返事もなく開けちゃ失礼でしょ?着替え中だったらどうするのよ」

「大丈夫!読者さんたちもそんなイベントを願ってもしてないから、そんなことが起きないことぐらい分かっていた!」

 

メタ発言乙。

 

「っで、どうしたんだ?クエストを手伝え……か?」

「違うよ。実は、拾ったの!」

「………猫か?犬か?面倒を見ろと?」

「可愛い女の子を拾った!」

 

…………さて、寝ようか。

 

「あっ、毛布被っちゃダメ!もしかして、私の言ったこと信じていないー?」

「女性が道端で落ちているわけがないだろう?俺じゃなかったら誘拐だと思われても可笑しくないぞ?」

「むー、本当だって!!」

 

ぽかぽかと叩いてくるネプテューヌを半眼で見ていると、アイエフがこちらに苦笑しながら一応事実よと言ってきた。

 

「マジか?」

「えぇ、ダンジョンで見つけてね。怪我の影響か、記憶喪失でね。私達はこれからシアンの依頼をこなさないといけないから子守って訳じゃないけど、念のために傍にいてほしくてね」

「了解だ。怪我は大丈夫なのか?」

「コンパが治療したから大丈夫よ」

「ちょ、ちょっと!あいちゃんと私のこの差はなんなの!?」

 

ネプテューヌ……お前の説明だと、肝心なところが欠落しまくっているんだ。

アイエフは、ちゃんと説明してくれたから了承しただけだ。

それを伝えるとネプテューヌは不機嫌そうに顔を歪めたので、頭を撫でてやると頬を緩ませた。

 

 

「…………うらやましい、ですぅ」

 

何だか、コンパらしき声が聞こえた気がする。

ドアを見ると恥ずかしそうに半顔だけ出して、俺を見つめているコンパがあった。

 

「はいはい、ねぷ子、行くわよ」

「ねぷっ!?こぅちゃんの手が放つ心地よい温かさに意識が奪われていた……なんて恐ろしい手…!」

 

俺はベットから立ち上がり相変わらずやる気と元気一杯のネプテューヌ達を送り出すと、俺はアイエフが言っていた可愛い女の子とやらに挨拶をしようと、ネプテューヌ達が寝泊りしている部屋のドアに軽くノックをした。

 

『あっ、はい!……あの、あなたは?』

「ネプテューヌ達の知り合いだ」

 

………何だか、少し前に聞いたことがある声だな。

暫くすると、鍵の開く音がしてドアが開くーーーそこには、

 

「ノワール…?」

「あなたは……!」

 

この重厚なる黒の大地の女神様がいた。

 

 

 

 

 

 

 

「えっと………記憶喪失?」

「違うわよ」

 

ぶっきら棒に返された。

なんで、態々ネプテューヌたちに嘘を付いたのか全くの謎だ。

不機嫌そうに顔を歪めているノワール、これじゃあの時のことを誤ってもあまり意味がない。

少しは機嫌を取らないといけないな……どうやって?

 

ベールなら新しいゲームやアニメをプレゼントすれば、直ぐに機嫌が良くなるが、ノワールはそんなに単純ではないことは考えなくても分かる。

 

 

「貴方にとって、女神ってなに?」

 

突然、ノワールが口を開いた。

それは、子供の様に迷い、縋っているような眼差しだった。

因みに、今の状況はノワールはベットに腰を落とし、俺はこの部屋に付属していた普通に椅子に座っている。

最初に出会った時の凛々しさはどこに行ったのか………。

 

とにかく、ノワールの質問に俺は答えるために考える。とはいっても大したことは思いつかないがな、それでも言えることは……。

 

 

「希望の象徴だ」

 

 

この世界……いや、人間と言う概念が女神に依存している。

人間の脅威とされるモンスターを女神は簡単に葬ることが出来るからだ。

それは、人間に出来ることでもあるが、圧倒的に実力不足だったりで消耗品のように消えていってしまうが、女神は信仰があるかぎり不老不死に限りなく近い存在となれるらしい。

そして、信仰が深いほど自身のステータスが上がり、更なるモンスターを倒すことが可能になる。

故に、人間が女神を想えば思うほど、女神は強くなり世界は平和になるのだ。

誰もが、その存在を認識、祈る。自分の未来が希望であることを願うからだ。

 

 

「私は………全知全能じゃない」

 

悲痛を感じる声で、求めても手に入れれないそんな諦めたようにノワールは呟いた。

 

「女神として、誰よりも頑張っているつもりよ。負けたくないから……だけど、努力した物が全て結果に変わる様な甘い現実なんてない。むしろ、空回りしてしまう事だって……ッ」

 

俺は黙って、彼女の訴えに耳を傾けた。

 

「希望の象徴……いい響きだわ。けど、貴方の問いをラステイション全ての国民が頷いてくれる?……そんなことない。私は器用じゃないから、たくさんのことを出来ないから……」

 

…………。

 

「ねぇ、黒閃……私って女神に向いていると思う?」

 

俺は返事に、彼女が顔を上げた瞬間を狙って、お凸にデコピンを放った。

 

 

「のわっ!?」

 

ネプテューヌのような奇妙な声を漏らして、ベットに倒れ込んだ。

 

「な、な、なにするのよ!」

 

黙って、部屋の窓に近づいて開ける。

どこにでもありそう宿屋の窓から見える光景は、ラステイションらしさの羅列する重厚な工場、高層ビルの巨大なスクリーンには流行りのアイテムのCMが、そして活気に溢れた声が人の川から聞こえる。

 

 

「………これは、お前が守っている現実だ」

 

俺は、その風景に指を差した。

 

「女神に向いているか?そんなこと、知らない。俺はお前の理想する女神を知らないからな。だけど、尊敬するよ」

「…………」

 

勝手な想像だがノワールには『自信』が限りなく少なくなっている。

一人でこの大陸を治めるそのプレッシャー、人間から常に出来て当たり前だとする視線、そんな中でラステイションの為に、そこに住む国民の為を守るために……そんな女神の使命を果たす重圧をこなせばいけない強制と言ってもいいこの状況。

彼女からすれば、人間より上位の存在である女神が人間に頼ることは、不安を煽ることになってしまうことを考えてしまうだろう。

 

「俺の手じゃ、守れない者が救えない者が、ノワール……女神さまには守れるんだから、救えるんだから」

 

それがどれほど苦しいか、重たいか……想像を絶するだろう。

複雑な表情のノワールに近づいて、彼女の座っているベットに並行しているもう一つのベットに座って、目線を合わせた。

 

「はっきり言ってやる。お前は、立派な女神だよ」

「!」

 

ノワールの瞳が揺れた。

 

「だって、お前はこの大陸をここまで繁栄させたのは、間違えなく、お前の実力で努力の結果なんだから」

 

俺に言えるのは、ただの慰めの言葉だけだ。

俺は女神じゃない、女神ほどの力も持っていない。

だから、だからこそ、背中を優しく支えて、押せるぐらいの力はあるよな……俺の手。

 

「ッ……うっ……」

 

嗚咽の混じった声。

彼女のスカートに涙が落ちていく。

 

「わ、私は、周りが、見えな、くな、るタイプ、で……」

「うんうん」

「妹に、心配させ、ないよう、に必死で、頑張って……!」

「ああ、凄いな」

「でも、どれだけ、頑張っても、プラネ、テューヌには、勝てな、くて……!」

「女神様が失踪しても、あそこの技術の進歩はすごいからなぁ」

 

苦悩ーーー頑張っても頑張っても、その努力が実を結ばないジレンマに彼女は苦しんでいるんだろう。

ゲームの様に素直に経験値がレベルアップに繋がるような、単純に世界は成り立っていない。

時にはどうしようもない時もある、そんな無情な現実と彼女は戦っているのだ。

 

ノワールに近づくいて、いつも凛々しい顔の裏で苦悩している彼女に俺はコートをゆっくり被せた。

心の底で積もった不安や恐怖を吸い出してくれるように祈って、そして全てが終わった後、彼女の笑顔が見えるようにーーーそう、願って。

 

 

 

 

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その15
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