超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編 |
ちょうど昼時の空は太陽が燦々と光っていた。
気温的には夏に近く、周囲を見渡せば半袖姿の人たちが良く見せる。
全身、真っ黒のコートは摩訶不思議な魔法により着ているものは気温が保たれた為、俺にとっては陽射しが多少鬱陶しい、くらいで暑くもない。
だが、そんなことはどうでもいい。
俺と肩を並んで歩いている少女。
この大陸を守護する女神、そしてこの世界の頂点とも言える存在である黒い女神ブラックハート兼ノワールは、子供の様に燥いで俺の手を引っ張っている。
「ほら、ほら、まだこんなものじゃないわよ!」
「はいはい」
こうなった少し前のことを思い出す。
辛いことを涙で流したノワールは、それを終始見ていた俺に秘密だと凄い形相で言ってきた。
一国の女神だから、やっぱり弱いところを見せたくないプライドが高い彼女らしい。
昼食は、宿屋で済ませた。俺も今日は昼の用事を夜に回すことにした。
この状況について説明するとぶっちゃけ、ラステイションには仕事目的しか来たことがない。
だから、俺はラステイションをゆっくり観光したことがない。
せっかく、この大陸の女神と仲良くなったのだか、是非ともこの大陸に付いて色々を案内してくれと頼んだ所、喜んで引き受けてくれた。
彼女にとって、やはり友達と言う存在は大きかったらしい。
思わずこちらも笑顔になるほどノワールは、とても喜んでいる。
周りの期待とプレッシャーからこの時だけは、生き抜き出来るようと望んだこのお出かけはうまくいきそうだ。
「それにしても流石、この大陸の女神だな。俺の知らない店とか観光地をいっぱい知っているんだな」
「えぇ、そういえば紅夜は狩ゲーとか興味ある?」
狩ゲーか……そういえば、今年に入ってオンラインである狩ゲーがリーンボックスでは流行っていたな。
ベールからオススメされて、やり始めたのだが、あんたモンスターに毎日戦っている俺にとっては、武器等のモーションが変わらないのが中々やりにくかったな。
「あるぞ、それなりにプレイしている」
「貴方は確かリーンボックス出身だったからあのオンラインの?」
「ああ、ベールに半分強制的にな」
ベールに合わすのは大変だ。
なにせ、人間より速い反射神経なんだから手馴れたプレイ捌きで半分嵌め殺しとか普通にする。
更に態々だが、女神化することで更に強化して、ほぼすべてが一撃死のボスとか余裕で倒していたからなぁ……。
「………ベールと仲良いの?」
「えっ?」
むすっ、と.さっきまでの笑顔は虚空の彼方へ。
不機嫌な顔で、ノワールは俺を睨むように見て来た。
「えっと……まぁ、それなりに」
昨日だって、寝る前にメールが来て、心配してくれた。
俺にとっては、お姉さん兼恩人的存在だ。
「ふーんっ……」
な、なんか俺、地雷踏んだのか!?
口を尖らせたノワールの視線に冷や汗が頬に流れ落ちる。
『黒ッ娘、安心していいよニヒルが緑ッ子に向けている感情は親愛だから』
デペア、起きたのか?
「なっ、私は別にそんなことで聞いたんじゃ……」
『君が不機嫌な理由が嫉妬に見える僕の間違いかな?』
ノワールが何かを強く言おうとしたときに、デペアの言葉に唇を噛んだ。
「えっと、ノワール?」
「べ、別に私は紅夜のことなんてなんとも思ってないわよ!」
………。
なんか、そんなに真正面から言われるとショックだ。
『ニヒル、ニヒル、こういうタイプは思っていることが逆の意味だよ。つまり黒ッ子はニヒルのこ「わぁー!わぁーー!!」クヒヒヒヒ、愉快愉快♪』
顔を真っ赤にして手を慌ただしく動かすノワール。逆……逆か……。
「ありがとうな。ノワール」
俺は笑顔でノワールを見つめた。
「俺もノワールのことを想っているよ」
「えっ!?」
「友達として」
「…………」(ガーン)
ノワールが地面に手を付けて「そっち……そっちなの」と呟いた。
なんとも濃い負のオーラが彼女を覆っていた。
『ねぇ、ニヒル』
「なんだ?」
『ワザとでしょ』
「なにが?」
呆れた様にため息を付かれた。
いみがわからないよ。
◇
「……綺麗ね」
「そうだな」
なんだか色々と合ったが俺達はショッピングモールやゲーセンなどで遊んでいたが、楽しい時間は短く感じるもので、いつの間にか空の頂上にあった太陽は大地の地平線へ沈みかけていた。
俺達は、それをラステイションの街並みを見渡せる丘の上の草原に座って、それを眺めていた。
どこからか吹く、頬を撫でるよう優しい風が、とても気持ち良い。
「今日は……ありがと」
「ん、どういたしまして」
夕焼けの空と同じ色をしたノワールは、風に溶けてしまいそうな声。
デペアは空気を呼んだのか、また寝た。
「………ねぇ、紅夜」
「ん……?」
「貴方、私の元で働いてみる気はない?」
「…………」
ノワールの言葉に俺は思わず目を開いた。
スカウトーーー、一国の女神が真正面から自分の力を求めている。
それは、胸から昂揚感を生み出した。
自分の力は女神に認め、欲しがるほどなんだと素直に嬉しく思った……けど、違う気がする。
誰かに仕えるーーーその行い、そのものが違う。
一時はリーンボックスの教会に種族するハンターとして働いていたが、直ぐにフリーの傭兵となった。
別に信仰が薄れたわけじゃない。ただ……俺には仕えていた相手が既にいたという即知感があったからだ。
信仰していたわけじゃなかった。
騎士の様に忠義を誓ったわけでもない。
あるのは、ただ真っ直ぐな信頼だった。
誰にそれを抱いていたのか、俺には分からない。
これは昔の俺が抱いた想いの残滓だと分かっていても、俺は誰かに仕えることが出来ない。
「……ごめん」
「そう」
謝罪の言葉に、ノワールは分かっていたようにだけど悲しそうに呟いた。
空は既に夕闇に染まってきている、そろそろ仕事に行かないと思い、腰を上げた。
「俺はそろそろ仕事だから」
またな、と言おうとしたとき、ノワールが口を開いた。
「私、諦め悪いわよ」
「…………」
「貴方が何かを背負っていることくらい直ぐに分かるわ。私は女神よ。いつか私の国と一緒に背負えるほどになってみせるわ」
「そうか………」
黒い女神ブラックハート。
何色に染められない黒色。
彼女の笑みは、唯一無二と呼べる程ーーー綺麗だった。
◇
夜天 空side
「ふぅ………」
僕はプラネテューヌの書類を終わらせたところで、窓際から星空が見えた。
女神も教祖も不在の一年間、たまりにたまった案件等をやっと終わらせて一息だ。
半日くらいずっと座っていた物だから、固まってしまった体中を軽く動かしながら光り始めているプラネテューヌを見る。
街灯にスイッチが入り、暗闇に染まる道を照らす。
大小合わせた人が住むビルや家にも光が発せられ、まるで地上に展開された星空のような光景が出来上がる。
「……何度目になるんだろうか。この光景を見るのは」
数えたことは無い。しかし体感的に100回以上は見ていると断言できる。
ゆっくりと目を閉じて、僕は彼女に向かって念話を開始した。
「そっちの状況はどう?」
『広くも狭くもない。居心地はあまりよくありません』
不満が混じった声音に思わず鼻で笑い、僕は空を見た。
星は、大陸の光の所為で見えない。故に空は闇夜に見える。
「マジェコンヌの反応は?」
『分かりません。ゲイムキャラ達にも協力してもらっていますが……』
「はぁ……厄介なことになったもんだ」
僕は深いため息を付いた。
僕が知っている二つの時間軸が結合しているこの世界。
この先に起きることは予想は出来るものの、可能性は均等でどう転ぶか分からない。
更には、この世界に絶対に存在しない紅夜まで出現したのだ。
今までの計算とか、ゲシュタルト崩壊もいいところだよ。全く
『なぜ、貴方は動かないのですか』
「僕が動くその時は、この世界が危機になった時だけだよ。この世界に起きることは女神が片付けなかきゃ」
確かに僕がその気になれば、全てを解決できるだろう。
しかし、僕は破壊神でなによりこの((世界の神様じゃない|・・・・・・・・・))。そんな存在が世界の天秤を揺らす様なことにすれば、理を歪めることになり後先更なる厄介ごとに繋がるかもしれない。
女神は守護としての役目があるように、僕は破壊が役目なのだから、僕が動けば二次災害が酷いことになるかもしれない。
それに……もしもの保険の為に、女神候補生がいるんだし。
『汚染されたマジュコンヌの体がどれほど持つか分かりません』
「言っておくけど、助けれないからね」
『っ…………』
僕はマジェコンヌと会ったことがないから、分からないけど、イストワール……君とは仲が良かったと聞いていた。
今回の様な筋書き通りのマジェコンヌ異変なら良かったけど、今回のこれはかなり勝手が違う。
「このまま犯罪神へと墜ちるのか……そうなった場合は処理する。場所はこっちでも探す」
『………お願い、します』
……((愛娘|・・))は、悲痛な今にでも泣いてしまいそうな声で嘆く様に呟いた。
『ネプギアさんは……』
「心配しなくても、ちゃんと面倒見ているよ。……まぁ、大好きなお姉ちゃんがいなくて落ち込んでいるけど」
『……そうですか』
見ていて思うけど、あんな娘が『((女神を要求する魔剣|ゲハバーン))』を手にするなんて未来は、本当に漠然と怠惰ーーーそして、争いが激化するとは考えにくいね。例え事例があっても。
「イストワール。君はまぁ……長期の休暇と思って、休みなよ……ブラッティハードの件もこっちでなんとか探してみる」
『……空さん……私は、悔しいです…』
「そうだよ。こうしなければならない現実を永遠に呪うのが正気だよ……もし、僕の様に慣れてしまったら、いいなよ……この世界をリライトしよう。やり直そうよ」
『空さん……』
「マジェコンヌに暴力されたらいいなよ。徹底的にボコってやるから」
それを言い残して、僕はイストワールとの念話を切った。
「さて、この不受理な世界の中で……偽りの秩序と平和はいつまで保たれるんだろうか」
空を見た。
やっぱり、光が全くない闇夜の空が広がっていた。
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