末終之界世その2 |
一定のペースで歩いていた俺たちだが、不意に雪乃が立ち止まる
「おい、なんか揺れてないか」
次に雄介が立ち止まると周囲を見渡す。
言われてみれば揺れているかもしれない。俺も足を止めてどれほど強いか判断する。
おそらく震度三あるかないかだろう。康には感じ取れないらしい。
「気に留めるまでもないな」
俺の意見にみんなが同意する。
これが俺たちの犯した最初の過ちだった。
パンダを見たいという康を無視して俺たちは本屋へ向かった。
ここの近くには古本屋もあれば馬鹿みたいに大きい本屋もある。
俺たちはまず古本屋へ足を向けた。中古だろうとやっぱり安いほうがいい。
「止まれ!」
入口まで来たところで誰かが叫ぶ。反射的に俺たちは立ち止まり、声の主を探そうとする。
しかしそんな叫びを忘れさせるほどの異常な事態が起きた。
なんと例えればいいだろうか。そう、アニメでよくある爆発音よりも鈍い音が俺たちの耳に伝わった。
音は本屋からだ。
「下がれ!」
命令が聞こえる。しかし唐突の事態に俺は動けない。
「ちぃっ!」
これは康の声か?
気が付いたら俺たちはさっきの位置から十メートルほど下がった場所にいた。
「お前ら大丈夫か?」
康が俺、雪乃、雄介の順番で確認する。
「だ、大丈夫だ」
雄介は驚き半分、恐れ半分といった声音で返事をする。
それもそうだ。今さっき俺たちがいた場所には本屋の看板が突き刺さっていたのだから。
これはなんなのか。本屋の建築に欠陥があったのかはたまたボロが来ていただけなのか。
考え始めたところでさらに異常な事態が起こる。
本屋の中から人間のものとは到底思えない叫び声が聞こえてきた。
それは犬とかいった生易しいものではなく、血に飢えた化け物が地獄から蘇ったような声。
「もう来ちまったのか」
「なんの話だよ」
一人で納得している康に俺は訊ねる。
「太陽圏外の生命体がこの地球を制圧しにきたんだよ」
「太陽圏外の生命体……?」
なんだそれ。宇宙人とでも言いたいのか?
普段の康が言っただけなら笑い飛ばせた。しかし状況が状況なせいで俺たちはその言葉を鵜呑みにする。
「そして私は……」
本屋から現れた狼のような生命体が現れる。
「危ない!」
雪乃が叫ぶ。康の背中に生命体は飛びかかった。
「こういった生命体を追い払う使命を帯びた超人間だ」
振り返りもせずに康は右腕を振るう。腕は生命体の顔面を捉え、生命体を本屋のコンクリートに叩き付ける。
そこで初めて康は視線を生命体に向ける。
「こいつが太陽圏外の化け物か。想像していたほどではなくて安心した」
再び口を大きく広げて飛び掛かる生命体。狙いは康の頭だ。
康は冷静に相手の速度を分析し、手の届く位置まで来たところで生命体の首を右手で鷲掴みにする。そして左手を頭に添え、そのまま首を一回転させる。
生命体にも骨があるのだろうか、木の枝を折るよりも痛々しい音を出しながら生命体は首をありえない方向に曲げる。
康が生命体を地面に投げ捨てると生命体は砂になって消えた。
「なるほど。死体でどんな生命体かは確認させてくれないのか」
感心した様子で大きく頷き、俺たちの方に目を向ける。
「お前たちに話さなければいけない。この地球の危機を……」
その言葉を聞いたところで俺の意識はどこかへ飛んだ。
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