世界樹のどこかで
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 薄暗い空間の中で二人の男はその両手に持った剣を交え対峙していた。

 お互いの身体はすでにボロボロであり、鎧をまとった男の片腕はとっくになくし、ドクドクと真っ赤な血を溢れさせていた。

「ハァハァ……テレジアのディセンダーよ、なぜ、ここまで抗う。なぜ、私の唱える、絶対的永遠の世界を貴様は理解しない?」

「……」

 鎧をまとった男は巨大な大剣を杖に使い立ち上がり、真っ赤な血で染まった目を吊り上げた。

「ウィダーシン、貴様こそ、目を覚ましたらどうだ! こんな事しても、何も解決しない。自分の世界を守りたいのはわかるが、他の世界を犠牲にしていい理由にはならない!」

「愚かな……私の提唱をまだ否定するか?」

「俺は……」

 男はガクガクと震える足を必死に鞭打ち立ち上がり、剣についた血を吹き飛ばした。

「テレジアのディセンダーだ……」

 キッと視線が交差し、ウィダーシンは気に食わない顔で叫んだ。

「私もかつては世界を救おうと努力した……だが、その結果がこのギルガリムだ。お前の世界も私が手を下さずともいずれ、ギルガリムのようになるぞ!?」

「させやしない」

「なに?」

 男は持っていた剣を突き刺すように構え、駆け出した。

「この世界は決して愚かじゃない! みんなが一生懸命生きる、俺の世界だ!」

「この……愚考者が!」

 ズシャッ……

 男の残っていた右腕が吹き飛ばされた。

「これで終わりだ!」

 ウィダーシンは宙に浮いた巨大な剣を振り上げ、男を切り裂こうとした。

 だが……

「まだ……死ねないんだ!」

「なにっ!?」

 男の身体がウィダーシンの懐に入り、

「ッ……!?」

 ウィダーシンの口から大量の血を流れた。

「ば、ばかな……」

「お、俺の勝ちだ……」

 口に咥えた折れた剣の刃をウィダーシンのノド笛に突き刺し、男は切り裂くように、身体を回転させた。

「奥義、啄ばみ!」

「カッ……」

 ノド笛を切り裂かれたウィダーシンは信じられない顔でドサッと膝を突いた。

「バカな……この私が……このような……」

 ウィダーシンの身体から黒い霧が立ち込め、

「私は間違ってなどいな〜〜〜い!」

 霧が弾け飛ぶようにウィダーシンの姿が消え、男は流れる血も気にせず、目を瞑った。

「これが道を誤ったものの……使命を見失ったディセンダーのなれの姿か?」

 一歩間違えば、自分の大切な女性すらも、このようになっていた。

 そう考えるだけで、男は恐怖で顔を強く振った。

「相棒……勝ったんだね?」

 ウィダーシンが消滅したのを確かめたのか、男の周りに妖精のような生物が飛び回った。

「モルモのおかげでもあるよ……俺がここまで戦えたのは君の協力があってこそだ」

「違うよ、それは君の力が強かったからさ……オイラはただ手伝っただけに過ぎないさ?」

「いやそんなこと……」

 ドサッと膝を突き、男は口から大量の血を吐いた。

「相棒!?」

 慌てて、身体を支えようとするモルモに男は大声で怒鳴った。

「来るな!」

「え……?」

 目を見開くモルモに男はやさしく首を左右に振り、世界樹の根元のある入り口をさした。

「先にカノンノに会って行ってくれないか?」

「なに言ってるんだよ? 一緒に行こうよ?」

 必死に男の身体を支えようとするモルモに男はさらに大声で言った。

「行くんだ! まだ、お前にはやることが残ってるだろう?」

 血の流れる口元をやさしく微笑みかけ、男はさらにいった。

「大丈夫、必ず、後を追うから……信じて待ってろ?」

「……必ずだよ?」

「ああ……」

 モルモは男を心配するようになんども後ろを振り向き、世界中の根元へと去っていった。

 姿の見えなくなったモルモを見送ると男はようやく解放されたように倒れこんだ。

「ありがとう……レディアント」

 ウィダーシンとの戦いで半壊した伝説の武具を見て、男は苦笑した。

「ありがとう……カノンノ」

 一緒に旅を続けた大切な少女の顔を思い浮かべ、男は次第に涙を流した。

「ありがとう……」

 そっと薄れかける意識の中、男は最後まで一緒に戦った戦友の顔を思い浮かべ目を瞑った。

「みんな、本当にありがとう……」

 ギルガリムの空間に亀裂が走り、男の身体は亀裂の中へと飲み込まれていった。

「ありがとう……モルモ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モルモが世界樹の根元までたどり着くと、待っていた少女に声をかけた。

「カノンノ……お待たせ!」

「あれ……彼は?」

 いつもモルモと一緒にいる、男の存在にカノンノは不思議そうに首を左右に振った。

 モルモは少し言いづらそうに顔を伏せた。

「すぐ来るらしいよ……」

「そう」

 どこか確かめるように自分を見るカノンノにモルモは大声で世界樹を指差した。

「あれ見て! テレジアの世界中からたくさんの光が!」

「あれは……」

 世界樹から飛び交う光を見て、カノンノは泣き出しそうな顔で叫んだ。

「私の世界、パスカの光……」

「あれはオイラの世界の光だ……」

 お互いに自分の帰るべき世界を見つめ、嬉しそうに飛び跳ねた。

「返って来たのね……私たちの世界が?」

「ああ! これで、オイラ達は帰れる……みんなのところに帰れる!」

 二人はなんども、子供のように喜び、笑いっあった。

 不意に二人は名残惜しそうに後ろを振り向き、テレジアの大地を見つめた。

「これで、この世界とはお別れね?」

「ああ……」

 モルモはそっとカノンノ顔を見返し、笑顔を浮かべた。

「じゃあ、もぅさよならしようか? オイラも、元の世界に返りたいし?」

「え、でも……彼が?」

 最後に別れを言いたい人物の姿を探し、カノンノは困惑した。

 モルモも一瞬、悲しそうな顔をし、強い口調で言った。

「彼はオイラ達を見つめてるよ……たとえ、どこに行っても」

「モルモ……もしかして、彼は」

 顔を青ざめさせるカノンノにモルモはさらに言った。

「帰るんだ! 今度こそ、オイラ達は彼の力を頼らず、自分たちの力で世界を変えなきゃ!」

「……う、うん」

 モルモの厳しい叱責にカノンノの頬に冷たい涙が伝った。

 カノンノはテレジアを見つめ、そっと願った。

「また、逢える日を楽しみにしてるわ……だから」

「さよならは言わないよ」

 二人は大粒の涙を流し、光が帰っていく世界へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイリリーのギルドでリフィルはそっと壁にもたれるクラトスに話しかけた。

「世界樹が泣いているわ」

「ああ……まるで子供を失った母親のように泣いている」

 帰ってくると約束した男の顔を思い浮かべ、クラトスははき捨てるように呟いた。

「お前が帰ってくるのをずっと待っているぞ……ずっとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 変わりゆく世界……

 いつかは滅ぶ、はかない世界……

 だが、いつかがあるから、人はがんばれる。

 生まれたばかりの男はたくさんの人たちと出会い、そのことを学んだ。

 だから、男は願った。

 また、素晴らしい友に逢える日を……

 次、現れる、新たなディセンダーに正しい道を示してくれる大切な友を……

 男は願い続けた。

 世界樹の見守るテレジアのどこかで……

 

 

説明
レディアントマイソロジー1の最終回を独自の解釈で構成して小説にしました。
割と出来はいいと自負してるつもりです。
どぅか見てください。
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コメント
ゲーム本編では主人公は死にませんが、やはり、世界のために身を挺した主人公は燃える展開じゃないでしょうか?(スーサン)
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テイルズオブシリーズ レディアントマイソロジー 最終回 

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