英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 463 |
〜フェミリンス神殿・最奥〜
「っ!?なんという霊圧……!」
「彼女がかの”姫神”………」
女性がさらけ出す膨大な霊圧を感じたセラウィは驚き、エリザスレインは真剣な表情で女性を見つめ
「――――”姫神”フェミリンスだな?」
「………………」
リウイは警戒した表情で女性に尋ね、エクリアは真剣な表情で女性を黙って見つめた。
「ええ。我が名はフェミリンス。人間達を愛し、守護する者。」
リウイの問いかけに対し、女性――――”姫神”フェミリンスは辺りを響き渡らせるほどの透き通った声で答えた。
「なんて澄んだ声………」
「それに凄い美人さんね。ママ達以上の美人さんが存在するなんて、レン、思った事もなかったわ。」
「………伝承は間違っていない事が今、証明されたな……………」
フェミリンスの声を聞いたプリネは驚き、レンは自分が知る限り以上の美しい容姿を持つフェミリンスに驚き、リフィアは真剣な表情で呟き
(グルルル………)
(フン………まさか本当に再び奴と対峙する事になるとはな………)
「……………」
それぞれの契約者を通してフェミリンスを見ていたカファルーとディアーネは警戒した表情でフェミリンスを睨み、エヴリーヌは膨大な殺気を纏ってフェミリンスを睨んでいた。
「………この”影の国”にこの私を取り込み、”守護者”にした”影の王”にどういった裁きを与えようと思っていましたが………今では彼の者に感謝しています。穢わらしき魔の血を引く子孫達と半魔神を愛した愚かな我が血を引きし娘、そして”魔”に敗北したあげく”神殺し”にその身を委ねた愚劣にして愛しき我が半身と”魔”と共にあろうとする人間達をこの手で滅ぼす事ができるのですから………」
そしてフェミリンスは静かに呟いた後、膨大な殺気を纏ってリウイ達を睨んだ。
「わかってはいたけど、話す余地はなさそうね………」
「フン。全ての元凶となった者と話す事なんて、最初からないわ。」
フェミリンスの様子を見たカーリアンとファーミシルスはそれぞれ武器を構えて、警戒し
「………滅されるのは貴様の方だ、フェミリンス。我が”覇道”は誰にも阻ません。例え”神”であろうとな………」
「………”幻燐戦争”の悲劇は貴女を律せられなかった私の責任………その責任を今、果たさせてもらいます。」
リウイは膨大な覇気を纏って決意の表情になったエクリアと肩を並べて共に武器の切っ先をフェミリンスに向けて言った。
「待って、2人とも。彼女と話をさせて。」
「俺も。」
その時、エステルとウィルがリウイに視線を向けて言い
「………人間以外の他種族を忌み嫌う奴に俺達の仲間であるお前達の話は通じんぞ。」
2人の言葉を聞いたリウイは眉を顰めて忠告した。
「………わかってる。それでもあたしは教えてあげたいの。」
「俺もエステルと同じ意見だ。」
「………いいだろう。」
そしてエステルとウィルはリウイ達の前に出た。
「魔と共に生きる愚かな人間達よ………魔と縁を切り、私の保護下に入りたいのですか?でしたら、貴女達の命は奪いませんよ?」
エステルとウィルを順に視線を向けたフェミリンスは静かな表情で尋ね
「ううん。あたしとウィルは貴女が間違っている事………そしてそんな貴女にわかってもらいたい事を教えるわ。」
「ああ。」
尋ねられた2人は首を横に振った後、静かな表情でフェミリンスを見つめて言った。
「……この私が間違っているですって………?他種族と比べ、全てが劣っている人間達を愛し、人間達が平和に生きていける世界を創ろうとしたこの私が間違っていると”人間”の貴女達が言うのですか?」
2人の答えを聞いたフェミリンスは膨大な殺気を纏って2人を睨んだ。
「ねえ、フェミリンス。どうして貴女は種族とかそんなの関係なく、”人”の善悪を見極めようとしなかったの?」
「人間達を害する他種族もいれば、人間達に力を貸し、共に生きて行く他種族もいるように………人間も同じじゃないか。善悪は種族問わず、この世に生きている”人々”が持っているものだよ。」
フェミリンスの叫びに対し、エステルとウィルは真剣な表情でフェミリンスを見つめて言った。
「何も知らない者達が勝手な事を………!他種族と比べ脆弱な人間達が力に怯える事なく、平和に生きて行く為には他種族は必要ないのです!」
「………じゃあ、もし他種族がいなくなって人間達だけの国になったら、どうなると思っているのよ?」
「それは勿論、人間達が永遠に穏やかに生きて行ける国になります。」
そしてエステルの疑問にフェミリンスは微笑んで答えたが
「………それは絶対にありえないわ。」
「………え……………」
溜息を吐いた後、首を横に振ったエステルの指摘を聞き、呆けた。
「………元々あたし達の世界は他種族がいない”人間”達だけの世界だったけど………過去、何度も戦争は起こって、その度に罪もない人々が傷ついていったわ。だから例え貴女が”人間”達だけの国を作っても、永遠な平和は”絶対”に訪れないわ。」
「クッ………ならば、傷つける者達だけを排除すればいいだけの事!」
エステルの言葉を聞いたフェミリンスは一瞬表情を歪めた後、再び答え
「………そんな事を続ければ、最終的にどうなるかわかってて言っているのかい?」
フェミリンスの答えを聞いたウィルは哀れな者を見るかのような表情でフェミリンスを見つめて尋ね
「ただ力で訴え続け、その結果訪れるのは………孤独よ。」
「!!」
ウィルに続くように答えたエステルの言葉を聞いたフェミリンスは目を見開いた。
「ならば………ならばどうしろというのです!?私は他種族と比べ、力が劣る人間達の為に……神々も手を差し伸べない人間達が平和に生きて行く為にその身を犠牲にして戦い続けました!」
そしてフェミリンスは身体を震わせた後、エステルとウィルを睨んで叫び
「そんなの簡単よ。互いが話し合うだけよ。………確かに種族が違うだけで争いが起こる事もあるけど………全ての”人”が争いを望んでいる訳ではないわ!」
「時間はかかるかもしれないけど、”人”は必ず分かり合える!種族問わずに!」
エステルとウィルは真剣な表情でフェミリンスを見つめて叫んだ。
「そんな寝言は聞きたくありませんわ!そのような夢物語を現実にできるはずがないでしょう!?」
「いいや、できる!俺達の故郷………ユイドラやリウイ達の国、メンフィルは全ての種族が手を取り合って生きて行っている!」
フェミリンスの叫びに対し、ウィルも再び答え
「黙りなさい!力に劣る者に力ある者が対等に接する事はありえません!」
「………だったら、それを証明すればいいのね?」
ウィルの答えを一蹴したフェミリンスにエステルは口元に笑みを浮かべて尋ね
「なんですって…………?」
エステルの答えを聞いたフェミリンスは眉を顰めてエステルを見つめた。
「――――みんな、出てきて!」
するとエステルは自分と契約している者達全員を召喚した!
「これがその証拠よ。みんなあたしに”従って”いるのではなく、あたしと対等に”接して”力を”貸して”くれているのよ。」
「フン、主に従う使い魔が何の証拠になるというのです………」
エステルの言葉を聞いたフェミリンスは嘲笑し
「………みんなの目を見て、それでもまだそんな事が言えるの?」
嘲笑されたエステルは静かに問いかけた。
「……………?………………なっ………何故…………何故使い魔がそんな目をできるのです!?」
エステルの言葉の意味が理解できなかったフェミリンスはパズモ達の曇りや迷いがない澄んだ瞳を見て驚き、叫んだ。
(クク……”神”とも手を取り合おうとするとは……さすがは我等が認めた”友”達………!)
(まあ、あの2人が特別過ぎなんだけどね………)
「フフ、”神”に意見するなんて世界広しと言えど、エステルやエステルと同じ思考を持つユイドラ領主ぐらいじゃないかしら?」
「ア、アハハ………否定できませんね。」
混乱している様子のフェミリンスを見たサエラブは口元に笑みを浮かべ、パズモ、ニル、テトリは苦笑していた。
「こら、そこ!今、肝心な事を話しているんだから、余計な事を言わない!雰囲気が台無しになるでしょーが!」
「エステル………君の今の言葉で、雰囲気が台無しになっているって………」
笑っているサエラブ達にエステルはジト目で睨んで指摘し、エステルの指摘を聞いたウィルは苦笑しながら言った。
(クク………お前もその一端を背負っている事に気づいているか、ウィル?)
そしてウィルを腕輪を通して見ているアスモデウスは不気味な笑みを浮かべていた。
「………姫神を相手に何をやっているのだ、奴等は………」
「全く………よくもまあ、あんな命知らずな事ができるわね。」
「世界広しと言えど、あんな事ができるのはお二方ぐらいでしょうね………」
「「フフ………」」
「”神”を前にして、恐れず普段通りに振舞う。うむ、さすがは余が認めた”友”達じゃ!」
エステル達の様子を見たリウイとエリザスレインは呆れて溜息を吐き、エクリアは苦笑しながらエステル達を見つめ、イリーナとセラウィは微笑みながらエステル達を見守り、リフィアは自慢げに胸を張ってエステルとウィルを見つめた。
「………ありえない………力ある者達が力劣る者達と笑い合えるなんて………」
一方フェミリンスは信じられない表情でエステル達を見つめ
「っと………コホン。………ね、今の見たでしょ?種族は違えど、”人”はみんな一緒。だからこうやって、共に笑い合える事も争いをなくす事もできるわ!」
フェミリンスの視線に気づいたエステルは太陽のような眩しい笑顔でフェミリンスを見つめ
「それが俺達………”人”だよ。」
エステルに続くようにウィルは微笑みを浮かべてフェミリンスを見つめた。
「………………ない………………」
一方2人に見つめられたフェミリンスは身体を震わせながら呟き
「へ?」
フェミリンスの言葉を断片的にしか聞き取れなかったエステルは首を傾げたその時!
「認めない!」
フェミリンスは魔力弾をエステル達に放った!
「させぬ。」
するとウィルの腕輪が光を放ち、エステル達を覆うようにドーム型の結界が展開され、フェミリンスの攻撃を防ぎ、そしてアスモデウスがエステル達の近くに現れた!
「ちょっ………いきなり何するのよ!?」
フェミリンスのいきなりの行動に呆けていたエステルは我に返った後、フェミリンスを睨み
「黙りなさい!私は認めません!私は忘れない!私に”殺戮の魔女”の呪いをかけた愚かにして憎き魔の者達を!そんな者達が人間達と決して手を取り合う事はありません!ハァァァァァァ………!!」
エステルに睨まれたフェミリンスは叫んだ後膨大な殺気を纏ってリウイ達を睨み、全身に膨大な魔力を纏った。するとフェミリンスの身体は巨大化し、背中には一対の美しい白き翼が現れた!
さあ………愛する人間達が平和に生きて行く為に消えなさい………
巨大化したフェミリンスは神殿中に澄んだ声を響き渡らせ、自分の周囲に自分の魔力で創った魔法結晶体―――ゲート=フェミリを無数に創り、周囲に展開した!
「………交渉決裂だ、2人とも。姫神を相手にお前達はよくやった。お前達を責める者は誰一人いないだろう。………覚悟を決めろ。」
フェミリンスの様子を見たリウイは2人に近づいてそれぞれに視線を向け
「この………頑固者!わからずや!いいわ!だったら、ぶっ飛ばして目を覚まさせてあげる!」
エステルは身体を震わせながら叫んだ後、仲間達と共に棒を構えた!
「……その前に………エステルさん。貴女の剣の力を借りてもいいですか?リウイ様の試練であり、リウイ様と親しい方達が揃い……”幻燐戦争”の決戦場であったこの場でしたらその剣が起こせる”奇跡”を再び起こせるかもしれません。」
そして棒を構えたエステルに近づいたエクリアは真剣な表情でエステルが装着している神剣――――”絆の神剣(リブラクルース)”に視線を向けて尋ねた。
「へ?………ああ、そういう事ね。わかったわ!」
「何?それは一体どういう事だ?」
「実は………」
エクリアに尋ねられたエステルは首を傾げたがすぐに察し、理由が分からないリウイは眉を顰めて2人を見つめて尋ね、2人からセリカとサティアの”試練”で”絆の神剣(リブラクルース)”が起こした”奇跡”を聞いた。
「なるほど………フッ、いいだろう。もう一度”奇跡”を起こし、姫神に俺達の”絆”を見せつけてやるのも一興だな………―――全員、今の説明を聞いたな!?」
説明を聞き終えたリウイは頷いた後口元に笑みを浮かべ、仲間達を見回して叫んだ。すると仲間達はそれぞれ頷き、エステルは”絆の神剣(リブラクルース)”を天へと掲げ、リウイ達はそれぞれの武器をエステルが掲げる絆の神剣にそれぞれ刃を合わせて天へと掲げ
「絆の神剣よ!今こそ我等と結ばれた”絆”達をこの地に!!」
全員同時に叫んだ!すると”絆の神剣”と合わさったそれぞれの武器は”絆の神剣”と共に強烈な光を放った!するとリウイ達にとって懐かしき戦友達が次々と現れ始めた………!
という事で最後の守護者にしてオリジナルキャラ?の姫神フェミリンス登場です!書いている自分が言うのもなんですが、フェミリンスを前にいつもの様子を見せるエステル達の度胸や”教授”どころか”神”を口で怯ませたエステルが凄すぎる………次回、懐かしき幻燐キャラ達が登場し、さらにとんでもない事が起こります!………感想お待ちしております。
説明 | ||
第463話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます。 本郷 刃様 まあ神殺しを殴る度胸を持つ娘ですから何を今更?ですし(爆笑)(sorano) エステルの度胸が相変わらず過ぎてワロたww 次回は幻燐オールスターズ+αですか、楽しみです♪(本郷 刃) |
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