CoC2050(ハウスルール)に向けての創作パーツ1 世界背景
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CoC2050について

 CoC2050はコズミック・ホラーTRPGクトゥルフの呼び声のサプリメントとして執筆されています。舞台は2050年以降の東京としており、遺伝子改変技術や身体改造技術により2つの災厄を乗り越えた世界となります。(以下要加筆)

 

2050年〜の東京

 2050年の東京はその名を森東京(Shin-Tokyo City/Forest City of Tokyo)と変え、皇居から代々木公園へ至る中央線上を広い森林・中央森林に占められた新たな都市に変貌しています。そしてこの森を挟むように日本を支えるハイテク産業の工場と本社群が存在します。2047年に起こった第二次関東大震災の影響により発生した大規模なバイオハザード・覚醒災禍が、中央森林をつくり、そこにある生態系を大きく変異させています。この中央森林で発生した様々な新生命から得られる素材・知識・技術が日本の大きな財源です。

 人々にも他の生物の例に漏れず、覚醒災禍の影響が出ており、身体的特徴に変化が現れている例がでていますが、日本特有の強い社会性と排他性が複雑に絡み合った結果、現在はそれを個人のキャラクタとして受け入れる下地が出来ています。変異は適応誘発ウィルス、ヴァイオレットに搭載されたいくつもの自然生物の設計図が暴走発現したもので、外見として受け入れやすいものであったことがこの受け入れを容易にしたとも言われています。現在では、時限はありますが、薬でその形状を通常の外見に変化させることも可能です。

 2030年代まで全盛を誇っていた情報化社会は震災により一度破壊されましたが、覚醒災禍の状況把握や指揮系統の立て直しのため、再構築が急がれ、高度な無線技術に支えられた遍在情報網を備えて生まれ変わりました。この遍在情報化社会は発展した生命工学によるインターフェースも相まって、人々に大きな恩恵を与えています。

 しかしながら人々は忘れていたのです。広大な深淵から訪れるものを・・・かつて海から迫り、宇宙から迫り、そして今、新たにネットから、繰り返すセントラルドグマから迫る恐怖を・・・

 

A.D. 2025 局地的戦争の活発化 (世界情勢)

A.D. 2032 Jun. 六月の降雨事件(世界情勢)

A.D. 2032 Nov. 環境適応宣言(世界情勢)

A.D. 2033 Oct. 2010 AU118 地球衝突(世界情勢)

A.D. 2034 Apr. 第一適応者・発生(世界情勢)

A.D. 2034 Sep. NPO 紫十字設立(世界情勢)

A.D. 2034 Oct. ヴァイオレット(Violet: Viral Organizing Leukoblast)配布開始(世界情勢)

A.D. 2047 Feb. 第二次関東大震災・覚醒災禍

A.D. 2047 Mar. 千文封鎖

A.D. 2047 Apr. 橙辺封鎖

A.D. 2049 May. 褄黒抗毒素(ACV: Argyreus Counter Virus) 試験散布

A.D. 2050 Apr.東京森都市宣言、森東京都設立

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1. 森東京の始まり

1.1. 不可解な技術発展と資源抗争の激化

 2020年代後半、不可解な速度で宇宙施設や核技術の急激な発展がおこり、先進諸国でのエネルギー問題が解決し、人々は化石燃料文明の軛から逃れることに成功しました。しかしその陰には、様々な利権問題が累積しており、各国で政争が激化、多種多様な後ろ暗い組織が暗躍する状況に陥ってしまいます。特にアメリカでは政争が実世界の命のやりとりにまで発展し、結果として国力を一時的に低下させることになってしまいます。そのような背景の中、この新エネルギー発達により窮地に立たされていた、産油国、資源国において思想的な抗争が激化します。これに民族問題、宗教問題が協調し、世界にはテロリズムがあふれることになってしまいました。これは日本においても同様で、鉱物資源国である中国では一部民衆に対して共産党政権の統制が利かなくなってきており、そのはけ口として、日本を利用していました。中国にとっては鉱物資源の売却先に困ると言うことはなかったのですが、日本の鉱物資源の自給と脱却が領土問題と相まって中国国民に相応の反感を抱かせていたことは事実です。これに対応するために中国政府としても様々なガス抜き政策を行っていましたが、その矛先を間違え、等々民衆の日本への反感を押さえきれなくなります。しかしながら、日本では各種危機管理を裏付ける法律の制定が遅れ、結果小規模なテロリズムが起こり始めます。武器の持ち込みが非常に制限される日本では、国内調達が容易な様々な薬品を用いた化学・生物テロが頻発するようになりました。これに対し、遅ればせながら日本でも対テロ組織として警視庁特殊急襲部隊(SAT)、県警特殊捜査班(SIT)、海上保安庁特別警備隊(SST)を前身とする内閣府特殊捜査・急襲部隊(SIAT)を設立、警察庁・国土交通省・防衛省の連携を法律に明文化することで対応しています。

 

1.2. 六月の降雨事件

 緊張を増していく世界情勢の中、中東の過激派を石油産業があおり、大きな事件が起きてしまいます。それが Rainy June with Junked Rain、 通称『六月の降雨』事件です。過激派は資金力にものを言わせ、宇宙デブリ対策事業をゆっくりとねじ曲げ、あるいは墓地軌道に存在するまだエネルギーの残った衛星を操作し、宇宙に利用可能な質量を生み出しました。そしてそれを利用し、秘密裏に宇宙空間に存在する太陽光発電衛星に次々と被害を与えていきます。各種宇宙施設は、月に作られた工業プラントや、飛来する小惑星を資源として利用する技術、完成したばかりの軌道エレベータにより大規模化しており、堅牢なものとなっていましたが、制御された攻撃は確実にそれらに被害を与えて行きました。

 各国政府はデブリによる被害が見積もりを超えていることを憂慮し、衛星の追加建設と共に新たな衛星制御システムを検討します。それは従来打ち上げた衛星を含め、上空の太陽光発電衛星を自律的に制御するものでした。思うように新エネルギーへの各国依存を中止させられないことに業を煮やした過激派の支援団体は、このプロジェクトへの投資を表では続けながら、破壊活動を開始します。システムは完成し、テストを経てすべての追加衛星にこのシステムが搭載されました、そしてその追加衛星には過激派の手により致命的な誤作動プログラムが仕込まれていたのです。2032年6月、無数に打ち上げられていた巨大な衛星がその軌道を地球にむけ一斉に変更しました。各国は飽和攻撃ともいえるこの衛星群に対して対応が間に合わず、軌道エレベータを破壊されてしまいました。そして、人々は新エネルギーの大部分を占めていた宇宙空間における太陽光発電を失ってしまいます。

 

1.3. 不可解な小惑星の軌道

 軌道エレベータは2048年、地球に衝突するかもしれないとされた小惑星 2007 VK184 を含め、将来地球に衝突するかもしれない小惑星への対応の要になることを期待されていました。これが破壊されてしまった2032年6月の時点で、地球に近づくと予想される惑星規模の影響がある隕石は2033年10月に3万km程度まで接近する 2010 AU118 がありましたが、その衝突可能性0.000000001%未満と判断されており、人々は大事ととらえていませんでした。しかし、2032年10月、この天体が『不可解』な軌道変更をします。これにより、2033年の衝突が確実となってしまいました。この小惑星は直径が900メートル弱で、トリノスケールは限りなく最大の10に近い9となり、全地球的な気候変動は避けられない事態となってしまいました。ここに来て、ようやく政争、利権問題が収束し、至急問題への対応を行うために、対応能力のある先進諸国、および太平洋沿岸の国家に優先的に低価格で資源が配布されるようになります。

 なお、不可解な軌道変更の要因を探ろうとした研究者のうち幾人かは謎の失踪を遂げています。

 

1.4. 環境適応宣言と隕石衝突

 約半年の協議の結果、各国政府は当時最先端技術であった遺伝子操作により人間という種そのものを進化させることを決定しました。これを環境適応宣言といいます。この結果従来は、単一目的のために閉鎖空間内で利用していた人工ウィルスによる遺伝子改変技術を発展させ、非活性の各種遺伝子を埋め込んだ対環境ワクチンとも言うべき遺伝子改変ウィルスを開発、広域散布するというプロジェクトが開始されます。この改変ウィルスは外部からトリガーとなる薬剤を与えられることにより、身体に改変を行うよう慎重に設計されました。そして、2033年10月、小惑星2010 AU118は隕石として、南太平洋へ衝突します。

 隕石の衝突は、おおよそ直径20kmもの波紋を生み、これが津波となって太平洋沿岸地方に押し寄せました。各国は1年間でできうる限りの対策を取っていましたが、多くの犠牲が生まれてしまいます。しかしながら日本では、地震時の緊急対応として用意していた大量のメガフロートと、津波対応の巨大シェルター施設、さらに政府主導の迅速な避難手順と国民性がうまく噛み合い、1年をかけて全ての国民の海上疎開・シェルター避難が行われ、総人口の9割9分、おおよそ1億2千万人の命が助かりました。また海底に設置されたメタンハイドレート発電施設は津波による壊滅的被害を免れたため、災害後の迅速な整備に大きな力を発揮します。この状況は太平洋沿岸に位置する国家の中では破格のものでしたが、これ以降に訪れる地球規模の数十年規模の気候変動で被害が拡大していくことは明白で、環境適応宣言の成果が切望されました。日本国民は、公共機能をメガフロートやシェルターに残しつつ、ほぼ更地となった国土に新たな施設を整備しながら技術開発に協力、未来への望みをつなぎます。

 

→後編

1.5. ヴァイオレット開発と紫十字の設立

1.6. 遺伝子改変産業の隆盛

1.7. ヴァイオレットとテロリズム

1.8. 日本の復興

1.9. 第二次関東大震災と覚醒災禍

1.10. 二つの地域封鎖と対菫病毒・褄黒抗毒素の開発

1.11. 東京森林都市宣言

 

A.D. 2025 局地的戦争の活発化 (世界情勢)

A.D. 2032 Jun. 六月の降雨事件(世界情勢)

A.D. 2032 Nov. 環境適応宣言(世界情勢)

A.D. 2033 Oct. 2010 AU118 地球衝突(世界情勢)

←いまここ

A.D. 2034 Apr. 第一適応者・発生(世界情勢)

A.D. 2034 Sep. NPO 紫十字設立(世界情勢)

A.D. 2034 Oct. ヴァイオレット(Violet: Viral Organizing Leukoblast)配布開始(世界情勢)

A.D. 2047 Feb. 第二次関東大震災・覚醒災禍

A.D. 2047 Mar. 千文封鎖

A.D. 2047 Apr. 橙辺封鎖

A.D. 2049 May. 褄黒抗毒素(ACV: Argyreus Counter Virus) 試験散布

A.D. 2050 Apr.東京森都市宣言、森東京都設立

 

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1.5 ヴァイオレット開発と紫十字の設立

 隕石衝突から半年後、最も被害が少ないと予想されていたスイスに設置されていた遺伝子改変ウィルス開発機関において、ウィルスのテスト投与が行われ、最初の環境適応体、第一適応者が発生しました。彼女は、海水をそのまま飲用できる能力や、食料を効率よく吸収できる能力、エネルギー補助としての光合成能力、寒冷への耐性など、新たな環境に必要な能力を得ることができていました。これを受け、各国は共同でNPO 紫十字を設立、遺伝子改変ウィルスをヴァイオレット(Violet: Viral Organizing Leukoblast) と呼称し、紫十字を通じて量産配布を開始しました。

 

1.6 遺伝子改変産業の隆盛

 完成したヴァイオレットは、変異が容易になるRNAを避け、ニ本鎖DNAと巨大な一本鎖環状DNAを用いて構成されています。前者には自己複製等の基盤部分、外部から与える誘因物質によって特定のDNAを活性化する選択的DNAポリメラーゼを作成する機構、自己崩壊機能等が含まれています。一方後者は、実際に発現させる形質の設計図をふくみ、ここに様々な生物から切り取った形質DNAを搭載することで機能しています。ウィルスのサイズ上、形質DNA の種類の違う複数のヴァイオレットが併用利用される形となりました。しかしながら、いずれのヴァイオレットも基盤DNA は同じものであり、発現させる形質ごとに誘因物質を変えなければならない都合上、ヴァイオレットが搭載できる形質DNAの種類には限界があります。

 一方、ヴァイオレットは綿密に安全性をチェックされた基盤DNAをもっており、これを流用することは遺伝子改変ウィルスを作成する際の開発費用を大幅に削減可能であることを意味しました。これはヴァイオレット開発段階から考慮されていたため、取り扱える形質DNAの最大量を数千万種として設計されました。世界が復興し、産業が発展に転ずると、紫十字は年間50万種を目処に、このペイロードを市場に供給し、その見返りとしてパテント料と形質DNA登録料を徴収します。これにより、ヴァイオレットはますます速やかに世界中に散布されました。

 ヴァイオレットは人の種としての形質が失われることを防ぐため、生殖細胞や幹細胞への影響を及ぼさないように、綿密に設計されました。またヴァイオレット自身の増殖は人間の白血球の母細胞である白芽細胞のみでしか行えないよう制限されることにより、この白芽細胞の変質を覗けば、誘因物質の摂取をやめてある程度の時間がたつと遺伝子を改変された細胞は新陳代謝で失われ、人本来の形質を取り戻すことになります。また、改変された細胞や白芽細胞もヴァイオレットに組み込まれた安全装置、自死・分離機構をトリガーすることで、元の純粋な細胞に戻るようになっていました。このようなカジュアルさも相まって、世界では遺伝子改変産業が隆盛します。この種の改変産業は、主に美容整形と、健康産業でした。例としては、動物の体の一部や全くの人工器官をつけた若者や、若さを保つためのテロメラーゼを生み出す臓器を生成した高齢者などです。瞳の色や肌の色、髪の色といった外見上にも分かりやすいものはもっともカジュアルで、非常に安価で安易に人々が遺伝子改変を試みることが可能でした。この改変は時々エラーを引き起こし意図しない改変をもたらしましたが、やり直しは何度でもできるため大きな問題にはなりませんでした。

 

1.7 ヴァイオレットとテロリズム

 人々は生まれながらに潜在的なヴァイオレットキャリアとなっており、これによる身体改変を視認以外で確認する術はほとんどありません。詳細に調べれば、形質誘因物質の体内濃度により検出は可能でしたが、それには高額の機器とそれにふさわしい施設が必要でした。世界が再び安定すると、前世代のテロリズムがその主張を押し通すために再び発生します。そしてこれにはヴァイオレットがうまく使われました。例として、人工臓器を用いた隠し武器や、速やかな容貌変更による変装などです。テロ集団は、一般的な形質登録を装い、複数の些細な変化を組み合わせることで、その目的を果たすための遺伝子改変を行っていきます。

 紫十字はこれに対抗するため、監査を密にすると共に、テロリズムに用いられ、危険性の高い形質にかんして、基盤DNA部分から誘因物質に反応し選択的DNAポリメラーゼを作成する部分を不活性化する化学物質を環境適応の基本的な形質をもたらす誘因物質に混ぜて散布するようになります。この環境適応形質の喪失は最終的には死を誘発するものであるため、人々はこの誘因物質を摂取せざるをえません。しかしながら、この監査の網をくぐり抜ける発想をとどめることはできず、対処療法的ないたちごっこの様相を呈するようになっていきました。

 とはいえ、人々は一つの災禍を克服し、世界は再び安定期にはいり、順調な回復を見せるのでした。

 

1.8 日本の復興

 日本では、各種重機やエネルギー資源の確保が速やかだったこともあり、10年の間に多くの国民が陸上での生活を取り戻すことができました。復興は、元政令指定都市をはじめとする人工過密圏が優先され、特にエネルギー源に近い日本海側、および避難先のメガフロートやシェルターに各種技術者、資材を多くもっていた都市圏では人々は災害前の様な暮らしを始めることができました。日照量の減少から、農・畜産業はバイオ技術をふんだんに使ったハイテク産業となり、コスト削減の観点から、それらは非常に密集した場所に作られました。試行錯誤を繰り返しながら開発されていったハイテク農場・牧場は、東京圏においては大学等研究機関の集まった千代田区・文京区周辺に地上・地下に関わらず増えていきました。他にも、茨城県つくば市をはじめとする5カ所の食品産業技術研究センター他、多くの農業研究所周辺で同じような開発が起こりました。

 なお、復興のなか社会問題として、皇族の遺伝子改変に関する議論があったことは付記しておきます。結果としては、ヴァイオレットが生殖細胞の遺伝子を改変しないことを論拠として皇族にもヴァイオレットを適用することを決定しました。しかしながら、問題が起こったときのために正常な遺伝子のマップを宮内庁が管理することになりました。

 

1.9 第二次関東大震災と覚醒災禍

 大きな自然災害で人々が生き残るのに必死になっていた間、綿密な予測や観測により支えられていたいくつかの分野は破綻してしまいます。その最たるものが地震予測でした。しかしながら、隕石の衝突は太平洋側のプレートひずみを生むことが予測されていたため、施設・住居の復興には高度な耐震技術が用いられました。このようななかで予測通り起きたのが関東南部を震源とする大型群発地震です。被害地となった東京では最大M8.1を観測しましたが、0から新しく設計された耐地震都市は被害を最小限に抑えることができました。しかし、今後の東京の行く末を決める災害が密かに起きていました。それは文京区のあるバイオ研究施設で発生したバイオ・ハザードです。

 この研究施設では、国際プロジェクトとして動植物の生存能力強化に関する遺伝子改良技術をヴァイオレットを用いて行っていました。バイオ・ハザードは複数の要因が間が悪く組み合わさったことにより起きたものです。主たる要因は、遺伝子改良が自動的に進むように、ヴァイオレットの誘因物質を動植物自体が生成するように設計したこと、萌芽研究のためにヴァイオレットの感染先を人白芽細胞に限定する機能を緩和したこと、そしてテロリストが用いていた自死・分離機構を無効にした不法なヴァイオレットが混入したことです。つまり、ヴァイオレットに用意されていた安全機構を同時にすべて無効化する条件がそろってしまったことになります。結果、ヴァイオレットの暴走を引き起こし、動植物の形質の欠損のみならず、人間の形質の欠損を招きました(形質欠損症)。この欠損は、ヴァイオレットによる遺伝子改変産業の結果と見分けがつきづらく、初期対応が間に合わず、密かにしかし後半に広がっていきました。政府がこの状況に気づくのは震災から1ヶ月が過ぎるころになってしまいました。

 この災害に伴い、遺伝子改変産業は利用禁止状態になります。

 

1.10. 二つの地域封鎖と対菫病毒・褄黒抗毒素の開発

 ヴァイオレットは比較的『重い』ウィルスであり、空気感染力は少ないものでした。このため政府は、バイオ・ハザードが判明するとすぐに、地域封鎖を行うことでこれに対応し、さらに人形質の再生技術についての研究を開始します。地域封鎖は、まず千代田区、文京区の一部地域(千文封鎖)でおこなわれました。また、皇居から代々木公園にかけた中央線沿線では、比較的雑木林や国定公園などが多く、ウィルスの伝播が続きました。そこで千文封鎖から1ヶ月たつ頃には、中央線周辺3kmの部分を新たに封鎖区画としました(橙辺封鎖)。内部では放置された様々な植物、動物がヴァイオレットに含まれた遺伝子に影響を受け変異体になっています。生存能力強化の変異を受けたため、植物が繁茂し、他所では日照の問題から失われつつあった広大な森林地帯が出現することになります。

 2年後、大学機関において、ヴァイオレットに感染することで汚染された基盤DNAをもつヴァイオレットを破壊する対ウィルス薬が完成します。この対ウィルス薬は自己増殖機能を全く持たないナノマシンで作られており、基盤DNAをチェックし一致しない部分が見つかった瞬間破壊するという単純な機能しか持ちません。動作するためのエネルギーは汚染ヴァイオレットを破壊することで、その材質を再利用し確保しています。このため、患者の体内から汚染ヴァイオレットが消えると自動的に動作停止し、生理作用により体外に排出されます。このナノマシンはウィルスの必要条件を全く満たさないものですが、政府は過去の経験から、このナノマシンをウィルスとして、同様の運用ルールを課すこととしました。また、ウィルスであると公表することで、国民に必要悪であることを認識させ、注意を促す効果を期待しています。

 最終的にこのウィルスは菫(Violet)の害獣である褄黒蝶の名前をとって、褄黒抗毒素 (ACV: Argyreus Counter Virus) と呼ばれ、公共医療機関での投与が開始されます。人形質欠損症の治療には、入院し閉鎖空間内に隔離された状態で ACV を1週間にわたり投与、その後に正常なヴァイオレットで人形質の発現をさせることによって行います。あくまで正常なヴァイオレットによる形質発現のため、誘因物質を摂取しないと、もとの改変された異常遺伝子が発現してしまいます。根治するには、幹細胞すべての遺伝子を改変する必要がありますが、これをヴァイオレットで行うことはでません。これは幹細胞遺伝子への操作は改変ヴァイオレットが必要だが、改変ヴァイオレットは ACV の攻撃対象になるため利用できないこと、また改変ヴァイオレットは人形質欠損症の原因である汚染ヴァイオレットと本質的に同じものであるため、災害の再発を防ぐためといった理由が挙げられます。とはいえ、手段は残されており、一つは患者毎・幹細胞毎に多種のナノマシンを作成し遺伝子操作を行う方法、もう一つはACVの投与から時間をおいた後に厳密に管理された改変ヴァイオレットを用い、さらにACVを再度用いる方法ですが、前者は多種ナノマシン作成のため高額で、後者も設備や管理にかかる経費と倫理問題の解決の為にやはりコストが高いものです。このため、民間での根治はなかなか行われず、前述した簡易的な治療で終了します。

 

1.11. 東京森林都市宣言、森東京都(Sin-Tokyo City/Forest City of Tokyo)設立

 ACVの開発によって、形質欠損症への当座の対処が始まったころ、区画封鎖への異論を求める人々と、封鎖区画にある新種の動植物に目をつけた民間の研究機関の要求が一致し、区画解放と資源の積極的利用が提案されます。政府はこれに対し慎重な立場を取っていましたが、ACV による一定の効果を認めると、テストケースとしていくつかの機関に封鎖区画への立ち入りと資源利用の許可を与えます。政府は、ほぼ1年のテスト期間をへて区画解放に大きな経済効果と環境のコントロールができたことを確認すると、これを軸に東京都を運営することを決定、東京都議会と共同で、東京都のバイオ研究・産業都市化宣言、『東京森都市宣言』を行います。これをもって東京都は森東京都と改名、世界の先端技術を担う新首都として世界に記憶されることとなりました。この森東京がCoC2050の主な舞台となります。

 

 

←前編

1.1. 不可解な技術発展と資源抗争の激化

1.2. 六月の降雨事件

1.3. 不可解な小惑星の軌道

1.4. 環境適応宣言と隕石衝突

 

A.D. 2025 局地的戦争の活発化 (世界情勢)

A.D. 2032 Jun. 六月の降雨事件(世界情勢)

A.D. 2032 Nov. 環境適応宣言(世界情勢) 

A.D. 2033 Oct. 2010 AU118 地球衝突(世界情勢)

A.D. 2034 Apr. 第一適応者・発生(世界情勢)

A.D. 2034 Sep. NPO 紫十字設立(世界情勢)

A.D. 2034 Oct. ヴァイオレット(Violet: Viral Organizing Leukoblast)配布開始(世界情勢)

A.D. 2047 Feb. 第二次関東大震災・覚醒災禍

A.D. 2047 Mar. 千文封鎖

A.D. 2047 Apr. 橙辺封鎖

A.D. 2049 May. 褄黒抗毒素(ACV: Argyreus Counter Virus) 試験散布

A.D. 2050 Apr. 東京森都市宣言、森東京都設立

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説明
初手はCoCとシャドウランを融合させたものを作ろうとした結果
CoC2050を作ってみようという意欲がわいたので
ぼちぼちと創作パーツを文章としてあげいこうと思います。
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