IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第三話 実力
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セシリアと一夏との模擬線当日。

 

俺と一夏、箒は第三アリーナのピットにいた。

 

「紅牙は専用機を持っているんだよな。てことは紅牙が最初だな」

 

そう。一夏の専用機が遅れているのだ。

 

アリーナの借りられる時間も限られているのであまり試合を遅らせるわけにはいかないので、先に俺がセシリアと戦うことになるだろう。

 

「黒咲君。準備をお願いします」

 

山田先生のアナウンスが響き渡り、俺はカタパルトの方へ向かう。

 

「紅牙」

 

一夏が俺を呼び止める。

 

「なんだ?」

 

「勝てよ」

 

「もちろんだ」

 

「負けたら承知しないからな、紅牙」

 

箒も笑みを浮かべている。

 

「ああ。自分がどれだけ過信しているか、あのお嬢様に見せつけてくるよ」

 

そうだ。代表候補生ごときで天狗になっているセシリアの鼻っ面を折る。そして、それを糧にもっと強くなってもらわねば、いくら護衛がいるって言っても、限界がある。

 

俺は密かにそんな思いを胸に秘めながら、ISミスティック・クラッド≠展開する。

 

青白いブルーホワイトが全身を覆い、ブルーホワイトとブラックのツートンの翼が背中に左右四枚ずつ、計八枚展開される。

 

「零、 行けるな」

 

『もちろんです、マスター。抜かりはありません』

 

機体をカタパルトに接続。射出カウントをスタートさせる。

 

――さあ、行こう。あのお嬢様の過信をBREAK(破壊)するために。

 

そして、カウントがゼロになり、俺はピットから射出された。

 

 

 

 

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「待たせたな」

 

アリーナにはすでにセシリアがおり、ISブルー・ティアーズ≠展開させて、待機していた。

 

「ふん、レディーを待たせるなんて。これだから男は……」

 

相変わらず、一々癇に障る言い方だな。

 

「まあ、いろいろあってだな。それよりも準備はオーケーか?」

 

「ええ、大丈夫でしてよ。……まったく噂しか聞いていないのでどなたかは存じませんが、あなたと付き合っている女性が理解できませんわ。こんな男のどこがいいのでしょう?まあ、どうせその女性もろくでもない人なのでしょうけど」

 

……何?

 

待て、今のはさすがの俺でも我慢できないぞ。

 

こいつは今なんて言ったんだ?

 

刀奈がろくでもない奴?ふざけるな。

 

「……別に俺のことは好きなだけ罵倒すればいいさ。だけどな、彼女は関係ないだろ。何の権利があって侮辱しているんだ?ふざけるのも大概にしろ!!」

 

俺は殺気を出し、セシリアを睨む。

 

「っ!?な、なんですの?この殺気は」

 

セシリアが狼狽えているが、今は関係ない。

 

『マスター、怒るのもいいですけど、任務のこと忘れないでくださいね』

 

「大丈夫だ。頭は冷静に動いているから。護衛の件もちゃんと考えている。セシリアに怪我はさせないから」

 

まあ、自分の実力がどれほどなのか身をもって知ってもらうけどな。

 

そんなことを考えていると、試合開始のブザーが鳴った。

 

「よくわかりませんがこれでお別れですわ!」

 

セシリアは先手必勝とばかりにスターライトmk.V≠構え、放つ。

 

だが、それは虚空を走る。

 

「なっ!?」

 

一瞬にして消えた。少なくともセシリアにはそう見えたのだ。

 

しかし、ハイパーセンサーのおかげか、すぐに、敵を察知して砲撃を続ける。

 

「へえ、それなりに反応できるんだな」

 

俺は初弾を全速力で躱し、相手の頭上に向かって飛んでいた。

 

『どうするのですかマスター?刀奈嬢のように手加減≠オます?』

 

「言い方が悪いぞ、零」

 

俺はセシリアの銃撃を躱しながら、零と話す。

 

『素≠ナ戦ってしまう相手です。十分手加減かと』

 

「……。今回は手加減なしだ」

 

『了解です、マスター。ミスティック・クリスタル≠フ準備をしておきます』

 

「頼む」

 

このような会話をしている間も正確にセシリアの銃撃を躱す。

 

「ああ、もう!じれったいですわね!これで落ちなさい」

 

少し苛立った調子でセシリアが叫ぶ。

 

と同時にブルー・ティアーズから四つのビットが射出された。

 

『BT兵器のビットです。回避行動を』

 

「わかっているさ!」

 

ビットから放たれる多方面攻撃をまるで最初から分かっていたかのように、正確に躱す。

 

そして、対艦刀ミスティックセイバー≠コールし、回避行動をとりながらビットを一つ一つ斬り裂いていった。

 

「な、なんですの!?なぜこんなにも簡単に!?」

 

セシリアが唖然とした表情をしている。

 

だが、俺にとってはそう難しいことじゃない。

 

零の補助もあるが、セシリアのビットの配置は分かりやすいのだ。

 

必ず一番反応が遅れるところに配置してくる。だが、逆を言えばそこ以外は配置しない≠フだ。

 

初心者ならそれがわかってもどうしようもできなかったかもしれない。だけど、俺は違う。

 

俺にとっては分かりやすすぎるのだ。

 

「はっ!」

 

そして四つ目のビットを切り裂き、一気にセシリアに向かって急加速。

 

「させませんわっ!」

 

セシリアがスターライトmk.Vを構え、放つ。

 

俺はそれをローリングで躱しながら、ミスティックセイバーを片手持ちにし。空いた左手を前に突き出す。

 

「ミスティック・クリスタル、起動!」

 

『了解。ミスティック・クリスタル起動。出力三十%で出力。形状はいかがなさいますか』

 

「クローで」

 

「了解。クローを形成します」

 

零の音声が終わった瞬間、左手の腕部に装着されていた赤いクリスタルからビームが出力された。

 

そのビームはクローを形成し、そのまま接近しセシリアを斬りつけた。

 

「くっ、インターセプター!!」

 

懐に飛び込まれたセシリアは近接武器を展開し、クローを受けようとするが、受けきれず、もろにクローの直撃を受ける。

 

「ああっ!?」

 

セシリアのブルー・ティアーズが切り刻まれ、アリーナの壁に激突する。

 

俺はそこを追撃した。

 

まずミスティックセイバーで横一閃。返す刀でもう一撃。そのあと左手のクローで、切り上げ、すぐさま切り下げる。

 

「うおおおおおっ!」

 

切り下げにより地面に激突したセシリアに左手のクローを突き立てる。

 

そして、右手のミスティックセイバーの鍔にあるマガジンを一回リロードする。

 

――カシャン。

 

小気味のいい音が響き、刀身がビームに包まれる。

 

「ま、まだですわ!」

 

セシリアはクローを突き立てられているのにもかかわらず、隠してあったミサイルビットからミサイルを発射させた。

 

――だが、もう遅い!

 

俺はビームで刀身を包まれたミスティックセイバーを振り下ろし、ミサイル共々セシリアを斬り裂いた――。

 

ドガアアアンッ!!

 

ミサイルを斬り裂き爆発。徐々に煙が晴れていき――。

 

「そこまで!勝者、黒咲紅牙」

 

試合終了を告げるアナウンスがアリーナに響いた。

 

余談だが、この時のミスティック・クラッドのシールドエネルギーはほぼ満タンに近かったという。

 

 

 

 

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「す、すげえ……」

 

一夏はピットの中にあるモニターの前で唖然としていた。

 

元々あいつから座学を教えてもらっている時に薄々は感づいていいた。

 

少し勉強してきた、どころじゃないんじゃないか?

 

そう思っていた。

 

が、今目の前で繰り広げられた戦いを目にし、それが確信に変わる。

 

あいつ、強い!!

 

戦慄するのが分かった。

 

理由は知らないが、あいつは俺が思っている以上に強い。

 

なにせ代表候補生を圧倒できるくらいだ。その強さは計り知れない。

 

ふと、隣にいる箒に目を向けてみる。

 

「……」

 

箒も口を開けて唖然としていた。

 

箒でさえ唖然とするんだ。あいつの強さは本物だ。

 

だったら、俺も負けていられない。

 

昔、千冬姉に話した、護るということ。

 

あいつは勉強を教えてくれている時言っていた。

 

『一夏、お前はこれからISという世界最強の兵器に乗るんだ。この意味わかるな?だけど、あえて言わせてもらう。一夏、戦いに勝つためだけにに力を振るうな。それはお前が望んでいる勝ちとは言えない。いいか?お前にとっての勝つということは、人を守り、生かす≠アとだ。これを忘れないでくれ』

 

そう、生かすために戦うんだ。だから、誰よりも強くなくてはならない。

 

待ってろ紅牙。必ずお前に追いついてやる。

 

俺はそう決心し、専用機の元へ向かった。

 

 

 

 

説明
IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第三話 実力

今回は短めです。
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コメント
竜羽さん→本人に自覚はありませんが傍から見れば手加減に見えますね。(raludo)
なんか、刀奈が手加減されていたように見えて・・・(竜羽)
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