リリカルなのはSFIA
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 第二十一話 沢高志の目標。

 

 

 

 エリオ視点。

 

 「結局はお前達が選んでくれたプレゼントなら何でも喜ぶと思うぞ?」

 

 「…そうでしょうか?」

 

 グラナガンの商店街に設置されたベンチでどっかりと腰を下ろした高志さんはのんびりとそう言った。

 目的の駅に到着するまで何故か念話?で、

 

 『((た|・))つな!たつんじゃない!ジョー!』

 『なら、いつたつの!?今でしょ!』

 『少なくても今じゃないよ!フィールド魔法公共の場の効果を発動!ダメージをキャンセル!』

 『…おのれ。あとダメージ1だったのに。だが、本能のターンは終わっちゃいないぜ!』

 『なん…だ、と?』

 

 と、必死に何かのイメージトレーニングを繰り返していた高志さんは疲れきっていた。

 

 「例えば、フェイトからお前に可愛い人形でも贈られたらどうする?」

 

 「それは…。僕は男なんでちょっと遠慮したいですけど…。それでもフェイトさんが暮れたものですから大事にします」

 

 「だろ?『どんなプレゼントを贈られたか』じゃない『プレゼントを誰から贈られた』が大事なんだよ」

 

 そう言われて僕は自分が選んだプレゼントに自信が持てた。

 キャロと相談しながら二人で買った黒のリボンだ。

 質がいい布地で結構高くついた。だけど、アクセサリーの一つなので頑張れば僕と同じくらいの子どもでも無駄遣いしなければ帰る程のリボンだ。

 

 「フェイトさん。喜んでくれるでしょうか?」

 

 「絶対喜ぶ。喜ばなかったら全裸で六課の施設中を全裸で走る」

 

 「いや、それはいいです」

 

 それにしてもキャロとすずかさん、遅いなぁ。

 プレゼント選びを終えたら二人は目の前の婦人服専門のお店に入って出てこない。下着も取り扱っているので外で待たせてもらった。その、いろいろと目のやりどころに困るから…。

 

 「っ。エリオ。悪いけど、荷物の番をしていてくれ。ちょっとトイレに行ってくる」

 

 「…え?はい。いいですけど」

 

 「俺の荷物もよろしくな」

 

 タカシさんは急に立ち上がると僕から離れていく。

 高志さんの荷物。というか、フェイトさんのプレゼントでもある「松岡ボイスCD」。

 …諦めてなかったんですね。

 というか、すずかさんはなんでこれを却下と言ったのかな?

 一応、フォワード陣全員分のCDも買ってくれたけど…。

 …ちょっとだけ聞いてみようかな?

 

 

 

 十分後。

 婦人服店から出てきたキャロとすずかが見たのはすっかり熱くなったエリオの姿だった。

 

 「…エリオ君が壊れた」

 

 「僕は何も壊れてないよ!キャロ!ただ、熱くなっただけさ!」

 

 「ねえ、エリオ君。一人で持つには大変そうだから私も少し持つよ…」

 

 もうすぐお昼時なので服をたくさん買ったすずか達の荷物をエリオはその小さな体一つで全てを持っている。

 結構な量なので辛そうにも見えるがエリオは進んで自分一人で荷物を持つ。

 

 「諦めないよ!僕は今日から竹のようにしなやかに!いや、竹になる!」

 

 「…エリオ君?」

 

 「…高志君。あとでO・HA・NA・SHIするから、ね」

 

 それにしても肝心の高志がいないことに疑問を持ったすずかだった。が、

 

 「シジミ!」

 

 「エリオくぅうううんっ!」

 

 非保護者二人を置いてこの場を離れるわけにはいかないので仕方なく高志が戻って来るまでエリオのかじ取りをすることにした。

 

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 高志視点。

 

 「…よう」

 

 「やあ、こうして顔を合わせるのは初めてかな。タカシ?」

 

 俺はエリオを商店街のベンチに残して、今はその裏街道。業者の人や関係者以外は通りそうにない人気のない道で黒衣の青年。アサキムと対峙していた。

 鎧を着ていない状態のアサキムと直で対面するのは初めてだったが、その不気味さは変わらない。

 

 「で、俺の目の前に現れて何の用だ?俺のスフィアを狩りに来たとか?」

 

 「…それはそれでいいかもしれないね。この世界が『白歴史』の順をこのまま追うというのなら君の魂とスフィアも狩るのも悪くは無い」

 

 …蛇足だったか!

 アサキムのプレッシャーが跳ね上がり、俺の持つスフィア。『傷だらけの獅子』もそれに呼応するかのように出力を上げる。

 

 「だけど、今じゃない。君は。いや、『傷だらけの獅子』は十分に狩り時だ。だけど、僕は保険をかけたいんだ。もう一つのスフィア『尽きぬ水瓶』の、ね」

 

 やっぱりあるのか!もう一つのスフィア!

 あの予言騎士さん。的確率5割以下とか嘘だろ!

 スフィア関係は百発百中じゃねえか!だけど・・・。

 

 「『尽きぬ水瓶』は未だに眠っていてね。それを目覚めさせるために君に預かってほしい存在がある」

 

 『尽きぬ水瓶』。

 無償の愛を注ぐ。と、いうスフィアの中では最も目覚めさせにくいスフィア。

 

 「…俺に?」

 

 「優しすぎる獅子。この世界で生きている人間の中で、君ほど無償の愛を捧げる人間はいないと思う。…死んだことのある人間である人間ならね」

 

 っ!

 

 「一度死に、スフィアに救われ、スフィアに怯え、そして依存する。君を見ていると僕はシンパシーすら感じるよ」

 

 「だったら俺が考えている事もわかるだろ。アサキム!俺はお前に!『太極』に!『尽きぬ水瓶』にも興味はねえ!」

 

 俺がこれ以上スフィアで傷つけるのも傷つけられるのも嫌がっているのは!

 

 「そうだね。君はスフィアの恐ろしさを。死んだことがあるからこそ、その怖さを知っている。…だからこそ君は見捨てることが出来ない。…この子の事をね」

 

 アサキムは俺を憐れむかのように右手を俺の方に向ける。

 それに警戒してガンレオンを展開する。今の俺に出来るのはアサキムを撃退するだけだ。施設も技術も魔力すらも揃っていない俺一人でアサキムを封印することは出来ない。

 だが、アサキムの右手から出てきたのは赤黒い剣でもなければ魔法の弾でもなかった。

 その手の先に黒い風が集まって渦を巻いた。その渦の中から這い出るように現れたのはぼろきれの布一枚を身に纏った金髪の少女だった。

 まるで初めてであった頃のアリシアと同じくらいの小さな女の子。

 

 「…アサキム。お前」

 

 「そうだよ。タカシ。この子が…」

 

 「お前ロリコンだったのか!?」

 

 「なん…だ、と?」

 

 だから原作(スパロボZ)のおっぱい姉ちゃんツィーネにもそっけなかったのか!

 

 「…君は相変わらず変な思考とまともな思考が混合しているね。この世界で言う所のマルチタスクという事か?」

 

 …どうやら違うらしい。

 少し残念だ。

 だって…。

 

 「それに僕はそんなことより君の方が気になるからね」

 

 「だからそういうのはやめてくれってば!」

 

 俺達の腐ったお姉さん達が喜びそうな雰囲気を出すのは勘弁願いたい!

 幼女とはいっても異性には違いないんだから!少しはアサキムが((幼女愛好家|ロリコン))かもしれないと願ってもいいじゃないか!

 

 「…だけど、それ以上に僕はスフィアに関しては貪欲なんだ。君に預かってほしい存在は彼女だ」

 

 「…そんなことを言われて、俺が預かると」

 

 「プロジェクトF。親の無い子ども」

 

 「っ!」

 

 それだけで…。

 たった二つの言葉だけでアサキムは俺の行動を制限する。

 俺の強張った顔を見てアサキムは微笑んだ。

 

 「…タカシ。君はもう少し不幸であるべきだったんだ。もう少し不幸な人生を送っていれば、こんな赤の他人なんて見捨てることが出来た」

 

 アサキムは黒い渦の中から女の子を取り出した後、優しく地面に横たえる。

 

 「君はもう少しだけ幸せに生きるべきだった。もう少しだけ幸せに生きていればその幸せを守る為にわがままに生きられた」

 

 少女を地面に寝かしつけたアサキムは俺に背中を向ける。

 その背中に攻撃することも、目の前に横たえられた少女を見捨てることも俺にはできなかった。

 

 「…君が幾つものスフィアに適応したのが分かる気がするよ。『痛み』、『悲しみ』、『選択』、『嘘』。その全ては君の前世が元になっている。そして、現世でスフィアの熟成という実を結んだ」

 

 俺は歯を食いしばってアサキムの言葉を聞くだけしか出来なかった。

 今の俺だけの力じゃ勝てない。勝てた所でアサキムを封印なんてできはしない。その現実が俺にのしかかる。

 

 「そして、前世で((普通の親|・・・・))の『愛情』を受けたことのある君は、その『愛情』すらも受けたことのない、その少女を決して見捨てない。…あのテスタロッサという家族達にやったように」

 

 全てがアサキムの手の平で踊らされている感覚に落ちっているのに俺は何もできない。

 全てがアサキムの手の平だとわかっているに踊ることしか出来ない。

 それを否定してしまうというのは俺の前世を、沢高志という存在そのものを否定する行為だから…。

 赤の他人なんか知ったことじゃない!スフィアなんて関係ない!

 誰かられ構わず助けようなんて殊勝なことを思ってない!だけど…。

 誰かを助けることが出来て…。その誰かは俺よりも幸せになれなくて…。その誰かを幸せに出来る可能性があるというのなら…。

 

 

 誰かを幸せにしたい。その誰かの笑顔を見てみたい。そして、その誰かに好かれていたい。ありがとうと言われたい。

 ただの自己満足だ。

 それが一番の行動力でそれが俺の。迷惑をかけてばかりだった前世からの。そして現世にもつながっている沢高志の一番の夢であり、目標だった。

 

 

 「優しすぎる獅子。君は彼女に無償の愛情を注ぐ。それが…」

 

 

 だけど、それを。いや、知っているからこそ『知りたがる山羊』は俺に少女を預けるんだろう。

 俺が少女を見捨てるはずがない。例え、目の前の少女がスフィアに関係していたとしても世界に迷惑をかけるとしても。

 目の前の少女が『自分より幸せじゃない、迷惑をかける』という存在だと知っても見捨てない。

 俺よりも不幸な存在に幸せになってほしいから。「ありがとう」と言って欲しいから。俺の事を好きになってほしいから。

 

 

 「『尽きぬ水瓶』を満たす鍵になる」

 

 

 そう言ってアサキムは姿を消した。

 俺はただ、それを黙って見送る事しか出来なかった。

 

説明
第二十一話 沢高志の目標。
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コメント
たかしの外見ですか…?最近のアニメだと、働く魔王様の魔王(覚醒前)に少し筋肉をつけた感じ。少し前の漫画だと週刊ジャンプの封神演技に出てくるビームサベルツもどきを使う剣士。黄 天下が自分のイメージに近いです(たかB)
そういえばタカシって今どんな外見なんでしょうか? 多少若いランド? それとも一般より少しむさ苦しい奴?(神薙)
アサキムに戦闘以外で驚愕の表情を取らせたのはタカシが初めてだと思う今日この頃w  ロリコンアサキムに熱くなったエリオw 次は一体誰がどんな毒牙にかかるかw(孝(たか))
エリオが感染したwww熱いイケメンが後々誕生する訳かwww そしてロリコンアサキム……スフィアが関係していなかったら本当に多少迷惑な程度の面白キャラだったんだろうなwww(神薙)
誤字発見です。 全裸で六課の施設中を全裸で走る→全裸で六課の施設内を全力で走る だと思います。(神薙)
微妙にシリアスに成りきれないw(匿名希望)
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