俺妹 キスの日記念短編集
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キスの日記念 五更瑠璃さんの場合

 

「う……ぷ……っ」

 先輩の唇の感触をできる限り長く深く味わってからゆっくりと唇を離す。先輩の唇という禁断の果実の味を知ってしまってから私はそれなしで生きられなくなっていた。

「もう……1回……」

 先輩にキスをねだる。私と先輩とでは身長差が20cmほどある。私からはつま先立ちしてやっと唇に届くか届かないかなので、先輩からキスしてくれないとやりにくい。

「あの……瑠璃さん?」

「先輩……早く……っ」

 つま先立ちして彼に唇をねだる。先輩は視線を左右に回して周囲を気にしながらそっと触れるだけのキスをした。

 とても軽いキス。欧米人がするという挨拶代わりみたいなキス。そんなもので火照ってしまった私の先輩への劣情、もとい愛が満たされるはずがなかった。

「もっと……ちゃんとキスして」

「そんなことを言われてもだな……」

「私のこと……もう嫌いになったの?」

 視界が涙で滲んでいく。先輩に嫌われたらもう生きていけない。

「私を……捨てないで」

 先輩にしがみつく。彼から一生離れない、離れたくないという拙くも精一杯の意思表示。

「そうじゃなくてっ! ここ教室っ! ここは教室だから!」

 先輩は私の両肩を掴みながら慌てて大声で説明を始めた。

「教室だから何だと言うの?」

「みんな見てるからっ! 俺たち注目の的だからっ!」

「みんな見てるからどうだと言うの? かぼちゃかナスだと思えば別に恥ずかしくないわ」

 我慢できなくなって首に手を回してつま先立ちになりながら先輩の唇に自分の唇を重ねる。たっぷり20秒以上のキスをしてから元の姿勢に戻る。

「超すごいキスを見せ付けてやれば別に問題はないわ」

「恥ずかしいのが問題じゃなくて、みんな俺たちをバカップルって怒っているのが問題なんだよぉっ」

 先輩はちょっと泣きそうな表情に変わった。

 

「高坂……お前放課後にちょっと教員室まで来い」

 1分ほど前に教室に入ってきた先輩の数学教師(30代 独身)はものすごい剣幕で先輩を睨んだ。

「先輩……何か問題を起こしたの?」

「…………自覚なしっすか。そう言えば黒猫って、天上天下唯我独尊なぼっちキャラだったもんなあ」

 先輩は天井を見上げながらため息を吐いた。

「先生。先輩は一体どんな問題を起こしたと言うのかしら?」

 先輩が教えてくれないので代わりに教師に尋ねてみる。

「神聖なる学び舎の中で、下級生女子生徒の唇を貪っていた罰を与えるんだ」

 教師は頬をピクピクさせている。

「私は先輩の恋人よ。先輩が一方的に私の唇を陵辱していたわけではないわ」

「恋人同士だとしても不純異性交遊は問題だ。ゆえに高坂は罰せられなければならない」

 教師のこめかみに浮き立っている血管の数が増えている。

「恋人同士のキスは崇高な愛の営みよ。不純異性交遊とは心外だわ」

 先輩との愛の素晴らしさを守るために私は教師に堂々と抗議する。

「黒猫さんや……それ以上喋って俺の刑を重くしないでおくれ」

 先輩は涙をまぶたに浮かべている。私の姿勢に感動しているに違いなかった。

「お前らがキスをしていると他の生徒の学問の妨げになるだろうが」

「集中力が欠けている証拠ね。勉学に励むときはもっと誠心誠意全力を込めて揺らがぬ決意で挑むべきだわ」

「お前らが揺らがしてどうする」

「先輩は旺盛なお節介魂を発揮してみんなの精神を鍛えてあげているのよ」

「ほぉ〜」

 教師の怒りの瞳が先輩を突き刺す。

「ひぃいいいいいいいぃっ!?」

 先輩から情けない声が上がった。

「とにかく、どうしてもキスがしたいのなら学校を出てからやれ。自宅でしてろ」

 教師は投げやりに言い放った。でも、それは私にとっては捨て置けなかった。

「自宅でのキスに満足できなくなったからこうして学校でもキスしているのでしょうが。昨日も先輩の部屋で何回キスしたと思っているの?」

 問題の所在を全然分かっていない愚かな教師。だから結婚できないのね。

「高坂……今日無事に帰れると思うなよ?」

「そ、そんな殺生なぁ〜〜〜〜っ!!」

 先輩は泣きそうな声を上げながら上体を仰け反らせた。

 

「先生っ! 高坂の処罰を少し待ってくれませんか?」

「あっ、赤城ぃ〜っ。俺をフォローしてくれるのかぁ♪」

 手を挙げながら私たちの会話に割って入ったのは赤城瀬菜の兄だった。

「何故だ赤城? お前とて高坂に対する憎しみで溢れかえっているだろうに」

「先生。高坂は今日、サッカー部に助っ人に来てくれることになっているんです」

「助っ人? 何だそりゃ? 俺、そんな話聴いてないぞ?」

 先輩は目をパチクリさせた。

「高坂は今日、俺たちサッカー部のためにキーパーをしてくれるんです。ペナルティーエリア内からの俺たちの魂込めたシュートを全部体を張って止めてくれると」

 私はサッカーについてほとんど知らない。けれど、キーパーがとても大事なポジションであることぐらいは分かる。どうやら先輩はとても大役を任されているらしい。

「それすっげぇ〜無茶だからっ! サッカー部の高校生の本気シュートを体で受けるとか一般人には無理な所業だからっ!! ボールが近くで唸るんだぞ!」

「先生も参加していいかっ?」

「勿論です」

「赤城。俺たちも今日だけ体験入部していいか? 思い切りボールを蹴ってみたいんだ」

「勿論だ。今日に限って希望者全員の体験入部を認めるぜ」

「みんなっ! 今日は高坂とトコトンボールを通じて青春を堪能するぞ」

「「「オーッ!!」」」

 教室はすごい盛り上がりをみせている。

「先輩はこんなにもクラスメイトから好かれているのね。少し妬いちゃうわ」

 男同士の友情。

 そんなフレーズが頭の中で不意に浮かんだ。

「くっ、黒猫ぉ〜〜っ! 俺を、俺を助けてくれぇ〜〜っ!!」

「まあ、男同士の友情を邪魔するのは先輩の彼女として野暮ってものよね。先輩は存分にサッカー部の助っ人に専念して頂戴」

 良妻賢母とは夫にベトベトとくっ付くだけが能ではない。夫が男を上げる手伝いをするもの。……夫だなんてまだ気が早いのだけど。

「でも、放課後私と一緒にいる時間が減ってしまうのは悲しいわ。次の時間には私の教室に来て頂戴。キスの続きをしましょう」

 先輩にも男同士の付き合いがあるのは認める。でも、だからといってそれで彼女に寂しい想いをさせるのはまたおかしな話。

 だから、間を取って先輩には次の休み時間に私への愛情をタップリと示してもらうことにした。

「それじゃあ授業だから私は自分の教室に戻るわ」

 別れ際にもう1度背伸びして先輩にキスをする。時間がないので短めのキス。

「………………っ」

 私とのキスに脳みそが蕩けてしまっているらしい無反応な先輩を置いて教室へと帰る。

 先輩分の補充に成功したので今度の授業はとても集中できそうだった。

 

「今日は高坂祭りを開催するぞっ! とことん高坂祭りだぁ〜〜っ!!」

「「オーッ!!」」

 背中から聞こえてくる教師と先輩のクラスメイトたちの盛り上がり。先輩は今日の放課後をきっと楽しく素敵に過ごすのだろう。

「ふっ、ふっ、不幸だぁ〜〜〜〜っ!!」

 とあるの主人公上条当麻の真似をする先輩がちょっと可愛らしくて私の頬は自然と緩んだのだった。

 

 了

 

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キスの日記念 高坂桐乃さんの場合

 

「ねえっ。今日5月23日ってキスの日らしいのよね」

 家に帰ると、リビングのソファーの上からとても不機嫌な声が聞こえてきた。

 声の主を確かめると言わずもがな桐乃だった。我が家の我がまま姫さまはパンツ見えそうな青いミニスカート(というか青と白の縞パンが微かに見えている)と上は大胆にカットされた何だかよく分からないダブダブな白い服(脇の隙間から白いブラが微かに見えている)姿でソファーに寝転がっていた。ファッション雑誌らしきものを読みながら。

「キスの日? 何だそれ?」

 聞いたことがない日だった。

「キスの日の由縁なんてどうでもいいのよ。問題はアンタが今日キスしたのかってこと」

「俺は西洋人じゃないんだから、挨拶代わりにキスしたりしないっての」

「じゃあ、キスしてないの?」

 桐乃が顔を持ち上げて俺の顔を覗き込んだ。

「彼女もいないのに誰とキスするってんだよ」

「高校3年生にもなってキスしてくれる相手がいないなんて……ダサッ」

 桐乃はとても蔑んだ瞳で俺を軽蔑してくれた。

「アンタがそんなんじゃ、アタシまで加奈子たちにダサく思われるじゃないのよ」

「お前はいつだってナチュラルに俺を罵倒してくれるよな」

 妹の辛らつな言葉はいつものこととはいえ、今日のはいつにも増して理不尽だった。

 

「大体、今日がキスの日だって言うんなら……桐乃はキスしたのかよ?」

 言われっ放しは悔しいので桐乃の事情を突いてみることにする。

「ハァッ? アンタ、バッカじゃないの!」

 ……いきなりキレられた。

「可憐な女子中学生であるこのアタシがキスなんて気安くするわけがないでしょうが!」

「俺にはキスする相手がいないって小馬鹿にしたくせに随分な言い様だな」

「男子高校生と女子中学生が同じシチュで話ができるわけがないでしょうが!」

 怒りの八重歯を見せる妹。コイツ、我がまま過ぎる。

「美少女JCのアタシの可憐な唇の価値はダイヤモンドを越えるの。モテない男子高校生のアンタがキスできないのは30歳まで童貞で魔法使いになる道に繋がるだけだっての」

「今日キスできないだけで俺は魔法使いの道を歩むのかよ!」

「アンタみたいな男は30歳まで童貞に決まってるっての!」

「ヒデェこと言いやがるなお前はっ! 泣くぞっ!」

 妹に30歳まで童貞と決め付けられる兄。悲し過ぎる。

 

「まあ、でも世界レベルの美少女のであるこのアタシの兄貴がキスもできないまま魔法使いになるのはアタシが可哀想よね。アタシが馬鹿にされるから」

「何が言いたいんだお前は?」

 桐乃は突然顔を赤らめた。えっ?

「あ、アンタ……キス、させてあげようか?」

 桐乃の顔は真っ赤っかだ。

「誰と? ラブタッチの話か?」

 液晶画面にキスするほどに俺はまだ賢者として目覚めてはいない。

「んなワケがあるかっての!」

「痛てぇっ!?」

 思い切り背中をビンタされた。

「じゃあ、犬猫か?」

「誰が犬猫だっ!」

「って、また叩かれたぁっ!?」

 うちの妹の暴力癖はどうしたら治るのでしょうか?

 その内に変な性癖に目覚めてしまわないか不安です。

「じゃあ、一体何とキスさせようって言うんだ?!」

「人間だっての!」

「って、イチイチ叩くなっ!」

 背中がやたら熱いです。まるで真夏に海岸で日焼けを堪能しているような気分だ。

「じゃあ、誰なんだよ? 俺とキスするっていうのは?」

 赤城の妹的な発想に基づくと、御鏡や赤城兄になる可能性が最も高い。瀬菜と親和力が高い桐乃ならそんな危険な意見を述べかねない。注意しなくては。

「何でこれだけ言ってるのに分からないのよっ!」

「お前が分かるように言ってないからだ!」

「アンタがキスする相手は……」

「相手は?」

 桐乃は大きく息を吸い込んで、吐き出しながら大声で怒鳴った。

「仕方ないからアタシが兄貴にキスしてあげるってのっ!!」

 

 桐乃のスゲェでかい声が鼓膜を激しく揺らす。

「えっ? 何だって?」

 桐乃が何を言っているのか理解できなくて聞き返す。

「アンタはハーレム漫画の主人公にでもなったつもりかぁ〜〜〜〜っ!!」

 桐乃の最大限に大きな怒声。それと共に妹の右手が俺の左頬を激しく揺さぶった。要するに頬を思い切りビンタされた。

「さっきから人をバシバシ遠慮なしに叩きやがってっ! 俺のライフはもう0なんだぞ!」

「うっさいっ!」

 桐乃は俺の両肩を荒々しい手付きで掴んだ。

「アンタの同意を得ようとしたアタシが馬鹿だった」

「何の話だ?」

 桐乃は答えることなくつま先立ちになって俺の顔へと自分の顔を寄せてくる。また叩かれると思ってビクッと体が震える。

「アンタがキスしたこともない惨めなおじさんにならないように……アタシが慈悲をくれてやるわ」

 そう言って桐乃は目を瞑ると……俺の唇へとキスをしてみせた。

 その突然の出来事は俺の頭を真っ白くさせた。

 

「えっ?」

 俺の意識がはっきりと戻ったのは桐乃が唇を離してから10秒以上経ってのことだった。

「あ〜あ。兄貴なんかに貴重なファーストキスを捧げちゃうなんて最悪よ」

 桐乃は服の袖で自分の唇を擦りながら文句を垂れている。

「ファーストキスって何でそんな大事なものを俺にっ!?」

 妹の行為の意味がまるで分からない。

「慈悲だって言ったでしょ。モテない確定のアンタのためにこのアタシが唇を貸してあげたんだから感謝しなさいよね」

「感謝しなさいとかそういう問題じゃないだろうがっ!」

 女の子の唇ってもっと大事なものなんじゃないのかとか色んな疑問が頭の中をグルグル巡る。

「そう言えばそうね。アタシの唇とアンタの唇が釣り合うワケがないんだし」

「だから何であんな馬鹿な真似をしたんだよ!」

「アンタには強力なペナルティーを受けてもらわないとね」

「自分で勝手にキスしておいて勝手な言い草だよな」

 妹はいつだって妹だった。

「アンタさ、アタシが誰か彼氏を作るまで彼女作ること禁止ね」

「何だよ、それ?」

 桐乃がニマッとエロゲやっている時のドヤ顔で笑った。

「アンタがアタシの許可なく女の子とキスすることを禁止するってこと」

「ペナルティーの主旨が全く理解できないんだが?」

「まあ、でもそれじゃあ魔法使いがあんまりにも可哀想だから、アタシに土下座してお願いしてくれれば時々慈悲のキスをくれてやってもいいわ♪」

 桐乃は実に楽しそうだ。俺なんか妹の話がまるで理解不能でグーグル先生に相談しようか真剣に迷っているのに。

「そんなワケでアンタはこれからアタシ以外の女の子とキスをすることが全面的に禁止になりました♪」

「頼むから論理的な説明をしてくれ」

「兄貴の唇はこれから一生アタシが管理するってことよ」

 桐乃はそう言ってまた背伸びをして目を瞑り……俺にキスをした。

「アタシ……こうやって兄貴と慈悲のキスをしていることがバレて誰の所にもお嫁に行けなくなったら……」

「なったら?」

「責任取ってもらって、兄貴に一生面倒見てもらうからね」

 桐乃はそう言って嬉しそうに俺に3度目のキスをしたのだった。

 妹の唇は……とても柔らかかった。

 

 了

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キスの日記念 田村麻奈実さんの場合

 

「きょう〜ちゃ〜ん。えへへへへ…だよぉ〜」

 長年ずっと一緒だった幼馴染にも知らなかったことはたくさんある。

 麻奈実と恋人同士として付き合うようになってから初めて知ったこと。

 それは麻奈実がとってもキス大好き人間だったことだった。

 今も麻奈実の店のカウンターの前でせがまれてキスをした所、麻奈実は蕩けるようにして表情を緩めた。

「きょうちゃんきょうちゃん。今日はきすの日、なんだってぇ」

「そ、そうらしいなあ……」

 キラキラした瞳の麻奈実が俺を見る。

「だからぁ〜♪」

「だから……何?」

 気後れしながら続きを聞く。

「きょうちゃ〜ん♪ もう1回きすしようよぉ〜♪」

 以前の俺が知らない麻奈実の一面。

 普段であれば恋人同士として嬉しい申し出。

 しかし、ここは店の中。いつ客が入ってくるとも限らない。いつ田村家の面々に見られてしまうとも限らない。

 故にかなり危険な申し出だった。嬉しさよりも先に警戒感が俺を刺激する。

「えっと……店番が終わってからじゃダメか?」

「今がい〜よぉ〜♪」

 我がままを言う麻奈実は珍しい。これも付き合う前は知らなかった麻奈実の一面。

 我がままを包み隠さずに俺に述べてくれることは嬉しいのだけど……このお願いを聞き入れるわけにもいかない。

 だって、キスしている場面を田村家に見られたら……俺は今すぐ田村家に婿養子入りしなければならないかもしれない。

 花の大学生活とか全部なくなって4年間菓子職人としての修業期間になってしまいかねない。

 いずれ麻奈実と結婚することに関して不服はない。むしろ願ったり叶ったりだ。だが、それが今すぐになってしまうことは避けたい。それが俺の正直な想いだった。

 

「きょうちゃ〜ん。早くきすしようよぉ〜」

 麻奈実から催促の声が掛かる。上目遣いで俺を見る麻奈実はすごく可愛い。

 誰だ。麻奈実のことを地味子なんて呼んでいたヤツは。メガトンクラスに可愛いじゃねえかっ!

 と、心の中で妹に当り散らす。けれど、そんなことをしても事態は一向に改善されないわけで。

「…………分かった」

 麻奈実がキスをせがみ続ける以上、キスを手早く済ませてしまうことが俺が大学生活をエンジョイし続けるために必要だった。

「いくぞ……」

「うん♪」

 俺は再び麻奈実の唇へと自分の唇を押し当てた。

 麻奈実の唇の柔らかさも俺が知らなかったことの1つ。

 手早く済まそうという意識はあったものの、恋人の唇の感触の良さに当初の目的を忘れてつい堪能してしまう。

 そして── 俺が唇を離したのは店の奥、要するに居住スペースの方から音が鳴ったことによってだった。

 

「あっ」

 慌てて麻奈実の唇から離れるも、もう遅いことは十分過ぎるほどに分かってしまった。

 後は、誰に見られたか。それによって今後の対応の仕方が変わってくるのだが……。

「ヒューヒュー。若いモンはお暑いのぉ」

 江頭2:50のような何かイライラする動きをするじいさんが俺たちの元へと近寄ってきた。

「よりによってじっちゃんかよっ!」

 最悪な人物に見られてしまっていた。

 このままじゃ俺の大学エンジョイライフが……。

「なんじゃ? 義孫の分際で祖父に逆らうと?」

「既に義孫扱いかよ!?」

 まずい。事態は俺が考えるよりも早く進んでいるっ!

 な、何とかしなければ……。

「まさかとは思うが……可愛い可愛い孫娘に手を出しておきながら……責任をとらないとぬかすのではあるまいな?」

 じっちゃんは見たこともない拳法らしき構えを構えた。

「責任とらないなんて言ってないだろ! いつかちゃんと麻奈実のことは嫁に迎えるつもりだっての」

「きょっ、きょうちゃんっ!?」

 麻奈実の顔が真っ赤に染まった。でも今はじっちゃんをどうにかする方が先だ。

「いつか?」

 じっちゃんは俺を鼻でせせら笑った。

「そんな曖昧な時間設定はきょーちゃんのようなハーレム王が麻奈実を捨てることになる展開しか産むまい」

「俺を少しは信じろっての!」

「信じられないね。べぇ〜」

 ムカつく態度で舌を出してみせるじっちゃん。その態度に俺の怒りが急速に沸点に到達する。

「じゃあっ、どうすりゃ信じるってんだよ!」

 喋ってから後悔する。じっちゃんがこの後、どんな要求を出してくるのかもう分かっていたのに。

「お前らもう結婚しろ。それしか信じられる方法はないね」

 ……予想通りに即時結婚を迫ってきた。

 

「きょっ、きょうちゃん……」

 麻奈実が心配半分、期待半分と言った瞳で俺を覗き込んでくる。

 じじいめ。俺に大学生活を諦めろと言うのか?

「和菓子屋なら将来食いっぱぐれる心配がないぞ。ふっふっふ。もっとも……10代の内から厳しい修業に励んだ場合のみ、可能な話じゃがな」

「このじじい……ピンポイントで俺の人生に介入してきやがるっ!」

 ここで迂闊にイエスと言えば俺はそく田村家でマスオさん状態にされてしまう。

 どうするべきか?

 俺はどう答えてこの危機を乗り切るべきなのか?

「きょうちゃん……無理しなくていいんだよ」

 麻奈実がとても優しく、でも瞳の奥で哀しい色を湛えながら俺にそう申し出てくれた。

 そんな麻奈実の顔を見た瞬間に俺の覚悟は決まった。

「麻奈実に……そんな顔は似合わないぜ」

 

 俺の青春は世界一の和菓子職人を目指して汗を流すことに変わった。

 5月23日は俺にとって様々な意味で記念日となった。

 

 了

 

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キスの日記念 五更日向さんの場合

 

「いやぁ〜遂にあたしもアニメ俺妹に声付きでデビューしちゃったからねえ。有名人の仲間入りってやつ。にゃっはっはっはっは」

 日向ちゃんは自分が出演している部分の動画を見ながらご満悦に顔をニヤニヤさせている。

「クレジットに日向ちゃんの名前とその声優はなかったけどな」

「うっさいなあっ! その辺は大人の事情でしょうが!」

 姉と声がそっくりな日向ちゃんは何故か台詞があったのにも関わらずEDで声の出演部分に名前が書かれていなかった。

「高坂くんはアレだよね。釣った魚に餌をやらないタイプだよね」

「何だそりゃ?」

「恋人に冷たいってことだよ。告白してくれた時はあんなに情熱的だったのにさ」

 大きくため息を吐く日向ちゃん。

「そ、それは……」

 俺は上手く言い返せない。

 何しろ、俺と日向ちゃんが恋人同士だという関係は、人目をはばかりながらも事実に相違ないのだから。

 

 はじめは……姉狙いだったんだ。黒猫と恋仲になるためにその家族にも近付いた。

 俺の恋の後押しをしてくれたのは日向ちゃんだった。俺と日向ちゃんは2人で作戦を練りながら黒猫に近付こうとした。

 でも、それは上手くいかなかった。代わりに、いつも一緒にいた俺と日向ちゃんはどんどん親密になっていった。

 それで、段々と気分が盛り上がって……相手が小学生であることを理解しつつも遂に愛の告白。日向ちゃんに受け入れてもらい、俺たちは晴れて恋人同士になった。

 漫画アニメでよくある展開と言えばそれまで。けれど、恋人が小学5年生であることを考えると、よくある展開で済ませていいものでもなかった。

 ロリペド撲滅法に引っ掛かってしまう。それが俺と日向ちゃんの恋路に付きまとう難関だった。

 迂闊に外で会うことはできない。だからこうして誰もいない時間帯を狙って五更家で会うのが俺たちのデート方法になっていた。今日もその一環だ。

 

「高坂くんは今でも私のことを愛しているのかなあ? 疑わしいなあ」

 嫌味をタップリと篭めた声で日向ちゃんが疑問を述べる。

「愛してるに決まってるだろ。だからこうして日向ちゃんに会いに来ている」

「う〜ん。でもそれだけじゃあまだ信じられないんだよねえ」

 日向ちゃんはニタニタと余裕の笑みを浮かべた。あれは上から目線の笑いだ。

「高坂くんがあたしに濃厚なキスをしてくれればぁ信じてあげられるんだよねえ」

 日向ちゃんからの要求は分かり易かった。

「べっ、別にキスぐらい3度もしたことあるじゃないか……」

 小学生との背徳的なキス。

 告白にオーケーをもらえた時と、帰り間際のキス2回。俺たちは一応もう複数回キスを済ませている。

 初めてというわけでもないので、そこまで精神的なダメージは大きくない。とはいえ、ロリペド撲滅法適用対象となるから楽観視できることでもないのだけど。

「あたしは濃厚なのって言ったんだよ♪」

「それってまさか……」

「うん♪ 舌を絡め合わせるキスって一度してみたかったんだよねぇ〜♪」

 JS彼女から恐ろしい要求がきた。

 もし、小学生とディープキスしている場面を目撃された場合……俺は裁判なしで官憲により射殺されてもおかしくない。

 もしくは“善良な市民”によって俺が無慈悲に殺されても無罪が伝達されてそれどころか感謝状が届く事態になりかねない。

 なんて恐ろしい要求をかましてくれるんだ。最近のJSは。

 

「キス……してくれないの? やっぱり、あたしのことなんてもうどうでもいいんだね……」

 暗い表情を見せる日向ちゃん。

 その表情が半分演技であると分かっている。分かっているのだけど……それでも俺は最愛の彼女に悲しい表情をして欲しくなかった。

「分かった。日向ちゃんのお望み通りのキスをするぞ!」

「わぁ〜い♪ やったぁ〜♪」

 飛び跳ねて喜ぶ日向ちゃん。

「たまには神妙な顔をしてみるもんだねえ。こんなにも上手くいくなんて♪」

 ……俺のJS彼女はこんな子です。

「男に二言はないよね。さあさあ、ブチュッと盛大にキスしてねぇ♪」

「もうちょっと雰囲気ってもんを考えないのか、君は?」

 何ていうかそれっぽい空気がまるで形成されない。いつもの漫才がまだ続いている感じ。そんな空気でいられるからこそ、俺は日向ちゃんに恋人になってもらったのかもしれないのだけど。

 

「じゃあ……いくぞ」

 日向ちゃんの両肩を抱いてゆっくりと顔を近付ける。

「うん♪ 濃厚なのをお願いね♪」

 日向ちゃんは楽しそうに目を瞑ると顎を上げてキスを受け入れる体勢を取った。日向ちゃんは姉とそっくりな目鼻立ちをしているだけあって、超一流の美少女に間違いなかった。

 俺たちの顔がゆっくりと近付き……やがてその距離が0になった。

 4度目を味わっている恋人の唇。でも、今回はそれだけで満足してはいけない。日向ちゃんはその先の絡み合いを求めているのだから。

 俺は唇を日向ちゃんにくっ付けたままぎこちなく口を少し開く。俺の動きに従うようにして口を開いてくれる。後は……。

「ひ、日向……」

「きょ、京介くん……」

 俺の舌をゆっくりと日向ちゃんの口の中へと入れていく。そして……

 

「貴方たちっ! 一体何をしているのっ!?」

 俺の舌が日向ちゃんの舌に触れた所で背後から大声が掛かった。

「うおっ!?」

「きゃっ!?」

「って、痛ぁああああああああぁっ!?」

 驚いた日向ちゃんが慌てて口を閉じたので俺の舌が彼女の歯に齧られた。

 幸いにして舌を噛み切られる事態は避けられたものの……。

「先輩……日向……これはどういうことなのか説明してくれるかしら?」

 俺は別の存在によって命の危機に直面することになってしまった。

「えっと……これは……」

 黒猫の瞳は怒りで燃えていた。

 まあ、黒猫にはまだ俺たちの交際を伝えていなかったからこの反応はあり得ないことではなかった。

 一つ想定外だったのは最悪なタイミングを垣間見られてしまったということだ。

「先輩はロリペド撲滅法を適用されて今すぐ私に殺されたいらしいわね。善良な市民である私としては先輩の存在を見過ごせないわ」

 黒猫の手が光って唸っている。ヤバイ。本気で俺を殺す気だ。

「お前は闇の眷属夜の女王なんだろ!? こんな時だけ善良な市民を気取るなぁっ!」

 絶体絶命の大ピンチっ!!

「止めてルリ姉っ! 義弟になる高坂くんに酷いことをしないでっ!」

 日向ちゃんが俺の前に立ち、両手を広げて俺を庇った。

「義弟……っ? 先輩が……私の義弟」

 一方で黒猫は別の所が気になっているようだった。俯いて悩んでいる。

「そっかあっ! ルリ姉は妹属性っぽく見せた強固な姉属性。だから……高坂くんがルリ姉をお姉ちゃん扱いすればきっと堕ちるっ!」

 日向ちゃんは大きく手を叩いて見せた。

「さあ、高坂くんっ! 生き延びるためにルリ姉をお姉ちゃん扱いしてみて!」

「わっ、分かった」

 本当はよく分かっていない。しかも、俺は根っからの兄属性。その俺が……年下の女の子を姉として扱うなんて。そこには大きな葛藤が存在する。

でも、俺は死ねない。生涯で初めてできた、きっと生涯でただ1人の恋人を残して死んでしまえるわけがない。

俺は大きく息を吸い込んで黒猫に囁いた。

「瑠璃姉さん。俺と日向ちゃんの交際を認めてください……」

 黒猫は目を閉じた。

「瑠璃……姉さん…………」

 黒猫は何度も何度も深呼吸を繰り返した。

 そして──

「日向が義務教育を修了するまではキス以上のことはダメよ。私が京介を殺さなくちゃいけなくなるから。い〜い。姉の言うことは絶対よ」

 黒猫は俺たちの仲を認めてくれた。

「やったね。高坂くん♪」

 ジャンプして俺の頬にそっとキスをする日向ちゃん。ディープキスをしようとした時よりも今の方が胸の奥が暖かくなれた。

 

 了

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キスの日記念 新垣あやせさんの場合

 

「さあ……お兄さん。今日はキスの日です。だから大人しく観念してわたしの唇を強引に奪ってください」

 のっけから大ピンチだった。

 学校からの帰り道、1人住宅街の中を歩いていたら突如背後から鈍器で殴られた。犯人の顔がよく知る美少女JCのものだったのと気付くのと俺が意識を失うのはほぼ同時だった。

 そして気が付いた時には、何度か足を運んだことがあるあやせの部屋に監禁されていた。両手両足をベッドに縛り付けられた状態で。

「お兄さんが悪いんですよ……ハァハァ……何度も何度もわたしを誘惑して惑わすから」

 あやせは病んだ瞳で俺を見ながらハァハァ荒い息をしている。

「何のことだよ、一体っ!?」

「お兄さんが何度も何度もセクハラしてわたしのことを自分の女扱いするから……ハァハァ……わたしの思考回路が麻痺させられたってことですよ」

 あやせの瞳は完全に病んでいる。いつものあやせと言えなくもないがヤバ過ぎる。

「お兄さんの度重なるセクハラにより洗脳を施されてしまったわたしは……お兄さんに唇を強引に奪われない限り頭が狂ってしまいそうなんです」

「もう狂ってるからっ! あやせたんはもう手遅れだからっ!」

 必死に暴れる。けれど、俺を拘束している荒縄は固く縛られており、俺の力では全く解けそうにない。

「さあ、お兄さん。わたしを汚すことしか考えていないその下卑た唇で……わたしの初めての唇を滅茶苦茶に奪ってください」

 ベッドの上に飛び乗って四つん這いになったあやせが段々と顔を近付けてくる。

 瞳がヤンデレ化していなければ色っぽいと好意的に評価することもできるかも知れない。

 でも、今の俺にとってあやせたんはヤンデレ過ぎた。そして野獣過ぎた。

「ガルルルルルルルッ!!」

 野獣の雄たけびを上げながらあやせたんの唇が迫ってくる。

 俺の操が絶体絶命の大ピンチだった。

「いっただっきまぁ〜〜す♪」

「嫌ぁああああああああああああぁっ!! ケダモノォ〜〜〜〜ッ!!」

 俺の唇が今まさに野獣に奪われ──

 

「京介っ……助けに来たぜっ!!」

 俺とあやせの唇の距離が0になる直前、小柄な少女が部屋へと飛び込んできてあやせにタックルを仕掛けた。加奈子だった。

「きゃぁあああああああああああああああぁッ!?」

 加奈子の奇襲を受けてあやせは大きく吹き飛んだ。壁に叩き付けられて気絶してしまった。

「よしっ! 今の内に縄を解いてやるからな。一緒に逃げようぜ」

「ああ。ありがとう……」

 加奈子はてきぱきした動きで俺の拘束を解いていく。1分後に俺は自由の身となった。

「さあっ! あやせが目を覚ます前にここからずらかるぞ」

 加奈子が俺に向かって手を伸ばしてきた。

「分かった」

 俺は加奈子の手を握って新垣家から逃げ出した。

 

 手を繋いだまましばらく走って高坂家へと到着する。玄関を潜った所で俺はようやく生き返った心地がした。

「リビング行こうぜ。何か飲み物でも飲もう」

「ああ。そうさせてもらうぜ」

 加奈子を連れてリビングに入る。おふくろも桐乃も出かけているようでこの家には俺と加奈子の2人きりだった。

 加奈子にグラスに注いだオレンジジュースを渡しながら2人並んでソファーに座る。

「加奈子……助けてくれてありがとうな」

「別にいいってことよ」

 加奈子は照れ臭そうに頭を軽く掻いた。

「それにしてもよくあのタイミングで入って来られたな」

 加奈子は頬を赤くしながら俺を上目遣いに見上げた。

「実は……京介に伝えたいことがあって家の前で待っていた所、あやせが京介を拉致する現場を目撃したんだ。で、後を追いかけてきたんだ」

「ああ。なるほどな」

 加奈子の救出のタイミングが良かった理由がわかった。

「で、俺に伝えたいことって何だ?」

 加奈子が顔中真っ赤になった。

「あっ、あた、あたしは、京介を救ったんだから、お礼ぐらいされてもいいはずだ」

「まあそれはそうだな」

 加奈子は腕の先まで真っ赤に染まった。

「だっ、だったら、あ、あたしに……キス、してくれないか? それがお礼ってことで」

「えっ?」

 加奈子の意外すぎる提案に驚いてしまう。

「そ、それって、お礼になるのか?」

 男が女の子からキスしてもらうのはお礼として十分に成り立つだろう。でも、その逆はあるのか?

「いっ、いいんだよ。加奈子にとっては、それ以上のお礼は存在しないんだから!」

 加奈子は全身真っ赤に茹で上がっている。これ以上この権を突っ込むのは良くないと思った。

 

「分かった」

 加奈子の両肩を抱く。

「じゃあ、いくぞ……」

「おっ、おう」

 加奈子は目を瞑って全身を固くした。

 こんな風にキスしていいのかなと疑問が心の中で生じながら顔を近づけていく。けれど、加奈子の綺麗な顔を見ていると疑問がドンドン薄れていった。代わりにキスしたい衝動がすごく高まっていく。

そして、キスしたい衝動が最大限に高まった所で俺と加奈子の唇が重なった。

加奈子の唇の感触に脳がしびれていく。そして加奈子の可愛い顔が見ていたくてずっと目を開いたままキスをしてしまった。

 やっちまったと思いながら加奈子の唇から離れる。加奈子に見られていなかったのは幸いだったと言うしかない。

 

「加奈子の初めての唇の味はどうだったか?」

 目を開いた加奈子は顔を真っ赤にしながらとても恥ずかしいことを聞いてきた。

「…………最高だった」

 俺もまたとても恥ずかしいことを素直に答えてみせた。

「あたしとまたキスしたいか?」

「…………ああ。そうだな」

 考えてみると唇にキスしたのはこれが初めてのことだった。俺は今まで知らなかった快楽を得てしまった。

「ならさ」

 加奈子は一度俯いて、それから顔を上げて俺を覗き込んだ。

「あたしを京介の彼女にしてくれないか?」

 加奈子の訴えは切実な響きを伴っていた。

「あたしは……京介のことが好きなんだっ」

 加奈子の言葉はとても真剣なものに聞こえた。

 そんな彼女からの告白を聞いて俺は胸を激しく抉られ、次いで全身がとても温かい気持ちに包まれた。嬉しいのに泣きたい気分。

「俺はお前が好きなお金持ちになれないと思うぞ」

「金なんかどうでもいいっ! あたしは京介がいてくれれば他に何も望まねえっ!」

「俺、ジミ顔だぞ」

「あっ、あたしにとっては……世界一のイケメンなんだよ」

「俺の加奈子への第一印象は生意気なクソガキだぞ」

「これから時間を掛けてあたしに対する印象は上書きしてもらえばいいさ」

 加奈子の返答は一生懸命で、俺への想いが溢れていた。

「そっか」

 こんなにも熱い言葉を語ってもらえて俺の心は決まった。

「ありがとうな。俺のことを好きになってくれて」

 加奈子の背中に腕を回して強く抱きしめる。

「俺も……加奈子のことが好きだ。俺と付き合ってくれ」

 加奈子への愛の告白の言葉は自然と出てきた。

「京介があたしのことを……嬉しいよぉ」

 加奈子の双眸からボロボロと涙の粒が落ちていく。

「でも、あ、あたしなんかで本当にいいのか? あたしは、その、性格もそんな可愛くないし……」

「俺は加奈子がいいんだよ」

「でも……」

 加奈子の唇を俺の唇で塞ぐ。

「俺たち今から恋人同士だからな。異論は認めないぞ」

「………………うん」

 ようやく加奈子は笑顔を見せてくれた。

 5月23日は俺に恋人ができた記念日になった。

 

 

説明
最近すっかり投稿から離れていましたね。
とりあえずキスの日記念に書いたやつを

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない

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