真・恋姫†無双〜家族のために〜#10川の畔
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 あれから二ヶ月ぐらい経った。

 最初の頃は?徳公も何度か見に来ていたのだが、なにやら司馬徽から圧力が掛かったらしく、慌てた様子で帰った日以来あまり見ていない。

 

 司馬徽だが、今日もいつも通り子供達に勉強を教えている。

 そんな様子を見ながら僕は司馬徽の手伝いをしている。門下生達の使う筆や墨の準備から家の掃除まで、なんでもだ。ここで驚いたことが二つある。

 

 まず、ここには侍女がいないということ。門下生十人が入ってもなお余る部屋に、客間や閨など。人一人が暮らすには十分すぎるほどに大きい屋敷に、今まで一人で暮らし、準備なども自分で行っていたらしい。森で暮らしていた僕でさえ、最初の頃は掃除するだけで倒れるほどだった……少なくとも僕よりは体力があるらしい。

 

 そしてもう一つは、読み書きだけなら無料で行っているということだった。

 司馬徽の教えるものは軍略や政など幅広いが、そういった国に関わることからはお金を貰い教えているらしいが、子供から大人まで、読み書きだけなら無料で教えていた。

 その事を知ったとき僕にも教えて欲しいと言ったら「真名を預けてくれたらね? 」と言われ、その話はそこで終わってしまった。まだ真名を教える気にはなっていない……。

 

 

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 僕は今、近くの川まで来ている。

 今日も司馬徽に仕事を頼まれた。いつもの笑顔を浮かべながら桶を僕に渡し、近くの川から水を汲んできて欲しいとのこと。近くっていっても片道で二刻はかかるんだけど……。うんざりしながらもそれを顔に出すことはせず、何往復したらいいのか訊ねると「大体……五往復かしら」と、溢れんばかりの笑顔でそう言い放ったんだ。

 

 「はぁ……」

 

 溜息が漏れる。それでも一度引き受けた仕事は最後までこなそうと改めて気合を入れて、水を汲んだ桶を持ち来た道を戻っていった。これで一往復目だ……先はまだまだ長い……。

 

 

 二往復目の途中で?徳公を見つけた。

 彼女もこちらに気付いたのか、手を振りながらこっちに近づいてくる。いつも恥ずかしいって注意しているのに直してくれないんだよなぁ……。街の人達もすでに見慣れたのか、僕を見て苦笑するばかりだ。

 

 「よう。元気にしているか? 」

 

 「……一応は。あとこっちに来るときに手を振らないでって言ってるじゃんか」

 

 「全く素直じゃないなお前は」

 

 笑いながら肩を叩く?徳公。だからそれも地味に痛いんだって……。

 

 「今日も手伝いか? ……あー、水汲みか。まぁ、その……なんだ、がんばれ」

 

 あ、やっぱり彼女でも大変なのか……。それを笑顔で子供にやらせる司馬徽って……いや、これ以上考えるのはよそう。

 

 「お前なら終わらせられるだろ。たぶん今日はそれ以外の仕事はないはずだしな。とにかく最後までがんばれよー」

 

 そう言って?徳公は去っていった。

 

 

 門の近くで子供達と遊んでいた空がこちらに気が付いたので、ここからは一緒に行動することにした。

 

 

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 二回目、川に到着した僕は再度水を汲み始めた。その間、空は暇だからか水浴びをしてたけど。

 そのまま四往復までは順調だった。途中、街で仲良くなったおばちゃん達から差し入れを貰ったのはかなりありがたかった。

 

 そして五往復目、これで最後だと僕も水浴びをすることにした。ちょっとふざけて空と遊んでたのはご愛嬌だ。水浴びから戻ってきたところで突然、空が鼻を嗅ぎ始めた。直後に走り出した空を追って、少し開けた場所で僕達が見たのは、ぼろぼろの服を身に纏い倒れている同じ年ぐらいであろう黒髪の少女だった。

 少女は気を失っていたが荒い息を吐いていて、さすがに僕もこのままにしておくわけにはいかないと思い、彼女を背負って、空には空にした桶を口に咥えてもらって、落とさないよう走りながら街に戻っていった。

 

 

 街に着くとまずは司馬徽の家に駆け込んだ。

 僕に与えられている閨に辿り着くと少女を寝台に寝かせ、空に見守っているように伝える。

 すぐさま司馬徽を探しに屋敷内を駆け回り、まだ学問を教えている途中だった司馬徽を見つけ駆け寄った。すぐさま僕の様子が普段と違うことに気が付いた司馬徽は、門下生達に休憩を伝え、足早に僕の後を何も言わずについてきてくれた。僕の閨に着き、その寝台で寝かされている少女を見ると司馬徽は触診を始めた。

 

 「こういうのは専門じゃないのだけれどね……応急手当ぐらいはできるのよ。でもそうね、幽明。千寿……?徳公を呼んできて頂戴。城の門番には司馬徽からの使いと言えば通してもらえるから。あとは……」

 

 それだけ聞くと僕は走り去っていた。

 

 

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 「あの子があんなに動揺するなんて珍しいわね……。っと、特に命に別状はなさそうね。寝させとけばいずれ目が覚めるとは思うけど、一応医者には見せたほうがいいわね」

 

 深が走り去り、司馬徽も部屋をあとにしたが、空は一歩も動くことはせず、ただ少女を見守っていた。

 

 

 

 僕は今、門番の人に司馬徽からの使いだということと、?徳公の居場所を聞いていた。

 執務室の場所を聞き、初めて門の内側へと入る。普段なら城に対してなにかしらの感慨というものがあるのだが、今は一刻も早く?徳公に知らせなければいけない、という気持ちしかなかった。

 

 執務室に着き、?徳公がこちらに挨拶をしてくるが、僕はそんなことも構わずに、現状を知らせた。

 慌てた僕の様子に顔を顰めた?徳公だったが、報告を聞き終わったあとは侍女を呼び、城一番の医者を準備させ、僕と共に司馬徽の家に向かっていった。

 

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 結論を言えば、少女は若干衰弱していたものの、命に別状はなかったらしい。

 それを聞いた途端、僕は気が抜けて寝てしまって、その後のことはまだ聞いていない。

 

 

 そしてここからが今のことだ。

 僕は寝台で寝ていた。寝るのだから寝台なのは当たり前だろう、うん。

 空は床に丸くなっていた。毛布が掛けられているのは、たぶん自分でやったんだと思う。

 

 そして問題は僕の左隣。

 

 昨日の少女が……僕の腕に抱きついて、すやすやと寝ていたんだ……。

 

 

 起き抜けの頭で必死に思い出そうとするけど、やっぱり少女の無事を聞いてからの記憶がない。

 ふと視線を感じ、部屋の扉に目を向けると……。

 

 そこには……口元を扇で隠しているが、含み笑いを隠しきれていない司馬徽が立っていた。

 

 

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【あとがき】

 

 

こんばんわ。

 

九条です。

 

 

 

今回は拠点パートっぽい感じの本編になりました。

 

水鏡先生は子供には優しいです。ほんとですよ? 

 

 

次回もこんな感じでゆる〜く進んでいくと思います。

 

 

 

ここが漢中だったら

熱いアノ人の師匠でも出していたのかもしれませんね(笑)

 

 

それでは次回も楽しんでいただければ〜

説明
またしても新キャラ登場します。

最近、空のことを虎ではなく犬だろ……と思うことがあります(笑)
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コメント
>二郎刀様 4+4で8歳ですね。詳しくは#2のP2と、#8の最終行を読んでいただければ分かると思います。(九条)
あれ・・・主人公いくつだっけ・・・(二郎刀)
>naku様 相手が子供で、なおかつ自身が興味を持った相手ですからね。そして諳さんに理詰めで勝てる人を見てみたい←(あ(九条)
>都非様様 #2にも書いた気がしますが、一刻=30分 ぐらいで考えていただければと思います。あくまで子供の歩く速度で換算してますので。(九条)
一刻どの位で考えてますか?(都非様)
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