真・恋姫†無双〜家族のために〜#11覚悟?
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 結局、僕を寝台に乗せたのは司馬徽だった。

 なぜ違う部屋ではなく少女の寝ている寝台の上に乗せたのかを問い詰めると……。

 

 『だってここはあなたに与えた部屋でしょう? それにあなたの慌てる顔が見てみたかったし……』

 

 だそうだ。最初の言葉は建前だろう、絶対に慌てる顔が見たかっただけだ。

 ある意味予想通りだった司馬徽の返答に呆れつつも、僕は起こさないように少女に抱き付かれている左腕を抜こうとした……が、抜けない。そんな様子を見て司馬徽はまた笑ったが、僕は腕を抜くことに集中するため無視した。

 力任せにやれないため四苦八苦していると、少女は目を覚ましてしまった。眠たそうな目を擦り、小さな欠伸をしたあと隣にいた僕と目が合う。

 

 「……」

 

 「……」

 

 「…………」

 

 「…………誰? 」

 

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 たっぷり時間が経ってから発した言葉がそれだった。

 僕と司馬徽は顔を見合わせ頷いてから自己紹介を始める。

 

 「私の名前は司馬徽。字は徳操よ」

 

 「僕の名前は黒繞。字は幽明」

 

 「あなたはこの街の近くにある川で倒れていたんらしいのだけれど、覚えているかしら? 」

 

 それに対して首を振る少女。

 僕と司馬徽はそれを聞いて再度顔を見合わせ、司馬徽は医者を呼びに、僕はそれまで少女の相手をすることにした。

 

 

 「名前は覚えてるかな? 」

 

 質問に対して少女は考える仕草をする。しばらく考えていた少女だが、何か思い出したのか俯きながらも話してくれた。

 

 「……((影華|えいか))。そう呼ばれてた……と思う……」

 

 「そう……その名前は真名なのかな? 」

 

 「……真名ってなに? 」

 

 それすらも覚えていないのか……。一体何があってそんなことに……。

 

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 そこへ、医者を呼びに行った司馬徽が戻ってきた。そこで僕は場所を空けるため移動しようとした……んだけど……彼女は僕の服の端を掴んでいた。

 

 「……どうしたの? 」

 

 「……(フルフル)」

 

 僅かに医者の姿を見てから彼女は首を振った。

 

 「僕もここに居たほうがいい? 」

 

 「……(コクコク)」

 

 僕は司馬徽を見て、司馬徽はそんな僕達を見て医者へと何事かを話すと、そのまま診断を始めた。

 

 

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 夜になり僕達はみんなで卓を囲んだ。もちろん?徳公もいる。

 僕の向かいはいつも通り司馬徽が、その右隣に?徳公。さらにその隣の床に空。

 僕の隣には少女が俯きながら座っている。そしてまだ服の裾を掴んだままだ。

 ?徳公も最初見たときはからかってきた。すぐに司馬徽に黙らされていたが。

 

 少女は食事の仕方も覚えていなかった。だから僕が世話を見るしかなかった。彼女は僕以外が近付くと警戒してしまうから。湯浴みの仕方もだ。正直に言うと恥ずかしかったが、日常生活で必要なことは全て教えた。

 

 その頃からだ。僕はやれることは全てやろうと考え始めたのは。

 

 

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 まずは司馬徽からだ。今日も少女がついて来そうだったのだが、そこは空に任せた。今日だけは、今日やることだけは彼女に見せたくなかったんだ。

 

 

 

 「司馬徽……僕に、軍略を教えてくれませんか? 」

 

 司馬徽は少し驚いていたが、前回と同じように返してきた。

 

 「どういった心境の変化かしらね? ふふっ。でも私の返事は変わらないわ。あなたが真名を預けてくれるなら私は、私の全てを教えてあげるわ」

 

 「……」

 

 「どうするのかしら? 」

 

 短い間に葛藤はあった。でも、何も分からない少女、影華のことが頭によぎったとき、悩んでいたことが馬鹿らしく感じた。だから僕は司馬徽の目を見つめ返して力強く言った。

 

 「真名は深。あなたにこの真名を預ける。だから僕に軍略と読み書きを教えてください」

 

 言い放った瞬間、彼女は目を大きく見開き、笑い出した。

 

 「ふふふふっ! いいわ。あなたの真名、ありがたく頂きましょう。私の真名は諳よ。今度からそう呼びなさい。ええ、まずは読み書きからかしらね。ああ、いいわね。今日は本当に良い日だわ! 」

 

 そう言った司馬徽はすでにいつもの目に戻っていたが、嬉しさが滲み出ていた。

 

 とにかく準備もあるから、教えるのは明日からだそうだ。

 僕と諳、両方が仕事を終えた後に教えてくれるらしい。

 僕は心の中でありがとうと呟くと、次の人に会いに行った。

 

 

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 その人は街の警邏中だった。

 その人は僕に気付くと何事か兵士に伝え、手を振りながら近付いてきた。

 兵士の人たちは僕に向かって、苦笑しながら一礼すると警邏の続きをするのか、歩いていってしまった。

 

 「おう、幽明じゃないか。……今日は彼女はどうした? 」

 

 「今日はちょっとあんたに用があって、彼女は空に任せてる。すぐに戻るけど」

 

 「そうか。で、用とは何だ? 」

 

 もうすでに大きな山場は過ぎた。僕は悩まず?徳公の目を見て言った。

 

 「僕の真名は深だ。?徳公、あんたに預ける。……代わりにと言ってはなんだけど、いつでもいいから、時間が空いたときに鍛錬を見て欲しい」

 

 「っ!……そうか。真名を預けると言うことは、本気と言うことでいいんだな? 」

 

 「……(コク)」

 

 「分かった。私の真名は千寿だ。私もお前に真名を預けよう。それと見るだけでなく、私が直々に鍛えてやろう! それとは別に新兵達と同じ訓練に参加させる。それでも構わないな? 」

 

 「……ああ! 」

 

 千寿直々に鍛錬を見るだけではなく、兵士の訓練の参加も許可してくれた。感謝してもしきれない。

 

 

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 「あぁ、彼女も来てしまうか……まぁ近くにお前がいれば問題はないか? 」

 

 「……たぶん」

 

 「ふむ……ひとまずは一度連れて来て、様子をみてからだな」

 

 訓練で扱かれている僕を見て、彼女は何か思い出すのだろうか。医者からは、とにかく色々なことを体験させると何か思い出すかもしれないと言われている。これが何かのきっかけになるかもしれない。

 

 

 諳と千寿。自分よりも遥かに高い文と武の力を持つ者。

 僕は二人のことを、師と仰ぐことになった。その日の夜、二人から明日の予定を聞いたのだが、二人からは集合時間しか伝えられず、何か嫌な予感を感じながらも僕は床に入った。

 もちろん、少女と同じ寝台で……。

 

 

 

 だから、眠れないんだって……。

 

 

 

 

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【あとがき】

 

こんにちは! ですかね。

 

九条です。

 

 

一つ報告です。

前回の#10川の畔にて、少女の詳細に黒髪属性を追加しました。

設定に入れてたのに本編で触れてませんでした。申し訳ありません。

 

 

気を取り直して

今回は改ページが少しバラけてしまった感じです。

気になるようでしたら言って下さい。直しますので。

 

 

ようやく真名を交換することができました。長かった(笑)

 

少女とはまだ真名の交換はしてません。そういうことにしてください、お願いします。

あのときは真名のことを覚えていなかったからなんです、はい。

 

 

次かその次の話で、少女視点のお話を挟もうかな〜って考えています。

ちょっと恋ちゃんみたいな話し方になるかもしれませんが……。

 

 

 

 

ではでは、次回も楽しんで頂けたら〜。

説明
やっと一区切りですかね。

あー、早く黄巾まで進みたい! と思いつつもしっかり書いていきます。
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コメント
主人公の名前を変更いたしました。詳しくはNLをご覧ください。(九条)
>yamimaru様 ご期待下さい!(九条)
これからの主人公の成長が楽しみです^^(yamimaru)
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