「幽々子様もそうならそうと言ってくれればそれなりの用意したのに・・・。あの企み癖はもうちょっとどうにかならないかなぁ？」

「お嬢様お出掛けになるなんて一言も言ってなかったのに。困ったものです。」

「お茶やら用意するのはいいけど、それから何も言わずにスキマに放り込むなんてひどいよ。師匠ぉ。」

「こういうのは身内だけにすればいいのに必ずと言っていいほど他の方々を巻き込むのは紫様の悪い所です。全く。」

「物事ハッキリ付けたがる癖になんでかこういう事に乗るかなぁ？まぁ仕事じゃないならいいけどさぁ。」

うーん、紫様は何を考えてらっしゃるのか。

幽々子様や紅魔館の当主達を永遠亭に集めて当主会談をやるというのは聞いてはいるが。

そもそもその当主会談とやらの内容もよく知らされていない。。

一応名目的に

『これからの幻想郷に起きる異変解決に対する妖怪側の対応』

とは聞いてるがそれが本当なのかどうかちょっと疑わしい。

確かに異変によっては結界の存続に関わることもあるだろう。

しかし異変解決は主に人間が行うべき事。

妖怪側が解決する事はないはず。

というかむしろ起こす方だし。

もしかしたら逆に手を出すなっていうことを申し合わせるのか。

それなら分かる気もするがそれにしてはという気もする。

何にせよあの方の考えてる事を理解するのはまだ私には無理なのかもしれぬな。

それはそれとして、ここに部下達が集まった理由も

「上は上で話しをしてるから下の者は親睦でも深めてなさい。」

とは伺ったがそれも怪しい。

何となくウラがありそうなのだが・・・。

こちらも件も含めて読めない事だらけだな。今夜は。

「わからないなら変に考えるより楽しんだ方がいいんじゃん。酒も差し入れられた事だしさぁ。」

と小町殿が言ってるが確かに考えても分からないことは仕方が無い。

ひとつ乗せられてみた方が何か見えてくるかもしれないな。

と言いつつ既に宴会状態ではあるがな。

そしていつしか冒頭にあるような各々の主への愚痴の数々。

「ね・ねぇ？もしかして愚痴を言わせてそれを盗み聞きして後で脅すなり弱みにするなりの魂胆なんじゃぁ・・・。」

妖夢が何かに気付いた様に言うのに合わせ、一瞬の沈黙。

そして顔を見合わせるが、出てきた言葉は異口同音に

「今更盗み聞きされても普段から言ってる事だし・・・」

あー・・・、まぁ私も人の事は言えないが他もそうなのか？

いや、確かにそんな気はするが。

本当に部下というか従者なのだろうか？ここの面々は。

それを受けてまたも妖夢がはけ口として言わせてるんじゃあ？と疑問を口にする。

「それならそれこそ言い放題で構わないじゃん。乗ってあげよう。」

との小町殿の返答。

確かにな。

そんな主への口が気がつくと、

「ところで霊夢って結局誰が本命？」

「それより魔理沙はどうなの？」

「どうでもいいけどミスティーをお持ち帰りしたい。」

「この前アリスを後ろから抱き付いてる幽香を見た。」

これはまぁ予想の範疇ではあるな。

確かにも私も嫌いでは無い。

しかし、この場にこの手の当事者が居るのだがそれはみんな気付いてるのだろうか？

気付いているのなら私が言うこともないだろうし、気付いてないなら本人達の思惑がどうかだな。

ここは静観とするか。

というかこれに関しては鈴仙がどうかだが・・・。

・・・待てよ？

私たちが来る前は”当事者”だけ、つまり二人きりだったんだよな？

しかも私たちが来るのは知らなかった。

（もっとも私たちも知らなかったが。）

もしかして紫様はこの二人を邪魔する為に？

あり得そうで怖い。

しかもそれに鈴仙まで絡ませるなんて。

どこまで人が悪いのか。

いや、あくまで推測ではあるが。

ふと思って見回す。

初めて酒を酌み交わす人がいるので様子を伺ってみる。

と言っても妖夢以外の三人だが。

ふむ。

なんというか小町殿は予想通り強いようだな。

多少陽気にはなってる感はあるがさほど酔っていないだろう。

咲夜殿は弱いようだ。

妖夢が気を使って薄め割っては居るがそれでもほろ酔い状態。

そして残り鈴仙は・・・酔ってるなぁ・・・。

とはいえまだ酔っ払ってるという程でもないな。

少なくとも咲夜殿を牽制する程度の余裕はあるようだからな。

ただな、鈴仙、今更牽制しても遅いのだが。

というかまだ知らないのだな、この二人が既に付き合い始めたと言うことを。

「そうそう！あの時妖夢ったらさぁ〜。」

とか

「それで妖夢が私にね〜。」

と咲夜殿を悔しがらせようと妖夢の昔話を始める鈴仙。

しかし咲夜殿の方が一枚上手の様だ。

悔しがる所か自分の知らない妖夢の話を引き出そうとしてる。

妖夢の昔話か・・・。

それに関しては私の方が詳しいのだがな。

まぁここは鈴仙に譲ろう。

いずれ知る事実の事を考えると尚更その方が良いだろうしな。

と思ってた所に咲夜殿はちらりと私を見た。

どうやら私もこの話題に乗る事を期待してるのだろうか？

さすが吸血鬼の従者をしてるだけあるな。

抜け目ない。

話してもいいのだが先に思ったように今夜は話す気はない。

またの機会という事にさせて貰おう。

ということでそんな素振りを見せずに鈴仙を見る。

おそらく彼女ならそれだけで分かって貰えるだろう。

「えー？妖夢てっばそんなことしたのぉ？」

「今度それネタにしよう。」

やはり察してくれたのか鈴仙に話しを集中させてきた。

が、まぁ、さすがに妖夢も焦ってきたのか

「うどんげ？その辺にしとかないと私もあの事バラしちゃうよ？」

止めに入る。

それにつられたのだろうか、

「そうねぇ、うどんげさんのも聞きたいな。」

と咲夜殿が鈴仙に言ってしまう。

知らないから仕方が無いのだがその呼び方はちょっと不味い。

案の定、

「私の事は”鈴仙”と呼んでください！！」

鈴仙はその呼び方を永琳殿と妖夢にしか許してない。

理由はまぁ、敢えて書く事もないだろう。

しかもそれを恋敵である咲夜殿に言われたのだから。

しかし、自分でも思ってなかった大声だったのだろう。

「あ、ご・ごめんね。急に大声出して。ちょっと酔いが回ってきたのかなぁ？ははははは」

「えーと、そういう訳で飲もうよ？ね！？」

と、取り繕い始める。

そして誤魔化すように、手近の酒を一気に口にしてしまう。

あれ？それは・・・、

「それあたいの！！」

ああ、やはり小町殿のだったか。

だが時既に遅し。

飲む干した後だった。

そしてその瞬間鈴仙のピタリと硬直し・・・

コテン

静かに倒れた。

「あーあ・・・、あたいさっきからストレートで飲んでたのよねぇ。それを一気だものねぇ。」

ちょっと申し訳なさそうに鈴仙の顔を覗き込む。

私もちょっと近づいて見てみる。

ふむ、寝てしまったみたいだな。

まぁそれならそれで静かになっていいだろう。

それに少なくとも修羅場は回避できる。

というか先送りと言ったほうが正確か？

このまま寝かせておこうという暗黙の了解的な空気が流れ、隣の部屋に移した。

さすがにそのままでは皺になると思ったのか妖夢がブレザーとスカートだけは脱がした。

しかし、考えてみれば早い内に二人のことを知った方がいいのではないのか？

でも酔った状態よりも素面の時の方がいいだろうな。

ただ問題は当の二人が自分たちから話すかだな。

できれば第三者から聞かれるよりは当人達から聞いた方がいいだろう。

特に妖夢から。

にしても妖夢は鈍いな。

「さーて、うるさくなりそうなのが居なくなった所で・・・。お二人さんの事を詳しく聞かせて貰いましょうかね。

なに、酒の肴にするだけだ。気にしなさんな。」

さすがは三途の川の渡し人。

沢山の死者を相手してるだけあって、事情を察するのが上手い。

二人の事を見抜いていたか。

私は事情を知ってるというだけで詳しい事までは聞いていない。

それに当人達から話しを聞くのが一番おもしろいしな。

と言うことで知らなかったフリをして酒の肴を楽しませてもらうとしよう。