真・恋姫†無双〜家族のために〜#15特訓の成果 |
諳に認められ、より専門的な知識を学ぶことになってから何日か経った。
諳から出される問題はいやらしいものばかりであったが、その度に二人で話し合い策を出し、穴がないかどうかを確認し、最悪の場合も想定して数十通りの策を常に考え対抗した。諳の出す問題は全てにおいての応用が必要とされるものばかりで、咄嗟に策が浮かばず機転が利かないと叱責されることもしばしばあった。
それでもなんとか毎日食らい付いていけるようになった頃、千寿から一つ提案されたことがある。
それは、新兵との訓練ではなく本隊との訓練に参加してみないか、ということだった。願ってもないことだ。僕は即座に頷いた。が、ここにきて影華が自分も参加すると言い出したのだ。
「深、もっと厳しい訓練する? なら私も参加したい……です」
ということだ。諳の時と雰囲気が似ていると感じていた僕は彼女を止めなかった。しかし千寿はそれを止めようとした。当たり前だ。記憶を失っていて、なおかつ武器を持つには些か細い腕。どう見ても戦えるようには見えない。だが彼女は頑なに譲ろうとしない。困り果てた千寿は縋るように僕を見て、そんな千寿を見向きもせず影華と向き合い、彼女が頷いたことを確認すると、千寿に頭を下げた。
「彼女……影華の腕を試してやってくれ。頼む」
実は深と影華は夜遅くに特訓をしていた。学問を学ぶのもそうであったが、最初は息抜きに型の練習をしていたことから始まった。練習中、影華は手持ち無沙汰になるので、試しに一緒にやらないかと誘ったのだ。訓練を見ていた影華は何度か一通り型の練習をすると流れを覚えてしまった。相変わらずの吸収速度だった。面白くなって軽く打ち合いになったりしてしまったのは仕方がないのかもしれない。
頭を下げた僕を見た千寿は相当驚いていた。しばらく言葉にならない声を上げていたが、冷静さを取り戻すと呆れを孕んだ溜息を吐き了承してくれた。
近くで準備運動をしていた新兵を一人呼ぶと、周りにいた新兵達は場所を空けるように下がっていった。
彼は何度か打ち合いをしたことのある兵士だ。僕は新兵との訓練に参加するようになってから、打ち合いの時は誰であろうと勝負を仕掛けた。だから全員の癖はなんとなく把握もしているし、弱点ももちろん覚えている。
影華にその兵士の情報を教えようとすると彼女は首を振り拒絶した。
「深、ダメ。ズルはよくない」
確かに兵士の情報を教えたらズルになるか。彼女の言い方に少し笑ってしまった。情報を教えるまでもなく彼女は勝つ、そんな確信があった。だから僕は彼女の頭を撫でるだけに止め、離れた。
互いに使用する武器は木剣。寸止めによる対戦となるが、万が一止められなくても千寿が止めるだろう。先ほど目配せをしたら頷いていたし大丈夫だと思う。
両者共に正眼に構えた。皆に見られているためか、兵士の彼は緊張していたように見える。反対に影華は落ち着いていた。もしかしたらすでに周りのことなど眼に入っていないのかもしれない。集中したら凄いからなぁ……。
そんなことを考えながら見ていると、彼はしびれを切らして飛び出した。太刀筋はいつもよりキレがない……と思う。そして木剣を振りかぶり上段からの振り下ろしを放った。勝負は一瞬のことだった。
影華は上段の構えを見た瞬間、右足を引き木剣を横に滑らせ、相手に対して半身の体勢を取る。一歩前に踏み込み、振り下ろされる木剣の腹を思い切り強打した。強打された木剣は手から離れ、音を立てて地面に落ちた。
この結果は予想できていなかったのだろう。僕が終了の合図を促すまで、千寿は口を開けたまま呆然としていた。終了の合図を受けて兵士は皆のところに戻っていき、僕は影華の元に駆け寄り、思いっきり頭を撫でてやった。影華は嬉しそうに享受すると僕の隣に−−定位置に戻った。
「千寿、どうだった? 」
「……あぁ、文句ないさ。新兵とはいえ一瞬とはな。隠れて鍛錬でもしていたのか」
「まぁね」
「人材が増えるのはいいことなんだが、それが子供とはな……はぁ。二人とも、明日から本隊との訓練に参加することを許可する。新兵とは比べ物にもならんぐらい厳しいものだ。今日はゆっくりと休息しろよ? 鍛錬などは慣れてから行うように。私からは以上だ」
話は終わったとばかりに、敗れた新兵のところに向かおうとする千寿を影華は呼び止めた。
「?徳公、一つだけいい……ですか? 」
「ん? なんだ? 」
「私の真名、?徳公に預ける……ます。これからは影華って呼んで……ください」
「それは、構わないのか? 」
「うん。師と仰ぐなら教えるべきって深が。師弟は互いに信頼すべきって」
「ふむ、そうか。私の真名は千寿だ。これからはそう呼んでくれ」
「千寿……よろしく……おねがいします」
「あぁ。これからもよろしくな、影華」
新たな日常を受け入れ、新たな家族も手に入れた。毎日辛くはあるが楽しい日々を過ごしていた。襄陽の日常は甘美で、骨の髄まで染み渡る。まるでかつての平和を思い出させるかのように。動乱は必ず訪れる。しかし、それは足元に来るまで気付けないものだ。真っ赤な血さえも飲み込む果てない漆黒の闇は、確実にこちらへと近付いていた。
【あとがき】
ちょっと短かったかも。こんばんわ。
九条です。
#15をお送りしました。
いつも大体8kbぐらいのテキストですが、今日は7kbぐらい……ちょっと少ないですね。
それもこれも戦闘描写が書けないからですね……はい。
なんかもうハムさんの時みたいに
会話だけで終わらせちゃえ!とか思うことが多々あります(笑)
今回はちゃんと千寿さんが出てきました。影が薄くなってきたなぁ。
今でさえこんな感じなのだから、黄巾に入って主要キャラが出てきたらどうなるんだっていう話ですね。
なるべく空気にならないようにしなきゃ……。
そうそう。
誰々の拠点パートが見たいとか〜
○○の××な拠点パートって書けますか〜
(例えば、諳が攻められてる拠点パートとか)
といったコメント大歓迎しております。
書くか書かないかはこちらの判断になるので、淡い期待を込めて書いていただければと思います。
正直自分じゃネタが思いつかない……。
恋姫キャラの書きたいものはあるんですけどね〜。
黄巾に入る前にキャラのプロフィールをまとめたものを上げるかもしれません。
容姿とかかなり曖昧なので……主人公なんて髪型さえ書いてませんしorz
頭の中では考え付いてるのですが、それを言葉にするのがちょっと……要練習。
長くなりましたが今後も楽しんでいただければ〜
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影華ちゃんが健気度MAXになりました。 | ||
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コメント | ||
一部、文章に誤りがあったので修正致しました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。(九条) >naku様 まだ幼少期ですよ。深い意味なんてないんですよ?(九条) >観珪様 最後はあからさますぎましたね(笑) 膝枕……見た途端に構図が出来上がった不思議w この影がひと段落したときに覚えていたら書くかも?←(九条) むむむ、最後に不穏な影が……深くんと影華ちゃんに災厄が降りかからないことを祈るばかりです。 拠点は影華ちゃんと諳さんとによる深くんの膝枕をかけた不毛な争いを希望します←(神余 雛) |
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