IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第八話 救援2 |
「それじゃあ、虚ちゃん、後はよろしくね」
私は生徒会会計であり、私の従者でもある、布仏虚ちゃんに一夏君たちの護衛を任せた。
「分かりました、会長。……早く彼のもとに行って差し上げてください。さっきから行きたくてしょうがない、といった感じでしょうか。そわそわしすぎですよ」
「う……///だって、しょうがないじゃない。心配なんですもの」
虚ちゃんはこういう時鋭いからなあ。まあ、確かに早く彼のもとに駆け付けたいって言うのはそうだけど、心配の種類が違うのよね。
確かにIS四機を相手にするのだから心配だが、それとは別に心配な部分もある。
束博士だ。
束博士は他人嫌いで有名だ。それこそ、織斑先生のような旧友でない限り心を開かないだろう。
だけど、彼――黒咲紅牙には開いた。
そして、単身で敵の猛攻を退け、博士を救出する。
……なにその王子様フラグ。私なら一発で惚れちゃうわよ。
つまり、そっちの方での心配なのだ。
「絶対に渡さないんだから」
私は瞳に炎を宿しながら、紅牙と同じく屋上に向かった。
すると、そこには織斑先生が待機していた。
「あら、先生。もう上層部の説得は終わったんですか?」
「まあな。やれやれ、いくつになってもあのバカには振り回されっぱなしだ。お前も行くんだろう?許可は取ってあるから、あのバカどもをさっさと連れて帰ってこい」
織斑先生が心底疲れたように――いや、呆れているかのように言う。
「了解です。そのために私が行くんですから」
私はISを展開し、屋上から飛び立つ。スピードではミスティック・クラッド≠ノ劣るが、十分間に合うだろう。
私はそのままトップスピードに乗り、指定座標まで急行した。
一方、赤と青のISを無力化した紅牙は――。
「束さん。ナンバーゼロ≠ヘどうですか」
「うん、オッケーだよ。あとはミスティック・クラッドの拡張領域に量子化するだけだよ」
ナンバーゼロ。白騎士のプロトタイプと言ったところか。世間は白騎士が他のISのもとになっているが、白騎士のもとになった機体がこのナンバーゼロである。
このナンバーゼロは既存ISとは違い、自己進化プログラムが抜き取られており、言わばISとしての機能を失ってしまっている。しかし、何故か下手に量子化しようとすれば、反発を起こし、機材を壊してしまうのだ。唯一、量子化できるのは自我が形成されたこのミスティック・クラッドだけである。と聞いているが詳細は不明である。
「うーん、と。よし、ちゃんと量子化終わったよー」
「了解です。じゃあ、俺は残りの四機を――」
量子化が終わり、ここに迫っているであろうIS四機を迎え撃つため、天井にあいた穴から飛び立とうとするが、その手をつかまれてしまった。
「いい?束さんとのお約束。――絶対に死なないこと」
束さんが真剣なまなざしで俺を見つめる。
「……了解です」
俺はしっかりと頷きかえし。穴から地上に出る。
「さてと、さっさと片付けますか」
『そうですね。もうすぐハイパーセンサーでも捉えるはずです。それから、ミスティックセイバーのマガジンを変えといてください。残弾ゼロのはずです』
「分かってるよ」
俺はミスティックセイバーを展開、鍔のマガジンを取り外し、新しいマガジンを展開。それを鍔にセットする。
よし。
一度深呼吸する。熱すぎず、冷めすぎず、ニュートラルな状態にする。
「BREAKERSナンバー四、黒咲紅牙、敵をBREAK(破壊)する!」
言い放つと同時にスラスターを全開にする。
右手にはミスティックセイバー、左手にはアサルトライフルラピッドシューター≠展開。
「四対一だ。手加減なしで行くからな」
『当たり前です。ミスティック・クリスタル=Aミスティック・システム@シ方とも起動準備をしておきます』
「頼む」
『ハイパーセンサーに反応。熱源四。ISラファール・リヴァイブ≠ニ思われます。なお、通常のリヴァイブから速度が違うことから、高機動チューンが施されている模様』
高機動チューンねえ。さしずめラファール・リヴァイブ・カスタムってところか?
そんなことを思っていると、肉眼でもその姿を捉えた。敵のリヴァイブはすべて漆黒カラーだが、ハイパーセンサーにかかれば、こんなものは無意味だ。
すると、相手の一機がスナイパーライフルを撃ってきた。
俺はそれをローリングで躱し、四機のスクエア陣形のうち、一番左の敵に斬りかかった。
リヴァイブはそれを躱すが、俺が追撃で放ったアサルトライフルに反応できず、直撃を受ける。
しかし、残りの三機がそれを阻止すべく、一機は近接ブレードを展開し、俺に斬りかかり、残りの二機はアサルトライフルとスナイパーライフルで遠距離攻撃を仕掛けてくる。
俺はまず斬りかかってきた一機をミスティックセイバーで受け止め、左手のアサルトライフルを零距離で放つ。
そして、よろけた隙に、その機体の腕を掴み、敵が撃ったアサルトライフルとスナイパーライフルの盾にした。
「ああっ!?」
盾にされた機体はそれらをもろに食らい、シールドエネルギーを大幅に削る。
「さよならだ」
俺はその機体にセムテックをくっつけると、そのまま海に蹴落とした。
ズドオオンッ!!
叩き付けられた海面が爆発する。
『一機排除しました。残り三機です』
俺は左手のアサルトライフルを解除。代わり、物々しいショットガンをコールする。
四連装無反動ショットガンバスター・バスター=B現存するショットガンの中では最強を誇る威力を持っているショットガンだ。
俺はそれを片手に先ほど追撃でアサルトライフルを食らわした機体に向かって加速。途中、スナイパーライフルの狙撃があったが、それを錐揉み飛行で回避する。
「くっ、この化け物が!」
手負いの一機はアサルトライフルを連射するが、俺には当たらない。
「なんで!?なんで当たらないの!?」
「それはお前の腕が未熟だからだ!」
俺はミスティックセイバーでアサルトライフルを斬り裂き、ショットガンを構え、トリガーを引く。
ズガンッ!!
一度に八発の球、それが四連装。計三十二発の散弾が至近距離から襲う。
手負いの一機はこの直撃に耐えられるはずもなく、シールドエネルギーをゼロにし、海に落下。
『一機撃墜。残り二機』
俺は射撃に徹していた機体のうち、スナイパーライフルのほうに標的を定めた。
「……!」
敵は必死にスナイパーライフルを放つが、照準が甘いのか、難なく回避する。
すると、もう一機がショットガンをコールし、俺に向かって加速してきた。
俺は迎撃としてショットガンを放つ。敵は回避するが三十二発の散弾の網からは抜けられず、何発か被弾する。
しかし、お構いなしに、今度は瞬時加速を使用し、一気に俺に迫る。
これには俺も驚いた。
至近距離に迫った敵は持っていたショットガンを撃つ。俺は急下降で躱すが、散弾故に何発かは掠ってしまう。
「ちっ、この一機だけやけに練度が高い!」
そう、この一機だけは他とは練度が違うのだ。瞬時加速にしてもそう。あのタイミングで行えるのはそれなりに訓練してなければ不可能なことだ。
しかし不思議にも感じていた。
なぜか、この機体からは殺気がしないのだ。いや、そういう感覚がしないだけであって、気のせいかもしれない。
とにかく、この一機は後回しだ。もう一機のスナイパーライフルの方を先に片づける!
俺はショットガンを解除し、代わりにシュナイダーナイフを展開。
ミスティックセイバーとナイフを構えながら、俺は急加速する。
流石にリヴァイブじゃ、ミスティック・クラッドには追いつけないのか、ショットガンを構えたリヴァイブは距離を離される。
「ひいっ!?」
迫る俺を見てスナイパーライフルのリヴァイブは悲鳴を上げる。――完全に委縮しているな。
「恐れを持つものが戦場に出るんじゃない!」
俺はミスティックセイバーでスナイパーライフルを両断。左手のシュナイダーナイフで切り刻む。
後ろからアサルトライフルの銃弾が飛んでくるが、それを器用に躱しながら、後ろに回り込みスナイパーのリヴァイブのスラスターを斬り裂く。
「あああっ!!」
もはや悲鳴しか上げないスナイパーのリヴァイブはされるがままに斬り刻まれ、海に落ちる。
『残り一機です』
俺は思うことがありオープン・チャネルを開く。
「そこのリヴァイブ、聞こえるか」
すると、リヴァイブは攻撃をやめた。話を聞く意思はあるということか。
「……なに?」
「あとはもうお前一機だ。ここで引くなら追撃はしない」
「……無理。私には帰る場所がない」
「なに?」
「私、別にあなたと戦いたくなんてない。でもそうするしかなかったから。でも、もう帰る場所もない。あとはここで死ぬだけ」
……どういうことだ?帰る場所がない?
「……亡国企業には帰れないってか?」
「そう。……このまま、帰ったとしても任務失敗で責任を取らされて、あの世に行くだけ」
体格的に少女だろうか?淡々と話しているが、その声はハイパーセンサーでないと分からないくらいに震えていた。
「ならこのまま、ここで死ぬって?……それなら、その命、俺が貰う」
「……?」
「どうせ死ぬつもりなら、その命、俺が貰うって言ったんだ」
少女が息を飲む。
「そっちにメリットがない」
「メリットならあるさ。君のその戦闘技術、うちで役に立たせてもらう。ああ、心配するな。戦場以外での安全はちゃんと確保するから」
「……どうして、敵である私を?」
「死を座して待つなら、俺が助けてやるってことだ。気にするな。俺のただの偽善だ」
「……ありがとう」
「よし、話は決まったな。じゃあ、少し待ってろ」
俺はとある番号に電話をかけた。
無人島に戻ると、一機のISが急接近してきた。
「この反応は……刀奈か!」
「そうよ。心配だから来ちゃった♪」
「護衛の方は?」
「虚ちゃんに任せてきたから大丈夫♪」
虚……?ああ、俺の後任のメイドだったかな、確か。一度だけボディーガード時代に会ったことがある。
「なら大丈夫か」
「ええ」
「それじゃ、束さんのとこに行くか。刀奈は……どうする?」
一瞬迷う。束さんは他人嫌いだからな。いくら変わろうと努力はしてもまだきついか。
「もちろん行くわよ。むざむざあなたを取られるわけにはいかないし」
「?」
「ああ、分からなければいいのよ。別に。さあ、行きましょ?」
「あ、ああ」
俺は刀奈を連れ、地面に空いた大穴から研究所に入る。
入ると同時に二人ともISを解除する。
「やあやあ、コウ。お疲れ様ー。……そこにいるのは誰かな」
「あら、始めまして博士。私は更識楯無。以後よろしくね」
すると、束さんが目を細めた。
「ふーん。君がコウの言ったいた想い人≠ヒえ。一つ言うけど、コウはもうあなたの物じゃなくて、私の物だから」
ブチリ。
え?
何かがブチ切れる音がした。
「あら、紅牙に迷惑しか掛けることができない兎さんに渡すわけにはいかないわね」
刀奈の方を見る。……いかん。こめかみに青筋が浮かんでいるし、瞳からハイライトが消えている!
ブチリ。
またもやブチ切れる音がした。
「よく言うね。コウが一番つらい時に探しもせず、コウを一人にしたあなたが言う言葉?」
束さんの方を見ると、ああいかん。こっちも青筋が浮かんでいるし、瞳からハイライトが消えていらっしゃる。
「フフッ。オモシロイコトイウワネ、ウサギサン」
「アレ、ナンノコトカナ?ワタシハジジツヲイッタマデダヨ?」
バチバチと視線がぶつかる音。それに言葉が片言になっている。
俺の脳内警報が必死に鳴り響いている。ここは危険だ、逃げろ。と。
俺は足音を立てぬように少しずつ後ろに遠ざかる。
そして、一定の距離を稼いだ後。回れ右。そして駆けだす!
が、
「どこに行くの?紅牙」「どこに行くのかな、コウ」
二人に手を掴まれた。右は刀奈で左は束さん。そして二人は俺の手を引き寄せ、あろうことか胸の間に挟み込んだ。
「なっ!?」
激しく動揺。両腕が柔らかい感触に包まれる。
「ねえ、紅牙?早く帰って、この前の続きをしましょう?」
と、刀奈は言いながら胸をムニュムニュと動かす。だあああ、やめろ!
「そんな猫より私のほうがいいよ?コウ。ほら、そっちの猫のより柔らかいでしょ」
そう言い、束さんも刀奈と同じように胸を動かす。
「や、やめようか。二人とも。ま、まずは落ち着け!」
俺が必死に煩悩を払いながらも制動を掛けるべく叫ぶが二人は聞いていない。
「あ、そうだ。コウ、これに名前を書いて?」
そう言って、懐から一枚の紙を取り出す。
そこには――。
「……え?婚約届!!」
「え!?なんですって」
俺と刀奈は驚き目を丸くする。
「そう言うことだから、猫さんは諦めることだね」
勝ち誇った顔で勝利宣言をする束さん。
だが、刀奈もこのまま黙ってやられる質ではなかった。
「甘いわよ。紅牙との婚約を考えたのがあなただけとは思わないことね!」
そう言い、刀奈もポケットから一枚の紙を取り出した。
そこにも婚約届≠ニ書かれていた。
「「なっ!?」」
俺と束さんの声が被る。
「ま、待て待て!なんで刀奈まで持っているんだ!」
「あら、乙女の必需品よ?」
「絶対違うからな!?それ!」
「ね、猫のくせに生意気な!!」
「あら、猫は生意気な生き物なのよ♪」
「ムキーーー!!」
駄目だ。収拾がつかない。
「そもそも、俺はまだ十七だ。結婚なんて――」
「関係ないわよ、そんなの」「関係ないね、そんなの」
「関係あるからな!?」
いけない。どこで間違えたんだろう。どうしてこうなった?
疑問は増えるばかりだった。
「いい加減、腕を離せ!理性を保つにも限界があるんだぞ!」
「嫌よ♪」「嫌だね♪」
「だ、誰か、助けてくれえええ!」
『……マスターのばか』
説明 | ||
IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第八話 救援2 やっと、この話が書けた。駄文ですがよろしくお願いします。 追記 11月25日 一部修正しました。 11月26日 一部設定変更しました。 |
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竜羽さん→ようやくスタートラインですww(raludo) いいぞ!もっとやれ!さて、波乱の修羅場学園生活の始まりですね(竜羽) |
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