無悪五月闇の一幕〜クトゥルフ要素有り注意〜
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僕は小さい頃からの人嫌いだ。かなりの筋金入りの人嫌いで、基本的に、たった一人の例外を除いて人間全員嫌いだ。

 

どんなに善人でも悪人でも嫌いだし、死ねばいいと思ってる。あと、動物もあんまり好きじゃないし、虫とか植物も好きじゃない。

 

生まれたのは今でいう平安って時代。まぁ、歴史の教科書で知ってる人は多いと思うよ?知らない奴?そいつはただの馬鹿なんじゃないかな。

 

先祖返りのせいで、濃い藍色の髪色と真っ赤な目の色を持って生まれてきたせいで周囲からは奇異の目で見られた。

 

身内は身内で、先祖返りの姿を喜んでいたらしいけど・・・僕は全部嫌だった。

 

そんな僕には黄泉の国の空気はとても心地よいものだった。

 

無悪家は黄泉の国に住む“黄泉神(よもつがみ)”に仕えていて、黄泉の国にいる間は年を経ることが無い。

 

僕が幼い頃も100歳や200歳を超えても20代の青年姿の親戚もいたぐらいだ。

 

・・・とはいえ、もちろん弊害もある。

 

無悪家はそうやって黄泉の国に出入りし、死に寄り添って生きてきた。

 

そのせいか、死ぬことに対しての恐怖感が無いのだ・・・ようするに、病気になったり事故で大怪我をしたときに“生きる意志”が欠落してしまう人間が多い。

 

 

 

 

≪難儀なモノよ・・・死ぬことを怖がらぬと、こうしてすぐに死んでしまうとは≫

 

黄泉神はそう言いながら、気怠そうに酒を飲む

 

この神はいつもこうだ、酒を飲んで肉を食むことばかりしている。

 

けれど、僕はこの神は珍しく嫌いではなかった・・・好きでも無かったが

 

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生きている人間は、嫌い

 

黄泉の国が一番良い

 

誰も彼も死ねばいい

 

死ねば淀みも汚れも消えてしまう

 

殺してしまえば綺麗な赤色に染まる

 

出雲には人が多くやってくる。それが嫌で、現世にいるときはいつも本家の自室か山奥で遊ぶことが多かった。

 

・・・彼女にあったあの日は山奥の泉で遊んでいて・・・遊ぶ、というよりも黄泉神が≪魚が食べたい≫と頼んだから釣りとか罠を仕掛けてただけなんだけどさ。

 

ふと気が付くと、少し離れた場所から声が聞こえてきた。

 

「あー・・・ったく、やっぱ使いにくいなこの時計。ってか確実に大昔だろこの時代」

 

「(・・・こんなところに珍しい・・・変な格好だけど、異邦人なんだろうか)」

 

僕がそんなことを考えていたらその人間・・・いや、彼女が笑顔で話しかけてきた。

 

「おっ、丁度良いにゃー。こんな山奥に人いるなんてラッキー!そこの少年!ちょっと良いかな!」

「・・・なに」

「あのねあのね、こんな人見なかった?」

 

見たことも無い紙に、写し絵のようなものが描かれていた。いわゆる今でいう写真なわけだが、そういった類にも興味もこれっぽっちも無かったし、何より人嫌いだったから喋るのも憂鬱だった。

 

「・・・」

「知らない?あー、ったく・・・あの人はどこにいるんだか・・・あ、そうだこれ食べる?」

「・・・」

「変なもんじゃないよー、美味しいよチョコレート!ほら・・・んぐっ、うまうま。ほら」

 

“知らない人からもらったものは食べちゃいけない”とはよく言ったものだけど、残念ながら毒に対してはそれなりに耐性があったし、何より毒があったなら目の前の人間を攻撃できると思って、素直にそれを食べた。

 

・・・口の中に甘い感覚が広がっていく。木の実や花の蜜よりも甘くて、結構好みの味だった。

けれど、素直な感想を相手に言うことも憚られた当時の僕はとりあえず黙って食べる事しかできなかった。

 

「・・・・・・・・・」

「美味しい?」

「・・・」

「おう!そうか美味しいか。じゃあお姉さんもう行くから!」

 

「・・・・・・まって」

 

「んぅ?どないした?」

「それ、もっとちょうだい」

「おう、かまわんよ」

「・・・・・・」

「そんなにおいしかったかー・・・お、ここの泉めっちゃ冷たくて気持ちいなー」

「・・・・・・」

「少年、綺麗な顔しちょっとねー。将来はえぇ男になるにゃー」

 

美味しいものをもらえるだけもらったけど、正直相手の話に興味は無かった。

 

「・・・・・・」

 

けれど、彼女は

 

「瞳の色、すげぇ綺麗。彼岸花の色だね。髪の色も濃い藍色で・・・そうそう!夜の空の色っぽくて俺は好きだなぁ!めっちゃ綺麗!」

「!」

 

はじめて、そんなことを言われた

 

先祖返りだからとか、そういうのじゃなくて・・・

 

「彼岸花って例えは駄目かな・・・あの花って確か色々と別名が怖いの多いけど、その中に“曼珠沙華”って言うよね、“天上の花”って意味で・・・仏教に出てくるんだっけ?仏とかいるようなとこに咲いてる花だから、あんなにも綺麗なんだろうねー」

「・・・」

「髪の毛の色もあれだよ・・・えっと、そうそう!夜の濃い藍色もさぁ、あの色だからこそ星とか月とか映えるんじゃないかな?とか・・・あかん、ちょっとお姉さんこういうの慣れてないから・・・怒られても仕方ないかも・・・」

 

初めて、他人に興味を、好意を持った

 

「・・・・・・なを、おしえろ」

「うぇ?えっと名前のことかな・・・えーと・・・気軽に”さっちゃん”でいいよー」

「・・・ちはや」

「?」

「・・・」

「あぁ、少年の名前か。それじゃあね、ちはや君!お姉さん、人を探してるからさ」

 

もっと、もっと一緒に居てほしい

 

「・・・いくな」

「・・・ごめんね、大事な人を探してるんだ。また会えたらいいね」

「・・・」

 

そのまま彼女を追いかけようとするが、彼女の持っていたモノ≪銀時計≫から黄泉の国の住人とは違う・・・得体のしれない存在が彼女に纏わりつき、彼女の姿が薄れていった・・・

 

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≪・・・ほぉ、お主がわしに頼むとは・・・どのような女子(おなご)かぇ?≫

 

「・・・きおく、よみとれるんだろ」

 

≪それもそうじゃな、どれどれ・・・ふむ、これはまぁ、珍しき女子(おなご)じゃな≫

 

「・・・珍しい?」

 

≪女子自身は普通の人間じゃけど、どうやら先の世から来たらしい≫

 

「・・・先の世?」

 

≪簡単に言えば、今から千年ぐらい先に生まれた人間っちゅーことじゃあ≫

 

「!」

 

≪それにしてもお主、運が良いのぉ・・・女子が使役しとった猟犬を見て発狂してなかったとはな≫

 

「・・・猟犬?あれが、犬って言うなら目がおかしいんじゃないの?」

 

≪モノのたとえってやつじゃきぃ・・・あれはな、“てぃんだろすの猟犬”と呼ばれておる存在でな・・・本来ならば人が使役するのも難しいもんじゃ≫

 

「・・・異国の妖怪ってところ?」

 

≪今のお主にはそういう認識でかまわん。ともあれ、お主も難儀な女子に惚れたものよ・・・うぇひひひひ≫

 

「・・・」

 

≪だが面白い!わしはそういう類の喜劇が好きじゃけぇ、女子の生まれた時からの在り様をお主に見せてやろうぞ≫

 

「・・・そこまでできるの?」

 

≪ふふん!わしを誰じゃとおもっとる。とはいえ、多少は時間がかかるからのぉ・・・少しずつになるが、お主が生きてる間だけじゃぞ?≫

 

「・・・それなら心配ない」

 

≪なんじゃと?≫

 

「あの人に会うまで、僕は生き続けるから」

 

≪・・・ほぉ、千年越しの恋と言いたいのか?じゃが、いくら無悪の血筋でも千年生きれば、魂も腐るぞ?≫

 

「そんなの知らないよ。あの人に会えるなら、なんだってするし、いくら穢れてもかまわないよ?」

 

≪・・・おぉ、怖い怖い。げに恐ろしきは恋慕といったところじゃな≫

 

黄泉神はそういって意地汚そうに笑っていた

 

 

 

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夢主人公からオリキャラにランクアップした通称“さっちゃん”さんは銀時計【ティンダロスの猟犬入り】で時を超えて恋人?探しをしてました

 

たまたまショタ無悪に出会ったのが運の尽き

 

元の時間軸でまさかの再会

 

 

説明
人嫌いのヤンデレが怖い話。某SNS身内限定で公開していたものを加筆修正と再編成してみた。
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