真・恋姫†無双〜家族のために〜#23水面下
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 洛陽。深の執務室。

 そこには部屋の主である深と、従者の影華がいた。

 

 

「深……」

 

「心配するなよ、影華」

 

「ですが!」

 

「信じて待つのも家族の務めだろ?」

 

「そう……ですね」

 

「影華も、あとのことは頼んだぞ」

 

「はい」

 

「作戦の変更はあれど、失敗は許されない」

 

「必ず生きて戻ってきてください……」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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 反董卓連合の合流地点。その後方に近付いてくる部隊がある。

 劉備率いる義勇軍で構成された部隊だ。

 その中に、黒い外套を羽織った男が一人、紛れ込んでいた……。

 

「よくこれだけ集まったもんだ。まさに壮観だな……」

 

 男の視線の先には総兵数十万はくだらないであろう連合軍が駐屯していた。

 中央に袁家の旗、奥には孫堅、涼州の馬騰、官軍を率いていた曹操に幽州の公孫賛まで。そして今からそこに加わる劉備。群雄割拠の時代を駆ける者達が一同に終結していた。

 

 

「これだけいれば俺の仕事もやりやすくなるか……」

 

 男の眼は今まさに参入の手続きを行っている劉備達に向けられていた。

 劉備、関羽、張飛、いずれも女の子だった。それにまだ見てないが諸葛亮もいるらしい……予想が正しければ女の子……なんだろうな。しかし、諸葛亮はまだ頭角を現していなかったはずだ……これもまた史実と少し違うところということか。

 

「お、手続きも終わったみたいだし、動きますかね」

 

 誰にいうでもなく呟かれた言葉は周囲にとけ込み、人知れず男−−深は姿を消した。

 

 

 

 

 やはりというかなんというか……どの陣営も警備が厳重だな。

 深は心の中でごちる。曹操、孫堅、馬騰、公孫賛、これらの陣地にはすでに潜り込んだのだが、どれも大将の居場所は分かるのだが警備が厳重で、近寄ることができなかった。

 今は劉備の天幕を見張っているところだ。人手が足りないのもそうだが、義勇軍で構成されているため他と比べると警備が甘い。近すぎず離れすぎず、そんな位置で息を潜めていた。

 

 しばらくすると、天幕から劉備と関羽、さらに帽子を被った少女と見知らぬ男が出てきた。

 劉備は少女と男を連れ、袁紹の陣営に赴くようだ。……軍議か。

 深は気付かれぬよう、あとを付いて行った。

 

 

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「おーっほっほっほ! おーっほっほっほ!」

 

 袁紹の陣営−−たぶん軍議の間だろう−−に近付いたとき、なんともいえない高笑いが聞こえてきた。

 その声を発してるのは……金髪くるくる髪の女性だった。着ている鎧にも金があしらわれており、しばし呆然と固まってしまった。

 

 その女性は辺りを見回し、主要な諸侯が揃ったことを確認すると再度高笑いをあげた。

 

「皆さん、この度はこのわたくし、袁本初の呼びかけに集まっていただき感謝いたしますわ。知らない顔も多いことでしょうし、まずはそちらから名乗っていただけますこと? おーっほっほっほ!」

 

 あれが袁紹……いかにもダメな貴族の典型的なやつだな。腹が立つのを通り越して呆れるよ。

 

「……幽州の公孫賛だ。よろしく頼む」

 

 白馬長史の公孫賛か……。やはり劉備と比べると何かが足りないよなぁ。

 

「平原よりきました劉備です。こちらは軍師の諸葛亮。そしてごしゅ…………北郷です」

 

 何を言いかけたのか気になるが……あの男が管輅が予言した天の御遣いか……。だが、あの服はどう見ても現世の制服……だよなぁ。たぶんポリエステルを使ってるんだろう、日の光で輝いているように見えるし。これは仕事が一つ増えたかな……。

 

 天の御遣いの件で袁紹が騒いだが、公孫賛が宥め自己紹介は続いていく。

 

「涼州の馬超だ。馬騰は最近活発化しつつある西方の五胡に睨みを利かせているため、今回は名代として私が参加することになった。袁紹殿にはくれぐれもよろしくと言付かってるよ」

 

 錦馬超か。馬騰が積極的に帝を攻めるとは思えない。大方、様子を調べてくることが目的か? そうだとしたら積極的に接触するのは避けたほうがいいか……。

 

「河南を治めておる袁術じゃ。まあ、皆知っておると思うがの!」

 

「私は美羽様の補佐をしています張勲と申します。こちらは客将の孫堅さん」

 

 孫堅は立ち上がり、黙礼を一つしただけでまた座りなおした。

 

 孫堅−−蓮根……明らかに不服そうな感じだなあ。袁術があれじゃ仕方ないのかもしれないけど。

 重症を負ったって聞いたけど、どうやら無事みたいで安心したよ。

 

「……典軍校尉の曹操よ。こちらは我が軍の夏侯惇、夏侯淵」

 

 

 そのあと袁紹が自己紹介を終え、ようやく軍議が始まった。

 

 まずはこの、反董卓連合の現状と目的の確認。

 目的……都で横暴を働いているという董卓の討伐。しかし現状で董卓の素性を誰も知らないという。

 それは董卓軍にとって好都合だった。後の作戦に支障をきたすと思われていた点が解決されたのだ。

 

 次に都までどうやって行くのか。

 行軍はくじ引きで決めることになった。どうせ戦闘時に配置が変わることになる、妥当だろう。

 

 経路はというと、大人数のため、街道に沿って進むことになった。

 道中の関所は水関と虎牢関。この近くで戦闘が行われると予想された。

 

 ここまでは皆、袁紹を喋らせようとはせず一致団結し、円滑に物事を決めていった。

 これだけ戦力があっても連携なんて何も考えていないな……とはいえ油断が出来る兵力差でもない。作戦に変更はなしだな……。

 

 

 ここにきて袁紹が喚いた。

 

「まだっ! 一番大事なことが決まっていませんわ! この連合を誰がとりまとめ、仕切るか、ですわ!」

 

 …………は?

 どうやら一瞬固まったのも俺だけじゃないらしく、皆一様に何言ってんだコイツみたいな顔をしていた。

 同じ袁家の袁術でさえ、引いている。

 正直、それほど大事でもないし、こんなに連携のない一団を率いるとか、誰がやりたがるって…………ああ、この人やりたいのか……。

 

「わたくしはする気などないのですけれど、家柄や地位を鑑みますと、候補は限られてくるのではないかしら、と思ったりしなくもないのですけれど……」

 

「はあ……なら麗羽でいいわよ」

 

「何でもいいさ。他にやりたい奴いるか?」

 

「……なら決まりね。麗羽、あなたがやれば?」

 

「っ!! そ、そこまでいうのでしたら、このわたくし、袁本初が不肖ながらお引き受けさせていただきますわ! おーっほっほっほ!」

 

「……なら一番大事な議題とやらも終わったことだし、解散でいいわね?」

 

「そうですわね。なら、かいさ……」

 

「解散!」

 

「……」

 

 袁紹……憐れな。

 

 

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 軍議が終わってからの出立は早かった。どれだけ袁紹が滞らせていたんだか……。

 各陣営はくじ引きで決められた順番の通りに、都へ向けて行軍し始めているし、本格的に動けるのはここが最後かな……。

 深は外套を羽織り直し、再度気配を消し劉備の陣営を離れていく。

 

 

 

「うーん、やっぱり蓮根は直接会えそうにないかなあ」

 

 行軍する兵達の姿に紛れて孫堅の陣営まできた深だったが、袁術以上の厳戒な警備に舌を巻いていた。

 せめて周瑜と話せれば問題はないのだが……。

 そこへ誰かが近付いてくる気配がした深は、さりげなくそちらを向く。

 

「驚いた……まさかあなたがいるなんてね」

 

 そこにいたのは深が会おうとしていた、孫堅−−蓮根その人であった。

 

「……こっちこそ驚いたよ。よく俺がここにいると分かったな」

 

「気付いた、というよりも勘……かしらね?」

 

「勘?」

 

「そう、勘よ。なんとなくここに来ると良いことが起きそうな気がしたのよ。それに私の勘はよく当たるから……」

 

 間諜を見つける勘って、どういうものだよ……。

 

「……末恐ろしいな。だが、俺にとっても蓮根に会えたのは好都合だ」

 

「あら、私を探していたの? だとしたら嬉しいのだけれど」

 

「まあ否定はしないさ。それと今からする話だが、蓮根が信頼できるものにだけ伝えて欲しい。頼めるか?」

 

「……ええ、問題ないわ」

 

 先程までの再開を喜ぶ顔は消え、孫家の王としての顔を覗かせる蓮根。

 その対応に頷き、続きを話していく。

 

 

「まず一つ聞きたい。蓮根達は本当に洛陽で董卓が暴虐の限りを尽くしていると思っているか?」

 

「……冥琳、周瑜の考えは半信半疑だそうよ。でも私は確実に嘘だと思ってるわ」

 

「それは勘……か?」

 

「勘もあるけど、なにより深がいてそんなことをさせてるとも思えないの」

 

「……信頼されてるようで嬉しいよ。まあ結論を言ってしまえば、そんなことは行われていない。大方、今回の檄文は誰かに踊らされてだしたものだろう」

 

「……もしくは、董卓が気に食わなかったか、ね」

 

「そうだ。董卓軍はこれに全力で抵抗する姿勢でいる。もちろん俺も含めてな」

 

 蓮根は一瞬悲しげな表情を浮かべたが、すぐにもとに戻し本題へと移していく。

 

「離反……は考えていないのね。そのあなたがどうして反董卓連合側にいるのかしら?」

 

「集まった諸侯がどんな人物かを見極めるため。これは軍議の最中に、大体把握したよ」

 

「……あのときいたのね。全く気付かなかったわ」

 

 と、蓮根は悔しそうな顔を浮かべる。

 

「気付かれたらそこでお仕舞いだからな。それとあの時の約束、ここで果たしてもらう」

 

「……ふふっ。いいでしょう。此度伸ばされた手、我ら孫家が掴みとってあげましょう」

 

 言質は取った。早速、深はさりげなく周囲を見回し、間諜がいないかどうかを確認する。

 

「蓮根……お前の陣営に腕のいい細作っているか?」

 

「……周泰っていう子ならいるわよ?」

 

「なら、こちらが三度火矢を飛ばす。その合図を確認したら、撤退する軍にその子を紛れさせてくれ」

 

「三度の火矢ね……ええ、分かったわ」

 

「作戦はその周泰っていう子に話す。それをあとで聞いてくれ」

 

「了解。吉報を待ってるわよ」

 

「ああ。それと蓮根、袁術のことだが、少し助けといてやるよ。手助けしてもらっておいて、こちらだけ何もしないというのも癪だからな」

 

「そんなこと気にしないでいいのに。まあ、少しだけ期待しておくわ」

 

「任せとけ。それじゃあ、またな!」

 

 蓮根の返事を聞く前に、姿を消した深。蓮根は一瞬の事に驚いたが、その顔は嬉々として歪み、これから楽しいことが起こることを予見していた。

 

 

 

 水関開戦はもうそこまで迫っていた……。

 

 

 

 

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【あとがき】

 

こんばんわ!

九条です。

 

遅くなりましたが#23更新です。

今回はたくさんの恋姫キャラが出てきて、

口調とか あれ? これでよかったんだっけ? と

何度も真恋姫をプレイしなおす回でした。

麗羽とか、特徴的なのだと逆にやりにくいよ……。

蓮根さんとか口調変わってない? 大丈夫かな(汗

 

そしてたくさんの掛け合いがありましたね。

誰がどのセリフを喋っているのか……気になるようでしたらコメントしてください。

優しい紳士の方々がお答えしてくれるかもしれません。←

 

 

ふと今までのを読み直してみると

なんか会話が多い印象が……。

会話で進ませるのは楽なのですが、周囲の状況や心情が分かりにくい……。

どうすれば(はわわ軍師さん、お願いします!)

 

はわわ軍師

「練習あるのみでしゅ! ……また噛んじゃった……」

 

(色々な意味でありがとうございました!)

うん……他の方の作品も読んでみて、自分の作品とどう違うのか

そういったところを探してみるかぁ……そうして時間がなくなっていくのだorz

 

 

仕事も忙しくなり始め、時間が取りにくくなってたり

2000字まで書いてて、ブラウザバックしておじゃんにしたり と

たくさんの苦難(?)に立ち向かいながら

次回もがんばって書いていきまする。

 

 

それでは次もお楽しみに〜

説明
遅くなりました!
そして短いです……ごめんなさい。

今回は伏線を色々と回収しています。
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コメント
>naku様 いえいえ。 エゲツナイ……ふむ、一つ閃きました! 本来なら他の方にやってもらうはずだったものを、自己チュー連中にやらせて、物凄い事にしてみましょう! あっ、でもそんなに期待しないで(汗(九条)
>naku様 乙ありです。 不憫というか自業自得というか……。 悪巧みじゃないですよ! 作戦です、作戦なのです!(九条)
>観珪様 目立ちたがりですからねえ。 個人的に、明命は猫好きな忠犬なイメージがあります。 歓喜するかどうかは……(いつの間にか作者は縄で吊るされている)(九条)
袁紹ww まぁ、毎度のことながら大将を決めたがるのは仕方ないとしてもなww しかし明命ちゃんと深くんの出逢い……虎に好かれた深くんですから猫にも好かれるでしょうし、明命ちゃんは歓喜することに期待!(神余 雛)
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