飛び級で士官学校を出てすぐに飛行訓練課程を終えた私は、志望した実戦部隊ではなく大帝星科学アカデミー出向となり最初は腐った。どうせ親父の差し金だ。ここでの仕事はアカデミー所蔵の旧式飛行機械をテストすること。衛星軌道どころか大気圏すら出られない骨董品たち。だが、やがてこの仕事に案外私はハマッた。もろに寒風を浴びる羽布機から成層圏ぎりぎりの超音速巡航が可能な噴進機まで。こいつらはじゃじゃ馬ぞろいだったが、制御AIもない私の意志と力に全てをゆだねてくれるマシンたちだった。 その日、初期の高高度音速飛行のための試験機を飛ばすためにこれまた古めかしい与圧服を着てマニューバを終え、帰還した私に待望の出動命令書と配属辞令が届いた。もちろんうれしかった。これで一人前に扱ってもらえるのだ。 エプロンに羽を休める銀色のタービン機に別れの挨拶をくれた。ここで一番飛行時間を稼ぎ、一番ウマのあっていた愛機だった。このあとすべての動力源を抜かれ、博物館の展示物となる運命が決まっていた。 重たい与圧服から出頭用の軍装に着替えるとき、改めて自分の汗のにじんだそれを見た。前線で交戦した敵の情報は技術部隊だけに大量にまわってくるが、捕獲した敵の歴史的資料の中に色違いながらまったく同じデザインの与圧服を見つけたとき、よくもまあ同じことを考える知性体がいたものだと感心した。 テロンとかいったかな?やはり同じように飛行体を操った存在がいたに違いない。やはり初飛行の緊張と興奮を覚えたのだろうか?それとも我々ガミラスのような感情など生じない連中なのかな? そのときの私は自分がよもや全ガミラスで初めて敵テロンと直に接触する存在になろうとは思いも寄らなかったのである。 ※ソ連式与圧服VKK-6Mを参考 |