IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第九話 救出後 |
あの後の束博士に対しての対応は迅速だった。
もともと準備していたのもあるが、やはり織斑千冬、更識楯無の影響力は絶大だった。
まず、織斑千冬が学園上層部を説得。そして、自らIS委員会に赴き、束博士の身柄を学園で保護する代わりに束博士の設計した第三世代型のISの設計図を各国に送信することを約束させた。(設計図は束博士が片手間に書き上げたもの)
それに加え、送信した設計図の軍事転用を禁止し、これを破った場合、IS保有権利を剥奪する旨も約束させた。
一方、更識楯無はというと、暗部の力を最大限に利用し、束博士の保護体制を確立させた。そして、秘密裏にIS委員会に働きかけ、BREAKERSを束博士の護衛にさせたり、更識家と束博士の繋がりを容認してもらえるように働きかけた。
そして、BREAKERSはというと、正式にIS委員会の正式部隊として公に公表された。
それは瞬く間にニュースになり、全世界に発信された。
IS委員会直属正式部隊BREAKERSが篠ノ之束博士の護衛についている≠ニ言った内容を全世界に発信したのだ。これを発信するには危険も伴った。
なにせBREAKERSは束博士を狙う組織から付け狙われることになるのだ。もちろん束博士はこれを発信するのには反対した。
だが、BREAKERSの面々に説得され、渋々了承したというところだ。
それで、束博士はどうなったかというと、先も言った通り、学園側が保護する型になったが、むろん織斑千冬はただで保護させるわけもなく、学園側のIS調整や警備ネットワークの強化などを依頼する予定だ。現在、束博士は博士専用に作られたラボ(もちろん学園の敷地内)で日々依頼された仕事を片付けながら研究を始めている。
ここまでの体制を整えるのにかかった日数はたったの一週間。驚異的な速さである。(ラボの開発は束博士自身が加わったので一週間という欠陥住宅に指定されかねない速さで建て終った)
そして、公になったBREAKERSは一部のメンバーが学園に転属。織斑一夏および専用機持ちの護衛任務を続行させることになった。
「というわけで、この学園に護衛任務として来たBREAKERSナンバー一、黒咲氷華です。一応生徒として学園には登録してきているので気軽に話しかけてください」
教室の正面、教卓で挨拶している転校生、黒咲氷華――俺の妹はこちらを見てにこやかに微笑む。
「質問です!黒咲君と同じ苗字ですがどういう関係ですか?」
いきなり直球な質問を氷華にぶつけるクラスメート。それに対して氷華は――。
「はい。黒咲紅牙は私の兄です。……お久しぶりです、兄様」
クラスメートの問いに嘘偽りなく返事をし、俺に話しかける。
「久しぶり。だけど、今はSHRだ。その話は後な」
俺は軽く手を振りながら答える。
「はい。それでは氷華さんは黒咲君の隣です。それでは授業を始めますよ」
山田先生が、区切りをつけ、授業を開始する。……ああ、多分この後質問攻めなんだろうな。主に束さんのことやBREAKERSのこととか。
俺はこれから起こるであろう惨劇を思い浮かべ、深いため息をついた。
「「「「黒咲君!質問が!!」」」」
予想通り、休み時間にクラスメートが殺到してきた。その中にはセシリアや一夏の姿もある。
「あー、はいはい、まず順番にな。はい、君」
「黒咲君はBREAKERSって言ってたけど本当?」
「あー、それは俺も気になってたわ」
クラスメートの質問に便乗してきた一夏。
正直答えるべきか迷うが、まあ束さんのことも知られているし、もう隠す必要もないか。
「そうだよ。俺はナンバー四。ここにいる氷華はさっきも言った通りナンバー一。まあ、うちのリーダーだな。ほかにもナンバー三が遅れてこの学園に来るんだけどな」
「さっきも言ってたけど、護衛って?」
「ああ、束さんやここにいる一人目のイレギュラーや専用機持ちの護衛。まあ、一般生徒も対象に入っているから安心してくれ」
「なるほど。だから、いつも俺の近くにいたり、座学を教えてくれたりしたんだな」
一夏がなるほどといった感じで頷く。
「まあ、あの時は純粋に協力しようと思っただけだよ。次の学年別トーナメント、専用機持ちがうちと四組だけとはいっても、楽観視はできないからな」
俺がそう言うとガラッとドアが開き、
「その情報古いよ!」
とツインテールの女の子が立っていた。
「あの子は中国の代表候補生ですね。今日付けで二組に転校してきた鳳鈴音さんですね」
さすが、氷華。細かい情報までしっかりと頭に入れているな。
「ふーん、情報が早いじゃない。それで、あんたが博士のガーディアンってわけね」
俺を指さしながら少し上目線で話す鳳。
「そうだが、何の用だ?」
「いや、何も?ただガーディアンの顔を見てみたかっただけよ。それと二組の代表は私になったから。簡単に勝てるとは思わないことね」
おそらく宣戦布告か。だが――。
「なんで俺に言うんだ?」
「え?だってあんたが代表でしょ?」
俺はため息をつきながら、
「いや、違うぞ。代表は一人目のイレギュラーだ。それに護衛任務を受け持っている俺が仕事の多いクラス代表なんてやれるわけがないだろう」
そう。代表は一夏に決定したのだ。理由は単純。俺は先の理由から無理。セシリアは辞退。よって一夏が代表となった。
「よっ、鈴。久しぶりだな。それとそろそろ教室に戻ったほうがいいぞ」
「久しぶり。なによもう少し話くらいさせなさいよ」
どうやら鳳は後ろに気づいていないようだ。
鳳の後ろの存在に気付いたクラスメートは静かに自分の席に戻っていく。
その状況についていけない鳳は、
「え、何?何なのよ?」
「おい」
「なによ?」
鳳が後ろを向く。
スパンッ!!
いい音が教室内に響いた。
昼休み、俺は刀奈に会うために生徒会室に向かっている。刀奈に紹介するために氷華も連れて行く。
「噂の楯無さん。兄様にふさわしいか、私が見極めます」
フフフ、と黒い笑みを浮かべていたが、多分気のせいだろう。
そして、生徒会室に入ると。
「あら、いらっしゃい……その子は?」
刀奈が出迎えてくれたが、氷華を見た途端、その笑みが黒くなる。
刀奈は束さんと出会った時からたびたび黒い笑みをするようになった。具体的には瞳からハイライトが消え、たびたび口調が片言になるのだ。俺はこの状態を黒化と呼ぶことにした。
「ああ、紹介するよ。妹であり、BREAKERSのリーダーでもある氷華だ。本日付で護衛任務に参加することになっている」
「紹介にあった、黒咲氷華です。以後よろしくお願いします」
氷華も微笑みながら頭を下げる。だが、目が笑っていない。
「……紅牙?私、あなたに妹がいるなんて聞いてないんだけど?どういうことかしら?」
完全黒化した刀奈。俺はそれに戸惑いつつも。
「いや、まあ、別に言わなくてもいいかなって。それに義妹だから血はつながっていない」
「ふーん」
そして、氷華に視線を向ける刀奈。
何か目で会話しているみたいだが、俺には解読不可能だった。
ちなみに会話した内容とは、
(ふーん、あなたが紅牙の妹ねえ。……邪魔はしないで頂戴ね)
(それはあなた次第です。あなたが兄様にふさわしくない場合は全力で兄様を防衛します)
(あら、私以上に紅牙にふさわしい女性なんていないわよ?)
(さあ、どうでしょうか?)
といった内容だった。
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IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第九話 救出後 |
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コメント | ||
毎回コメントありがとうございます!(raludo) おいおい、三つ巴か?いや、簪も入れたら四つどもえ・・・そして、何気に忘れていた鈴ちゃん・・・そういえばまだだったね。次回も楽しみにしています(竜羽) |
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