リリカルなのはSFIA |
第二十五話 ・・・イケメンだからさ
プレシア視点。
六課の指令室に映し出された映像。
そこにはアリエティスに貫かれたガンレオンの映像に指令室にいた誰もが息をのんだ。
「っ?!た、タカ!?」
六課の指令室ではやてさんの代わりに部隊長代理を((任された|・・・・))グリフィスと一緒にその補佐を務めていたリニスが小さな悲鳴を上げる。
目の前に映された映像。
それは((出撃していない|・・・・・・・))はずのアリサさんの姿。
「リニスさん!プレシアさん!どういうことですか!私はここにいるのにまるで私がもう一人いるみたいな反応は?!」
「アリサさん?!」
「…まさかっ。私のD・エクストラクターを完全に模写したというの?!」
モニタリングされているアリエティスからはアリサのフレイム・アイズと同じ識別信号を示している。
Dエクストラクターの製造方法は私とリニスしか知らないのに…。
いつの間に第三者に知られたの!?
『ハハハハハ!貰うぞ『傷だらけの獅子』のスフィア!』
まさか…。((『知りたがる山羊』|アサキム))が…。
スフィアを持っているのに彼がDエクストラクターにまで興味を示すとは思わない。
スフィアに比べてDエクストラクターは粗悪品でしかないから。
『…が、あ』
胸を貫かれたガンレオンが光の粒子になって消える。
まるで泡のように。
「…た、タカ。タカァアアア!」
私の指令室に鳴り響くと同時ガンレオンは指令室に映し出された画面から消え失せた。
『…スパイカーセット!本命っ!いくぜぇえ!!』
紅の刃に沿うように突如現れた緑の短い槍がアリエティスを貫いた。
タカシ視点。
ズッ。
ガンレオンは待機状態のキーホルダーになると同時にそこから一歩前でにしゃがみ込むようにブラスタのイーグルという銃の先端にエネルギーの槍を出現させ、アリエティスを貫き返す。
「スパイカーセット!本命っ!いくぜぇえ!!」
原作通りだったら俺は死んでいた。
ガンレオンが。『原作通りに人が乗り込むような巨大なロボット』だったら俺は確実に死んでいた。
だけど、ここでは『人が装備する鎧』だから助かった。
先程消えた『家事モード』のガンレオン。そして、俺が((半歩ずれて|・・・・・))そこにいるように幻術をかけてくれたティアナに感謝だ。
「最大出力っ!!ヴィータ!そっちは任せる!すぐに戻るからアサキムを抑えてくれ!」
「っ!お、おう!任せろ!」
ブラスタを着込んだ高志に一喝されるまでガンレオンがアリエティスに貫かれたことに気を取られていたが、状況が呑みこめないながらもアサキムを再度注視する。
アリエティスをブラスタのスパイカーで貫きながら地下から地上に向かうように突き上げながら、背中のブースターの炎を最大にする。
「…な、何故。私の『嘘』を見破っていたというのですかっ」
アリエティスを盾にしながら俺は地下から地上へと突き抜ける前にその問いに答える。
「偶然と直感だ!」
高志は元々((ガンレオン|・・・・・))を餌に((ブラスタ|・・・・))で奇襲をかけるつもりだったからだ。
元々、アサキムがタカシの目の前に現れて何らかの情報を渡す。それ自体に俺は既視感を覚えた。
どこかで似たような事を見ていないか?と、
そして思い出した。
『リリカルなのは』という原作があれば、ガンレオンやアサキムの様に元になった世界観『スーパーロボット大戦』という原作がある。
その『スーパーロボット大戦』の原作ではスフィアの情報を渡された主人公は一度アサキムと出会うもすぐに別れるものの共闘をする。そして、その共闘後、味方と思っていた味方から攻撃される。もっともその主人公はその味方の攻撃を見切っていたのでその不意打ちも見事にやり過ごす。
だが、高志はお世辞にも器用とはいえない。が、同時に搦め手。つまり嫌がらせは得意である。特にわかっていても避けることが出来ない攻撃。もしくは一番やるはずがない攻撃。
高志曰く、
コードギ○スのル○ーシュ。お前は気に喰わんが戦術は認める。
ビル崩しは見事でした。
気に喰わない理由?
・・・イケメンだからさ。
そして、高志はアサキムとすぐに遭遇した瞬間にティアナに念話で自分の半歩遅れでガンレオンの幻術をかぶせるように指示。
更に自分自身を透明にする幻術をかける。
この二つだけだとあまり意味が無いように見える。が、それは遠距離・中距離戦を得意とする魔導師や騎士達の攻撃を紙一重で避けた場合、まるで自分の攻撃がすり抜けたように見えるだろう。
更に幻と本体は接している。というか、半分かぶっているのでその一瞬でそのことを知ることは出来ない。いや、知った方が対処しづらいだろう
逆に、なのはやはやての様に遠距離主体の魔導師にはこの戦い方は向かない。
遠距離からバカスカ撃たれればこんな小細工なんて意味なく吹き飛ばされる。
「気づいていたというのか?!偽物だと、最初から…」
アリエティスの悪魔じみた顔を歪める。
いくら非殺傷とも言えど、その身をブラスタのスパーカー、放電する槍で貫かれているからただでは済まない。
それにこれは…。
「これは『傷だらけの獅子』のスフィア?!」
たった一回しか効果が無い。見られれば終わりの不意打ち。それゆえの、
「これが『命懸けの力』だああああっ!!」
手にした銃口から伸びた一本の槍。
そこに『傷だらけの獅子』のスフィアの力を全部注ぎ込みながら突き抜けていく方向は確認せずに突き破る勢い地上へと続く地下道の床、天井を突き破っていく。
ビキキッ。
と、同時にブラスタ本体も天井や床を突き破っていけばいくほどにその鋼の翼、体に亀裂が生じていく。
『傷だらけの獅子』の力にブラスタが耐えきれていないのだ。
これは決してブラスタが『傷だらけの獅子』見劣りするのではない。少しでも合わなければ自壊するほどにスフィアの力は凶暴だということだ。
地響きを鳴らせながら地上へと突き破っていったアリエティス。そして、地上へと飛び出したところでブラスタの鎧は粉々になった。
「ぐぅおおおお!」
だが、その身を粉々にするほどの出力は功を制した。
地上に飛び出した高志とアリエティスは弾かれるように地上へと投げ出された二人は互いに距離をとることになる。
「くぅうううう!ガンレオン再度展開!」
高志はそう叫び、再び重厚な鎧を身に纏おうとしたが展開されたのは手甲・脚部にあたる部分。そして、ライアット・ジャレンチだけしか展開できなかった。
(エラー?!部分展開だけなんて…。…だけど。はやくかたをつけないとヴィータ達が危ない)
高志は大上段にジャレンチを構えてアリエティスを睨みつける。
マグナモードも使えるかどうかわからない。この状況を作り出したのは確実に目の前のアリエティスだ。
エラー。完全装甲での((行動不可|・・・・))。
嘘でガンレオンを惑わしている『偽りの黒羊』の力だ。
「ぐぅううう…。まさか、嘘を司る力を持つ、この儂が『虚』を突かれてるとは、な」
アリエティスはそう言いながらその身を風景に溶けていくように消えていく。
姿を消しての不意打ちかと身構える。
「・・・・・・・・」
この数秒が歯がゆい。
一刻も早くアサキムと相対しているヴィータ達に合流したいが迂闊に動けばやられる。だが、ここで『偽りの黒羊』から警戒を解けば逆にアサキムとアリエティスが合流するかもしれない。
天敵のアサキムとアリエティスが屈託している。どのような工程でそのようなことに陥ったのかは知らないが…。
「・・・・・・・・」
アリエティスが消えて数分。魔力や周りの空気。自分に向けられた殺気の出どころを探りながらガンレオンをスフィアの力を流し込み修理をしていた。
「…退いた。か」
ガンレオンが全展開して更に数分。完全に消えたと思われるアリエティスの気配を不気味に思いながらも高志はアリエティスへの警戒を緩める。
嘘を司るスフィアを持つ、アリエティス。
一度はアサキムの物になったはずのスフィア。
それが離れて今再び牙を剥いた。
「…速く地下に戻らないと」
正直に言うとアリエティスには不意打ちを受けるその数秒までアリサに化けていた事には気付けないでいた。
疑惑を持ったのはアリサがアサキムの殺気を受けて((一番後ろ|・・・・))まで退いたことにある。
エリオやキャロ。スバルにティアナ。ギンガ。
その誰よりもアサキムに意見をした時のアリサは誰よりも後ろにいた。
誰よりもなのはの力になれない事を悔しがっていた。そのアリサが力を手に入れて、自分よりも弱いフォワード陣の奴等よりも怖気づくなんて考えられなかった。
そんな疑惑を持った俺はアサキムへの急襲をアリサに切り替えた。
そして、今に至る。
『こちら、スターズ2。ヴィータ!アサキムと身元不明の少女を追って地下から廃墟になった市外へと向かっている!手が空いている奴はこっちに来てくれ!』
通信でヴィータ達からの無事を知った俺はそのことに安堵しながらも、彼女達を追う事にした。
シグナム視点。
ヴィータからの連絡を受けてヴィータやフォワード陣の元へやって来たが、どうやら無用だった。
フォワード陣の何人かはあちこち怪我をしているようだが無事の様だ。
「…どうやら、事なきを得たみたいですね」
「まあ、レリックは持っていかれたようですが…。アサキムに相対して無事だった。それだけでもよくやった方ですよ」
私と共に支援にやって来た聖王教会の騎士。シャッハはフォワード陣の無事を見て表情を緩める。と、そこにガンレオンを身に纏った高志がやって来た。
「…あの人(?)が『傷だらけの獅子』ですか?なんというか、その」
「あのアサキムを何度も退けたようには見えない。か」
騎士カリムの能力を目的に襲撃してきたことのあるアサキム。
聖王教会に主激した事のあるアサキムに当時の聖王教会の騎士達は全く歯が立たなかった。
そして、八神はやての騎士達。ヴォルケンリッターを真正面から打ち破るアサキムの対抗策としての一つが彼になる様なのだが…。
「見た目は、その…。強そうというよりは、コミカルというか、なんというか。あ、転んだ」
未だに『偽りの黒羊』のエラーコードが残っているのか、あっちにフラフラ。こっちにフラフラと足取りがおぼつかない。
「まあ、仮にも冷静さを無くした主はやてにリインフォースを除いた、我等ヴォルケンリッターを同時に相手をして勝ったのだ」
「っ!そこまでに強いのですか?!」
そうには見えない。と、廃ビルの屋上から高志の事を見ていたシャッハは驚きの声を上げる。が、
「あ、また」
ぼてっ。と、音を立てて転ぶ高志はガンレオンの装甲を解いた。ガンレオンで転んでいるからガンレオンを解除すればいいと思ったのだろう。
その姿に呆れているヴィータとフォワード陣。
そんな彼女達を見ていると先程まであった任務も無かったように感じる。
「まったく、いくら冷静さを失ったとはいえ我等に勝ったのだからもう少し威厳というものを…」
まったく。と、私はため息をついてタカシを見る。
転んだ拍子にぶつけたのか後頭部の方を抑えて涙目になっている。
「いくらリミッターを賭けられているとはいえ私達に勝ったのだ」
「…ええ。そうですね。人は見かけによらないですね」
「いくら冷静さを忘れたとはいえ、勝ったのだ」
「…?ええ?そうですね」
「いくら不意打ちとはいえ、我々の防御力魔力障壁があるとはいえ瓦礫を投げて勝ったのだ」
「え、ええ?」
「あれが一般の者にあたれば死ぬという攻撃をして勝ったのだ」
「はあ?」
「あっちはスフィア持ちで、容赦なくそれを振るい、不意打ちで、冷静さを欠いた状態で、ほぼ質量兵器と言ってもいい攻撃をしたとはいってもいいともいい!それでも奴は勝ったのだ!我々に!」
「き、騎士シグナム?」
「大体、向こうも少しぐらいは手心というか段取りというものがあるのにいきなり不意打ち攻撃!負けても仕方名が無い事なのかもしれないが我々に勝ったのです!もう少し、もう少し威厳というものを持って…」
逆にその方法以外でヴォルケンリッターに勝てる手段を持たない高志でもある。
不意打ちに強襲。騙し討ち。
少年漫画の主人公にぶちのめされそうな戦い方をする『傷だらけの獅子』である。
(…相当悔しかったのでしょうね。それなら…)
「もう一度戦ってみてはどうですか?」
「っ。そうだな。それもそうだ!今度は一対一で模擬戦でもすればいいか!そうだな!あいつの事情や仕事が忙しくて考えが至らなかった!別に模擬戦をしてはいけないという事も無い!」
「はあ、事情ですか?」
「よしっ、では今日と明日は大事を取ってもらって、次の休みでも模擬戦をしてもらおう!そうしよう!」
(…ごめんなさい。『傷だらけの獅子』)
意気揚々と顔を輝かせているシグナムの顔を見て、高志の方を見るシャッハ。
これはやってしまったか?と、思いながら高志を見たシャッハは心の中で謝ることにした。
その時、高志が背筋に悪寒を感じたかどうかは隅に置いておくことにしよう。
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第二十五話 ・・・イケメンだからさ | ||
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コメント | ||
作者も忘れがちですが高志は女運最高の特典が逆転しています。これが地味に効いているだけですよ(たかB) …最近のこの手の作品って、主人公に迷惑をかけることが主人公寄り陣営であることの条件だったりするのかねぇ…(匿名希望) 一級<死亡フラグ建築士>高志、またも哀れなフラグが立ったな……HAHAHAHAHAHA(大爆笑)(竜牙) なんというか……謝れば済む問題ではないと思うのですが^^;しかも心の中だけだしw体をはって自分たちがどうにもできない相手を退けてくれたのにシグナムさんを焚き付けるなんて……(Leccee) 燃えろ!!!シグナム!!!(匿名希望) 誤字修正しましたありがとうございます(たかB) 誤字発見です。 地下道の湯か→床(神薙) |
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