夢で見かけてピエロは僕に微笑んでくれるだろうか |
夢を見た。
前半は楽しくて
後半は歯ぎしりしてた。
内容はシンプル。
登場人物は3人。
幼馴染2人
と僕。
MちゃんとKくん
そして、おまけ程度にこの僕。
いつも僕はミチバチが花に誘われるように2人の後を追いかけていた。
Mはピアノと歴史が好きだった。
いつも教室でピアノを弾きながら古今東西の風俗を語ってくれた。
僕はピアノと歴史が好きになった。
Kは数学が得意で、博学かつ聡明だった。
加えて世渡りも上手だった。Kは人に阿るを良しとしていた。
そんなKの側面を知っていつしか今のように僕はKを目の仇にしていた。
何かのパーティーがあるらしく徒歩で会場まで向かった。
小雨が降っており、会場へと続くコンコリートは黒ずんでいる。
霧状の雨は会場へ続く道の両脇に立つ枝葉の薄緑を優しく、美しく見せている。
コンクリートは僕。
葉っぱは2人。
2人が楽しく話しているのを僕はただじっと見つめているしか術がない。
下を向けば2人の笑顔は見えないが、Mの顔が見えない。
耳を塞げば2人の笑い声は聞こえないが、Mの声が聞こえない。
会場が見えた。
会場をピエロに扮する大人がずらっと囲んでいた。
彼らは私たちを認めると、一斉に振り返り笑顔を向けた。
ピエロに意識を逸らされた僕らは後ろのトラックに気付いていなかった。
雨に濡れた道路でトラックは横滑りした。
KはMを押した。
Mとトラックの距離は80、50,30とみるみる縮んでいく。
Mは横転したトラックの下敷きになった。
道路にはMの命が放射線状に広がり、朱色に染まっていった。
KはMだったものには見向きもせず僕の腕を掴み、ピエロの屋敷へと進んだ。
Kの手はガラスみたいに冷たくて、握ればつぶれる位に華奢だった。
Kを見上げるとKは笑いをこらえていた。
聡明なKとMは今大学にいる。
2人に追いつくために多少努力した。
おかげでそこそこの大学に入れた。
でもそんな努力なんて無意味だった。
2人は結婚した。
僕にとっては訃報だった。
僕は2人に訃報を届けることにした。
さようなら。夢で見かけたピエロは僕に微笑みかけてくれるだろうか?
A
PCを整理していたら、昔のメールを見つけてしまった。
見れば後悔するに決まってる。
でも、好奇心には勝てなかった。
見つけて後悔して、読んで更に後悔した。一度に二度後悔した。
熱が体を一瞬にして駆け巡った。
逃げる場所なんてないのに、ディスプレイから逃げ出した。
玄関へ急いだ。
扉のノブを回し、鍵も閉めずに、部屋を後にした。
薄暗く、どんよりとした部屋には雑然と床に並べられた本とPCから漏れた光以外にはなにもなかった。
地平線へ向かってとにかく足を、手を振った。
骨や筋肉の軋む音が憎い。
この音が原因であの人に見つかりませんように。
遠くへ、少しでも遠くへ行ければ何処でも良い。
私の足が皮を地面に捲られても一向に構わない。
忘れられば良いんだ。
あの人を頭から消し去れればいいんだ。
メールは、あの人の結婚を知らせるものだった。
それ以降、キーボードは赤黒い染みが残ったままである。
寂しかったんだ。連れには悪いと思ってる。
最後の「行」さえなければこのメールは廃棄出来た。
恨むことさえ許されないんだ。
同情されるのはこっちのはずなのに、向こうに同情せざるおえない。
心臓の高鳴りと眩暈
そして、あの人への想いが渦を巻く。
もう何も考えられない。考えたくもない。
そうだ、いっそのこと殺してしまおう。
あの人を殺そう。3人で死ねば誰も辛くない。
説明 | ||
元々別に書いた二つのショートショートなのですが、どこか似ているので、敢えて一つにまとめました。夢とは鏡。心を映し出す鏡。少し錆付いて、縮尺を間違えちゃう困った鏡さん。そんな残酷かつ嫣然とした夢について書かせてもらいました。ゆめにっき万歳! | ||
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