ミーナ・イザーフは士官学校で私の一級上だった。飛び級もせずに普通に卒業したので私よりも年上になる。彼女は二等ガミラス人だ。肌の色も白い。彼女の先祖が征服され帰順したとき、多くの同胞が本星に渡ってきた。環境劣悪な本星のに好んでやってきた理由が、単に生活苦からか、はたまた帝国内で地位向上を目指したかったのかもう本人たちにもわからない。 ただ、都市に住もうと田舎にいようと彼女らは一般的に貧しい。おまけに子沢山である。彼女の家族も警察官である姉と軍人になった彼女が家計を支えている。下町で不法行為に手を染める二等市民が多い中では見上げた存在なのだ。 そう軍は彼女たち二等市民にとってはガミラス社会で認められるチャンスのひとつだ。 だがやはり、それなりの偏見は避けがたい。そんなわけで彼女の物腰には何か世をすねたようなところも感じられる。もっとも根は優しい女なのだろう、他の部隊で聞くような二等の古参や上官が一等ガミラスの新人を苛め抜くようなことはついぞ彼女は手を染めなかった。 大帝星科学アカデミーでの初めての「歴史再現プログラム」と称する遠征実験に参加した。期間は一ヶ月程度。ある時代、ある風土における戦闘を当時の技術を忠実に用いて再現、検証する、という目的だった。もっともこれを実施するときは総統府もご注目であると勿体を付けて告げられるのが常で、ありていに言えばお偉方の誰かが退屈をまぎらす見世物を欲していると見たほうが良い。 一応、当時そのままの装備機材で同じ環境でシミュレーションを実施するので、今回もある植民地惑星に遠征した。揚陸艦から降ろされたところはその星の赤道近くの砂漠地帯、そこでかつてガミラス本星にまだ同様な風土が残っていた頃に勃発した戦闘を戦闘機持込で再現して見せるのだ。当時、まだ帝政もなく、いくつもの国家に分裂していた頃、その有力な数カ国が参戦した戦争があった。 投入されたのはこれまた原始的な化石燃料を燃やすタービン噴進機。私たちは敵味方に別れて当時の空戦を再現し、センサーは刻々モニターし続ける。もちろん私たちの身体、精神も同様にチェックされている。 後方基地から宿営地兼前進基地に移動を開始する朝が来た。そのときは、なんというか、二人とも学生旅行の気分だった。もちろんそのときまでだが。 しかし、本星ではこんな太陽光線を浴びまくることなどなかった。しかし暑い。 |