無印の記憶【真・恋姫†無双】 【短編】
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「……………はぁ」

 

 

…おもわず嘆息をもらしてしまう。私は今、城壁にいる。

 

空には、満月と輝かしい星達が降り注いでいる。

 

ここ最近、満月の夜の日は、いつも眠れない。

 

原因はわかっている。

 

私の主、一刀様のことだ。

 

何故かわからないのだがここ数日、ご主人様に対して

 

妙な既視感を抱いてしまう。

 

 

 

……いや。今思えば初めて出会ったときから予兆があったのかもしれない。

 

…そう。そうなのだ。『初めて会った』気がしなかったのだ。

 

私はあの時、どこか懐かしさを感じていた。

 

そして、それは大切な事でありとても悲しいことであったと確信している。

 

 

 

………だって、こんなにも胸が苦しくて

 

想えば想うほど涙が出そうになるから……

 

 

 

 

「ん?……愛紗じゃないか。君も眠れないのかい?」

 

 

 

後ろから優しい口調で、声を掛けてくださるご主人様。

 

 

気づかぬ様、そっと涙を拭き私は振り向いてお顔を拝見した。

 

 

…そのお顔は笑顔を浮かべているが

 

 

どこか寂しそうな、愁いを帯びているように感じた。

 

 

 

「…えぇ。御主人様。満月の夜の日はなかなか寝付けなくて。

 

 こうして空を眺めているのです」

 

 

 

「そっか。…実は俺もなんだよ。満月の夜の日は眠りたくないんだ。

 

 いつも同じ夢を見てしまう。それは、とても大切なことで

 

 何かを忘れているような気がするんだ」

 

 

「御主人様もですか?――」

 

 

「うん。そうなんだ――」

 

 

 

私だけではなく、御主人様まで…これは偶然なのか?

 

 

 

 

満月の夜の日。

 

胸騒ぎ。

 

そして、大切なこと。

 

 

 

 

もしかしたら私と御主人様は、同じような、奇妙な既視感を

 

抱いているのではないかと私は思った。

 

 

 

「御主人様よろしければ、その夢をお聞かせ願えませんか?

 

 …私にも少々思うところがありまして

 

 力になれるかもしれません」

 

 

 

「うん。わかった。けど、上手く話せるかな?…こう、漠然としてるんだけどさ。

 

 誰だかわからないんだけど、そいつの所為でとても大切な、大切な女の子と

 

 離れ離れになってしまうんだ。もう、一生会えなくなる。

 

 そんな悲しい、前世の記憶の様な夢を見てしまうんだ」

 

 

 

 

 

……………離ればなれ……………

 

………一生会えない………

 

――――――悲しい、前世の…記憶――――――

 

 

 

 

 

私の中で何かが引っかかる。まるで、散り散りなっていた欠片が

 

ひとつに形成していくような、そんな感覚。

 

後、ひとつ、もうひとつだけの、きっかけがほしい。

 

 

 

「……御主人様!その女子は何か口に仰っておりませんでしたか!?

 

 懸命に叫んでおられませんでしたか!?」

 

 

「…少し落ち着いて。愛紗」

 

 

「…ハッ!?申し訳ありません御主人様」

 

 

「いや、別にかまわないよ。愛紗。……うーん。そうだな」

 

 

 

御主人様は、口に人差し指と中指を、そして親指を顎に添えて

 

考えることに沈潜していた。

 

 

 

 

 

 

 

「…………………『約束』…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 ………えっ?

 

 

 

 

 

 

 

「その子と約束したような気がする。消えないって。ずっと一緒に居ると

 

 

 ………約……束………し…た………」

 

 

 

 

 

 

私の中でバラバラになっていた欠片が、音を立てて一つになっていく。

 

 

…そうだ。『約束』 したんだ。ご主人様とあの場所で

 

 

霊峰泰山の麓で決して離れないと。

 

 

 

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「ならば勝てば……ご主人様とずっと一緒に居られるということですよ……ね?」

 

 

 

「……ご主人様。私たちを置いて消えてしまうなんてこと、

 

 

 

 絶対になさらないでください……」      

 

 

 

「そんなのいやです……! 消えないで!」

 

 

 

「約束したのに……っ! ずっと……ずっと一緒に居るって約束したのにっ!」

 

 

 

「私を……私を一人にしないで……っ!」

 

 

 

「一刀さま――――――――!」

 

 

 

 

 

 

 

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何故こんなにも大切なことを忘れていたのだろう。

 

 

何故、私はココにいるのだろう。

 

 

けれど、その様なことは今、どうでもいい。

 

 

 

 

 

…だって、最愛に人が私の傍に居てくれる。あなたの隣に居ることができる。

 

 

それが

 

 

何よりも嬉しい。

 

 

 

 

 

「………愛紗――――」

 

 

「………ご主人様?―――」

 

 

 

 

 

ご主人様の両の手が私の両肩にそっと触れ、少し震えた声で私に話しかけてくる。

 

 

 

 

「ごめん。…ごめんな。愛紗。俺、最低だよな。君との大切な

 

 思い出を忘れてたなんて。

 

 …本当、最低…だよな……」

 

 

 

「…お顔をあげてください。ご主人様。私は嬉しいのです」

 

 

 

「………嬉……し…い?」

 

 

 

「はい。ご主人様との大切な記憶を思い出すことができました。

 

 また、こうして、同じ時のなか貴方と一緒に過ごせる。

 

 私は幸せ者です。…だから泣かないでください。

 

 ご主人様」

 

 

 

「愛…紗。……でも…俺………は―――――」

 

 

 

「……では。ご主人様。一つだけお願いしたいことがあります」

 

 

 

「………お願…い……?」

 

 

 

「ええ。また『約束』してほしいのです。決して私を離さないと

 

 ずっと、傍に居てくれると誓ってほしいのです」

 

 

 

「……わかった。『約束』する。君を二度と悲しませないと

 

 ずっと、愛紗の傍に居ると『約束』する」

 

 

 

「ありがとうございます。……ご主人様―――――」

 

 

 

そう言うと、ご主人さまは優しく私を抱きしめてくれました。

 

 

 

―――――貴方を好きになってよかった―――――

 

 

 

―――――貴方に出会えて、よかった――――――

 

 

 

――――心の底から貴方に感謝しています――――

 

 

 

 

「……愛しているよ。愛紗―――」

 

 

 

「私も愛しております。……一刀さま―――」

 

 

 

説明
こちらは真・恋姫†無双二次創作となります。
前回、読んでいただいた方、誠にありがとうございます。
今回のお話は愛紗視点でございます。
もし、無印の記憶を覚えていたら
もし、二人ともあのまま消えていたら
そんな感じのお話です。
最後に稚拙な文章で、ございますが
暇な時間にでも読んでいただけると嬉しいです
よろしくお願いします。
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コメント
無印ではヒロインをしていましたよね。萌将伝の不遇ぶりには(泣)(南無さん)
愛紗はやはり恋姫のメインヒロイン。真も萌も好きだけど、やっぱり無印愛紗が個人的に最強(yosi)
私もその様に感じます。切っても切れない縁。特に愛紗はそういった力が人一倍強いと私は思いますね。(南無さん)
無印と新たな外史での記憶の繋がりは大切なものに感じますね・・・(本郷 刃)
そうですね(笑)もうハチャメチャです。一刀争奪戦です(笑) (南無さん)
そして、この後……桃香が「愛紗ちゃん! ずるーーーーーーーーーーーーーい!?」って言いながらやって来て、他のメンバーも乱入するんですね? 解ります(笑)(劉邦柾棟)
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真・恋姫†無双 恋姫†無双 北郷一刀 愛紗  短編 

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