春香「7700点?8000点?」 P「ああ、それはな……」
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春香「プロデューサーさん!プロデューサーさんっ!」

 

P「ん。どうした春香」

 

春香「あ、お仕事中でしたか」

 

P「いや、いいよ。急ぎじゃないし、それにゲームのところから来たってことは麻雀についてだろ?」

 

春香「えへへ。さすがプロデューサーさんですね」

 

 

 ― 注:この作品は、前作の『春香「マージャンですよっ!マージャンっっ!」 P「え?」』後の話です ―

 ― 注2:が、続いているのは本筋とあまり関係のない雑談部分なので気にせずお読みください −

 

 

P「それで、なにが聞きたいんだ?」

 

春香「えっとですね。うーん……これ、見てもらった方が早いかもしれませんね。ちょっとこちらへお願いします」

 

P「ああ、麻雀ゲームの画面を見ればいいんだな。どれどれ」

 

 

〜ゲーム画面〜

立直・平和・ドラ2 7700点

 

 

P「うん!いいあがりだな。それで、この手がどうしたんだ?」

 

春香「あ、手じゃないんです。私が聞きたいのは点数の方でして」

 

P「点数……?ああ、ひょっとして」

 

春香「この手、満貫だったような記憶があるんですよ。私が小鳥さんに振り込んだ時の」

 

P「前に打ったときのやつか。よく覚えてるなあ。初心者で対局の細かい記憶が残っているなんてすごいぞ」

 

春香「えっ?!そ、そうですかあ。えへへ」

 

P「普通はなかなか覚えていられないものなんだよ。春香の記憶の通り、小鳥さんがあがった手と同じ手役だぞ」

 

春香「だったらこれ、同じ点数じゃないんですか?」

 

P「麻雀は、役が同じだからといって点数が同じとは限らないんだよ」

 

春香「そうなんですか?じゃあ小鳥さんのは8000点で、私のは7700点なわけですね」

 

P「いや、そうじゃない。この場合は同じ点数なんだ。平和だからな」

 

春香「よくわからないです(のワの)」

 

P「そうだな。まあ本題とずれるから、さらっとした説明でいいか?何しろ平和は麻雀で一番ややこしい役なんだよ」

 

春香「そのあたりはよくわからないのでお任せします」

 

P「よし。じゃあ簡単に言うと、平和は『符が無いことが条件』だからだ。平和である限り、符が固定される」

 

春香「符?」

 

P「その画面にもあるだろ?4ハン30符って」

 

春香「あ、これですか。これって意味あったんですね」

 

P「点数計算において、とても重要な役割を果たしているんだぞ。ちなみに平和は必ずツモ20符、ロン30符になる」

 

春香「なるほど。よくわかりませんが、そういうものなんですね」

 

P「そういうことだ。で、本題の小鳥さんの8000点と春香の7700点だけどな」

 

春香「待ってました!」

 

P「実はこれ、あまり意味はないんだ」

 

春香「へ?」

 

P「いや、あるんだぞ。あるんだけど、理由になっていないというか……」

 

春香「ちょっ、ど、どういうことですか?私の300点は意味もなく失われちゃったんですか!?」

 

P「そんなわけないだろ。だいたいな、大まかなルールは俺が決めたけど、あの手を満貫申告したのは小鳥さんだろ」

 

春香「じゃあ小鳥さんがズルを……」

 

P「春香、ちょっと落ち着け。この件に関しては細かく説明するよ。ただ、あくまで俺の解釈って話になる」

 

春香「プロデューサーさんの解釈、ですか?公式のルールとか、基本ルールとかで決まってるんじゃないんですか?」

 

P「麻雀にそういう決まったルールは無いんだ」

 

春香「ええっ!?麻雀ってルールが決まってないんですか!」

 

P「そう言うと語弊があるんだがな。統一されたルールというのは、まあ無いに等しい」

 

春香「でも麻雀の本とか、初心者向けの本とかありますからそれを見れば」

 

P「いい本には必ず『この本のルールが絶対じゃない』『細かいルールはみんなで決めよう』って書いてあるぞ」

 

春香「何ですかそれ……マージャンって、けっこう変なゲームなんですね」

 

P「残念だがこればっかりは事実でな。ルール策定の話は幾度も持ち上がったんだが、今はもう無理なんだよ」

 

春香「今は、というと?」

 

P「まあコレも蛇足だから説明は流すが、プロ団体が分裂してバラバラのルールでやっているから決めるやつがいない」

 

春香「プロがバラバラなら私たちが統一できるわけない、ってことですか」

 

P「そうだ。これはもうプロの怠慢と言っていいんだが、まあ色々あったらしいからなあ」

 

春香「初心者にとってはなんとも厳しい話ですねえ」

 

P「全くだ。それで、この300点の差だがな。そもそも、満貫ってなんだ?なんで8000点なんだ?」

 

春香「ええっと、満貫は4ハンで……あれ?ちょっと点数表を見せてくださいね」

 

P「ああ、よく見てみろ。なにかヘンだって思うはずだぞ」

 

春香「えっと、1000、2000、3900、7700、8000。5ハンは満貫です」

 

P「30符だな。じゃあ40符は?」

 

春香「1300、2600、5200、8000。4ハンで満貫です」

 

P「そうだ。4ハン30符は7700点、4ハン40符以上は満貫。その表にはないが、3ハン70符以上も満貫だ」

 

春香「じゃあやっぱり、リーチ平和ドラドラは7700じゃないんですか?」

 

P「原則で言えばそれが正しい。が、ここで『細かいルールはみんなで決めよう』って話を思い出してくれ」

 

春香「ありましたね」

 

P「じゃあ『300点とか面倒だから繰り上げて満貫にちゃおうぜ!』って決めても問題はないってことだ」

 

春香「は?」

 

P「まあちょっと補足するとだな、7700点をツモるとどうなるか知ってるか?」

 

春香「えっと、ちょっと待ってくださいね。えっと、4で割って1925だから……」

 

P「ブブー。その時点でダメだ。麻雀の点数計算はそういう考え方をしちゃいけないぞ」

 

春香「うう。では、どうすればいいのでしょうか」

 

P「それはな。まず符が基本になる。一番楽な1ハン30符で計算すると」

 

春香「ちょっと待ってください、メモ用意しますので……はいどうぞ!」

 

P「あ、その前にだな。春香は2の2乗とかわかるか?」

 

春香「ええ。学校で習いました」

 

P「なら話は早い。麻雀の点数計算は、符に2のX乗をかけたものが基本になる。Xはハン数と場ゾロの和」

 

春香「えっと……もうちょっとだけ、噛み砕いてほしいかなーなんて」

 

P「じゃあそのメモ用紙に書いてみればいい。まず30を書いて、2を(1+2)乗してくれ」

 

春香「1ハン30符が、30と2の(1ハン+場ゾロの2)乗で……30×8=240。あれ?1000点じゃない」

 

P「いや、それでいいんだ。麻雀の点数は繰り上げなので300点だな」

 

春香「これおかしいじゃ……あ、1000点のツモ。子の支払いが300点だ」

 

P「気付いたか。春香はセンスがいいな。そうだ。真面目に計算するとまず子のツモ払いが算出される」

 

春香「また妙なところから計算されちゃうんですねえ」

 

P「まあ本当はちょっとだけ違う。子の240点と240点、それから親の480点まで一気に算出しておく」

 

春香「なるほど。これを全部繰り上げて300点、300点、500点なわけですね」

 

P「ツモの場合はな。ロンの時は、素直に全部を足して960点。繰り上げて1000点だ」

 

春香「うわあ、これはちょっと面倒くさいかも」

 

P「ああ面倒だ。だから初心者には早見表がある。ただ、早見表に頼って覚えるとたまに困ることがある」

 

春香「困ること?」

 

P「点数って度忘れすることがあるんだよ。この計算式を知っておくと、早見表を忘れた時にも点数を計算できるだろ?」

 

春香「打ち慣れた人でも忘れることってあるんですか?」

 

P「正直に言うと多くはない。ただ、俺も110符の計算なんて覚えていないからなあ」

 

春香「110符って、そんなのあるんですか?」

 

P「理論上は可能らしい。ただまず出るものじゃない。俺の実戦経験だと90符が最高だな」

 

春香「90符も十分計算が面倒っぽいんですけど……」

 

P「あはは。春香、さっきの計算式をよく見てみろ。30かける2のX乗だぞ?ならその計算結果に3をかけるだけだろ」

 

春香「あっ!90を3×30にすればいいんですね」

 

P「そうだ。110符のややこしいところはな、何の倍数でもないところなんだ。同じく70符で困る場合もある」

 

春香「70符。前の時には出ませんでしたね」

 

P「面子にもよるが、倍満より出にくいと思うぞ。不意に出た時にぱっと点数が出なかったりする人もいる」

 

春香「へえ〜なるほど〜。で、これがどう関ってくるんですか?」

 

P「うん。じゃあ7700点をツモった時の計算をこの計算方法でやってみてくれ」

 

春香「えっと。30と2の、2と4を足すのかな?6だから、2の6乗で64。30かけて……1920!」

 

P「そうだ」

 

春香「じゃあこれを1920、1920、3840に分けて……できました。2000、2000、3900です」

 

P「満貫ツモは?」

 

春香「え?8000点なので2000、2000、4000ですよね?」

 

P「正解。つまり親が100点多く払うだけなんだよな。子は支払額すら変わらない」

 

春香「ああ、確かにそうですね。なんだかちょっと、変な感じがします」

 

P「ちなみに2000・3900を1ハン足してちゃんと計算すると、3900・7700で15500点だ」

 

春香「うわ、5ハンなのにハネ満を軽く超えちゃってるじゃないですか」

 

P「1ハン足すとほぼ倍になるからな。昔の人がゲームを面白くするために点数を区切ったのさ」

 

春香「確かに真面目に計算するルールだと点数が酷いことになりそうです」

 

P「前に春香がツモった倍満だと、たぶん10万点を超えるはずだ。ちなみに親だからその1.5倍」

 

春香「そんなのあがられたら続ける気力を失っちゃいそうです……」

 

P「真面目に全ての計算するのを青天井ルールと言うんだがな。そんなルールでやることはまずないな」

 

春香「なんだか私の知っているマージャンじゃないみたい」

 

P「俺もそう思う。まあこの話で俺が言いたかったのは、満貫が『あいまいな理由で区切られたもの』ってことだ」

 

春香「なるほど」

 

P「そして、どこかの誰かが『100点や300点くらいなら、その区切りに入れちまえよ』と考えた」

 

春香「なるほど?」

 

P「そのうち『おお、そりゃいいな!』と賛同する人が増えて、雀荘なんかでも採用され始めた」

 

春香「……」

 

P「そうしているうちにありふれたルールになって、今では小鳥さんのように何の疑いもなく点数申告するように」

 

春香「ちょっ、ちょっと待ってください」

 

P「ん、なんだ?」

 

春香「なんだかやっぱり理由になっていないような気がするんですけど……」

 

P「だから俺は最初からそういっているじゃないか。今日の話をよく思い出してみろ」

 

春香「…………あ、ほんとだ」

 

P「満貫自体が『設定された区切り』だから、『4ハン30符からが満貫』と再設定しただけなんだ」

 

春香「うーん、なんだか納得できるようなできないような」

 

P「気持ちはわかるよ。俺もそんな時期があった。『削るのはいいけど増やすのはおかしいだろ!』ってな」

 

春香「あ、そういうんじゃないんですけどね」

 

P「……うん。なんかごめん」

 

春香「どうにもこう、釈然としないというか、なんというか」

 

 

律子「別に7700で打ってもいいのよ。765プロは原則計算ってことにしますか?プロデューサー」

 

P「あ、律子」

 

律子「お仕事、お疲れ様ですねえ。ところで、『麻雀より仕事を大事にしろ』ってのは誰の台詞でしたっけ?」

 

P「いや、今やってる俺の仕事は急ぎじゃないから、ちょっと春香に麻雀の疑問を解消してもらいたかったというか」

 

春香「そ、そうです。私が頼んだのでプロデューサーさんは悪くないんですよ」

 

律子「ふーん。じゃあこの時間は休憩していたってことで、時給計算して給料からさっ引いておきますね」

 

P「え、ちょっ!それは」

 

律子「ちなみにウチは残業が30分単位の計算なので、あらまあ32分話していらっしゃるので繰り上げて1時間ですか」

 

P「いや、そこは30分に」

 

律子「麻雀の点数計算の話をしていたんでしょう?なら繰り上げるのが筋ってものでしょうが!ええっ?!!」

 

P「は、はいぃっ!」

 

 

 

春香『ごめんなさいプロデューサーさん……』

 

春香『お給料が減っちゃうのかあ。なら、せめてお昼ご飯を作ってこよう!お弁当、喜んでくれるかなあ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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