訳あり一般人が幻想入り 第16話
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「今日の外は大丈夫かな」

 

 フランドールの部屋からドアが開いた。横谷が置いていった朝食はそこにはなく、部屋で食べ終えたと見える。

 

「一体どんな人かな。私を楽しませてくれる人かな」

 

 部屋から出てきた少女は軽やかに浮遊して階段に向かう。その少女の顔からは何故か少し笑みがこぼれていた。少女が図書館のドアを通り過ぎたときに、ちょうど小悪魔が食器を持ってドアを開けて出てきた。

 

「あ、あれは妹様……部屋から出てくるなんてめずらしい……なんで出てきたんだろう?」

 

 少女は普段、館の外ところか館内ですら出歩くことがほとんど無い。久々に見た人物に小悪魔は目を見開いてやや驚いた表情になる。それと同時になぜか正体不明の不安感にかられた。

 

「なにか嫌なことが起きなければいいんですけど……優さん……」

 

 

 

 

 

 

第16話 見つけた玩具に合うために

    見つめた身体に触れるために

 

 

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 朝方は晴れていたものの、日が昇るに連れて雲が空を覆い尽くし始める。美鈴も晴れ間に出ていた頃は日光の柔らかく暖かい光でウトウトと眠気が襲ってきたが、雲が隠し同時に秋風も時折吹き込む 今では眠気がどこかへ消え、門の前で真面目に役割を果たしている。

 

「朝からごくろうさんです」

「あれ? どうしたんですか優さん?」

 

 そんな折、((門扉|もんぴ))の内側からバスケットを持って現れた横谷を見て美鈴は小首をかしげる。

 

「朝食運びがてら、門番の仕事をね……」

 

 横谷は美鈴にバスケットを渡し、美鈴とは反対の立ち位置に移動し、塀に寄りかかる。

 

「あ、サンドイッチだ。わざわざありがとうございます」

「礼は咲夜に言って。俺は紅魔館内では用無しの男だし……咲夜の仕事からお鉢が回ってきたってとこだろうさ……」

 

 自身の皮肉を混じえての返事に美鈴はアハハ、と苦笑いする。ここに来てから皮肉を混ぜた言葉が癖のように出てくる。横谷自身も最早、気に留めることも無くなった。

 

「あ、要ります……?」

「ん」

 

 美鈴はおずおずとバスケットを横谷に渡す。それをぶっきらぼうな返事で受け取る。

 中を見ると、三角型のサンドイッチが綺麗に並べられていた。しかもご丁寧にパンの耳も取り除かれている。しかし美鈴の持っているサンドイッチは角食でそのまま挟んだものだった。美鈴もそれをしげしげと見ていたがすぐに口に運んだ。

 

(いやそれ、多分俺のじゃね?)

 

 バスケット中のサンドイッチとの出来の差に横谷は心の中でそう思うが、今更口にしたものを俺のじゃないのと言っても遅いし、それが横谷のために作られたのもという証拠もない。横谷は綺麗な三角サンドイッチを口に運ぶ。

 

「もう慣れました? ここの生活に」

「一日しか経ってないのに慣れも何も無いと思うが……まぁ早く慣れないとなぁ、いつまでここに働かされるのかわからんし……」

「焦らずに気長に行きましょうよ。そえにはあらいふぐへえら、いふふぁおぶぉーはまにひにいあれふ……かもしれませんよ?」

「口ん中飲み込んでから言ってくれよ、殆どなに言ってっか分からん……」

(それに俺は一刻も早くこの世界から出たいんだよ、気長に待ってられっか)

 

 横谷は美鈴の少しズボラな部分にややうんざりしながら、黙々とサンドイッチを口の中に運ぶ。余談として、美鈴が言った言葉は『それに働き続ければ、いつかお嬢様に気に入られる』である。

 

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「お嬢様、少し耳に入れることがあるのですが」

 

 朝食の片付けのために、部屋に入ってきた咲夜がレミリアに深刻そうな顔で話す。

 

「なにかしら咲夜?」

「妹様が、あの男の存在を知ってしまったようです」

「そう、それで?」

 

 咲夜の深刻な顔とは正反対に、レミリアは特に驚いた様子もなく淡々と聞いている。

 

「もしかしたら興味を持って接触するかもしれません」

「あの子ならしかねないわね」

「もし接触し妹様の能力が働いてしまっては、あの男は間違いなく死んでしまいます」

「そうね、あの能力に死を逃れられた人物なんで、誰一人いないわ」

「ですから、妹様を監視したほうが良いかと……もしあの能力を使われてしまったら、血どころか全てが無くなってしまいます」

「そうね……」

 

 その後レミリアは黙考し無言になる。咲夜も片付けを終え、レミリアの返事を待つ。ややあってレミリアは口を開く。

 

「別に、構わないわ」

「よろしいのですか?」

 

 咲夜は困惑する。横谷の血に執着しているとばかり思っていた咲夜にとって、その返答は意外なものだった。

 

「むしろ好都合かもしれないわね、あの男の「力」を試せるかも」

「え、力……ですか?」

(まさか、紫がなにか怪しいことをお嬢様に吹き込んだのかしら……でも、あの男に妹様に対抗する力を持っているようには……)

 

 レミリアの横谷に対する執着する部分が「あの男が持っている力」であることに、事の原因である紫が良からぬことを考えているのかと、咲夜は思索する。

 

「解せないっていう感じね」

 

 考え込む咲夜の顔を見てレミリアは声をかける。

 

「確かに外来人の中には、何かしらの能力を持った人物もいます。ですが、あの男に妹様の力に対抗するような力を持っているとはとても思えません……」

「そうね、私もまだ半信半疑よ」

「え?」

「あのスキマ妖怪のことだから、からかってアイツを貸したのかもしれないけれど、わざわざ私のところに現れて言うものだからもしかしたらってね。ま、見た目があんなだから正直に言えば、疑いのほうが九割ぐらいだけど」

「はあ……」

 

 咲夜は力のない返事を返す。もし咲夜がレミリアの立場だったら即座に切り捨てただろう。あんな役立たずの外来人を未だに生かしているのは、お嬢様のいつもの気まぐれかそれとも紫に((唆|そそのか))されたのか。

 レミリアが横谷に執着する理由が血以外にあったことが分かったにしろ、そのもう一つの理由のために横谷を無期限に働かせると考え、咲夜に軽い頭痛が襲う。

 

「どうせ死んでも構わないって言ってたんだから、アイツがフランに殺されたら只の外来人だったということと、スキマ妖怪の目は節穴だったってことね」

「そ、そうですね……」

(私は何を考えているのかしら、お嬢様が紫に唆されるわけがない。きっとお嬢様がなにか考えてあの男を生かしているのよ……多分)

 

 私はただ従うまでだ、と咲夜はやや曖昧にレミリアを信用しフランドールの一件は事の流れに任せることにした。

 

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「……zzzzzz」

「……ホント気持ち良さそうに寝るなぁ、鼻ちょうちん出して……」

 

 壁に寄りかかりながら座っている横谷は、鼻ちょうちんを出しながら寝ている美鈴を見る。いくら横谷が門番の仕事に加わったとはいえ、他人に任せて本業の自分は悠々と寝ているのかと言われれば実はそうではない。

 

「これさ、分担制でいいんでない?」

「分担制ですか? それは一体どういうふうに」

 

 双方朝食を終えた後に横谷が突如、美鈴に提案をする。それを聞いた美鈴は首を傾げ説明を求める。

 

「二人いるんだから一方が自由に寝て構わないし、もう一方はちゃんと仕事する。そうした方が二人でずっと立ちっぱで見張ってるより多少なりとも効率的に気がするって思ったんだ。何かあったら、寝てる奴は起こせばいいワケだし」

 

 横谷は提案の内容を説明する。その説明に天才だと言わんばかりに目を開き美鈴は大いに納得する。

 

「なるほど! ずっと立っていたら疲れてきて眠くなってしまいますもんね。たしかにそれは名案です!」

 

 自身の体験談を思い浮かべながら美鈴は横谷の考えに賛同する。

 

「まぁ、ただなぁ……」

 

 しかし、その名案を出した本人はなぜか乗り気になってはいなかった。美鈴は横谷の暗い顔を見て再度首を傾げる。

 

「どうしたんですか? なにか駄目な部分があるんですか?」

「いやまぁ、咲夜がさ……ココに来てその状況を見られやしないか心配でさ」

「それくらい大丈夫ですよ。ちゃんと説明をすれば咲夜さんも納得しますよ」

 

 美鈴は横谷の心配を明るげに諭すが、顔はまだ晴れやかになっていなかった。

 

「まあ美鈴が寝ている場面ならそれでいいんだろうさ。けど俺は咲夜に嫌われているからな……その場面を見た瞬間、有無を言わさず怒鳴るんじゃないかと、最悪ナイフが飛んで来るかも、ってなぁ」

 

 横谷はこれまでの失態――といっても特に大きなことはない。ここで書かれてない間に数々の失態を犯したわけでもない――が咲夜への信頼が減っていることに危惧していた。

 ただでさえ外来人という信頼におけるアドバンテージが少ない肩書きで、実質紅魔館を取り仕切っていると言っても過言ではない咲夜に信頼を失ったら、下手をすれば命も危ういかもしれない、と考えていたのだ。

 そんな中寝ている姿を見られでもしたら何を言われるかたまったものではない。

 

「とにかく大丈夫ですよ。確かに咲夜さんは厳しいですけど、それなりの説明を言えば許してくれますよ」

「うん、もう『許す』ってところになんか引っかかっちゃうよね……結局怒ってんじゃん、みたいな感じで……まぁでも、美鈴が言うんならね」

 

 横谷は未だに愚痴をこぼすが、最後は美鈴の言葉を信じて、まるで「いや、俺は乗り気じゃないけどあの娘がね? 言うこと聞かないんだよね」といった口ぶりで責任転嫁し、自分の提案を実行する。

 

「んで、先どっちにする? 俺はまだ眠くないし立ち寝とか器用なこと出来ないし」

「私も眠いわけじゃないですけど、私が先でいいですか?」

「ん、いいよ」

「ありがとうございます」

 

 美鈴は嬉しそうな顔で塀に寄りかかってまぶたを閉じ、腕を組んで立ち寝態勢に入った。眠くないはずなのにわざわざ寝る準備に入ったのは律儀に横谷の提案に乗っているのか、それとも本当は眠たくて仕方なかったのか。

 その態勢に入って十分くらいだろうか、横谷の耳から低い唸り声のようなものが聞こえた。その声の主は横谷の隣で寝ている可愛い「龍」のいびきであった。

 

「はええよ」

 

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 こうして約一時間以上経過してあの場面に戻るが、やや肌寒い風が吹きつけても美鈴は一切起きる気配はなかった。

 その間来客どころか侵入者すらも来ずにただずっと曇天の空を座りながら眺めたり、寒さを凌ぐためのストレッチをするぐらいしかすることがなかった。あとは妄想くらい――半分成人指定なもの――だろうか。

 だがそんな邪まな妄想をしてしまったのがいけなかったのだろうか、いやいけなかった。確実に。横谷の目線が鼻ちょうちんから、それ以上の大きさであろう下の膨らみを見つめていた。

 

(……大きい……)

 

 なかなかの発育いい胸を見て声には出さなかったが、心の中で呟いてしまう。組んでいる腕によって胸がより強調され、身長も高い人物に着ている服が服なだけに横谷は美鈴の全身に目が釘付けになってしまう。

 

「……よっ」

 

 横谷はおもむろに立ち上がり美鈴の方に近づく。そして気持ちよさそうな寝顔を見たあと、またも胸のほうに目線を寄せる。緊張のあまり思わず生唾を飲んでしまう。

 その様子はどう見てもスケベなオヤジそのものである。現代にそんな輩がいたら即座に通報間違いなしだろう。

 弁明するならば、この男は人と接した数は普通の人より格段に少ない。それが異性なら尚更だ。人の接する機会が少ない人物が、異性と((饒舌|じょうぜつ))に話せるわけがない――仕事など損益が発生するときは別なのだが――。

 しかしこの人物は生物学上では男、オスなのだ。同性愛といったものに興味も関心もない健全な男子である。つまりヒトとしては避けるが、異性またはメスとして見ていないわけではない。

 このジレンマの中で出た答えは、遠巻きに女性を見るか画像、動画といった媒体を通して。さらには二次元の画像、動画の方を見て満足していた。それで欲情は発散していた。

 しかし今、目の前に人間でもなかなかいないグラマラスな身体つきの妖怪が、無防備に立ち寝をしている。

 周りに人物も動物もいない。こんな滅多にない条件が、横谷の血迷った行動に走らせてしまった。そして凝視しているうちに心臓が徐々に早く強く鼓動を刻み、血流の流れが異常に早くなる。そのせいで正常の思考回路ができなくなっていった。

 

(い、今なら……出来、るか……)

 

 横谷は腕を伸ばして、一線を越えようとしていた。この童貞に今ここで止められる奴は残念ながらいない。

 徐々に手が胸のほうに近づいて、抑えていた息も心臓の鼓動に押し出される形で漏らしていた。

 

(あと……あとすこ――)

「なにやってるの?」

「――!?」

 

 臓物が口から出てきそう、という感覚はこういったものかもしれない。まるで心臓の中にあった手榴弾が爆発したかのように鼓動が大きくなる。その勢いで横谷は地面に倒れ込み、心臓の鼓動を鎮めるために深呼吸を行う。

 

「きゃはははは! 面白い動き」

 

 門前で横谷に声をかけた声の主は驚いた姿の動きに、まるで子供のようにけらけらと笑う。

 

(だ、誰だっ!?) 

 

 ある程度心臓を鎮めたところで横谷は声の主の方に振り返る。しかし再び心臓の鼓動が、今度は恐怖の感情によって強くなっていってしまう。

 

 門を本当に飛び越えて現れた少女は、金髪の髪にレミリアと同じようなピンクのナイトキャップをかぶり、ピンクのブラウスに同じ色の大きなリボンが腰に巻かれている。ブラウスの上に真っ赤なベスト、その下のフリル付きスカートも同じく真っ赤であった。

 体格もレミリアとほぼ同等か少し小さめだろうか。そして何より目に入るのは背中から生えている羽だ。レミリアや小悪魔のような悪魔羽ではなく、まるでシャンデリアパーツかのような七色の結晶のものがぶら下がった異様な羽だったのだ。

 

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「ま、まさか……フ、フ、フラン!?」

 

 向こうはまだ名乗ってはいないし、この人物を横谷が知っているはずがない。だがレミリアと同じような体格で同じようなナイトキャップをかぶり、異様ではあるが羽も生えている。これらの証拠があれば否応にもレミリアのあの妹様「フランドール・スカーレット」だとわかる。

 

「あ、私の名前知ってるんだ。お姉さまが喋ったのかな?」

 

 まるで喋る犬に語りかけるかのように、横谷を無垢な子供のそれでじっと見る。

 

「んあ。ふぁぁ〜……ん? 何かあったんですか?」

 

 異変に気づいたのかそれとも十分寝足りたのか、美鈴は目覚めて自分の足元に転がっている横谷に問いかける。

 

「あ、美鈴オハヨー。よく眠れた?」

「あっ、妹様! お、おはようございます!」

 

 美鈴はフランの存在に気づくなり、とても慌てた様子で挨拶をする。

 

「もー『フラン』って呼んでっていつも言ってるじゃん。 あとそんなに慌てなくても咲夜にもアイツにも言わないよ♪」

 

 フランはおどけた感じで口元に人差し指を当てる。しかし先程は「お姉さま」と言ったはずなのに速攻「アイツ」呼ばわりするところ、あまりレミリアのことを尊敬しているわけではないようだ。

 

「すみません、ありがとうございます。あの……フラン様がなぜここに?」

 

 美鈴は頭を下げて謝罪と感謝したあと、フランがなぜここにいるか尋ねる。美鈴自身もフランの姿を目にするのは久しぶりで、外に出てくることはとても珍しいからだ。

 

「この人が私の部屋のドアまで朝食を運んできたから、どんな人か気になって付いて来たの」

 

 珍しく外へ出てきた理由は好奇心が原動力のようだ。フランは横谷に指差してそんな理由を述べる。

 

「で、聞きたかったんだけど、何であの時逃げたの?」

 

 今度はフランが横谷に対してあの時の行動に尋ねてきた。

 

「え、それは……」

 

 横谷は言葉につまった。非常に尋ねられたくない質問であったからだ。本人に目の前で「妹様がとても危ない人物だからと聞かされたから」などと本音を言ってしまったら、自分どころか情報源の小悪魔も危ない目に合うかもしれないと考える。

 幼い心で情緒不安定の人物にそんな事言ったらプラスの方向に向かうわけがない。むしろマイナス方向しか事が進まない。

 

「あの、ええと、お、俺は暗くて狭い廊下の、そこにある地下部屋が怖いんだ!」

 

 横谷はとっさに嘘の理由を供述する。動揺しながら、やや限定的に言っているため怪しまれそうだが、今の横谷にはなりふり構ってられなかった。

 

「? ふぅん、そうなんだ」

 

 さすがの怪しい動揺ぶりに疑問を持ったが、フランは詮索せずに納得した。横谷はほっと胸をなで下ろす。

 

「ねぇ、二人ともいま暇? どっか遊びにいかない?」

 

 唐突にフランは二人の門番を遊びに誘うが、いくら妹様の誘いとはいえ仕事を放り出すわけにもいかない。

 

「途中で仕事を抜けて遊びに行ったら咲夜さんにまた怒られてしまいますよ……」

「俺らより、レミリアお嬢様に遊んでもらったらいいと思うんだけど……」

「やだっ、どうせ『あっち行って一人で遊んでなさい』って言うに決まってるもん」

 

 レミリアの真似をしながらフランはレミリアのところへ行くのを拒む。

 

「それに、咲夜とか他は忙しいから遊び相手は美鈴ぐらいしかいないし」

 

 今度はやや暗い顔になりながら喋る。聞く分には、まるで美鈴はいつも暇しているようにも聞こえたが、来客も侵入者も来なければただ突っ立っているだけの仕事なので、他の仕事と比べれば休暇の時間が多くなる。美鈴は門番の他に庭師の仕事もあるが、それでも時間の余裕はできる。

 自ずと構ってくれる人物は美鈴に限られる。その本人も一度断りはするがフランの執拗なワガママと、来客も来ないだろうから少しだけならという気の許しに、結局付き合ってしまう。その都度咲夜に怒られているが。

 

「それに歓迎という意味で遊びながらあなたのこと知りたいし、そういえば名前なんて言うの?」

 

 遊ぶ理由のついでに名前を尋ねるフラン。歓迎せずに名前どころか、存在も知らないままでいてほしかった、と横谷は思った。

 

「お、俺は横谷優。只の外来人です」

 

 横谷は口数少なに自己紹介をする。そして終わったあとすぐにフランはにっこりと笑い、湖に沿うように作られた道の上を飛んで遠くへ行ってしまう。

 

「じゃ、早速行こう! 早く! めーりん! スーちゃん!」

「あ、ちょっと待ってくださいよー! 早く行きましょう優さん!」

「え、俺もかい!? つか、スーちゃんて俺のこと!?」

 

 二人は少しずつ曇りがかった空へ飛んでいったフランを追うため走る。

 

 

「あの、お嬢様。三人ともどこかへ行ってしまったのですが……」

「…………」

 

 その言葉に呆れて物言えぬレミリアであった。

 

説明
◆この作品は東方projectの二次創作です。嫌悪感を抱かれる方は速やかにブラウザの「戻る」などで避難してください。
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東方 幻想入り オリキャラ 紅魔館 

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