天の迷い子 第十八話
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Side 公孫賛

 

「ふわぁぁあああああ、ふひゅ。ねむ。」

 

盗賊討伐が終わり、城に戻ってから五日、私はたまりにたまった政務を片付ける為に皆が登城する一刻ちょっと前から机に向かっている。

部下達からは、無理せず休むように言われているが、言い方は酷いとはお思うが、全権を任せられるだけの優秀な人間がいないんだ。

多少の眠気は仕方ない。

 

だが、そんな私より早くに起きている様な馬鹿もいる。

 

「……996!997!998!999!1000!!…っぷふう!」

 

すでに汗だくで、今素振りを終えたこいつだ。

 

「ん?ああ、伯珪!おはよう!今日も早いなあ!」

 

ブンブンと手を振ってこっちに声をかける。

流騎と姜維の二人には、民を救ってもらった礼として城に滞在してもらっている。

聞けば、水関で愛紗に斬られ、その傷も治りきっていないらしい。

なのに二百人以上の盗賊団に戦いを挑んだのかと呆れたよ。

とにかく怪我が治るまでの間、ここで療養してもらうことにした。

しかし、こいつは毎日毎日夜明けと共に起き出しては庭で鍛錬をする。

体が鈍らない為だと言うがそんな範囲はとっくに超えてると思う。

だって準備運動に剣の九つの基本の型を各千回ずつなんておかしいだろ?

 

「…おまえなあ。まだ怪我も治っていないんだから無茶すんなよ。」

「いや、でも体が鈍ったら困るし、ただでさえ弱いのにこれ以上皆に差をつけられたら追いつけないじゃないか。」

 

何度言ってもこの調子だ。

 

「なあ、よかったら伯珪もやらないか?」

「この間も政務が溜まってるって断ったろ?まあお前が手伝ってくれるってんなら考えなくもないけどな。」

 

こう言えば引き下がるだろうと思い、私はにやりと笑う。

 

「じゃあ決まりだな。」

「…え?」

 

流騎に引っ張られ、模造剣を持たされ、対峙する。

 

「え?」

「そんじゃ、行くぞ!」

 

流騎が切り込んでくる。

いや、ちょっと待て、まだやるとは一言も。

しかし、流騎は容赦なく攻めてくる。

辛うじて防ぐが、勢いで圧されている。

ようやく気持ちを切り替えて攻めに転じようとするが、既に後手に回っていたため押し切られる形で一本取られてしまった。

 

「ふう。お〜い伯珪、練習だからって気を抜いてんなよ。怪我しても知らないぞ?」

 

頭の上で寸止めをしていた剣を引きながら流騎は言う。

まあたまには真剣に鍛錬をするのもいいかもな。

 

「じゃあここからは本気で行くぞ!」

「望む所だ!」

 

大地を踏みしめ、力を籠め、私は駆けた。

 

 

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「はあっ!はあっ!はあっ!はあっ!ちょ、ちょっと休憩にしよう!というか、そろそろ政務を始めないと早起きした意味が無くなる!」

「はっ!!はっ!!ひぃっ!!はひっ!!じゃあ、軽く、汗、流したら、手伝いに、行く、から、はふっ!しかし、三十戦、三勝、二十七敗ってのは、情けないな!正直、もうちょっと、やれる、つもりだった、のに!」

「ふぅ〜〜〜。まあ、一応私も一軍を率いる将だからな。そうそう負けてはやれないさ。というか、本当に手伝ってくれるのか?むしろ手伝えるのか?色んな意味で。」

「はあっ!はあっ!大丈夫、だって!少し、休憩すれば、落ち着くから!それに、政務の、手伝いは、洛陽にいた時から、やってたから、少しくらいなら、役に立てる、はずだ!」

 

息を整えつつも流騎の話を聞いていくと、どうやら洛陽でも政務の手伝いをしていて、しかもその基礎知識を教えたのは董卓軍筆頭軍師である賈駆だという。

少なくとも読み書き計算は習得しているという流騎の実力を見る意味も兼ねて、簡単な経理の仕事からやらせてみようと思った。

着替えるために流騎は部屋に戻って行った。

 

「…でも、最初の一本は仕方ないとは言え、まさか最後に続けて二本も取られるとはなあ。」

「まあ体力だけはあるッスからねえ。」

「みたいだな………って、うわっ!!姜維!?いつからそこに!?」

「ついさっきからッスよ?最後の四本あたりからッス。」

「…声くらいかけろよ。」

「面倒だったんでついッス。まあ最後の二本は体力ってより気合と根性でむしり取ったって感じッスけどねえ。」

 

ああ、確かに。

何というか、おかしな奴だ。北郷とは別の意味で。

鍛錬の仕合で、あそこまで本気で勝ちに来る奴もなかなかいないだろ。

負けたら本気で悔しがるし、勝ったら本気で喜ぶ。

何でも本気だからついついこっちもムキになってしまった。

ま、私に負け越してるようじゃまだまだ全然だけどな。

って、自分で言っててへこんできた。

 

にしても、なんであんな奴が戦いに身を置く気になったんだろうな?

 

 

盗賊共を捕縛した日の夜、何か異常は無いかと町を歩いていると、見覚えのある後姿を見つけた。

もしかして、何か良からぬ事を起こす輩がまだ紛れ込んでいるのかと思い、後をつけた。

やがて辿り着いたのは、戦いで命を落とした者達の墓だった。

そいつは墓の前に蹲り、何かを呟いていた。

聞き耳を立てていると、風に乗って小さく声が聞こえてきた。

 

「すまない。本当に、本当にすまない………!」

 

謝罪の言葉だった。

死なせてしまって、殺させてしまって、そして、殺してしまってすまない、と。

今まで月にかかっていた雲が晴れ、月の明かりが地に射す。

その光の中、剣を抜き、何度も何度も流騎は剣を振るう。

 

あいつは剣を振るいながら涙を流していた。

自分は弱いと嘆きながら。

強くなりたいと歯を食いしばりながら。

 

それを見ていて私は、そっとしておくべきだと思ってすぐに踵を返した。

その後、ふとあの言葉を思い出した。

死なせてしまって、殺させてしまって、というのはあそこに眠る民に対しての言葉だろう。

殺してしまって、というのは、盗賊達に対する言葉だと思える。

あんな獣以下の存在に堕ちた奴らに謝罪なんて必要無いと私は思う。

 

「………なあ、姜維。どう思う?」

「ああ、見たんスね。あれは、確かに敵への謝罪も入ってるッス。流騎にとってはどんな奴でも人間で、敵だから、悪人だから仕方ない事だっていうふうに割り切れないんスよ。てか、割り切りたくないらしいッス。そう思ってないと、命ってものを軽く考えてしまいそうで怖いんだって言ってたッス。流騎に限ってそんな事にはならないと思うッスから、考えすぎだって言ったんスけどね。」

 

私は絶句した。

つまり敵も味方も、全ての人の生死を受け止め、背負おうとしているって事だろ?

それを少なくとも今まで続けてきたって事だろ?

いつか潰れてしまうんじゃないか?

 

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「そろそろ執務室に行った方がいいんじゃないッスか?流騎の準備は本当に早いッスよ?」

 

考えていたら結構時間が経っていたらしい。

思考を中断して、姜維に別れを告げ、執務室に向かう。

姜維の言った通り、既に流騎は執務室の前で待っていた。

 

「すまん、待たせたみたいだな。」

「いや、待ったって程じゃないから気にしないでくれ。」

「そうか、じゃあ早速始めるか。」

 

二人して机に向かい、カリカリと筆を動かす。

時折流騎から質問を受けるけど、それ以外は無駄な会話は一切無い。

 

「なあ。」

 

流騎が声をかけてきた。

 

「ん?なんだ?分からない事でもあったか?」

「あのさ、今見てて思ったんだけど、軍の予算とかはともかくこんなちょっとした城の内装の修理費とか、侍女さんの給金の試算まで伯珪の所に回ってくるのか?」

「………人手不足なんだ、察してくれ。」

「いくらなんでも足りてなさすぎるだろ!?こんなちっちゃい案件までお前がやってたらそりゃ終わらんわ!!伯珪ももっと他の人に回すようにしろよ!何でもかんでもやりすぎだって!」

「いや、でもな、これでも今まできちんと回せてるんだしさ…。」

 

はぁ〜〜〜、と流騎は重いため息を吐く。

まるで、何言ってんだと言わんばかりに。

 

「何言ってんだよ。」

 

本当に言われた。

 

「こんな何でもかんでも伯珪がやる様な状況で、もしお前が倒れたりしたらそれこそ政務が滞って国が立ち行かなくなるだろ?そうなった時、迷惑をこうむるのはここの住民なんだぞ?」

 

ぐぐっ、と真顔で詰め寄られる。

 

「うぅ…。わかったよ、お前の言うとおりにするよ。」

「よろしい。人に仕事を割り振るのが苦手なのはわかるけど、抱え込みすぎるのは悪い癖だぞ?」

「うぐっ!」

「それに、聞いた話だと見込みのありそうな人間を中央や、それに近い所にいる名家に仕官できるように取り計らってるらしいな?」

「優秀な人間がこんな田舎で燻ってるのは可哀想だろ?私じゃその才能を上手く使ってやれないしその方がいいと思うんだが。」

「ほんっとお人好しだよな伯珪は。ま、そうじゃなきゃあんなに町の人達に好かれないか。」

 

私を横目で見ながらクスリと笑い、そう流騎は言う。

 

「やめてくれ、こっ恥ずかしいじゃないか。」

 

カリカリと私は頬をかく。

 

「ははは、照れ屋だなぁ。…よし、こんなもんか。伯珪の判断が絶対必要な案件以外は他に回してもらえるように言っとくから、許可よろしく。」

 

バタバタと部屋を出ていく流騎。

何も走って行かなくても良かったのにな。

カシャリと流騎がまとめた竹簡を手に取り、広げてみた。

 

「へえ、案外綺麗にまとめてあるじゃないか。見やすくて分かりやすいし、政務の手伝いをやってたって言うのも嘘じゃなかったんだな。」

 

私はかなりの数の書簡が減った机に向かい、政務の続きを始めた。

この調子なら夕方には終わるだろうから、流騎と姜維に夕食でも御馳走してやろうか。

少し頬を緩め、そのまま文字の海へと沈んでいった。

 

 

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Side 月

 

朝、私は中庭で風に当たりながらぼんやりと空を見ていた。

 

「…あ、大きな鳥。」

 

とっても大きな鳥が空を気持ちよさそうに舞っている。

………少し大きすぎる様な。

それにどことなく見覚えが。

 

「へう!?りゅ、流騎さん!?」

 

見覚えがあるはずだ、空を飛んでいたのは流騎さんだった。

 

「……ぁぁああああああああ!!!!」

 

ぼすっ!という音と共に積み上げて山になっていた藁に頭から突き刺さった。

山のてっぺんから足だけを出し、ぴくぴく震えている。

 

「へうぅぅ!だ、大丈夫ですか!?流騎さん!?」

 

慌てて駆け寄ろうとすると、バタバタと足を動かして流騎さんはもがきだした。

その光景が少し怖くて引いてしまったのは内緒にしておこう。

 

「ぶはぁっ!!ぺっ!ぺっ!危なく死ぬところだった!!恋の奴遠慮無しに吹っ飛ばしてくれたなぁ、ったく。」

 

ぼふわさぁっ!!と勢いよく起き上がった流騎さんは相変わらずぼろぼろになっていた。

 

「ふわぁああ。おはよ、月。流騎、あんたまた飛ばされたの?」

「おお、三人ともお早う。ほう、この距離はまた新記録ではないか?」

「にゃははは!惜しかったな、流騎!一合だけは何とかかんとかいなせたのに二合目で新記録樹立かぁ!明日はあの草むらまで飛んでみいひん?」

 

誰一人として気にした様子もない。

流騎さんが朝の鍛錬で恋さんに飛ばされるのは、もう朝の恒例行事と言っていいくらいになっている。

 

「……静護、大丈夫?」

 

とてとてと駆け寄ってきた恋さんが、こてりと首をかしげて流騎さんに手を差し伸べる。

 

「全く、流騎は軟弱ですのー。こんなところまで飛ばされるなんてお前の体はきっと綿毛の様に軽いのです。」

「…加減を間違えた。でもちょっとずつだけど、流騎、良くなってる。」

「ははは、ありがとう恋。ぃしょっと!今度は飛ばされない様に頑張るよ。でもそろそろ朝飯の時間だよな。皆行こうぜ。」

 

恋さんの手を取り起き上がって歩き出す流騎さん。

その背を追いかけながら、以前から考えていた事を頼んでみることにした。

 

「あの、流騎さん。」

「ん?どうした、仲頴?」

「えっと、良かったら私に武術を教えて下さい。」

 

私は勢いよく頭を下げる。

 

「ちょっ、頭上げろって!てかなんで急に武術なんて?」

「流騎さんは恋さんたちに武を、詠ちゃん達に文を教わってますよね?流騎さんはどんどん先に進んでいるのに、私は毎日同じことを続けているだけ。もちろん洛陽の街を良くしていくのにはやりがいも誇りも持っています。もっと私自身が成長しなきゃいけないと思うんです。」

「だから、その一歩として武術を習いたいって事か。」

「はい。」

 

流騎さんに置いて行かれたくないから。

 

「わかった。俺に教えられる事なんてたかが知れてるけど、出来る限り協力するよ。ただ今は政務の方がバタついてるからもう少し落ち着いてからな。」

 

そう言って流騎さんは私の頭をくしゃりと撫でてくれた。

少しごつごつとしていて、でも暖かい手が髪と一緒に心も解してくれる様な不思議な感覚。

 

「あ〜〜〜!!あんた月に何やってるのよ!!」

「おっ!ええなあ、月っち!」

「む、今武という言葉が聞こえた気がしたが…。」

「華雄はそればっかりなのです。」

「………恋も。」

「頭撫でただけだろが!遼姉は煽んないでくれ!恋、後で撫でてやるから!公台は無視か、こんにゃろう!雄姉は………いつも通りか。」

 

賑やかに騒ぎながら廊下を歩く。

くすくすと笑いながら。

 

 

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ぱちりと寝台の上で目を覚ました。

 

ふふ、楽しかった夢を見られたおかげで今日は気持ちよく過ごせそう。

寝台から降り、身支度を整える。

今私達は劉備さんと北郷さんの所にお世話になっている。

立場としては北郷さん付の侍女という扱い。

するりと支給された服に袖を通す。

めいど服と言うらしいそれは可愛らしい意匠とは裏腹に、丈夫でとても動きやすい作りになっている。

北郷さんは可愛い意匠を考えるのが得意な様で、時々町の服屋さんと新しい意匠について話し合っている。

詠ちゃんの着ているみにすかーとも可愛かったなあ。

詠ちゃんは丈が短いのを気にしていたけど、活発な詠ちゃんには似合っていると思う。

 

着替えを終え、朝の掃除、洗濯、庭の手入れなどを他の侍女さん達とこなしていく。

この城にいる人達は劉備さんと北郷さんの人柄のおかげかとても優しい人達ばかり。

よそ者の私達を快く迎えてくれて、丁寧に仕事を教えてくれた。

昼食を済ませ、休憩をとっていると、酒瓶を肩にかけ、にこにこ笑顔で東屋へ向かう霞さんを見つけた。

 

「霞さ〜ん!!」

 

大きな声を上げて霞さんに手を振る。

 

「ふんふん♪ん?お、月っちやんか、なんや休憩中か?」

「はい。あの、霞さんに折り入ってお願いがあるんです。」

「月っちからお願いて珍しいな。ええよ、お姉さんにどーんと任しとき!」

 

ドン、と胸を叩いてにんまりと笑う霞さん。

 

「実は………。」

 

 

「ほ〜う、うちに武術を習いたいっちゅうんやな?」

「はい。もう弱さを逃げ道にしたくないんです。」

「月は戦いは嫌いやと思てたけどな。」

「…嫌いです。でも私達が立ってるこの国は、そんな戦いの末に死んでいった人達の魂の上に立っているんです。戦いを嫌う心は必要だけど、否定しちゃいけないと思うから。何も出来ない事を言い訳にしない様に強くなりたいんです。」

 

霞さんが私の顔をじっと見る。

私は決して目を逸らさない様に、力を籠めて見返した。

 

「…ええ眼や。詠〜〜!!っちゅう事やけど、どないする!?」

「へうっ!!?」

 

霞さんが後ろの壁に向かって叫ぶと、その影から詠ちゃんが出てきた。

 

「ごめん月。最近月が何か考え事してるようだったから気になって。でも聞かせて月。武を修めるって事は場合によっては人の命を奪うって事なのよ?月にその覚悟はある?」

「…詠ちゃん、私は直接手を下してないとはいえ、たくさんの兵隊さん達に人を殺す命令をしてきたんだよ?もちろん直接人を殺すのとは違うことはわかってる。でも少なくとも覚悟はしてきたつもりだよ?それでも足りないなら、いくらでも覚悟しなおすつもり。それが強さだと思うから。」

「………そう。わかったわ、月。それが分かってるなら僕は何も言わない。思うとおりにするといいわ。でも、辛い時、苦しい時は誰でもいいから相談する事。約束して。」

「うん、詠ちゃん、いつもありがとうね。詠ちゃんがいてくれるから、私は真っ直ぐ前を向いていられるんだって思うよ。」

 

そっと詠ちゃんを抱きしめた。

詠ちゃんも私の背中に手をまわしてくれた。

優しく、優しく。

 

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Side 流騎

 

深い闇の中、一つの影が現れる。

何度対峙しただろうか。

何度打ち負かされ、何度斬り倒されただろうか。

 

圧倒的な力。

絶望すら覚えるほどの威圧感。

あれは化け物だ。

ただの想像の中でも逃げ出したくなるような。

しかし、あれがこの国の武の頂。

恋と並び立つ、いや、恐らくそれ以上の。

 

想像の中で俺はあの男と再び対峙する。

 

刀を振り上げた瞬間首を捩じ切られた。

足に力を込めた途端に腹を蹴り破られた。

どんな動きにも対応できるように相手を見据えていると、反応すら出来ない速度で頭蓋を殴り潰された。

 

何をやっても通用しない。

剣を抜かせる事も出来ない。

 

意識が闇に溶けて………。

 

 

「………っは!!?」

 

ぼたぼたと汗があごを伝って垂れている。

あぶねぇ、また意識を飛ばすところだった。

 

毎日一日の終わりにやるイメージトレーニング。

一昨日は雄姉。

昨日は公明。

今日はあいつ。

 

「あれは別格だな。どれだけ都合よくイメージしようとしてもそのイメージすら湧いてこない。そんな人間、師匠と恋くらいしかいなかったのに、それ以上に圧倒的なんてな。」

 

今までイメージトレーニングをやってきて、何度か最強の自分をイメージして強敵を倒すって妄想をやってみたことがあった。

雄姉や遼姉を含め、他の人なら余裕とはいかないまでも、勝つイメージは出来た。

でも、今挙げた三人はそれでも勝つ事が出来ない人達だ。

師匠には何をやっても流され、恋には力で潰された。

そして、この間の男にはそもそも相手にすらならなかった。

氣当たりだけで負けを認めてしまったらしい。

 

「…くそっ!負けるか!目標は高く!あの三人にいつか勝つ!!」

 

無謀かもしれないけど、あの偉大な先生も言っていた!

諦めたらそこで試合終了だって!

つまり、諦めなければ終わりはないんだ!!

 

「おぉっし!やってやる!!!」

「うるさいッスよ!!さっさと寝ろッス!!」

 

……怒られたので寝ることにしよう。

…………お休みなさい。

 

説明
どうも、へたれど素人です。
今回も自己満駄文を投稿させて頂きました。
誰かの暇つぶしにでもなれば幸いです。
なんだこれつまんねえと思った方は戻るをクリックして忘れてやってください。
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