真恋姫†夢想 弓史に一生 第八章 第二話 |
〜聖side〜
「貴様、何故兵数を把握している?」
口調は穏やかだが、その言葉の裏には警戒と威嚇が見える。
まぁ、普通はそうなるよな…。
「把握はしてないよ…。ただ、見た感じの人数を言っただけ。」
「見た感じ……だと……??」
青髪の女性の表情が曇る。
「あぁ、言葉の通りだ…。」
「馬鹿にするな。お前達はこの街に一歩も踏み入れていないでは無いか。それなのに、この街にいる兵数全部を把握しているはずが無い。 ……細作を使って情報でも手に入れたか? だとしたら、何故だ?」
「……信じる気無しか…。まぁ、良いけど…。 とりあえず、俺は細作を使っても無ければ、使って得たい情報があるわけでもない。」
「では、何しに来たと言うのだ?」
青髪の女性と緑髪の少女はそれぞれ武器を構えようとする。
おお、おお…。殺気立っちゃって…。
「俺の用事は一つ…。 ……手伝いは要らないかい?」
「手伝いだと…?」
武器を構える手に力が入っているように見える。
「あぁ。黄巾賊を討伐するのに、兵は欲しくないかい? って聞いてんのさ。」
「……お前達四人の力か??」
おっ、話に乗ってきたな…。
「いやっ、実は旅の者ってのは仮の姿でな…。俺たちは義勇軍なのさ。」
俺の発言にその場にいた全員が驚く。
「聖!! 俺たちは義勇軍z『一刀…。』……。」
目で一刀を黙らせて、言葉を紡ぐ。
「ここから少し行った先で、二千人の兵士が待機している。俺たちの協力が必要なら、そう言ってくれ。」
青髪の女性は考え込むような姿勢をして黙り込んだ…。
だが、彼女達は今は少しでも兵が欲しいはず…。ならば、この話に乗らないわけが無い…。
「……一つ聞くが…。」
「何だ?」
「……お前達の利は何だ? この戦いに参加したところでお前達に利は無いだろう?」
「……一つは名声…。もう一つは訓練…かな。」
「訓練……?」
「うちの兵士たちも新参者ばっかでね…。経験をつましてやりたい、ただそれだけだよ。」
彼女は俺の目をじっと見る。まるで、俺の目から心の奥を見透かすかのように…。
しばらくして、彼女は武器の構えを取ると、
「手荒な真似をしてすまない。力を貸してくれないか?」
と言ってきた。
「交渉成立だな。こっちこそよろしく頼むよ。」
こうして、俺たちは黄巾賊と戦うために、その一団と合流することになった。
「って訳だから、一刀!!」
「……何?」
「兵達の移動頼んだ!!」
「……分かったよ。」
一刀は嫌そうな顔をしながらも、馬を反して兵士たちの元へ向かった。
あれっ、そういやこの人たちの名前を聞いてないな…。
「折角一緒に戦うんだ……名前を教えてもらえないか?」
すると、青髪の女性は小さく微笑んで。
「人に名を尋ねる時は、まず自分からと言わないか?」
と言うではないか……。
ううむ…。先ほどから思っていたが、この女性頭が良い…。
教養の高さがその言葉遣いから現れている点、きっと名家の人なのではないだろうか…。
「悪かった…。 俺は徳種って言うんだ。」
俺がそう告げると、
「夏侯淵だ。」
「典韋と言います。」
そう言って手を差し出す二人。それに答えるように、
「夏侯淵さんに典韋ちゃんか…。少しの間よろしくな。」
俺も手を出して、握手をするのだった。
〜夏侯淵side〜
流琉が奇妙な一団と言った四人は、確かに奇妙な連中だった。
特にその代表らしい男…。
我が軍の数など知らぬはずなのに、大体の兵数を当て、しかも見たという…。
初めは、黄巾賊の一味で、細作を使って情報を得たのか疑ったが、確かにこいつの言うとおり、使ってまで得たい情報など無いはずだ…。
それに、黄巾賊はそこまでのことはしない…。
ならば、こいつは何者…と考えたところでいきなりの協力宣言…。
急な展開の変化の中で、流琉を見ると目が回っている…。
確かに、今は兵数が必要な状況だ…。だが、果たして信じて良いものかどうか…。
その真意を見抜くために、その男の目を覗いてみた。
結果から言えば、嘘を言うような目ではなかった。多分信用しても問題は無い様に思う…。
その後、私とその男、徳種は協力することを誓い、ここに共同戦線が出来るのであった。
「さて、協力するに当たって…先ほどの質問に答えてもらおうか…。」
「質問??」
「あぁ。何故、この町の兵数を知っている?」
初めから気になっていた質問だが、今なら答えてくれる様な気がしてぶつけてみた。
「あんちゃん!! ウチも気になる!! 何で〜??」
「……私も…気になる…。」
私の質問に賛同するように、徳種の後ろに控えていた二人の少女が質問する。
「あぁ〜まぁ……良いか…。協力者にはそれ相応の誠意を見せないとね…。」
そう言って、徳種は一息ついた後話し出した。
「この街の中に…女の子が三人居るね。銀髪の娘と紫の髪の娘と橙黄色の髪の娘。 ……どうやら、何か話してるみたいだけど…そこまでは分からないな…。」
「「っ!!??」」
私と流流は同時に驚いた。
何故なら、今私たちが居るこの位置からは、彼女達三人の姿は見えていないのだ…。それを、彼は言い当てたのだ。特徴的な髪の色を含めて…。やはり、細作か何かを使って事前に情報を……??
「おやっ? 銀髪の髪の娘がこっちに向かってくるみたいだね…。」
「何…?」
「夏侯淵様!! どうかなさいましたか?」
「「「「!!!???」」」」
その瞬間、その場に居た者は戦慄した。
徳種が言うや否や、楽進が、私が帰ってこないのを不審に思い呼びに来た。
もし、細作の情報ならばどこかで伝える動きがあったはず…。しかし、その様な動きも無く、彼はこの出来事を言い当てたのだ…。
「そんな馬鹿な…。」
「??」
頭の上にはてなを浮かべている楽進を尻目に、残りのメンバーは驚愕の顔つきになっている。
「さて、これで証明になったかな? 俺は、空からこの大地を見ることが出来るのさ。衛星視点と俺は呼んでる。この能力で、兵の数も文字通り『見えた』って訳!!」
事も無げに話す徳種だったが、私達に与えた衝撃は凄まじいものだった…。
そんな能力があると言うなら、それこそ城壁など意味をなさない。加えて、攻城戦等になった時、その力は天下無双を誇る。
何故なら、見えているのだから…。
しかし、それを証明するに十分な証拠を徳種は私達に見せてきた。ならば、信じるほかに無い…。
「……成程…。怖ろしい能力を持っているのだな…。」
「いえいえ…見えているだけですから…。」
徳種はそう言ってのけるが、それがどれほど凄いことか……あいつは分かっていないのだろう…。果たして、こいつは何処までの力を持っているのか…。
「じゃあ、俺からも質問。黄巾賊の兵数は?」
今度は向こうから質問が来た。協力することになったのだから、情報をくれと言わんばかりに…。
「あぁ、そうだったな…。物見の報告では賊の数は一万。明日の昼にはここにやってくるだろう…。」
とりあえず、徳種のことは後にするとして、今は目前の敵について考える。
兵数に関しては徳種の協力により五千まで増やすことが出来たが、それでもまだ相手の半数しかいない…。
この兵数差でまともにあたれば、幾らこちらに正規軍が含まれていようと厳しい戦いになるだろう。
さらに、こちらには二千人の義勇軍の兵が居る。
徳種は訓練と言ったが、とてもじゃないがそんな状況にはならない。下手をすれば、二千人の義勇軍は全滅してもおかしくは無いのだ…。
流石に守りながら相手するわけにもいかない兵数差なので、我が軍は我が軍、徳種は徳種でやってもらうことにはなるが…まぁ、やつらも乱世を知る機会にはなるだろう。
また、今回で生き残った兵士はそれ相応の実力がある者だ。
その者たちを発掘出来るのであれば、少々の犠牲は仕方ない…。そう割り切るのも、私達将の勤めだ…。
「明日の昼までか……。あんまり時間は無いんだな。」
「あぁ。」
「門の補強やら修復をしてるってことは……救援が駆けつけてくれてるって事か??」
ほぅ……。
先ほどの問答の時も思ったが、こいつ中々頭の回転がはやい…。
「あぁ、そうだ。明後日まで守りきれば、明々後日の朝には応援がたどり着く事になっている。」
「成程…じゃあ、そこまで持ちこたえれば勝ちと…。」
「そう言うことになるな。」
「……俺たちは結局どうすりゃ良いんだい??」
「徳種たちには西門と南門を守って欲しい。東門は見ての通りボロボロだ…。義勇軍では厳しいだろう。また、北門へは応援が来ることになっているから、お前達では解るまい…。」
「そうだな。夏侯淵さんの言う通りだろう。じゃあ、俺たちはその二つの門を抜かせなけりゃ良いんだな?」
「あぁ、期待してるぞ?」
「ふ〜ん…。じゃあ、その期待に答えないとね…。」
そう言って、微かに徳種は笑うのだった。
〜聖side〜
しばらくして、一刀が兵を連れてやってきた。
これで将全員が揃ったので、まずはお互いに挨拶をして交流を深めておいた。
その後は先ほど決まったことを全軍に報告し、俺たちは町の南側に天幕を作って拠点とした。
その夜、俺の天幕では俺の軍だけでの軍議が行われていた。
「さて、兵数差は歴然。物見の報告通りでも、俺らの二倍近い兵数が攻めてくるわけだが…さて、どうすれば良いと思う?」
「門を固めて、時間まで耐えるしかないっしょ!!」
「そいしかなかっちゃ…。下手に突っ込んだところで負けるだけばい。」
勇と音流は篭城を選ぶか…。
まぁ、それも一つの手ではあるな…。
「いえ、それでは駄目なのです!!」
「えっ!? 何処が駄目なのさ、橙里?」
一刀が疑問を口にすると、勝ち誇ったかのようにその豊満な胸を張って橙里が答える。
「ふふん♪ 頭の悪い一刀さんに教えてあげるのですよ。 良いですか? 今回の遠征の目的は何か…それは、私たちの名声を勝ち取ることなのです。この戦いで守り抜くことは簡単なのです。でもその後で、援軍の人たちと一緒に倒したところで名声なんて少しなのです。だから、援軍が来る前にこの戦を終わらせるくらいの活躍を見せて、我が軍の強さを世に示し、名声を手にすべきなのです!!」
「それに……耐えるにしても…私たちが守るのは私たちの門だけ…。他の門がどうなるかは……解らないですから…。」
「………さっさとやっつけて……他の所を助ける……それでもっと……名声高まる……。」
残りの三人は流石に軍師達だけあって、この戦いの意味を分かっている。だが、策はあるのかな??
「俺も概ねは軍師三人と同じ意見だ。それに、うちの部隊は守ってばかりなのは好きじゃないからな…。だが、相手とぶつかるにしても兵数差がある。今後のことを考えると、兵の減少は最小限に抑えたい。さて、ここら辺をどうするのか…是非とも聞かせてくれ。」
すると、まずは麗紗が話し始める。
「では……南門と西門の近くには林がそれぞれあって……その間を道が通っています。恐らく…その道を通って敵は来るでしょうから……林の中に兵を忍ばせて奇襲するのが良いかと…。」
「具体的には??」
「兵500でそれぞれの門を守りつつ…残り1000人を二つの部隊に分けて…敵の背後から突撃……でどうでしょうか??」
「つまり挟撃か…。悪くは無いが、敵が奇襲に気付いて逃げ出してしまったら意味が無いぞ…。今回の戦はさっき言ったとおり武勲をあげなきゃならん。その為には圧倒的な勝利が大切だ。多くの賊を倒し、残りを捕虜にして一兵たりとも逃がさないような……そんな勝利がな…。」
「…あうぁぅ…。」
麗紗が口を濁すと、続いて蛍が提案してくる。
「………じゃあ…林の伏兵……金物とか大音量で鳴らす。 ……兵数を多く見せて……相手の戦意を削ぐ。」
「悪くないな。それは使えると思うが、それだけでは大きな効果が期待できないかもしれない。」
「……むぅ…。」
蛍のその言葉を聞き、橙里が発言する。
「では、西門で兵数を多く見せる手段を使って敵を南門へ集めるのです。集まった敵兵はきっとごちゃごちゃとしていて、統率など取れていないのです。そこを林に伏せておいた兵と南門の兵、それに敵兵を追ってきた西門の兵で包囲、殲滅するのです。これならば敵兵への被害は大きく、またこちらの被害は少ない状態となるはずなのです。」
「良い作戦だ、橙里。よし、これで行くか!!」
俺は橙里の頭を撫でてやりながら皆に言ったのだが…。
「えへへ…先生に褒められたのです。」
撫でられている橙里は、くすぐったい様な嬉しいようなそんな表情。
「良いな…橙里さん…。」
「あんちゃん〜ウチも〜…。」
「あ………あたいも………( ///)」
「………私も…。」
残りの四人の女の子はその光景を羨ましそうに見ていた。
「……おいおい…。俺の話をちゃんと聞いてるか??」
「「「「………いいな〜……。」」」」
「……はぁ〜〜〜……。」
こんな逆境の中、それでも普段どおりな皆に溜息をつく聖なのであった。
「俺っちはどうしたら良いんすか…。(俺の出番は…??)」
弓史に一生 第八章 第二話 紺碧の協力者 END
後書きです。
第八章第二話の投稿が終わりました。
改めて衛星視点ってエグイな〜……なんて考えたり……。
城壁の意味がなくなるって…………酷いもんです…。
しかし、最強主人公ならそれくらい当然!!
ご都合主義万歳!!!!
さて、前書きで書いたことですが…皆さんにひとつアンケートと言うほどのことではないですが聞きたいことがございます。
それと言うのも、私の作品はどうも話数がかさんでしまう事態……。
このままだととてもじゃないですが手が回らないのでこれから先、拠点になるような話などは一切カットして、物語に関係あることのみの話構成にしようかなと考えております。
もし皆さんからの要望があれば(誰々の拠点を見たい、誰と誰のこんなシーンを見たい等)書くかも知れませんが、それは番外編となると思います。
さて、長々書いておりますが結局何が言いたいかと言いますと……上記のように進めて良いですか?と言うことです……。
ただでさえ、長々とした物語になりそうな私の話ですので、ご協力願えればと思う次第です。
それでは、次回も日曜日にお会いしましょう!!!
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 あと少しで百話です。 こう考えると、一年経つのは早く、その一年で百話近くを投稿できたのが自分でも信じられないくらいです。 後書きに少し提案がありますので、ご協力いただける方はお願いします。 |
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