すみません。こいつの兄です。66 |
パソコンにメールが届いた。差出人は市瀬由利子。美沙ちゃんと真奈美さんのお母様だ。
《こんにちは、市瀬由利子です。迷惑メールじゃないよ。消さないでね。
いつも真奈美と美沙と仲良くしてくれてありがとう。あ、私にも仲良くしてくれてありがとう。とてもうれしいです。
正直、真奈美がまたあんなに人に甘えてくれるようになってくれて、ほっとしています。実は私、真奈美が小さいときに、美沙ばかりかまってしまって、あの子にはとてもひどいことをしちゃったと、後悔しているのね。真奈美の母親になりきれないうちに、美沙の母親になっちゃったのよね。
だから、今、真奈美が直人くんにベタベタ甘えているのを見て、ほっとしています。高校生の直人くんには、少しやりづらいかもしれないけれど、また真奈美とお風呂に入りに来てあげてください。
なんなら、私も一緒に入りますよ。勇気をもってやりますよ。主人にも許可もらっちゃいますよ。エサになるかどうか分からないけど、エサ撒いてみました。》
礼儀正しくて、固くなりすぎない絶妙の親しみやすい文体は、市瀬お母様の可愛らしさが表れている。パソコンのメールアドレスに届くのもお母様らしい。すっと背を伸ばして、キーボードに向かって軽やかにタイプしている姿が思い浮かぶ。美人のお母様には、やっぱり携帯メールよりもパソコンが似合う。
そして親しさのこもったメールを読んで、俺は悩む。
いいのか?
その二択が脳裏をよぎると同時に、いいわけねーだろという突っ込みも脳裏をよぎった。
いや。違うんだ。そうじゃない。エサにつられたらアウトだ。そのくらいは俺でも分かる。もちろん、お母様も水着着用だろうけど、それでもあの年齢を超越した市瀬美人遺伝子・ザ・オリジンは、高校生男子には目の毒だ。真奈美さんも美人遺伝子発現百パーセントの超絶美人なんだけど、前髪と、完全子供のしぐさで色気が隠蔽されているからまだ大丈夫だ。でも、お母様と美沙ちゃんはまずい。美沙ちゃんやお母様が水着着用とはいえ、あの狭い湯船の中で、ぎゅっ、とか押し当てられてきたら男子の男子な象徴的なシンボル的な部分がタマランチ確実である。下手をしたら爆発してしまって、人生が終わるかもしれない。
エサにつられてはいけない。
でも同時に、自分の後悔と失敗を、ほんの子供の年齢の俺に包み隠さずに明かして、悔恨の念を表した市瀬由利子さんの誠意を裏切るわけにもいかない。
でも、お嫁入り前の真奈美さんとお風呂に入るとかいいのか?いや、すでに一度入っちゃっているけど、それでも改めて、本当に倫理的に許されることなのだろうか。
美沙ちゃんにも悪い気もする。でも真奈美さんが喜んで、お母様が安心するなら、やらねばならない気もする。それで、ヤンデレ発現した美沙ちゃんが全裸でお風呂乱入のラッキースケベが発生したら、もうどうしようかなー。それは困るなー。困るなー。いやー。それは、本当に困るわー。まいるわー。
今の俺、世界で一番ウザい。死んでいい。
あ、やっぱだめ。ワルキューレお姉さん迎えに来ないでください。反省しました。
多少の混乱をきたしていた頭を少し冷やして、冷静に考えて、返事を書く。
《じゃあ、土曜日行きます》
そして、翌日土曜日。昼前に、市瀬家に行く。
「直人くん、いらっしゃい。ありがとう。やっぱり、直人くんは優しいわ」
お母様。そんな柔らかい甘えるような笑顔をしないでくれないかな。本当に困る。なんだか胸の内が、もきゅもきゅする。本当に三十代後半なのか?この人?
「まなみー。直人くんとお風呂入るでしょー」
お母様が二階に向かって声をかけると、真奈美さんがいつものジャージ姿にサメさん、カメさん、アヒルさん、イルカさんを抱えて降りてくる。先日は偶然だったが、今回ははっきり真奈美さんとお風呂に入りに来ている。なんだか、そのシチュエーションに妙な緊張感を覚える。そんな経験ないけれど、初めて彼女をラブホテルのご休憩に連れ込んだときって、こんな緊張感なんだろうと思う。この後に起きることの確実な予測に、先に照れているみたいな。
真奈美さんとお母様の顔が見れない。照れて、市瀬家の床の磨かれ具合をチェックしてしまう。
とんっ。
両手でサメ、カメ、アヒル、イルカさんを抱えた真奈美さんが、軽く体当たりしてくる。
「おふろー」
完全に子供である。安心。これなら照れない。うなずいて、お風呂場へと向かう。
脱衣場で安心じゃないことに気づいた。
真奈美さんは、いつものジャージであった。
スク水でなくて、ジャージであった。
そして、お風呂である。
「のわぁっ!ストップ!」
悲鳴を上げたのはこっちである。真奈美さんはまったく気にせず。ぽいぽいジャージを脱いで、Tシャツに手をかけたところで、頭の上に?を浮かべる。
ぶほっ。鼻血出そう。
Tシャツのすそから、色気のない真っ白なパンツが見えている。Tシャツの胸付近は、美沙ちゃんのようなDカップではないものの、ほんのりとしたふくらみに、ぽちっと盛り上がりが透けていて、Tシャツの下がただならぬ状態なのを示している。
「真奈美さん。おねがい。水着、着てきて…」
「んー。やー」
やー、じゃないよ。
「だめ。着てきて」
真奈美さんのTシャツ越しの胸やら、Tシャツのすそから覗くパンツやら脚やらをなるべく見ないようにして、そっと百八十度回転させると、背中を押して脱衣場から自室へと送っていく。
階段は大変だった。近づきすぎれば、薄着きわまった真奈美さんに触りすぎるし、離れると長い脚やら、パンツに包まれた付け根やらが目の高さに近づくし、危うくこっちがお風呂に入れない状態になるところだ。
真奈美さんは、ジャージと前髪の下は大変な美人なんだ。誰も気づいていないけれど。
「水着、着てね」
もう一度言い聞かせて、部屋の中に押し込む。ドアに背中を預けて、ほぉーっとため息をつく。
危ないところだった。真奈美さんに色気は皆無だし、異性はまったく感じないけれど、それだけにあの美人ボディをどう認識したらいいか、俺の精神と肉体が混乱を起こす。
気を静めよう。変な緊張感とさっき見た真奈美さんの姿で、混乱している。精神もだけど、肉体の方も…。このまま、真奈美さんとお風呂に入るのはまずい。
「あら?真奈美に水着着せるの?」
お母様が下から上がってきて、そうたずねる。
「あたりまえです。その…お嫁入り前の女の子ですよ」
「ってことは、直人くん、真奈美のこと女の子って思ってくれてるの?」
「え?」
不意を突かれた。
そういえば、そうだ。真奈美さんは真奈美さんで、女の子とは違う生き物なはずだ。
だったら、なんで真奈美さんが裸になりそうになって、俺は驚いたんだろう。
いや。そりゃ、女の子だって分かっているからだ。そうだろう。
お母様が、ふふっと含み笑いを漏らす。
「意地悪しちゃった。そんなこと言ったら、困らせちゃうわね」
ひどい小悪魔っぷりだ。美沙ちゃんに遺伝しているな。こういうところ。
そして、いたずらっぽい笑みを浮かべたまま、市瀬由利子さんがすすっと近づく。
「直人くんを賢者モードにして、真奈美にへんな気を起こさないようにしてあげちゃうのは、いい母親よね。でも、悪い妻だわ」
ばふっ!なに言ってんのこの人!?男子高校生の頭が沸騰するよ!
「…そして、私、今はいい母親になれる最後のチャンスかもしれないわ」
由利子さんの顔は、もう笑っていない。
その表情が一瞬で俺に伝える。真奈美さんが引きこもっていた間、この人が母親としてどれだけ重荷を背負っていたかを。この人は、いい奥さんで、いい母親だ。そして覚悟が決まっている。この心と覚悟の強さは真奈美さんに遺伝している。
この人は、やはり真奈美さんと美沙ちゃんのお母さんなんだ。
「だ、大丈夫ですよ。ま、真奈美さんに変なことしないし、真奈美さんはいくら甘えてもいいし…」
俺はぐにゃぐにゃした物言いで、なんとなくぼやかして、覚悟の決まったしっかりとしたお母様の目を見ずにつぶやくのが精一杯だ。
「ありがとう。そうそう、これを持ってきたの。入浴剤なんだけど、温泉の元。お湯が白くなっちゃうんだけど…」
そう言って、お母様が袋入りの温泉の元を渡してくれる。
背後でドアが開く。
「あら。真奈美。よかったサイズぴったりじゃない。よかった。試着させないで私が勝手に買ってきたから心配だったのよね」
振り返ると真奈美さんが、水着を着ていた。白ビキニ。下は超ローレグ。上は肩ヒモなしのタイプだ。華奢な肩が、庇護欲をかきたてる。
だから、ここでわざわざ色気出してどーするんだ。お母様、あんたも覚悟の決まったアホだろ。普通に紺色のワンピースタイプとか買っておけばいいじゃんか。
まぁ、いい。大丈夫だ。
前回も、お風呂に入っている間は、完全子供状態の真奈美さん(十八歳)に毒気を抜かれたし、今回はお湯を白くする魔法の粉もある。ちなみに真奈美さんに年齢表記が入っているのは、当局への配慮。
すぐにバスタブにダイブしようとする真奈美さんを、押しとどめて、入浴剤を投入する。手をつっこんで少しかき回すと、お湯が見事に白く濁る。よしよし。
洗い場では、真奈美さんが洗面器に張ったお湯にシャンプーを溶かして、頭を前から突っ込んでいた。
ロングヘアって、そうやって洗うの?息できてる?
そのまま洗面器ごと起き上がって、シャンプーの溶けた水を頭から、ウェストまである髪に被る。わしゃわしゃわしゃわしゃと頭を指で洗っている。
これ、絶対正しい洗い方じゃないと思う。
「ながしてー」
はいはい。
シャワーを出して、貞子みたいになった真奈美さんにじゃーっとお湯をかけてやる。うーん。あいかわらず前髪と後ろ髪の長さが同じで、前後の区別がない。
「しぼってー」
はいはい。
髪を軽くすきながら、水気を取ってやる。そういえば小学生くらいのときは、少し髪を長くしていた妹にもやってやったことがあるなと懐かしく思い出す。父と妹と三人で入ったりしてたっけ。
少し悩んで、長い髪をゆるく結んで頭の上に乗せてやる。入浴剤の入ったお湯につけるのは、髪に悪そうだ。
「あらってー」
ボディソープを渡してくる。ちょっとまて。
「そ、それは、自分でやって」
「やー。あらってー」
真奈美さんが、洗い場の床に座って駄々っ子化した。真奈美さんって、お風呂に入ると幼児化するよな。普段から、怖がりの小学生がそのまま大きくなったみたいなんだけど、お風呂は壁とドアで守られているから、怖がり成分が抜けるんだろうか。
「あらってー」
単純には、子供とお風呂に入っているみたいな描写だろう。
だが、視覚、聴覚、嗅覚全部入りの現実では違う。すらりとした身体をタイルの壁に預けたまま、髪を上に上げて、お人形さんみたいなパーフェクト顔をさらした十八歳の真奈美さんが、白ビキニでバービー人形じみたほっそりと長い脚をばたばたさせて、ボディソープを両手で差し出している。
その上での「あらってー」である。
脳裏に、市瀬お母様の『真奈美を甘やかしてやって』がリフレインする。しかし、その真奈美さんはモデルでもこんなの居ないぞという、絶妙なスレンダーボディである。
「あらってー」
で、できるか!男子高校生に、こんなものが洗えるなら世界に戦争なんかない!
「ま、真奈美さん、そ、それはだめ。ほ、ほら、真奈美さんも十八歳の女の子だから…」
「んー」
なんとか、言いくるめることに成功する。真奈美さんが、しぶしぶ自分で身体を洗い始める。俺は、家でも入るしそんなにちゃんと洗わなくてもよかろう。軽く掛け湯をして、先にバスタブにつかる。ほんのり温泉の香りがする。入浴剤ってのも、意外といいものだな。
ひう?
「ま、真奈美さん。た、タオル使わないの?」
「痛いから、やー」
まぁ、肌というのはとても弱いものだから、あまりナイロンのタオルとかで擦らないほうがいいとも聞くしな。でも、真奈美さんが全身に手で白いボディソープを塗りたくって洗っているのは、見ないでおこう。いろいろとマズい事態になりそうだ。真奈美さんが放り込んだカメさんと、アヒルさんが、目の前を泳いでいく。俺のカメさんは、自制心と本能の間で揺れている。カメさんがカメさんしたら、ピンチだ。
背後で水音がする。真奈美さんが洗い終わったらしい。湯船に入ってくる。
真奈美さんのほうに振り向いたとたんに、サメさんとイルカさんからお湯を発射される。子供だ。安心する。
反撃しようとカメさんとアヒルさんを捕まえる。
「うっ」
真奈美さんは肩ヒモのないタイプの水着着用。
お湯は白く濁っている。
真奈美さんは肩から上だけが水面の上。
つまり、真奈美さんの見えている部分に布地なし。
おお。
大発見!こうすると全裸に見える!みんなも、水着写真とかを胸の上まで隠して見るといいよ!
これは、すごい発見だよ。
「ひゃんっ」
俺は、たまらずカメさんから白く濁った熱い液体を真奈美さんの顔にぶっかけた。(注:入浴剤でお湯が白く濁っており、カメさんの形の口から水を発射できる玩具を使っています)
ひとしきり、真奈美さんときゃいきゃいお湯を掛け合って遊ぶ。真奈美さんが楽しそうだ。正直に言うと、俺も楽しい。お風呂で遊ぶのって、どうみても楽しいんだが、なんでみんな遊ばなくなっちゃうんだろう。
そこに、脱衣場の扉を開く音が聞こえた。続けざまにバスルームの扉も開かれる。
「お兄さん!?」
バスルームの入り口に立っているのは、美沙ちゃんだ。白いフリルつきのブラウスと、裾にラインの入ったプリーツスカートが可愛すぎる。
「お姉ちゃんっ!?まさかっ!?」
美沙ちゃんの可愛い目が大きく見開かれる。
そうだった。
今の真奈美さんは、水着部分が全部白いお湯の水面下で見えない。つまり、水面に出ている部分だけ見ると、俺も真奈美さんも全裸に見える。
超、ヤバい
ぴゅぅー。真奈美さんがサメさん水鉄砲から、美沙ちゃんにお湯を発射する。
「ひゃっ」
命中。そして白ブラウスがお湯で濡れる。具体的には右の胸あたり。俺の脳内HDDが無圧縮で画像保存を開始する。美沙ちゃんのDカップなピンク色が白ブラウスに透けている。うおお。脳内HDDがんばれ!ちくしょう。今日の俺、超ついてるやがるぜ。ラッキースケベの神様ありがとう!このまま、俺も美沙ちゃんに水鉄砲でお湯をかけたりしたいよ!ふんがぁーっ!
「ちょ…!お兄さんっ!?」
美沙ちゃんが、濡れたブラウスの胸を隠しながら逃げ出す。視線がバレた。バレたというレベルじゃなくて、たぶん今の俺、目からなにか出てたと思う。波動とか。そういうのが。さすがに反省した。
「お母さぁーん。お姉ちゃん、裸でお兄さんとお風呂入っているの?」
遠くから、美沙ちゃんが少し涙声で由利子さんに訴える声が聞こえてくる。美沙ちゃんはドア開けっ放しで行ってしまった。
「あらー。別にいいじゃない。お風呂くらい、二人っきりにしてあげなさいよ」
「駄目にきまってんじゃん!」
そこは、先に全裸風呂じゃないことをお母様に訂正してほしかった。美沙ちゃんの声音が涙声から、闇の声に変わりつつある。そろそろ逃げたほうがいいかな。
バタバタと音がして、今度は上半身にジャージの上を羽織った美沙ちゃんが現れる。これでは水鉄砲が効かない。というか、美沙ちゃんの右手にある包丁が気になる。瞳にハイライトもないのも気になる。
「待って待って。美沙、そういう武器は駄目よ」
背後に現れたお母様が、そっと包丁を取り上げてくれる。助かった。
「どうしても使うなら、女の武器にしておきなさい」
そう言って、美沙ちゃんのジャージを脱がすと後ろから美沙ちゃんを、けっこうな勢いで突き飛ばした。
「きゃっ」
美沙ちゃんは、二、三歩つんのめると、バスタブにダイブしてきた。派手な水しぶきを上げて、俺と真奈美さんの間に落下する。
「お母さんっ!なにすんの!?」
おおう。
目の前で、ブラウス姿の美沙ちゃんがずぶ濡れになって立ち上がっているよ。脳内HDD!
「きゃあーっ!」
美沙ちゃんがあわてて、胸の辺りに両手を組んで俺の視線から隠そうとする。でも、もう!なんか!そういう仕草までトータルでご馳走様!HDD!HDD!
「お、お兄さん!あっち向いてて!」
正気に返った美沙ちゃんが、泣きそうだ。俺も正気に返る。いかん!あまりのラッキースケベに正気を失っていた。あわてて、壁と友達になる。横で美沙ちゃんがバスタブから出るのを感じる。
「んもー。お母さん、なにすんのー」
スカートを絞っているのだろう。じゃーっと水音が聞こえる。その間、俺は壁のタイルの模様を観察する。
「あら。よかった。美沙、やっぱり直人くん相手でも恥ずかしいんじゃない。この間、裸で直人くんに迫りそうだったから大丈夫かと思ったわ」
「こ、この間は、ちょ、ちょっと頭に…血がのぼっちゃっただけだもん…そ、それより、お姉ちゃんだよ!なんで裸なの!?」
「…水着、着てる」
ちらりと横目で見ると、真奈美さんがちょっと身体を起こして水着を見せていた。
「お姉ちゃん…ずるい」
(つづく)
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妄想劇場66話目。妄想垂れ流すことに決めたら、全編サービスシーンになりました。サービスしてる相手は自分です。 最初から読まれる場合は、こちらから↓ (第一話) http://www.tinami.com/view/402411 メインは、創作漫画を描いています。コミティアで頒布してます。大体、毎回50ページ前後。コミティアにも遊びに来て、漫画のほうも読んでいただけると嬉しいです。(ステマ) |
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