英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 548
[全2ページ]
-1ページ-

〜数日後・特務支援課〜

 

「いやはや………スゲエ事件になったな。今頃、市民の大半が大騒ぎしてるんじゃねえか?」

「まあ、アルカンシェルの新作のお披露目中に市長の暗殺未遂ですから………スキャンダル、ここに極まれりといった感じですね。」

「市長に同情的な意見が多いのは不幸中の幸いだったけど……でも、結局アーネストと関係していた帝国派議員の名前は上がってないか……」

ランディとティオの話を聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた後、複雑そうな表情で考え込んだ。」

「まあ、規制されてんだろ。それに流石に、あの暗殺未遂は秘書野郎の暴走なんじゃねえのか?」

「ああ………多分ね。帝国派にとって市長を暗殺するほどのメリットなんてそれほど無いし………ただ、ルファ姉が推理したように暗殺者を”銀”に仕立てて”黒月”と関係のある共和国派への攻撃材料にする可能性はあるか。」

「なるほどねぇ……」

「でもあの秘書の人………何だか様子がおかしかったです。正気を失っているというか………歯止めが利かなくなってるというか。」

ロイドの話を聞いたランディは頷き、ティオは考え込みながら呟き

「それと身体能力が凄かったよね?」

「ええ………あれほどの身体能力、闇夜の眷属達と変わりませんよ。」

シャマーラは疑問に思った事を口にし、セティは真剣な表情で頷いた。

「ああ………それらは俺も思った。一課が取り調べをしてるらしいけど結局、どうなったんだろう?」

ティオ達の言葉に頷いたロイドが疑問を口にしたその時

「―――どうやら錯乱しちまって話せる状態じゃないらしいな。」

セルゲイの声が聞こえてき、課長室から現れたセルゲイがソファーに座っているロイド達に近づいた。

「取り調べができる精神状態ではないんですか?」

「ああ、ラチが明かないんで一旦拘置所送りにするそうだ。教会のカウンセラーかウルスラ病院の助けを借りるつもりらしいぜ。」

エリナの疑問を聞いたセルゲイは頷いて答えた。

「そうですか………」

セルゲイの話を聞いたロイドは溜息を吐いた。

「クク、しかしお前らもとんだ大金星じゃねえか?今日本部に行ったら、あのキツネが猫撫で声を出してお前らのことを誉めてたぜ。」

「ええっ!?」

「想像しにくい光景ですね………」

「つうか嬉しくも何ともない情報だな………」

セルゲイの話を聞いたロイドは驚き、ティオは呆れ、ランディは溜息を吐いた。

「キツネだけじゃなくて警察全体の話でもあるがな。ま、ルファディエルの言葉通りまんまと囮に使われた一課は複雑だろうがこれでお前らを見る目が少しは変わるのは確かだろう。素直に喜べよ。」

「そう………ですね。」

「でも、素直には喜べないよね………」

「ええ………傷は浅かったとはいえ、エリィさんのおじいさまが怪我をされたのですから………」

そしてセルゲイに言われたロイドは頷き、シャマーラは複雑そうな表情で呟き、シャマーラの言葉にエリナは静かに頷いた。

 

〜住宅街・マクダエル家〜

 

「そ、そんな………明日から復帰するなんてそんなの早すぎます………!」

一方その頃休暇をとって実家でヘンリーの看病をしていたエリィはヘンリーのある言葉を聞いて心配そうな表情でヘンリーを見つめて言った。

「なに、たかが掠り傷の上、傷自体もルファディエル警部の治癒魔術のお蔭で塞がっている。5日も休んでしまってむしろ英気が養えたくらいだよ。」

心配そうな表情で見つめるエリィにヘンリーは微笑みながら言った。

「じょ、冗談言わないでください!あれほどの事があって第一秘書がいなくなって………今はゆっくりとお休みになるべきです!」

「創立記念祭も近い。仕事は山のようにあるからね。この程度のことで市長としての役割を放棄できんさ。」

「この程度のことって……………おじいさまは………辛く………悔しくないんですか?あれだけ目をかけていたアーネストさんに裏切られて………それなのに、どうして………」

ヘンリーの話を聞いたエリィは信じられない様子で溜息を吐いた後、考え込み、辛そうな表情で尋ねた。

「………今回のことがショックで無かったといえば嘘になる。聞けば、随分前から事務所の資金を使い込んでいたようだ。それで精神的に追い詰められ、暴走してしまったのかもしれない。その意味では、気付いてやれなかった私の責任でもあると思っている。」

「…………おじいさま………」

「―――だが、私は政治家だ。この身をクロスベル自治州の現在(いま)と未来のために奉げると誓った。如何なることがあろうと職務を全うする以外の選択はない。そう、自分に課しているのだよ。」

「……………………」

決意の表情で語るヘンリーをエリィは黙って見つめ続けていた。

「すまない、エリィ。10年前も私は………ライアン君を、お前の父さんを引き止めてやれなかった。そして娘も………お前の母さんも去るがままにしてしまった。そして相変わらず……無力だが必要ではあるクロスベル市長を続けている。さぞ……イリーナ共々私を恨んでいることだろう。」

そしてヘンリーは辛そうな表情でエリィを見つめて話し

「そんな………!おじいさまは私達の誇りです!お父様達は不幸がありましたが……お姉様は今では幸せに生きています。それに……哀しかったけど………きちんと乗り越えています。」

「エリィ……」

「元々私が警察に入ったのは………別の形で、おじいさまの手伝いがしたかったからです。それが、クロスベルのためにもなると信じていたから………でも、こんな事になってアーネストさんが居なくなって……私、やっぱり警察を辞めておじいさまの手伝いを―――」

静かな表情で語ったエリィは決意の表情である事を言いかけようとしたが

「馬鹿な事を言っちゃいかん!」

「お、おじいさま………?」

ヘンリーの一喝で戸惑い、ヘンリーを見つめた。

「………もしお前が、選んだ道を悔やんでいるのならすぐにでも戻ってくるべきだ。だが、そうではないのだろう?なのに道を変えるというのは多くの者に対して失礼だ。同僚にも、私にも………何よりお前自身にも。」

「あ………」

「私の事は心配はいらない。秘書は一人ではないし、いざとなればヘルマーだって助けてくれるだろう。次の市長選を期に引退することは少し難しくなってしまったが………なに、もう5年、楽隠居が遠のくだけのことだ。」

「…………………………」

ヘンリーの話を聞いたエリィは黙ってヘンリーを見つめ続け

「だからお前は………選んだ道を全うしてみなさい。少なくとも………お前自身が納得できるまで。それが私にとっては何よりの励みになるのだから。」

「おじいさま………」

「そもそも、今回の事件もお前達の働きが無かったら私は生きてはいなかったはずだ。誇りなさい。自分達の働きと成長を。そして一層輝けるよう、自分を磨いて行くといいだろう。アルカンシェルの今回の新作のようにね。」

「あ……はい、おじいさま………!」

ヘンリーに微笑まれ、力強く頷いて微笑んだ後立ち上がり

「エリィ・マクダエル―――明日をもって職場復帰し、より一層職務に励みます………!」

姿勢をただして、自分の決意を宣言した。するとその時

「だ、旦那様………!大変でございます。」

一人の老執事が慌てた様子で部屋に入って来た。

「ヘルマー?どうしたんだ。」

「そ、それが……イリーナお嬢様が夫の方や従者の方達と共に旦那様のお見舞いの為にこちらを訪ねてらっしゃいました………!」

「何………!?それは本当か………!?」

「お、お姉様達が………!?」

執事の話を聞いたヘンリーはエリィと共に驚き、尋ねた。

「は、はい。今、広間で待っていただいておりますが………いかがなさいましょう………?」

「通してくれ。はるばるリベールから来たんだ。あの娘と会うのも久しぶりだしな……」

「かしこまりました。」

そして少しの間時間がたつと部屋に執事と共に腰までなびかせる美しい金髪と金色の瞳を持つ淡い緑のドレス姿の女性が入って来た。

 

「おじいさま………!よくぞ、ご無事で……!暗殺されかけたと聞いて、本当に心配しました………!」

女性はヘンリーの姿を見て安堵の溜息を吐いた後、心配そうな表情でヘンリーを見つめ

「おお、イリーナ………!なに、暗殺されかけたと言ってもただの掠り傷だよ……お前にも心配をかけてすまなかったな………」

女性―――ヘンリーのもう一人の孫娘であり、エリィの姉でもある前メンフィル皇帝にして現メンフィル大使―――リウイ・マーシルンの2代目の正妃であり、”聖皇妃”の異名を持つ女性――――イリーナ・マーシルンに見つめられたヘンリーは嬉しそうな表情をした後、苦笑した。

「そんな!おじいさまは私にとって数少ない血の繋がった家族なのですから、心配して当然です!」

「フフ、そうか………今日はわざわざ、私の見舞いに来たのかね?」

「はい。それもありますが………ようやく産まれた私達の子供達とも会ってもらおうと思って………」

「何………!?それは本当かね………!?そうか……産まれたのか………!」

「お、おめでとうございます、お姉様………」

イリーナの話を聞いたヘンリーは驚いた後嬉しそうな表情をし、エリィは驚きの表情で言った。

「フフ、ありがとう、エリィ。……あなた。入って来ていいですよ。」

エリィの言葉に微笑んだイリーナは扉の方に視線を向けて言った。すると扉は開き、そこから覇気を纏い、外套がついた黒を基調とした高貴な服を身に着け、細剣を帯剣した紫がかかった銀髪の男性、赤ん坊を抱いた白を基調とした修道服を着た夕焼け色の髪を持つ女性、そして修道服の女性のように赤ん坊を抱いた黒を基調とした高貴な服を身に着け、連接剣を帯剣したイリーナと同じ金髪と金色の瞳を持つ女性が部屋に入って来た。

「………久しいな、マクダエル市長。それにエリィも。」

男性は静かな口調でヘンリーとエリィを順番に見回し

「リ、リウイ陛下………それにペテレーネ様やエクリアさんまで………」

「フフ、お久しぶりです。」

「お元気そうで何よりです。」

男性――――前メンフィル皇帝にしてメンフィル帝国を建国し、現在はリベールのロレント市にある大使館で大使として隠居生活を送り、”英雄王”、”剣皇”とさまざまな異名を持つ男性――――リウイ・マーシルンに見つめられたエリィは驚きの表情でリウイと修道服の女性―――ゼムリア大陸のアーライナ教会の最高責任者であると同時にリウイの側室の一人、そして”闇の聖女”の異名を持つ女性―――ペテレーネ・セラと金髪の女性――――イリーナの護衛兼専属侍女にして、リウイとイリーナの子供達の教育係であり、かつては”姫将軍”という異名で畏れられ、さらに”神殺し”セリカ・シルフィルの”第一使徒”でもあったエクリア・フェミリンスを見つめ、見つめられた2人はそれぞれ微笑んだ。

「……お久しぶりです、リウイ陛下。この度は私のせいで遠路はるばるお越し頂き、まことに申し訳ありません。」

「フ……以前にも言ったがそう畏まる必要はないぞ。俺は既に帝位から退いて隠居の身の上、貴方は俺にとって義理の祖父にあたるのだからな。」

会釈をするヘンリーを見たリウイは苦笑しながらヘンリーを見つめて言い

「そうですよ。それにエリィも呼び方がまた、”リウイ陛下”に戻っているわよ?」

リウイの言葉にイリーナが頷き、そしてエリィに視線を向けて言った。

「うっ………そ、その……リウイお義兄(にい)様、来るのなら来るとせめて連絡をしていただけないでしょうか………?事前にカーリアン様からお話を聞いていたとはいえ、急に来られるとこちらも迎える準備ができませんので………」

イリーナの言葉を聞いたエリィは唸った後、気を取り直してリウイを見つめて言った。

「カーリアンだと?どこで奴と出会ったんだ?」

エリィの話を聞いたリウイは眉を顰めて尋ねた。

「はい、実は………」

そしてエリィはリウイ達にカーリアンと出会った事情を説明した。

「全く………何をしているのだ、あのじゃじゃ馬は………」

「フフ、相変わらずのようですね。――――それよりおじいさま、エリィ。この子達が私とリウイの子供達です。―――エクリア、ペテレーネ。」

事情を聞いたリウイは呆れた表情で溜息を吐き、イリーナは微笑んだ後赤ん坊を抱いているエクリアとペテレーネを促し

「「はい。」」

促された2人はそれぞれ抱いている赤ん坊をヘンリーやエリィに見せた。

 

「おお………2人も産まれたのか……!」

「………2人ともそれぞれお姉様達の髪の色を受け継いでいますね……性別はどちらで、名前は何と言うのですか?」

それぞれが抱いている赤ん坊達を見たヘンリーは嬉しそうな表情をし、エリィはエクリアが抱いている紫が混じった銀髪の赤ん坊とペテレーネが抱いている金髪の赤ん坊を見て呟いた後、イリーナ達に尋ねた。

「………銀髪の男の子の名はレノン。かつて俺に”王”を教えてくれたある男のような者になってほしいとそう名付けた。」

「金髪の女の子の名前はセリーヌ。私がメンフィルから頂いている偽名―――テシュオス家にかつて存在していた3姉妹の中の次女の方の名前を頂いて、その名前にしたわ。」

「おお……まさか、男の子と女の子の曾孫が同時に出来るとは……フフ、長生きはするものだな………」

リウイとイリーナの説明を聞いたヘンリーは嬉しそうな表情で赤ん坊達を見つめた後、微笑んだ。

「2人とも、抱いてみますか?」

「いいのかね?」

「い、いいんですか?」

イリーナの提案を聞いたヘンリーとエリィは驚きの表情で尋ね

「……ああ。その為にはるばる来たのだからな。」

「そうですか……それでしたらお言葉に甘えて……フフ、まさか曾孫を抱ける年まで生きて行けるとは………お蔭で私も曾孫達に元気をわけてもらったよ。」

「2人はお姉様達の子供なのですから、将来は立派な方達に成長するでしょうね………」

リウイが頷くと、エクリアから赤ん坊を受け取り、それぞれ微笑みながら眠っている赤ん坊を見つめた。

「フフ、エリィもついに叔母になっちゃったわね………早く好きな人を見つけて結婚しないと、未婚で”エリィ叔母様”とこの子達に言われるわよ?」

「うっ……わ、私だって好きな人くらいいます!」

一方ペテレーネから受け取った眠っている赤ん坊を抱いて微笑みながら見つめていたエリィはイリーナにからかわれた後、頬を赤らめて言った。

「あら……ついにエリィにも春が来たのね。お相手はどんな方なのかしら?」

「ほお……もしかして同僚のロイド君かね?」

「うっ………ど、どうしてそこでロイドが出てくるんですか!」

そしてイリーナとヘンリーに尋ねられたエリィは焦りだし、その後イリーナ達に色々とからかわれたり尋ねられ、焦ったり顔を赤らめたりしていた………

 

 

-2ページ-

 

 

今回の話で驚いたと思いますがまさかの幻燐ファンお待ちかねのリウイ、イリーナ、ペテレーネ、エクリアが再登場しました!!リウイ達の活躍は終盤なので、もうしばらくお待ちください♪………感想お待ちしております。

説明
第548話
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
1004 943 2
コメント
感想ありがとうございます。 本郷 刃様 まあ、この4人がいればクロスベル制圧なんて簡単にできそうです(大汗) さすらいのハリマエ様 いやいやいや!さすがにそこまでするつもりはありませんよ(汗) THIS様 まあ、エクリアをのぞいた3人は有名すぎますもんねぇww (sorano)
・・・・・・・こんなこと・・・他のみんなが知ったら大パニック間違いなしWW。リウイ達いつまで滞在する予定なのか?もしかして・・・セシルに皆、会いに来てもいるのですか!?これは・・すごいことになってしまった。(THIS)
裏ボス設定いきになりそうだ(黄昏☆ハリマエ)
ちょっ!? リウイにイリーナはわかるとして、ペテレーネとエクリアまでっ!? 超過剰戦力がここに集結ww(本郷 刃)
タグ
他エウシュリーキャラも登場 幻燐の姫将軍 戦女神 碧の軌跡 空を仰ぎて雲高くキャラ特別出演 零の軌跡 

soranoさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com