英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 外伝〜叡智の契約〜前編
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〜港湾区・黒月貿易公司〜

 

「いやはや、助かりました。あのまま事が運ばれていたらどうなっていたことか………危うく、市長暗殺の容疑をこちらにかけられる所でした。」

一方その頃、脅迫状の事件の真相を銀から聞いたツァオは安堵の溜息を吐いた。

「フン……共和国派の議員どもと繋がりを持ったりするからだ。私の名を、あの秘書に囁いたのはハルトマンという帝国派の議長……恐らくルバーチェの会長あたりから聞いたのだろう。」

「ええ、そうでしょうね。秘書が暗殺を企てるとは思っていなかったでしょうが……それでも私達を通じて共和国派にダメージを与えるのが目的だったに違いありません。」

銀の話を聞いたツァオは頷きながら推測した。

「フン、つくづく因果な街だ。それはともかく……『私達』など一緒にするな。こちらはいい迷惑だ。」

「やれやれ、つれないですねぇ。まあ、議員との繋がりなどその気になればいつでも切れます。」

銀が不愉快そうな様子を纏わせて呟いた言葉を聞いたツァオは溜息を吐いて答えた後、立ち上がって窓に近づき、外を見つめた。

「―――お伝えしている通り、こちらの攻勢は記念祭以降………最終日の仕掛けはよろしくお願いしますよ、”銀”殿。」

「フ……いいだろう。時間だ――――行くぞ。」

ツァオの話に口元に笑みを浮かべて答えた銀は空間の中へと歩いて消え、去って行った。

「はは……相変わらず神出鬼没な方だ。しかし『時間』ですか……」

銀が去った後ツァオは苦笑し、そして不敵な笑みを浮かべて眼鏡をかけなおし

「フフ……一体何の『時間』なのやら………」

口元に笑みを浮かべて静かに呟いた。一方銀は黒月の建物の屋上に現れ、目にも止まらぬ速さで次々と建物の屋根に飛び移り、歓楽街の建物まで移動した。

 

〜歓楽街〜

 

「……………………」

アルカンシェルの劇場がよく見える建物の屋上に到着した銀は劇場の周辺を見つめた後、黒衣と仮面を一瞬で外して正体を現した。

「よかった、間に合った…………」

黒衣と仮面を外した銀――――リーシャは安堵の溜息を吐いた。するとその時!

「フフ、ようやく正体を顕わにしたわね………」

女性の声が上から聞こえて来た。

「え…………―――!?ル、ルファディエルさん……」

声を聞いたリーシャは驚いた後、上空から降りて来たルファディエルを見て驚いた。

「フフ、やっぱり貴女が”銀”だったのね、リーシャ。」

「な、何の事でしょうか……?」

口元に笑みを浮かべて自分を見つめるルファディエルにリーシャは一瞬慌てた後、笑顔を見せて言ったが

「とぼけようとしても無駄よ。銀の姿をした貴女が黒月貿易公司の屋上に現れ、ここまで移動して銀から貴女の姿に変わる所は見ているわよ。」

「っ!…………………証拠もないのに、そんな事を言わないで下さい。」

ルファディエルの話を聞いて息を呑んだ後、真剣な表情で言ったが

「あら、証拠ならあるわよ?」

「え…………」

意外そうな表情をしたルファディエルの言葉を聞き、呆けた。

「秀哉達の世界もそうだけど、この世界も色々と便利な物があるわよねぇ………」

「な、何を………」

ルファディエルが呟いた言葉を聞いたリーシャは戸惑った。

「ビデオ………だったかしら?こういう時には特に役立つわね。」

するとその時、ルファディエルは導力ビデオを取り出し、リーシャに見せた。

「――――――――!!クッ………」

それを見て何かに気付いたリーシャは目を見開いた後、剣を取り出してルファディエルに強襲しようとしたが

「おおっと!それ以上動いたら死ぬよ?ククク……」

「!!そ、そんな………!私が気配を感じられないなんて………」

転移魔術で背後に現れたエルンストに首筋に短剣を突き付けられ、その事に気付いたリーシャは信じられない表情をした。するとその時、上空からメヒーシャ、ラグタス、ギレゼルが降り立ち、リーシャを包囲した!

「……まさかお前がティオ達が戦った暗殺者だったとはな……フン。お前が”銀”自身だからこそあの脅迫状が最初から偽物であるとわかっていたのか………」

「かかかっ!これには我輩も驚いたぜ!」

「………脅迫状の事件を終えたのに、何故アルカンシェルや黒月の建物を私達に監視させると思っていましたが…………こういう事だったのですね。」

「ククク……あたいらを使って、何をするかと思ったが………まさかこいつの正体を暴く為だったとはね………ハハハハッ!こりゃ、傑作だね!まさか伝説の暗殺者が光の下に住む人間達に紛れ込んでいたとはね!」

上空から降り立ち、リーシャを包囲したラグタスは警戒した様子でリーシャを睨み、ギレゼルは陽気に笑い、メヒーシャは静かな表情で呟きながらリーシャを見つめ、エルンストはリーシャの首筋に短剣を突き付けながら凶悪な笑みを浮かべて笑い、武器を既に出しているエルンスト以外はそれぞれ武器を構えた!

「さて………まだ悪あがきをするつもりかしら?貴女ほどの手練れなら、自分と私達の力量差ぐらいわかるでしょう?」

そしてルファディエルは杖を異空間から取り出して構え、不敵な笑みを浮かべてリーシャを見つめて言った。

「……………(駄目……後ろを取られている上、5人共強すぎる………私の実力では無理…………)………い、いつから私が銀だと疑っていたのですか……?」

目だけでルファディエル達を見回したリーシャは諦めた表情で手から剣を落とし、地面に両足の膝でついた後、表情を青褪めさせながら両手を地面につけて、ルファディエルを見上げて尋ねた。

 

「”星見の塔”で貴女がロイド達に依頼した時、疑問に思ったのよね。何故、暗殺者が標的でもない者―――イリアの性格をそこまで熟知しているのか。そして………何故、アルカンシェルの公演の時に限って、今回の事件を防ぐ為に自分は動けないのか。そうなるとアルカンシェルの関係者が怪しくなってくる。………そこに加えてツァオが言ってた銀がクロスベル入りした時期と貴女がアルカンシェルに入団した時期と合わせれば、貴女が一番怪しい事は明白でしょう?で、怪しいと思ってあの市長暗殺未遂事件が終わってから、必ずツァオに今回の事件の真相を説明する為に姿を現すと思ってアルカンシェルと黒月の建物を空から監視させてもらっていたわ。いくら銀とはいえ、まさか空からの監視は予想もしていなかったし、警戒できないでしょう?」

「……………………………私をどうするつもりですか…………?」

ルファディエルの推理を聞いたリーシャは表情を青褪めさせて黙り込んだ後、身体を震わせながら真剣な表情でルファディエルを見つめて尋ねた。

「フフ、安心なさい。少なくともこの場で逮捕するつもりはないから。」

「え…………?」

そしてルファディエルに微笑まれたリーシャは呆けた表情でルファディエルを見つめ

「まず、銀自身がクロスベルで犯罪を犯したという証拠がないから逮捕できないわ。………まあ、事情聴衆という形で警察に連れて行くことは可能だけど……貴女にとっては自分が銀である事は誰にも知られたくないでしょう?………ツァオもそうだけど………イリアやアルカンシェルの関係者には一番知られたくないでしょう?」

見つめられたルファディエルは答えた後、微笑みながらリーシャを見つめた。

「――――!!お、お願いします!何でも………何でもしますから、どうか……どうか私の正体だけはイリアさん達に告げないで下さい……っ!」

ルファディエルに微笑まれたリーシャは表情を青褪めさせた後、悲痛そうな表情で土下座した。

「”何でもする”………その言葉に偽りはないかしら?」

「…………はい………」

ルファディエルに尋ねられたリーシャは重々しく頷いて、嘆願するかのような表情でルファディエルを見上げた。

「そう……………………じゃあ、今後”銀”としてロイド達との利害が一致した時や貴女が助けられる範囲でロイド達が危機に陥ってたりしてたら、ロイド達に力を貸しなさい。後は警察や警備隊とは敵対してもロイド達―――特務支援課とは敵対しない事ね。もし、敵対する事になったら貴女は撤退する事。これらを守ってくれれば、貴女の正体はイリアやアルカンシェルの関係者、黒月やルバーチェ、そしてロイド達や警察、警備隊関係者にも黙っておくわ。」

「え………?」

ルファディエルの話を聞いたリーシャは呆けた声を出してルファディエルを見つめ

「お?黒月とかいう組織から手を引けとか、そんなんじゃないのか?」

「ル、ルファディエル様?」

「クク………何を考えているんだい?」

「………何を考えている、ルファディエル。奴はティオ達の敵対組織が雇っている暗殺者だぞ?そんな奴がティオ達と利害が一致するとは思えないが………」

話を聞いていたギレゼルは意外そうな表情をし、メヒーシャは戸惑い、エルンストは不敵な笑みを浮かべ、ラグタスは目を細めてリーシャを警戒しながらルファディエルに視線を向けた。

「彼女程の戦力………ロイド達の為に利用できるのなら、利用するべきです、将軍。敵対組織は”黒月”だけではないのですし。それに”黒月”最大の戦力が敵にならないのなら、銀はいないも同然です。」

「………なるほどな。」

「あっはははは!さすがはあのシェヒナと知恵比べをしてただけはあるねぇ!勝利の為には味方どころか敵も利用するってか!」

そしてルファディエルの説明を聞いたラグタスは頷き、エルンストは笑った後、口元に笑みを浮かべてルファディエルを見つめ

「さて…………どうするのかしら?正体を黙る条件としては破格の条件だと思うわよ?」

見つめられたルファディエルはリーシャに尋ねた。

 

「……本当にそれらの条件を守れば、絶対に私の事はイリアさん達に秘密にしてくれるんですよね………?」

尋ねられたリーシャは懇願するような表情でルファディエルに尋ね返した。

「ええ。私は”天使”なのだから、契約は守るわ。ギレゼル、エルンスト。貴方達もいいわね?」

「クク………まあ、いいよ。その女がどこまで光の下に紛れ込めるのかあたいも興味が出て来たしね。」

「クカカカッ!我輩もロイドの為ならいいぜ!」

「メヒーシャ、ラグタス将軍。2人もリーシャの事は黙ってあげて下さい。決して2人が契約している者達に害をなすことをさせませんので。」

「………わかりました。ルファディエル様の判断に従います。」

「………まあ、いいだろう。」

リーシャに尋ねられたルファディエルはギレゼル達を見回して言い、ギレゼル達はそれぞれ頷き、エルンストはリーシャから離れた。

「………これでメヒーシャ達の意思を知れたでしょう。――――行きなさい。稽古の時間に遅れるのでしょう?」

「!!あ、ありがとうございます!必ず条件は守りますので、くれぐれも私の事は内密にお願いします!」

ルファディエルに言われたリーシャは剣を回収して立ち上がった後、頭を深く下げて言った。

「ええ。………これからの”アルカンシェルのリーシャ・マオ”という新人アーティストの活躍……期待しているわ。」

「は、はい。………失礼します。」

そしてリーシャは建物を飛び下りて、アルカンシェルの劇場に向かって走って行った。

 

「はあ………まさかたったあれだけの言葉で私の正体に勘づくなんて………本当に恐ろしい人…………でも、よかった………黙ってもらう条件が大した事なくて………」

劇場の前に到着したリーシャは疲れた表情で溜息を吐いて身体を震わせた後、安堵の表情になった。

「早いわね、リーシャ。」

するとその時イリアがリーシャに近づいてきた。

「イリアさん……」

「なに、そんなに午後の稽古が楽しみだったの?あたしもいいかげん舞台バカではあるけれど………あんたも十分、素質あるんじゃないかしら?」

「あはは、そんな………イリアさんの域まで達する自信なんてとても………」

イリアに微笑まれたリーシャは苦笑しながら答えた。

「ふふ、そんなこと言ってプレ公演じゃノリノリだったくせに。良かったわよ、あんたの演技。ようやくあたしのライバルの卵くらいにはなってくれたわね。」

「イリアさん……もしそうだとしたら全部、イリアさんのおかげです。受け継いだ道しか知らなかった私に光を示してくれた貴女の……ふふ、それと今回は彼らにも感謝した方がいいかな。」

「へ………」

「ふふっ、何でもないです。今日の稽古は、第三幕の完成度を上げていくんですよね?私、頑張ってお付き合いします。」

「お、やる気満々じゃないの。うーん、あたしもマジで負けてられないわね〜。よーし、来月の本公演までに今の百倍は良くしていくわよ〜!付いてきなさい、リーシャ!」

「はい、イリアさん………!」

そして笑顔のイリアの言葉に笑顔で頷いたリーシャはイリアと共に劇場の中へと入って行った………

 

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え〜………前回のリウイ達登場で驚いたと思いますが今回のルファ姉による銀(リーシャ)脅迫はそれらをも超えて、驚愕したと思います(大汗)多分、下手したら零・碧篇の中でもベスト5の中に入るほど驚愕した事になるかも?とりあえず……リーシャファンの人達、すみません……!言っておきますが私はリーシャは好きですよ!?今回のルファ姉の脅迫(オイッ!)によって銀が原作でない場所でロイド達に力を貸す場面を書く予定ですので楽しみにしていてください♪……まあ、その場面も意外と早いかもしれませんよ?(ニヤリ)それにしてもルファ姉達に包囲されたリーシャ、哀れすぎる……!(泣)いくら銀といえど、相手が悪すぎました(大汗)………感想お待ちしております。

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コメント
感想ありがとうございます。 本郷 刃様 本当に恐ろしいですよ、ルファ姉。 THIS様 まあ、リーシャは後に味方なので優しめにしときました(どこが!?)(sorano)
黒い・・・天使なのに黒いよぉぉぉぉぉぉ・・・。まあ・・まだリーシャ二救いがあってよかった・・。(THIS)
おぉう…ルファ姉黒い・・・こんなにあっさりと見破るとは、さすがですねw(本郷 刃)
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