超次元ゲイムネプテューヌ『女神と英雄のシンフォニー』チャプターU第10話『交差する思惑、その裏で』 |
「ごめんなさいね。貴方達も博覧会の準備で忙しいかもしれないのにいきなり呼びつけちゃって」
「気にしなくてもいいよ、女神様! だって私達やること無くてすごい退屈してたし」
連絡を受けて、再び旧教会跡地を訪れた一行。ケイトとネプテューヌ以外は女神が自分達が想像してた以上に若かった事や、アゼルが居た事に各々、驚きを隠せずに居たのは当然の流れかもしれない。
「今日来てもらったのは他でもありません。実は、アヴニールと国政院の不正な繋がりを証明できる手掛かりが見つかったのです」
「手掛かり?」
「はい、こちらをご覧ください」
同席していた教院長がケイトに一枚の板を渡す。それは機械に使われる電子基盤。中の配線等は焼き切れたりとボロボロの状態だ。コレが一体何なのか?それを問い掛けるように教院長に視線を戻すと、彼は電子基盤のある部分を指差す。
「それはここを襲撃してきたアヴニールの兵器に使われていたものです。そして大事なのはこの電子基盤にはモンスターの神経組織が使われてるかもしれないのです」
「モンスターの……」
「そう言えば前にガスト達が受けた依頼にモンスターを捕まえてくれっていうのがあったですの」
そう、アルマッスを受け取ってから数日が立ったある日、自分達の元にアヴニールから特定のモンスターを生死は問わずに捕まえてほしいという依頼を受けた事があった。依頼を終えた後、一体に何に使うのかネプテューヌ(変身後)が問いただしていたが、流石に企業秘密と詳しい事情は聞けなかったが。
「それだけじゃないわ。確かその依頼って、仕事の説明に国政院の人が来てたわね」
「居た居た! 初めて協会に来た時に私達の事を思いっきりバカにしてたよね! 女神様、アヴニールの件が終わったらあの人、クビにしちゃってよ!! わたし達がモンスターのこと聞きに来た時も子供だからってまともに話も聞いてくれなかったんだよっ!」
「そう、そんな事が。クビにするしないはともかくとして協会の人員の見直しはやっておくわ……」
ノワールは国政院の増長ぶりに思わず溜め息をつく。確かに自分の事を疎んでいるとは言え、協会は大陸の中枢を担い、人々の生活を支える組織。その協会が訪れた人をぞんざいに扱うのは問題だ。そして、本気でラステイションの事を想っているであろう彼女にとっては嫌でも溜め息がもれるのだろう。が、それは僅かな間のみで彼女はすぐに頭を切り替え、話を切り出してきた。
「話を戻すけど、つい最近、協会の方でも市街の守りを薄くしてまで国政院はモンスターの討伐に力を入れていたの。研究の為、と称してその死骸を協会に持ち込んでね」
「こいつは確かに怪しいな。モンスターの死骸を集めている国政院に、モンスターの神経が使われていると思われるパーツ。確かにそれを証明できれば大きな手掛かりになる。現物を可能な限り無傷で手に入れる事ができれば、な。つまり、今日俺らを呼んだのはこの基盤をどうにか手に入れてきて欲しい。そう言う事か?」
「その通りだ。かなり難しいかもしれねぇが、俺らじゃアヴニールに接触する事すら出来ない。だから、ケイト達に頼むしかねぇんだ」
アゼルの言葉に、エミルは「ふむ……」と少しの間考え、やがてその目を俺の方に向けてきた。
「と、言う訳だが、ケイトお前ならこんな時どうする?」
「えっ? えっと……」
この場で一番経験が深いはエミルだ。だからこそ、彼にその判断を一任するつもりだった為、突然の問いにはすぐには答えられなかった。が、少し考えれば答えはすぐに纏まった。幾ら自分たちでもその基盤を直接貰い受ける事は不可能だ。ならば――
「やっぱりアヴニールのロボを倒してそいつから入手するしか無いと思う。次の襲撃を待って、そいつから手に入れるのが無難だと思う」
その解答にエミルは「60点って所だな……」と、微妙な評価を下す。
「ケイトの案なら協会の連中だけでも十分な筈だ。なのに、わざわざ俺たちを呼んで頼んできたって事は、ここ暫くはアヴニールからの襲撃は無いんだろうさ」
「その通りだ。丁度、博覧会開催2週間前ぐらいからアヴニールからの襲撃はほぼ止んでいる」
「恐らく、アヴニールの方も博覧会の準備や追い込みに追われてそれどころじゃないですの」
言われて、あぁ、そっか……となる。確かに協会を今も襲撃しているならば基盤の入手はむしろアゼル一人でも十分だ。そして、アゼルとノワールはここの守りの要、そう易々と離れられない。だからこそ、ある程度自由に動ける自分達に声が掛かったのだ。
「そういう事。これからも冒険すんなら、もうちょっと状況を広い範囲で判断出来るようになった方がいいぜ。と、言う訳でそれじゃ、早速行くか」
「行くって何処にだ?」
ロビーへ続くドアに手を掛けたまま、エミルは不敵な笑みと共にこちらを振り返る
「勿論、その電子基盤をぶんどりに行くんだよ」
「ここは、確か以前、依頼で訪れた……」
エミルの案内で訪れた場所。そこは、以前サンジュからの依頼を受けたアヴニールの関連施設だった。
「そう、以前アヴニールからの依頼を受けた施設の領地内だな。あの、サンジュの事だ。恐らく、モンスターからの襲撃を恐れて警備ロボットの一体や二体配置してるだろ。だから――」
言うや否や、エミルは背の太刀に背を回し振り向き様に一閃。そこには真っ二つになって、機能を停止させた一体のロボットの姿。その奥にも5,6体のロボットが各々の武器をこちらに向けている
「なるほど」
エミルの答えを察してケイトも武器を構え、それに続くように残りの4人も武器を構える。
「こいつらからぶんどってやろうぜ、って訳だ」
たかが数体、しかも、本格的な戦闘用ではなく警備用のロボット。もはやその程度の相手はわけも無く、今回はケイト、エミル、ネプテューヌの三人だけで事足りた。が――
「基盤、結局出なかったね。もしかして、ここのロボットには使われてないのかな?」
その場にしゃがみ込み、ロボットの残骸をあさっていたネプテューヌが諦めたように立ち上がる。彼女の言うとおり、ここのロボットたちの残骸を調べたところ損傷の有無以前に、そもそも基盤自体が見つかっていない。
「アヴニールのメカ共通のパーツって訳じゃ無いってことかしら」
「かもしれねぇな……」
と、一行が武器を納めたがエミルだけは太刀を手に持ったまま、やがて一本の木に向かってその切っ先を向けた。
「そこんとこどうなんだ? おい」
「やーみなさん……こんにちは。こんな場所で会うのは初めてじゃありませんか?」
「偶然とは思えないわね。ロボが居てアヴニールの外回りも居る」
木の陰から出てきたのはアヴニールの外回り、ガナッシュ。その右手には何らかの機械が握られていた。
「今気付いたんだけど。プラネテューヌじゃあるまいし、ラステイションで完全自立型ロボってのも、無理があるわよね?」
「おやおや……なかなかの察しの良さですね。そのとおりです。我が社のロボの中でも大型な者は実は遠隔制御なんですよ」
「もしかして……外回りさんがずっと影でそうさしてたの!? これまでも、そしてこれからも?」
「コレまでは、正直そうですね。これからは……貴方達次第ですが」
「そうだな、確かに俺ら次第だな。俺たちに捕まりゃ、ロボの操作なんざ出来っこねぇからな。つー訳で、痛い目見たくなけりゃ、素直について来てもらうぜ。タダのリーマンが俺らから逃げられると思うなよ」
「逃げるつもりなんかありませんよ。実は私も会社の方針に疑問を抱くようになりまして。今回は、ネプテューヌさんたちのアヴニール退治に協力する為にあえて姿を現した訳です」
「いくらなんでも話がうますぎるです。それに、ただ協力したいだけならなんでロボに襲わせたりしたりしたんですか!?」
この間の一件もあり、流石に今回はコンパとネプテューヌも彼の言葉に警戒を示す。が、ガナッシュはそれをなんとも思ってないのか、いつも通りの雰囲気のまま手に持っていたコントローラーをその場に投げ捨てる
「堂々と貴方達に会うためですよ。一応は社員ですから、仕事と言う形でしか動けなかったわけです。申し訳ありません」
「その話は本当なら、一つ答えてくれないか? この間廃工場に俺たちを閉じ込めた際、言ってたな。ネプテューヌを倒す為だと。その理由は? そして誰から彼女の名を聞いた?」
「それは単に会社の命令で……パッセ製造工場を襲うため、足止めするよう言われただけです。ネプテューヌさんの名前も上司から聞いたに過ぎませんので」
足止め、その理由は自分達もそうだと思っていたし、協会とアヴニールは繋がっている。ならば、女神であるネプテューヌの名前を協会から聞いていたとなれば命令と言うのも納得が行く。そして彼は単なる外回り、ならば、上からの命令の詳しい事情を知らなくても無理は無い。
(辻褄は合ってるな……けど、なんだかそれだけじゃない気がするな……)
けれど、目の前の外回りの雰囲気からどうにも納得が出来ない。言い知れぬ不安と言うものが残る
「疑うのでしたら、例の電子基盤をお渡しします。探していたんでしょう?」
そう言って、ガナッシュは太刀の切っ先が向けられているにも関わらず、怯えた様子も無くエミルの目の前に立ち、一枚の板状のパーツを手渡す
「それを渡しますし、不正な取引の事も証言します」
「ケイトさん、私達がここで悩んでも仕方ないです。ひとまず教院の人たちに預けて、話を聞いてもらうなら何なり、したらどうですか?」
「そう、だな……」
ここで彼の提案にのらなければそれこそ手詰まり。ならば、ここはダメ元で彼の言葉をとりあえず信じてみる方がメリットがある。コンパの言葉にケイトは不安はありつつも頷き、電子基盤をジッと見つめていたエミルも太刀をしまう。
「なら、俺たちについてきてもらうぜ。言っとくが変な真似をした段階でその場で斬り捨てるからな」
最後に、エミルが睨みを利かせながら釘をさすと、ガナッシュは呆れ気味になりながら肩を竦め、一行の後に続いたのだった
あの後、協会に連れて行ったガナッシュは協会からの問い掛けに対して、不思議なほど素直に白状した。時より「その事に関しては私には判りませんね」と言う解答があったが、外回りならそれも仕方が無いだろう。渡された電子基盤もどうやら本物らしく、これでアヴニールを倒す手札は揃った。
「えっと、ここでいいのか?」
そして博覧会前日、いよいよアヴニールを摘発する段取りを決めるべく協会を代表しアゼルがシアンの飲食店を訪れていた。
「おう! 来た来た……さぁ! 狭苦しいとこですがどーぞー」
「シアンが会場の下見に出ているからいいものの。聞いたらまた怒るわね……それより外回りはどうなったの?」
「既に会社に返したよ。必要な情報は大方聞き出せたし、電子基盤の方も揃ってる。正直、あまりに素直すぎるのが逆に気持ちわりぃが、まぁこれでようやく、アヴニール本社の立ち入り調査に入れるな。実行は博覧会当日、社員の殆どは会場の方に行くだろうから一番警備が薄くなっている筈だ。と言うわけで、その時はケイト達にも協力をお願いしたいんだが?」
「博覧会当日!? それはダメです! 私達、シアンさんと博覧会に出る約束をしてるです」
「別に全員ついてきてもらう必要はねぇよ。2,3人ほど貸してくれりゃそれでいい」
「まぁ、確かにデモンストレーションを6人全員でやる意味もないですの。それこそ、ネプテューヌともう一人居れば事足りるですの」
「なら、もう一人は俺が残るか。後は万一怪我した時に備えてコンパもだな。別にエニグマを使う様な事態にもならねぇだろうし、たかだか数時間程度なら別行動でも問題ねぇだろ?」
「まぁ、それぐらいなら問題は無いですの」
と、エミルが立候補し更にコンパを指名。
「そんじゃ、当日はネプテューヌと俺とコンパが博覧会。ケイト達はアゼルと一緒にアヴニール本社に殴りこみってことでいいな?」
「話は纏まったな。まぁ、アヴニールの連中も街中で大っぴらに抵抗はしてこねぇとは思うが一応、戦闘になってもいい様に準備だけはしといてくれ。そんじゃ、明日はよろしく頼むぜ!」
「さて、コレで全ての手はずは整いましたね……」
人々が寝静まり、日中の機械の駆動音と人々の喧騒がウソの様に止んだ深夜。博覧会会場に一人の人影があった。その人物の見上げる視線の先、そこには明日の博覧会の優勝候補ともいえる企業の作品が、糸の切れた人形の様に俯いている。
「まさかブラックハート様まで追放された際はどうしたものか思いましたが……まぁ、明日にはアヴニールも国政院もお終いでしょうし、そっちは教院の方々が何とかしてくれるでしょう。後は……」
そう言いながら、その人物はその機械の装甲を一枚外し、内部に何かを取り付け始める。
「後は、コレが“彼女”を倒してさえくれれば、全てこちらの計画通り」
脳裏には彼女が倒され、喜んでいるあのお方の姿が目に浮かぶ。立場上、それを公表する事は出来ないがそれでもいい。
「全てはあのお方……ブラックハート様の為にっ!」
アヴニールと国政院、二つの組織の影にうごめく陰謀……それを知るのは当人と、それを傍観する機械達のみ……。そして、ラステイションは総合技術博覧会当日を迎えるのだった。
説明 | ||
総合技術博覧会の再開。たとえ、その裏には国政院の影が見えていてもそれに賭ける事を決意するシアン、そしてそんな彼女の手伝いを進めていたネプテューヌ達。けれど、ある日、アヴニール殻の妨害を受け、シアンの工場が破壊されてしまった。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1157 | 1136 | 0 |
タグ | ||
超次元ゲイムネプテューヌ 空の軌跡 零の軌跡(技等の設定のみ) | ||
月影さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |