GGO〜剣客の魔弾〜 最終弾 守れたもの
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最終弾 守れたもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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詩乃Side

 

バイクのリアシートに乗せられて連れて来られたのは先程の高級喫茶店とは違う、BARのような喫茶店。

看板には『Dicey Cafe』とあり、だけどドアに掛けられたプレートには『CLOSED』の文字。

けれど3人は気にする様子もなくドアを開けて中へと入ったので、私もその後に続いた。

 

「いらっしゃい」

 

入ってみればマスターと思うスキンヘッドの黒人男性が、笑みを浮かべて迎えてくれた。

店内を見渡すと夏に知り合った顔ぶれ4人が先客としてきていた。

 

「もぅ、遅いじゃない!」

「ごめんね、里香。クリスさんのお話が少し長引いちゃって…」

「アップルパイ2切れも食べちゃったんだから、太ったらどうするのよ〜」

 

スツールから降りて歩み寄ってきたのは知り合った内の1人の里香だった。

 

「痩せたいんだったら志郎に協力してもらえ。痩せるうえに幸せになれるぞ」

「あぁ、俺としては吝かじゃないかも」

「おっと、それ以上は言うんじゃないぞ〜」

「ふふ、そうですよ。まだ夕方前なのですから」

 

桐ヶ谷君の切りかえしに答えたのは十六夜君と未縞さん、それを微笑みながら流す雫さん。

い、いまの会話って、そういう意味よね///?

里香は顔を真っ赤にして十六夜君の方を見ているし…。

 

「はじめまして、お嬢さん。

 俺はアンドリュー・ギルバート・ミルズ、この喫茶店兼BARのマスターをやっている。

 気軽にエギルと呼んでくれ」

「あ、はい、朝田詩乃です。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

私に声を掛けたのはマスターの男性で、

エギルというニックネームが本名からもじっていないみたいだから、この人もVRMMOプレイヤーなのかも。

里香は雫さんの座る2人用のテーブルの椅子に座り、十六夜君と未縞さんはスツールに腰を掛けたまま。

 

「……詩乃、こっちに…」

「うん」

 

ケイに手を引かれて4人掛けのテーブルの椅子の1つに腰を下ろす。

ケイと桐ヶ谷君と明日奈が残りの椅子に腰を下ろしてから、それぞれ飲み物を注文して、

それから桐ヶ谷君が今回の『死銃事件』についての事柄を説明した。

 

 

「……………とまぁ、以上が今回の事件の全貌って感じだな。報道前だから実名と細部は省かせてもらったけど…」

 

桐ヶ谷君が主になって説明する形で、途中それぞれの視点からの補足をして、5人への説明が終わった。

出来るだけ纏めて話したけれど、10分以上は掛かった。

 

「なんていうか、良く巻き込まれるわよね……特に和人」

「もう慣れたよ。それに、今回は因縁深かったからな…」

「そうなのかもしれませんが…」

 

里香の言葉に桐ヶ谷君は静かに答え、その様子に雫さんは少し心配そうな表情で言った。

 

「和人、景一、ちょっと…」

 

その時、スツールに座っていた十六夜君と未縞さんが立ち上がって、2人に近くに来るように手招きした。

2人は自然と呼んだ2人に近づくと…、

 

「和人、景一…!」

「揃って歯ぁ喰いしばれ!」

 

―――ばきぃっ!

 

「「ぐっ…!?」」

「「ケイ(和人くん)!」」

 

その頬を殴った。でもケイも桐ヶ谷君も倒れることなく、立ったまま2人の眼を見据えている。

 

「俺達に黙って依頼を受けてGGOに行って、危うくどんな目に遭うか分からない状況だった」

「心配を掛けさせたことへの罰ってやつだ。次からはちゃんと連絡くらい入れてくれ、心臓にわりぃから…」

「「…すまない」」

 

十六夜君と未縞さんに注意された2人は、本当に申し訳なさそうに謝った。

見れば2人とも、口の端から少しだけど血が流れている。

それを見かねたエギルさんが綺麗な布巾を渡して、口元を拭っている。

 

「さぁて、明日奈。アンタもよ」

 

―――ピシィッ!

 

「あ痛っ!?」

 

綺麗な音が鳴ったのは明日奈のおでこ。見れば側に来た里香がデコピンをしたらしい。

 

「和人君達と同じで、私達を心配させたからですよ…分かりましたか?」

「はぁ〜い…(ひりひり)」

 

雫さんに諭されるように頷く明日奈、おでこが赤くなっていて可愛いかも…。

頬を抑えているケイと桐ヶ谷君は、また椅子に座った。

 

「ま、なんにせよ…4人とも無事で良かった。

 特にキリトとアスナ、お前らはALOに帰ったらしっかりとユイちゃんを甘えさせてあげろよ?

 今回はあの娘が一番頑張ったそうだからな」

「ユイが…?……そうか、分かったよ」

「今日中には戻れると思いますから、そうしますね」

 

エギルさんの言葉に桐ヶ谷君と明日奈は答えた。ユイちゃんというのは誰なんだろう?

そんな疑問も湧いたけれど、多分ALOの友達なんだと思っておく。

でも、そっか……2人ともGGOから帰っちゃうのか…。

残念に思っていると、私の手を明日奈が握ってきた。

 

「でもこれで、詩乃ちゃんと本当に友達になれたと思うんだ。

 だって、GGOで一緒に戦えて、またこうやって現実世界で話せて、お茶も一緒にできたから」

「あ……私で、いいの? 私なんかが、友達で…」

「むっ、その言い方は良くないと思うよ。自分のことを“なんか”って言うのは。詩乃ちゃんだから、だよ」

「っ、うん…ありがとう、明日奈」

 

彼女の言葉が…凄く、凄く嬉しかった。

まるで、冷え切っていた水が温まっていくように、心が温かくなる。

不思議、ケイの時とは違った心の温かさを感じる。

 

 

「景一。本当は今日、お前と朝田さんをここに連れてきたのには、他に目的があるからなんだ」

「……どういうことだ?」

 

不穏な空気、というほどじゃないけど…桐ヶ谷君とケイの間に、緊張感が奔っているのに気が付いた。

 

「景一と朝田さん。2人が巻き込まれた事件について、勝手ながら調べさせてもらった…。ここにいる全員が知っている」

「え…?」

「……和人…」

 

その言葉に私は呆然としてしまい、短く彼の名を呟いたケイは戸惑っているのが分かる。

 

「俺はどうしても、知らなくちゃいけないと思ってな。

 景一の両親に詳細を聞き、俺と明日奈と景一の小母さんと3人でそこに行ってきた」

「……………」

「な、なんで…? どうして、そんなことを…?」

 

桐ヶ谷君の言葉に対してケイは何も口にしなかったので、私が彼に問いかけた。

私自身は乗り越えることができたけど、ケイはどうなのか分からないし…。

 

「景一も朝田さんも、2人とも聞くべき言葉を聞いていない。

 だからそれを知って、解ってもらうためには、会うべき人に会って、言葉を聞いてほしいと思ったからだ」

「……聞くべき、言葉…」

「会うべき、人…?」

 

彼の言葉を聞いても、いまいちピンッとこないケイと私。

すると桐ヶ谷君は里香と雫さんにアイコンタクトを取り、

2人は椅子から立ち上がると店の奥にあるドアへと歩み寄り、そのドアを開けた。

そこから1人の女性と、その人の後を付いて小さな女の子が現れた、多分親子だと思う。

女性の方は泣き笑いの表情を浮かべたまま一礼し、女の子もそれに倣って頭を下げ、

2人は里香と雫さんに促されて私とケイの前にある椅子に座った。

桐ヶ谷君と明日奈はケイと私の後ろに離れて立っている。

彼女達は一体誰なのか?そんな疑問とともに、頭の奥で何かが駆け抜ける…そう、どこかで会った記憶が…。

 

「はじめまして、国本景一君、朝田詩乃さん。私は大澤祥恵、この子は4歳の娘で瑞恵といいます」

 

私も、ケイも、聞き覚えのない名前。

だけど、ケイは彼女の顔を見て何かに至ったのか、驚きの表情を浮かべている。

 

「……まさか…あの、郵便局で働いて、いた…女性局員、の…?」

「え、う……そ…」

 

彼のその言葉に私はどう反応すればいいのか分からなくなり、固まってしまった。

だけどそれはケイも同じみたいで、動けなくなっている。

その代わり、私の手を強く握ってきたので、私もそれに強く握って応えた。

 

「…はい、その通り、です…。私が、東京に越してきたのは、瑞恵が生まれてからです。

 それまでは、あの郵便局で働いていました…」

 

本当に、この人が…。

そんな思いの中、ふと脳裏に過ぎったのは強盗が狙ったお母さんと2人の女性局員、その1人の顔は…間違いなく祥恵さんだ。

 

「ごめん、なさい…ごめんなさい、景一君、詩乃さん…。本当に、ごめんなさい…」

 

何故、祥恵さんが謝罪するのかが分からない。

だけど、隣に座るケイはハッとした表情を浮かべている。

そして彼女は続きを話し始めた。

 

「私、あの事件のことを忘れたくて…夫が東京に転勤することを理由に、眼を逸らして…。

 あなた達が傷ついて、苦しんでいらしていることに……すぐに、気が付けたはずなのに…。

 謝罪もしないで、お礼も言わないで……本当に、ごめんなさい…」

 

祥恵さんは間を開けると、瑞恵ちゃんの頭を優しく撫でてあげて、そして…、

 

「あの時、私のお腹にはこの子がいたんです。

 だから…景一君も、詩乃さんも、私だけでなく……この子の命も、救ってくれました。

 ありがとう…本当に、ありがとう…」

 

涙を流しながら話す彼女の言葉は、私の胸の奥の…大きな氷の塊を解かしてくれるようだった。

“命を救った”…ずっと、ずっと、ケイを傷つけて、彼に殺しをさせてしまったことだけを考えて、そう思っていた。

だけど、本当は……守れていたんだ…。

 

「……そう、か…。私はあの時……救えていたのか…」

「ケイ…」

 

隣の彼も、私と同じように胸の氷が解けていっているのを感じているらしい。

そして、瑞恵ちゃんが椅子から降りて、テーブルを歩いて周り込み、私とケイの側にきた。

肩から下げた小さなポシェット、そこから四つ折りにした画用紙を開いて私達に渡した。

そこには、瑞恵ちゃんと祥恵さん、そしてお父さんと思われる男性の絵が描かれていて、

上には平仮名で『けいいちおにいさんとしのおねえさんへ』と書かれている。

 

「けいいちおにいさん、しのおねえさん。ママとみずえをたすけてくれて、ありがとう!」

「っ、うん、うん…!」

「……あぁ…」

 

たどたどしい声でも、はっきりと大きな声でケイと私にお礼を言ってくれた瑞恵ちゃん。

唯々、その言葉が嬉しくて、溢れる涙が止まらなくて、ケイも流れる涙を隠そうとはしていなかった。

そんな私とケイの手を、ゆっくりと瑞恵ちゃんは握ってくれた。

いまは、この温もりを感じていたい…心から、そう思った。

 

詩乃Side Out

 

 

 

救った命を思い、誇りを持ち、前に進む…。

 

奪った命と向き合い、背負い、前に進む…。

 

どちらも忘れず、抱き続ける事で、人は強く、前に進み続けることが出来るのかもしれない…。

 

 

 

END

 

 

 

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このままあとがきを投稿します。

 

 

 

 

 

説明
最終弾になります。
今回でGGO編は終了となりました。

どうぞ・・・。
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コメント
ディーン様へ そうですか、リズはハクヤの音楽にやられましたかw(本郷 刃)
遼東半島様へ はっはっはっ、さすがにマジなキリトさん相手だと二対一とはいえねぇ〜w(本郷 刃)
今日をこちらで海賊シリーズの説明です、実はこの世界でのキリト達男性陣は海賊でありながらアイドルなのです、特にハクヤが演奏面で有名なのです、ちなみにリズはそれで落ちた、ハジメの場合は子供達に人気なのです、(ディーン)
都内某所のラーメン屋にて 親衛隊長「リョウトウ、本選敗北おめでとーーwww」遼東「良い線言ったと思うんだがな…」軍曹「ニ対一でボロクソにやられてたじゃないっスかwww」遼東「ぐぐ…真実だけに何も言えないorz」(遼東半島)
ディーン様へ ハクヤ「あ、キリトがアスナに思いっきりぶっ飛ばされたw」 リズベット「京都の和菓子、いいわね〜」 刃「2人とも狙撃手兼砲撃手ですからねw ドレス作りとはこれまた・・・評価はSですね!」(本郷 刃)
これから映像を送ります、内容は「キリトとユイがアスナに悪戯する(キリトとユイが着ぐるみを着てアスナを脅かす)」と「クラインとカノンが京都の和菓子の名店で和菓子を堪能する」と海賊シリーズは「ハジメとシノンの考案で船に強力な大砲を作る」と「ルナリオとリーファの結婚イベント、二人で一緒にウェディングドレス作り」の4作品です、評価お願いします。(ディーン)
ディーン様へ シャイン「こりゃあ中々…w」 ティア「ごくりっ…///」 リズベット「おかわり〜っ///!」 ハクヤ「し、しまった、間違えたっ!?」 ケイタ「(無心だ無心だ無心だ無心だっ!)」 サチ「きゅ〜っ//////!?」 ヴァル「あ、や、その…///」 シリカ「あぅあぅ…/////////」(本郷 刃)
今から写真を送ります、内容は「シャインとティアのヌード写真集が完成」と「ハクヤがリズに間違ってカルーアミルクを飲ましてしまう」と「ケイタとサチにもヌード写真を撮ります(二人に許可を貰っています)」と「ヴァルがシリカの胸を揉んでしまう」の4枚+αです。(ディーン)
観珪様へ そうですね、これにて死銃事件は終了となりました!(本郷 刃)
華?踰紅-かざゆく-様へ こっちも涙の大洪水!?(本郷 刃)
ディーン様へ ルナリオなら確かにやってくれそうですねw(本郷 刃)
アサシン様へ 涙の大洪水!?(本郷 刃)
シノンさん、マジかっけーっす!←キャリバー編のための練習 とりま、これで死銃事件も本当の意味で終わりましたね(神余 雛)
アサシン殿に同じく!!!(華?踰紅-かざゆく-)
ALO内「スピナー、フルチャージ、ドカーン(敵に命中)ふう、もう魔力が無くなった、フルチャージのやり方で魔力をどれだけ使うのかわかったな、先ほどの戦闘で新たな鉄扇を作る素材が集まったからルナリオに頼みますか。」(ディーン)
涙腺が決壊しだだだだだだだだだ!?(号▽泣?!)(アサシン)
FALKEN様へ 時間制限がないのはホントに救いかとw(本郷 刃)
サイト様へ はい、2人とも救われることとなりました・・・(本郷 刃)
ディーン様へ キリト達はラッキーですね、空まで飛べてw(本郷 刃)
(雪山(水晶山?)なう) …死ぬかと思った…。モ○スターハ○ターと違って制限時間がないのが救いでしたね…ゲーム内時間で8時間は戦闘してましたよ。俺のSAN値はもう0です…。(ガルム)
サイト「・・・ん?」 隊長「どうかしましたか?何故か機嫌がよさそうですけど?」 サイト「いやなに、知り合いが救われたような気がしてなw」 隊長「そうですかwあとで飲みに行きますか?」 サイト「ああそうだな、祝いたい気分だ、だがその前にこの施設データに残っていたお得意様たちを片付けにいこうか」(サイト)
今回の海賊シリーズの説明は、この世界の船以外で海を渡る方法があります、それは海列車や一人乗りの水上バイクだけですが、キリト達の船は空も飛べる船です、それを可能にしたのは、ユイが持っていた特別な鉱石に記録されてたデータにそれが載っていた。(ディーン)
Kyogo2012様へ これで本当に2人とも自分を赦すことが出来ました(本郷 刃)
ディーン様へ はい、GGO編が終了しました・・・今後の展開に関してはこのあとのあとがきにて書いておりますので(本郷 刃)
ふふり。救った命・・・。詩乃と景一は、罪に苛まれていた訳ですね。良かった良かった。アフターストーリーも楽しみにしています。(Kyogo2012)
これでこの事件というかこのGGO編が終わりましたね、次回からアフターストーリーに入るのですね、投稿をお待ちしております、そしてキリトとアスナはユイちゃんとあって一緒に遊んであげる事をしてあげてください。(ディーン)
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