語られし者たちとIS 世界樹大戦 第31話 夏祭りと更識家 |
お盆の週、篠ノ之神社では夏祭りがある
この神社は箒が生まれ育った家でもある
(懐かしい……あの頃のままだ。姉さんがISを開発してしまい、引っ越すことがなかったら今もここにいたのだろう。そうすれば一夏とずっと一緒にいれた)
夏祭りに実施される神楽舞を箒は踊ることになっている
懐かしさを感じながらも舞の準備をする箒。幼いころからやっていたため、すぐに準備することができた
そのうえ、手伝ってくれる叔母もいるため、準備が速く済んだ分、舞の練習することができた
そのため、本番ではいつも以上の実力を発揮できた。彼女の中ではそう思っていた
「よう」
神楽を終えた箒は巫女服に着替えてお守りの販売の手伝いをしている所に一夏がやってきた
(え? な、何故一夏がここに!?)
急な出来事で箒は混乱していた
「そう言えばさっきの舞、知り合いと一緒に見させてもらったぞ。すごく様になっていた」
一夏の言葉が届いているのかはわからないが、箒はまるで金魚のように口をパクパクしていた
様子を見に来た箒の叔母が一夏と箒を見て何かを察したのか、一夏に少し待っているように頼み、箒を連れて行った
しばらくすると、箒は浴衣姿で戻ってきた
「手伝いは大丈夫なのか?」
「ああ、叔母さんがせっかくの夏祭りを楽しんできなさいって……」
冷静さを取り戻した箒は一夏の質問に答えることができた
同時にあることに気が付いた。一夏は一人で来たわけではないということに
一夏の他に男性が二人と女性が一人、後一人は自分よりも年下の女子だ
「ああ、紹介するな。まずは五反田弾って言って小四からの友達、そして弾の妹の蘭」
「初めまして、五反田蘭です。よろしくお願いします」
「俺は五反田弾、家は定食屋だから良かったら来てくれ」
「俺はこの二人の店で手伝いをしているガイだ。さっきの舞はすごかったよ」
「私は、ジュディスよ。一夏のバイト先の上司よ。私とガイはこの子達が羽目を外しすぎないように監視ね」
それぞれが自己紹介を終える
箒もすぐに自己紹介をするが、内心は嫌だった
(どうして一夏と二人きりにさせてくれない……しかもあのジュディスとかいう女性、ものすごく浴衣が似合っているから私が目立たないではないか)
彼女の髪の色と同じ青い浴衣が、抜群に相性が良い。ちなみに髪を下ろして耳を見えなくしている
男女関わらず、彼女のそばを通る多く人が彼女に見とれているのが分かる
事実、箒も少し見とれていた
「やっぱり、浴衣が似合う人はいいよな。ジュディスさんもいいけど、篠ノ之さんも似合っているし。うちの妹ももう少し成長してくれれば……」
弾が言い終わる前に蘭に足を踏みつけられ、悶えていた
その光景を一夏とガイは呆れたようにジュディスは微笑ましそうに見ていた
「弾はあんなこと言っているけど、蘭も十分似合っているよ」
「俺も一夏と同意見だ」
「私もよ、篠ノ之さん……あなたはどう思う?」
「え、ええ。似合っていると思いますよ」
とっさに振られ、箒は一瞬対応に困ったが、すぐに返す事が出来た
その返事を聞いた蘭はものすごく喜んでいる。正確には一夏の答えを聞いて喜んでいる
彼女の表情を見て、箒は確信した
(この子も一夏に好意を持っているのか……どうしてこうも邪魔ばかりはいるのだ)
不機嫌になりたかったが、ここで悪い表情を表に出さないように箒は二人に接することを決める
それから六人は屋台を回り、食べ歩いたり、遊んだりしていた
箒も楽しんでいるが、心の底から楽しんでいるかと言われれば嘘になる
一夏と二人きりになれなかった。ただそれだけが悔しい
心にモヤモヤを持ったまま歩いている箒に蘭は話しかける
「そう言えば、篠ノ之さんもIS学園に通っていると聞きましたが?」
「え? ああ、そうだが」
「私も二学期から……」
「蘭、来年からだろ?」
ガイが蘭の言葉を遮って話した
「……そうでした。来年、IS学園に通えるように頑張っています。もし良かったら指導お願いします」
一礼した蘭に対して箒は分かったと一言だけ残した
(おいおい、忘れちゃダメだろ? まだあの事は公表しないようにって一夏に言われたじゃないか)
(そうでした……)
蘭は二学期の間だけIS学園に通うことをなった
少しでもIS学園について知ってもらったり、早めにISを体験する生徒を増やしたりということで、IS委員会が様々な中学から優秀な生徒を数名、ランダムに選び、体験入学という形で通わせたい
蘭がその体験入学の生徒に選ばれた
そのような通知が五反田家に昨日届いた
どうするべきか一夏に相談した所、そのことについて話したいということになり、本日の昼間、五反田食堂で、蘭がIS学園に通うことについて話し合いをした
世界樹大戦の参戦者がほとんどIS学園に集められている。これを偶然とするのは考えにくい
何故通知が来たかの答えは出なかったが、蘭は通うことに決めた
罠かもしれないが、いざという時に頼れる仲間が近くにいた方が良いというのが理由だ
その意見に一夏とジュディスだけでなく、弾たち五反田家の人達は全員賛成した
彼女の祖父である厳は改めてガイに蘭を守ってくれと頼んでいた
もちろん彼は了解する
話し合いが終わった所で、蘭の母親が思い出したかのように夏祭りのことを告げた
ちょうどいいからということで五人は遊びに行くことにした
これが彼らの本日の動きだ
遊んでいるうちに祭りの最後を締めくくる花火の時間が近づいてきた
これはチャンスだと思った箒は、少し強引にでも一夏を誘い、二人きりになろうとした
そう思って声をかけようとした時、一夏の携帯が鳴る
「ハイ……ああ、ちょっと待ってください。場所を変えるので」
「すまん……ちょっと昔の知り合いからで人に聞かれたくない話らしいから少し離れた所に行くから」
「お、おい! 一夏!?」
箒の制止を聞かず、そのまま離れたところで電話を再開していた
(く……何故うまくいかない?)
結局一夏が電話を終えたのは、花火が始まるのと同時だった
そのため、六人で花火を見て、祭りは終えた
箒を除き、満足そうな表情で帰路に着いた
少々不貞腐れながら、箒は神社に戻ることにした
(次こそは……一夏に……)
時間を少しさかのぼり、IS学園
楯無は疲れた様子で寮の自室に入った
(やれやれ、まさか十蔵さんも知らないなんて……一体どういうことかしら?)
先日、一夏に指摘された資料についてようやく質問をすることができた
しかし、この学園の一番力を持っている学園長である十蔵ですらその質問に答えることはできなかった
国際IS委員会に提案され、メンバーも彼らが決めた
それしかわからなかった。選ばれる基準すらわからなかった
(それにしてもIS委員会がね……まさか……ね)
さらにもう一つ、厄介な案件、一夏の部活動への待遇をどうするかの解決策を見つける
しかしそれは
(一夏君にものすごく迷惑をかけるのよね……悪いとは思うけど……)
ため息をつきながら一夏に報告しようと思った時、携帯が鳴った
相手を確認もせず、出ることにした
「ハイ……」
「ヤッホー、楯無ちゃん、元気!? 今日も元気なあなたのお母さん、雅よ。ようやく仕事も落ち着いて、しばらくのんびりできるから明日家に帰ってきてね。もちろん、簪ちゃんや虚ちゃん、本音ちゃんも一緒にね。待っているわ」
マシンガンのように素早く話してすぐに切れた
(相変わらずのハイテンション、ちょっと疲れていたからついていけなかったわ……)
楯無は今の電話の相手である母のテンションの高さは承知している
いつもなら軽いノリで楽しむのだが、生憎そんな元気はないようだ
とにかく気を取り直して、一夏に電話をする
「もしもし、一夏君。今いいかな? 重要なこと話したいから周りに誰もいないと助かるんだけど」
「楯無さんですか? わかりました、ちょっと待ってください……お待たせしました。何ですか?」
「二つ、言いたいことがあるの。一つ目はこの前一夏君がしてくれた疑問だけど、解決しなかったわ。これは以上の進展はないと思うから放置してもよさそうね」
「もう一つは何ですか?」
楯無は申し訳なさそうに話し続ける
「……一夏君を自分たちの部活に入れたいって言う意見がものすごく来ていてね。それの解決策として今度の学園祭で、一番優秀な部活に一夏君を入部させろって話になっちゃったの……」
「謝らないでください……楯無さんのせいじゃないんでしょ? だったら気にしないでください」
「……ありがとう、一夏君。うん、要件はそれだけ、またね」
「はい、また夏休み明けに」
会話が終わり、電話を切る
(一夏君、そんな気にしてなかったな……優しいけど何だか申し訳ないわ)
そのままベッドに寝転がると、彼女はすぐに眠ってしまった
次の日の朝、楯無は簪と虚、本音を呼び出し、更識家に帰ることにした
帰宅の手続きをすぐに済ませ、お昼前には更識家に到着した
門の前で待っていた女性が出迎えてくれた。しかし出迎えはその女性一人だけだ
「お帰りなさい。堅苦しいのは困ると思って、余計な人を呼ばなかったの。本当は本音ちゃんと虚ちゃんのお母さんたちも呼ぶつもりだったんだけど、用事で来られないみたいなの。後、うちの旦那は今日もお仕事だから今はいないけどね」
楯無の母親、雅がお茶目に告げる
その言葉にいつも通りだという安心と振り回されているという苦笑いが混ざったような笑顔を四人の少女たちはしていた
彼らのパートナーはローエンを除き苦笑いだった。彼らも雅に会ったことはあるが、いまだに慣れていないらしい
大広間に集まり、学園生活と世界樹大戦について報告した。報告と言っても堅苦しいことは一切なく、穏やかに話していた
他の人達が集まっていた場合、こうはならなかっただろう
「……なるほど、良かったわ。ちゃんと楽しんでいるようで」
そして簪と楯無をニヤニヤとした表情で見ている
「それにしても一夏君か……うちの可愛い娘たちが興味津々になるなんて……」
「ち、違う……ただ、初めての男の子の友達だけ……だと思う」
「私もそんな感じ、残念だけど恋愛とは別よ」
言い訳をしている我が子を見てより、にやける二人の母親
「えへへ、会長もかんちゃんも可愛いな〜」
「こら、本音!」
「いいのよ、いじっても。で? あなたたちは一夏君に興味ないの?」
布仏姉妹にも質問をする。彼女達とも家族ぐるみで付き合っているため、このように楽しく談笑できる
「いえ、私はあまりかかわることが少なかったため、特には……」
「私とおりむ〜はお友達ですよ〜」
「うん、布仏姉妹のこともわかったわ……そうそう、さっきの部活についてお母さんのアドバイス、一夏君を生徒会に入れちゃえばいいんじゃないかしら? 部活へ貸出とか言っておけば何とかなると思うわよ」
母親のアドバイスを聞いて楯無は名案と思い、すぐに虚と話し合うことにした
「あらあら、あんなにはしゃいじゃって、簪ちゃん、楯無ちゃんに遠慮しちゃだめよ。恋は早い者勝ちなんだから」
「だから……もう」
恥ずかしがっている簪を本音と雅は笑顔で見ていた
更識姉妹はいじられたが、楽しくリラックスできた
IS学園に通うということ
祭りの帰り道、ジュディスとガイ、一夏と蘭、弾の五人で話している
「夏休みが明けたら、俺もIS学園に行けるのか。何だか楽しみになってきたな」
「そう言えばあなたは機械に興味があったのよね? そういう意味では楽しいと思うわ」
「でも、大丈夫ですか?」
一夏はガイに質問する
「IS学園って女子高ですからガイさんは大丈夫かなって」
「ああ、確かにそういう意味では大変かもしれないが、参戦者の中には男性もいるだろ?」
「ほとんどが男性ですね。知っている限り三人しか女性はいませんよ」
一夏の言葉に安心するガイ
「でも……参加者は全員女性ですよね?」
「……あ」
蘭の何気ない一言にガイはしまったという表情をしていた
「なあ、ガイさん。俺と代わって……」
「お兄が行っても意味ないでしょ?」
弾に突っ込む蘭に一夏は頷いていた
母親の心配
雅は世界樹大戦のパートナーに質問していた
「あの子達はどう? ちゃんと頑張っている?」
「ええ、心配しなくても大丈夫ですよ」
「僕の所も同じです」
「本音はまだまだサボり気味だ」
「虚さんも頑張っています」
彼らの答えを聞いて安心した表情になる
「良かった。世界樹大戦の安全確保なんて本音ちゃんや虚ちゃんも含めて大変な仕事に思うのよ。今の私には、こうやってあの子たちの疲れを癒す位しかできないしね」
(本当、十六代目楯無の名が泣くわね)
「いえ、それが彼女たちの助けになっていますよ。いいものですね、帰るところがあるというのは」
ローエンの言葉にヒューバート、リオン、メルは頷く
ヒューバートとリオンは素直に頷いていなかったが
「ふふ、ありがとう」
(そうね、あの子たちの助けになってあげないとね。くよくよしてられないわ)
自分にもできることがある、そう信じて気合を入れなおした
(それにしても一夏君か……どっちが連れてくるのかしら……もしかしたら二人の恋人になるのも……ありね。そうしたら最大限サポートしてあげなくちゃ)
急に面白そうなことを思いついたかのように笑っていた
「何だか表情がコロコロ変わるお方ですね」
「ええ、何だか怖い感じもしますね」
「楯無の母親ということなのだろう」
「あはは……」
ジュディスの浴衣は先日「テイルズオブキズナ」で実施された書き下ろしのものと思っていただければ幸いです。
新しく楯無と簪の母親を出しました。以前出したキャラよりも物語にかかわる予定です。
母親の詳細は後日出したいと思います。
感想・指摘等あればよろしくお願いします。
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夏休み編です。 今回は五反田兄弟と更識姉妹、布仏姉妹が登場します。 オリキャラを一名出します。既存キャラの親族ですが |
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