無限の蒼穹に浮かぶ巨大な岩と鉄の城。

それがこの世界の全てだ。

職人クラスの酔狂な一団が一月がかりで測量したところ、基部フロアの直径は約十キロメートル、世田谷区がすっぽり入ってしまうほどあったらしい。その上に無慮百層にも及ぶ階層が積み重なっているというのだから漠然とした広大さは想像を絶する。総データ量など全く想像出来ない。

内部には幾つかの都市と多くの小規模な街や村、森と草原、湖までもが存在する。上下のフロアを繋ぐ階段は各層に一つのみ、その全てが怪物の彷徨く危険な迷宮区画に存在する為発見も踏破も困難だが一度誰かが突破して上層の都市に辿り着けばそこと下層の各都市の《転移門》が連結されるため誰もが自由に移動できるようになる。

そのようにしてこの巨城は攻略されていく。

城の名は《アインクラッド》かつて千人の人間が挑み、志半ばに諦めて去った剣と戦闘の世界。またの名をーー

《ソードアート・オンライン》

◇

「見渡す限りの荒野で　一人立っているんだ。そりゃ身震いもするだろう♪」

土曜日の午後十二時五十五分。

俺、織斑一夏はお気に入りの局である瞬○星の下でを歌いながらチラリとデスクトップに置かれた流線型のヘルメットと時計を見た。

いよいよあと五分で念願のゲーム、《ソードアート・オンライン》と呼ばれるバーチャルＭＭＯＲＰＧゲームの正式サービスが開始される。そう思うと俺はいても立ってもいられなかった。

なにせ俺は四ヶ月前、二ヶ月間に渡る正式サービス稼働実験者の一人、つまりベータテスターとして皆よりも早くプレイしていた。まあ、テスト期間が終わった時に自分の育て上げたキャラを消去された時は喪失感って奴を初めて味わり、その日は思わず枕を濡らしたのは今も記憶の中に新鮮に残されている。

草原や森林、火山などのダンジョンに街や村まで存在する層を武器一本を頼りに駆け抜け、上層への通路を見出し、強力なモンスターを倒してただひたすら城の頂上を目指していく自分。

ファンタジーゲームの定番である。魔法の要素を大胆にも排除し、その代わりに((剣技|ソードスキル))と呼ばれた所謂必殺技を駆使してモンスターを倒していく自分。

時にはフィールドを冒険するだけでなく、家を買ったり畑を肥やして生活する自分。

それらを頭の中に想像するだけでワクワクが止まらない。堪らなくなってしまうのだ。

ピピピピピピピピピピピピピピ！！

そしてようやく、正式サービス開始時刻である午後十三時となった。

俺はすぐさまデスクトップに置いてあったナーヴギアを頭に被り、ベッドに横たわる。そしてーー

「リンク・スタート！」

俺は仮想空間へと誘う言葉を紡いだ。

◇

どうもみなさんアインハルトです。

前回これと転生した私〜。にガンダムかリリカルなのはを加えるかという話で匿名希望の方にガンダムもリリカルなのはも二次禁止だろうにと指摘され、自分なりに考えた結果、ＩＳ×ＳＡＯを書くことにしました。転生した私〜を読みたかったであろうジンさん、ごめんなさい。

それでは次回をお楽しみに