バカとテストと召喚獣 五つの鎧を持つもの 第三十話
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 鋼牙と美波がCクラスのチェックポイントに向かう最中、何体かお化けの召還獣が出てきたが鋼牙は無表情で通り過ぎるのだが・・・・・

「っ!」

「・・・美波、そう腕にくっつかれると歩きづらいのだが。」

「し、仕方ないでしょ。その・・・・・」

「お化けが恐いのか?まあ、気持ちはわからんでもないが。」

「鋼牙にも恐いものはあるの?」

「昔な。夢に等身大の蜘蛛が出てきた夢を見てな。それ以後しばらくは蜘蛛が苦手だった。」

「今はどうなのよ?」

「平気だ。普通に触れる。」

「へえ・・・・・っ!」

「だから抱き突くな。」

 鋼牙は溜息をしながら歩み進める。

「ん?おかしい。」

「ど、ど、どうかしたの?」

「小暮先輩の姿が見当たらない。さっきまで馬鹿どもを脱落させたのにここにいないのはおかしい。だとすると・・・・・」

「だとすると?」

「・・・・・いや、過程の話だ。今話しても意味は無い。先を急ぐぞ。」

 鋼牙は一人歩み始めた。

「あっ!先に行かないでよ!」

 曲がり角を曲がった瞬間壁に大量の手が出てくる。

「っ・・・・・・・!」

 美波は何も言わず気を失い倒れる。鋼牙は倒れそうな美波に手を伸ばす。

「美波、だいじょ・・・・・・ダメか。清水、すまないが美波を迎えに着てあげてくれ。ここから先は俺一人で行く。」

 数分後、清水が来て美波を回収した。何故か秀吉も一緒に同行していたのはおそらく美波のことを考えてのことだろう。鋼牙はCクラスチェックポイントに向かうと小暮と寿港が待ち構えていた。

「やっぱり。」

「あら、この事態を予想していましたの?」

「ええ。小暮先輩がいない時点で大方こんなことではないのかと思いまして。それで、どちらが最初にお相手を?」

「私がいくわ。試獣召還。」

 Aクラス 寿港

 現代文 289点

 寿の召還獣は角が生えた悪魔のような顔をした召還獣だが背中には左には天使の羽、右には悪魔の羽が生えている打点氏のような召還獣である。

「どうかしらこれ?」

「まるで堕天使のようですね。でもそんなことはどうでもいいので。試獣召還。」

 Fクラス 冴島鋼牙

 現代文  1457点

 鋼牙は剣を抜刀し地肌を左手の匣に置く。堕天使が奇声を上げながら鋼牙に向かってくる。鋼牙は地面を蹴り身体を横に回転させる。

「はああ!」

 鋼牙は回転をしながらその堕天使を二つに斬る。堕天使は消滅する。鋼牙は綺麗に着地する。

「そ、そんな・・・・」

「驚きました。まさかここまでとは。」

「次は小暮先輩。あなたです。」

「いいわ。でも―――」

「?」

「―――私の召還獣はどういうわけか変な空間を展開してしまうわ。試獣召還。」

小暮がそう言って瞬間、あたりは真っ白になり足元に墨で絵が書かれたような足場が広がってくる。

「まさか魔導異空間を展開するとは・・・・・それに召還獣が魔戒樹。厄介ですね。」

 

「なんだあの空間!あれも魔導空間なのか!?」

「いや、あれは魔導異空間。魔導馬を乗りこなす時に使う空間だ。魔導馬での模擬戦を思い出すね。」

「そんな悠長なことをいっておる場合ではないぞ!しかも何じゃあれは!」

「さっき零君が戦った化け木みたいですね。」

「いや、あれは文月学園七不思議のひとつ、赤い眼の樹。俺らは魔戒樹って呼んでる。どうして生まれたかは謎だけど結構強いよ。」

 

「ふむ、どうやら動けないようですね。ですが枝のようなものを動かせるのなら構いません。」

「こっちうも手加減はしない。」

 鋼牙は剣先を上に向け円を描き、剣を振り下ろす。描かれた円からは光が漏れ、牙狼の鎧と魔導馬・轟天が召喚される。

「はっ!」

 牙狼は轟天を魔戒樹に向け走らせる。魔戒樹は触手を伸ばし牙狼を止めようとするが牙狼はそれを牙狼剣で斬り裂く。

「ならこれはどうだ!」

 魔戒樹は自身の身体から矢のように身体の一部を飛ばす。

 カンッギンギンギン

「はっ!」

 牙狼は牙狼剣でその攻撃を相殺する。

「っ!」

 牙狼の死角から魔戒樹は身体の一部を矢のように飛ばしてくる。牙狼は牙狼剣で弾くが牙狼の死角から撃たれる。

「ぐあっ!」

 牙狼は轟天から落馬しそのまま下に落ちてゆく。

「ヒィイイイイン」

 轟天は牙狼の元に掛け走る。牙狼の落ちるところの足場に轟天が駆け寄り、牙狼は轟天の手綱を掴む。牙狼は足から火花を出しながらも轟天に再度乗馬する。

「はっ!」

 魔戒樹の攻撃を轟天を匠に扱いながら魔戒樹の元へと掛け走らせる。魔戒樹に後1歩というところで魔戒樹は枝を振り牙狼と轟天を振り払う。轟天は宙に浮きながらもバランスを失わず着地し、再度走り出す。牙狼は轟天の背中に手綱を持ちながら立ち、牙狼剣を振る。

 キンッ、カンッ、キン

魔戒樹からの攻撃が轟天の額に命中する。

「ヒュィイイイン」

「轟天!」

 牙狼の胸部に魔戒樹の攻撃があたるが牙狼はバク転する。そこを轟天が身体を大きく反らせ後ろ足で牙狼を蹴る。牙狼は轟天に跳ばされ魔戒樹へと跳ぶ。しかし魔戒樹は牙狼へ身体の一部を飛ばす攻撃をし牙狼を弾き飛ばす。

「ぐああ!」

「もう諦めなさい!」

「俺は負ける訳にはいかない!」

 牙狼は魔戒樹に向け掛け走る。魔戒樹はいくつもの身体の一部を牙狼に向け跳ばす。牙狼は剣を盾にし突っ込む。そこへ轟天が身体を横にし自らを牙狼の盾になる。

「轟天!」

「ヒィイイイン」

 魔戒樹が轟天を捕まえ牙狼から離す。牙狼に向け魔戒樹が身体の一部をいくつも撃ち込む。牙狼は牙狼剣で凌ごうとするも攻撃を喰らってしまう。

「ぐあああ・・・・・」

「ヒィイイイン!」

 轟天は前足大きく上げ振り下ろす。牙狼剣が牙狼斬馬剣へと形を変える。

「ううぅぅぅ・・・・」

 牙狼斬馬剣を盾にしつつ牙狼は魔戒樹に近づく。

 カンッ、コンッ、カン

「ぐうぅ・・・」

 押されながらも牙狼は魔戒樹に徐々に近づく。

「うぉおおおおおお!」

 牙狼は魔戒樹に向かい足を蹴り牙狼斬馬剣を叩き込む。しかし、その攻撃全く効いておらず牙狼は魔戒樹に弾き跳ばされる。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

 牙狼は肩で息をする。

「いい加減に諦めなさい。あなたは勝てないわ。」

「俺は・・・・・・諦めない。勝てる可能性が・・・・・あるのなら・・・・・それに賭ける!轟天!」

「ヒィイイイイン!」

 轟天は金色に輝き、魔戒樹の呪縛から開放され、上に飛翔し大きな波動を出す。牙狼斬馬剣は三倍にまで大きくなる。

「うううう!」

 牙狼は飛翔し魔戒樹に強い一撃を叩きつける。魔戒樹は下に落ちていく。牙狼は着地しハンマー投げの様に牙狼斬馬剣を投げる。

「ふっ、はぁ!」

 牙狼は牙狼斬馬剣にボードに乗るように画廊残馬剣の上に立つ。牙狼は障害物を身体を振り牙狼斬馬剣でかき消す。

「はあああ!」

 牙狼は魔戒樹に向かい牙狼斬馬剣向ける。牙狼が上に跳んだ瞬間、牙狼斬馬剣は魔戒樹に命中する。魔戒樹は消滅し、魔導異空間は解除される。鋼牙は牙狼の鎧を解除する。

「・・・・・まさか負けるとはね。」

「貴女も結構やりますね。」

「今回は召還獣が貴方の言う『魔戒樹』だったからよ。でももし今度戦うことがあったら負ける気は無いわ。」

「こちらも同じです。」

 鋼牙は小暮に背中を向け去っていった。

 

「ザルバ、雄二に繋いでくれ。」

「ワカッタ。」

『なんだ鋼牙?』

「一旦そっちに戻る。」

『わかった。こっちからは久保と清水を出しておく。』

「すまないな。轟天が少し疲れていてな。」

『そんなのがわかるのか?』

「ああ。轟天。」

 鋼牙がそう言うと轟天が召喚される。

「ヒィィィン」

「すまないな、轟天。戻っていいぞ。」

「ヒイイン。」

 轟天は消えた。

「わかったか?」

『ああ・・・・・あれって鎧無しでも呼べるんだな。』

「まあな。それではそちらに戻る。」

 

「今戻った。」

「お帰りなさい、鋼牙君。」

「鋼牙君、お帰り。」

 姫路と優子が鋼牙を出迎えに来た。

「・・・・・・」

「「どうかしたの(んですか)?」」

「出迎えに来てくれたのに驚いてな。夫婦みたいな光景だとふと思ったんだ。」

「「ふ、夫婦!!」」

 二人は顔を赤くしている。なぜだ?そして零が何故か溜息をついている。

「ところで美波は?」

「まだ気を失っているわ。よっぽど恐かったんでしょうね。」

「確かにあのいきなり出てきた腕は恐かったです。」

「ところで雄二は?」

「・・・・代表に気絶させられて今は保健室。」

「翔子ちゃんと一緒にですけど。」

「・・・・・・スタンガンの威力を最大にしたせいか?」

「おそらく。」

 霧島は一途な思いすぎるあまり過激すぎる行動をとる。どうしたものか・・・・て、いかんいかん。余計なことに気を取られてた。

「零、 久保と清水の進行具合はどうだ?」

「問題ないよ。それよりお前の身体を心配しろよ。レオから聞いたけど相当無理しているだろ。」

「何のことだかさっぱりだな。」

「相変わらずだな。そういうところは昔と変わらないな。」

「そうか。」

 鋼牙と零はモニターを見る。モニターにはあの常夏コンビの点数が表示されていた。

 Aクラス 常村勇作 & 夏川俊平

 物理   412点   408点

『なにぃいいいいいいいい!』

「「うおっ!」」

 鋼牙と零にとっては大した点数ではないが皆は驚いている。ああいうのでもAクラスであることをすっかり忘れていた。久保と清水はあっという間に失格になった。

「どうする、鋼牙?」

「あの先輩には色々と御礼をしたいからな。俺が行く。」

「待ってよ。だったら俺も行くよ。でも男同士だとあれだからそっちの二人のどっちかが鋼牙とペアでいいんじゃないかな?」

 そう言って零は姫路と優子のほうを向く。

「い、いいんですか?」

「め、迷惑にならない?」

「俺は大丈夫だけど・・・・・鋼牙は?」

「別に構わない。」

「じゃ、じゃあ私が鋼牙君と一緒に行きます!」

「あっ!先を越されちゃった。」

「じゃあ俺とだね。残念だったね。」

「な、なんのことかしら////」

 優子が顔を赤くしているが・・・・・・何故だ?

 鋼牙・姫路ペアと零・優子ペアは常夏コンビの方に向かって行った。

 

「け、結構本格的にっ!」

「姫路、作り物だからそんなに驚くな。」

「ほ、本当に鋼牙君は強いんですね。」

「まあ昔会っているからな。」

「な、何にですか?」

「幽霊やお化けだ。」

「ま、またまた。そんな嘘信じませんよ。」

「嘘ジャナイゾ。前ニ河童ニ妙薬貰ッタシナ。」

「・・・・・・・本当ですか?」

「ああ。風邪を引いたときはいつも飲んでいる。そういえばお礼がまだだったな。何がいいだろうか?」

「きゅ、きゅうりはどうでしょうか?」

「それはいつもあいつが作っているからダメだな。無農薬野菜でいいだろうか?」

「鋼牙君は無農薬野菜が好きなんですか?」

「まあな。何より甘い。」

「へぇ〜、そうなんですか。」

 鋼牙と姫路の話している光景を優子と零は後ろで見ていた。

「鋼牙君って色々知り合いがいるのね。」

「鋼牙の行っている河童には俺も会ったよ。」

「どんな感じ?その・・・・」

「人間以外の知的生命体に会うこと?そうだね、結構面白いよ。」

「そうなんだ。」

「鋼牙の家に行ったら会えると思うよ。」

「・・・・・・襲わない?」

「しないよそんなこと。第一、何の見境もなしに人を襲うのは彼らの掟違反だからね。」

「そんなのがあるのね。」

 その途端、いきなり照明が消え、あたりが真っ暗になった。

「な、なによこれ!」

「落ち着け!慎重に進まないと相手の思う壺だ!」

 鋼牙達は慎重に進むが途中物を動かす音が耳に入る。

(策にはまったか。ここは動かない方がいいな。)

 鋼牙は立ち止まる。すると照明がパッと照らされる。鋼牙は後ろを振り向くとそこには零の姿があった。

「どうやらそっちも女じようだね。」

「そのようだな。」

「どうする?」

「このまま進むしかない。」

「そうするか。でもなんでわざわざこんなことするんだろう?」

「おそらく戦力の分散を見計らったというところか・・・・・」

「ただ単に俺達と戦いたいだけなのかもね。」

「あのキモイ先輩がか?俺はいやだな。」

「俺もだ。あんな先輩に好かれるのは・・・・・うぇ。」

「ここで吐くなよ。流石に掃除する人が可哀想だ。」

「そうだな。」

 鋼牙と零は楽々と迷路を進む。途中姫路がお化けに怯えながらも頑張って進んでいる声が聞こえてくる。

「あの子、姫路瑞希ちゃんは結構頑張っているね。」

「ああ。苦手なのに頑張っているのは偉いことだ。」

『姫路さん、ここチェックポイントよ。』

『え、そうなんです・・・・・・』

『げっ!常村!こいつら失格になってねえじゃねえかよ!どうするよ!』

『どうするもこうするも・・・・・勝負するしかないだろ。』

「どうやら先に着いたようだね。」

「あいつらの実力なら勝てるだろう。」

『まったく・・・・・。冴島とあの変に笑う奴をボコる前にとんだ邪魔が入ったな。』

『あいつらくずよりこいつらの方がよっぽどメンドクサイな。』

『あーあ、あんなクズ共がいるから世の中ダメになんだよ。』

『・・・・いい加減にしなさいよ。』

『あん?』

『アンタ達なんかよりあの二人の方がよっぽどましよ!』

『ナニ言ってんだお前?冴島は観察処分なんだぞ。クズにクズって言って何が悪いんだよ?』

『だよな。』

『全くあいつらは学園の面汚しだ。あんな奴ら込みダメにでも埋まっていればいいのにな。』

 流石の俺も零と同様怒りが抑えられそうに無い。今にもここを壊してあいつらの前に出て行きそうな勢いだった。

 

『そうしてそんな酷いことを言うんですかっ!!』

 

 その瞬間、俺たちの怒りを代弁してくれた姫路の声が心に響く。

『てめぇ・・・・・・文句でもあんのか?』

『姫路さんの言う通り大有りよ!何も知らないのに偉そうにするんじゃないわよ!』

『黙ってろ!第一あんな奴らの命なんて無くてもいいんだよ!』

『いい加減ここから出てけ!今の声で失格になってるだろうしな。』

『いこう、姫路さん。こんな奴らにはなす口は無いわ。』

 壁越しから姫路達が鋼が立ちのほうに向かってくる足音がしてくる。

「鋼牙君・・・・・・ごめんなさい。」

「私達が闘う前に失格になってしまったわ。」

 鋼牙は二人の悲しげな表情を見ると黙って近づき二人の頭を撫でる。

「こ、鋼牙君っ!!」

「い、いきなりに何を!」

「二人とも、すまないな。」

「二人は俺たちの言葉を代弁してくれたよ。ありがとう。」

「「後は俺たちがケリを着ける。だから泣くな。」」

 二人のその言葉を聞いて二人は顔を赤くする。

「いくぜ、鋼牙。」

「ああ。」

 二人は姫路と優子に背中を向け常夏コンビの方へと進んでいく。姫路と優子はAクラスのほうへと戻って行った。

 

「やっと来たかお前ら。」

「たく、待たせんじゃねえよ。」

「別に貴様らと会いたいのではない。」

「そうそう。キモイ先輩はさっさとタイにでも行って整形してきたら?」

「んだとてめぇ!」

「舐めんじゃねえぞおら!」

「うるさいんだよ。お前らみたいなのが人を語る資格なんて無い。」

「まったくだ。かかって来い。」

「どうせなら総合科目で勝負しようよ。驕れている自分らの実力を知るいい機会だし。」

『試獣召還!』

 Aクラス 常村勇作 & 夏川俊平

 総合科目 4376点  4276点

「どうだよこの点数。」

「お前らでもこの点数は採れないだろ。」

「「随分その程度で威張れるな。」」

 Fクラス 冴島鋼牙 & ゲスト 涼邑零

     16579点     16576点

 

「な、何じゃあの点数は!」

「あんな点数教員でも採ったこと無いよ!」

「どんだけすごいんだよ!」

 そんな二人の点数を見て姫路と優子は驚きのあまり上手く言葉に出来なかった。しかし、一つだけ口にすることが出来るのがあった。

「あれが・・・・・」

「二人の本気・・・・」

 

 鋼牙と零は剣を抜刀する。

「夏川、いくぞ!」

「ああ、常村!」

 牛頭が鋼牙を、馬頭が零を狙いに攻めてくる。

 牛頭が鋼牙に向けハンマーを振り下ろしてくる。鋼牙は姿勢を低くし避け、牛頭の腹部を切る。

「うおっ!」

 牛頭は左に回し蹴りをするが鋼牙は柄で受け止め牛頭を足払いし宙に浮かせ牛頭を剣を持つ右手で殴る。

「夏川!」

「余所見は禁物だよ。」

 馬頭は槍で突いてくるが零は左手の剣で槍先を受け止めそれを軸に右の剣を馬頭の頭を刺す。そして零は右足を馬頭を後ろ蹴りする。

「こいつら結構やるな。」

「大丈夫だ。こういうときのための秘策があるんだ。」

「なんだよ夏川?」

「まあ見てなって。おい冴島。」

「?」

「お前の親父さん、殺されたんだってな。」

「っ!!」

「格好悪いよな。たかが子供一人の命を守るために自分の命を差し出すなんて。出るくいは打たれるってのは正にこのことだな。」

「だな。お前の親父さんは本当に馬鹿だな。」

「だな。お前みたいな出来損ないを見ずに殺されて幸せだったんじゃね?」

「だな。死んでいい命だったな。」

 その言葉を聞いて鋼牙は剣を下ろしてしまう。

「今だ!」

 牛頭と馬頭は鋼牙に向け武器を振り下ろす。

「「・・・・・え?」」

 二人は一瞬の出来ごとに理解が出来なかった。確かに鋼牙はさっきまで牛頭と馬頭に襲われそうになっていたが、今鋼牙は常夏コンビの前に立っている。鋼牙は二人に回し下痢をする。

「ぐへっ!」

「がっ!」

 鋼牙は右手に力を込め後ろに向け剣を振る。剣から突風が発生し零は少し体制を崩す。

「な、なんだよいきなり!」

「・・・・・者はいない。」

「あ?」

「殺されて幸せな者などこの世にはいない!いや、俺は認めない!」

「何言ってんだ?」

「こいつの言葉なんざ聞かないほうがいいぜ。」

鋼牙が零の元へ後ろに軽く跳躍すると常夏コンビは立ち上がる。

「こうなったら最後の手段だ。」

 常村は赤い札の貼られた正十面体の物体をポケットから取り出す。常村はそれを上に投げるとそれは徐々に形を変えてゆき、魔導具・リグルの姿に変わっていく。牛頭と馬頭はリグルに搭乗する。

「どうやらだ持っていたようだな。」

「鋼牙、久しぶりにやるか。」

「ああ。」

 鋼牙は剣の刃をザルバに擦り付け、剣先を天に向け、円を描く。円からは光が漏れ牙狼の鎧を身に纏う。

 零は剣を持ち直すと十時に交差させ、頭上に剣を持ってくると二つの円を描く。二対の円は一つとなり光が漏れる。例が剣を振り下ろすと絶狼の鎧を身に纏う。

 二人はリグルに向け剣を構える。

「「はああああああ!」」

 二人はリグル目掛けて一直線に走る。リグルの前足から中世の騎士のデザインのオブジェが動き出し二人に攻撃をする。二人はその剣を捌く。

 ギキキキガギキキキガキキン

「こいつなかなかやるぞ。」

「馬鹿だからじゃねえのか?」

「「お前たちに言われたくは無い!」」

「「んだとごらぁ!」」

「人をただ見下す奴が!」

「人間を語る資格は無い!」

「いい気になりやがって!」

「喰らえ!」

 リグルの頭が割れ、砲台が二人に向けられる。砲台から弾が放たれる。二人は後ろに上手く避けながらも距離を取るが二人がぶつかったところをリグルの砲台で狙い撃つ。

「へへへ、これであいつらもお陀仏だ。」

「こら勝ったも同然だな。」

「轟天!」

「銀牙!」

 爆煙の中から轟天に乗馬した牙狼と銀牙に乗馬した絶狼が出てくる。

「こうして戦うのはいつ以来だ?」

「転校する少し前かな?」

「いくぞ。」

「ああ。」

 二人は魔導馬をリグルに向け走らせる。リグルの砲弾で魔戒騎士後と落とそうとするが攻撃はことごとく避けられる。

「なんで当たらねんだよ!」

「随分余裕だな!」

 銀牙に乗馬した絶狼がリグルの左足に二撃斬りこむ。

「そんなんじゃ斬れねえぞ!」

「ああ、知ってるよ。鋼牙!」

「はああああああ!」

 轟天に乗馬した牙狼がリグルの斬り込みを入れられた左足に牙狼剣を叩き込み左足を切断する。

「やったか?」

 勝ったかと思われたがリグルの足は再構成される。

「やっぱり本体後と倒さないとダメか。」

「ならば!」

 二人は魔導馬を跳躍させると魔導馬から離れリグルの上に跳ぶ。リグルが砲弾を二人に向け放つが砲弾はかすりもせずに外れる。二匹の魔導馬がリグルの両前足を押さえ動けなくする。牙狼は牙狼剣を牙狼斬馬剣に変え、リグルの真上から刺し、左に立つ。上から絶狼が牙狼斬馬剣を足で押し、右に立つ。

「鋼牙!」

 絶狼は牙狼に銀狼剣の一本を鋼牙に渡す。二人は顔を合わせ、頷き同時に銀狼剣を刺す。その瞬間リグルは爆発し、牛頭と馬頭も一緒に消滅する。二人は鎧を解き、剣を鞘に収める。

「これで俺らの勝ちだね。」

「けっ!なんでお前らなんかに負けるんだよ?」

「貴様らにはわからないはずだ。」

「俺たちはアンタ達と違って力だけで勝てるとは思ってない。」

「それより、こちらからの命令だが――――」

 鋼牙が発した言葉に三年生全体が揺れた。

 

「おい、常夏コンビ。お前らの余計な言葉がなかったらこんなことにならなかったんだぞ!」

「私達の夏休みどうしてくれるのよ!」

「全く、とんだ迷惑だぜ!」

 翌日常夏コンビは周りからの集中暴言にさらされていた。

「なんで俺らがこんな目に・・・・」

「自業自得なんて言葉聞きたかねえぞ。」

 

 遡ること昨日の夕方。

「西村先生の補習を夏休みの期間に受けてもらう。連帯責任とし、三年生全員に。」

「はぁ!?」

「ふざけんな!」

「ふざけてはいない。貴様らは死者を愚弄した。その代償は重いものだ。」

「このくらいで終わったことに感謝して欲しいね。」

「全くだな。」

『鉄人/西村先生!!』

「夏川と常村は西村先生と呼ばんか!それよりその命令は受諾する。」

「ふざけんな!」

「そうだ!なんでこいつの言うこと聞くんだよ!」

「黙れ!貴様らは大河を侮辱し、人の命も侮辱した。それにだ。貴様らは最初のルールを承認した。その時点で貴様らは負けていたのだ。」

「西村先生・・・・・・」

「冴島、お前はこいつらをあの時本気で蹴ろうとした。だがお前は命の重さを知っているが故にあの時手加減をした。そこは誇るべきところだな。」

「すみません。わざわざそんな言葉をいただいて。」

「気にするな。いいかお前ら、今後大河のことを侮辱するようであれば内申に響く行為もろもろ含めて評価するから肝に銘じて置くように。解散!」

 

「にしてもあれはすっきりしたな。」

「そうじゃな。あれほどつらいことは無いのう。」

「・・・・・いい気味だ。」

「・・・・でも少し可哀想。」

「なに言ってんのよ霧島さん、あんな奴らにはあれくらいが丁度いいわ。」

「ほんとだね。ボクも美波ちゃんと同じ意見だよ。」

「でもなんであんなこと知ってたんでしょう?」

「ほんとよね。」

「・・・・・・・・お前らに一つ問いたい。」

『(・・・)なに(んだ・じゃ)?』

「何故俺の部屋に来ている?しかもこんなに朝早く。」

 所変わって雄二達は鋼牙の部屋に朝早くからお邪魔していた。

「いやな、お前が昔の子と思い出して泣いてんじゃないかと思ってな。」

「・・・・・嘘ガ下手ダナガキンチョ。ホントハ鋼牙ガナイテイルトコロヲ見タクテシタンジャナイノカ?」

「ザルバ、お前なんでわかんだ?」

「マダマダ坊ヤダカラナ。ソノクライオ見通シダ。それより鋼牙、夏休ミハドウスルキダ?」

「そういえば今夏休みでしたね。」

「うむ、西村教諭の補習ですっかり忘れておったのじゃ。鋼牙はどうするつもりかの?」

「そうだな・・・・・宿題は既に全て終わらせてしまったし・・・・」

「おい待て鋼牙、お前一体何時終わらせたんだ!?」

「一日。」

 鋼牙のその言葉に一同ズッコケる。

「どうした皆?床に倒れて?」

「倒れるわ!どんだけ早くしたら出来るんだ!」

「普通にしただけだ。それよりお前らはどうするのだ?夏休み。」

「はぁ・・・・・・まあいいか。どうせだし皆で海にでも行かないか?」

「いいねそれ!」

「おもしろそうじゃな。」

「・・・・賛成。」

「でもお泊りするところとか色々下調べやお金のことも考えないといけませんね。」

「それもそうだよね。」

「なんだか時間が掛かりそうね。」

 皆が意見を言い出していると鋼牙が意外な一言を発する。

「ならうちに来るか?」

 その言葉に一同は静まり返る。

「・・・・・・・どういうことだ、鋼牙?」

「我が家冴島邸に来ればいい。泊まれてタダで料理も食べれて海にも行ける。一石三鳥の得だ。」

「でもいいの?そんなことをして?」

「構わん。今はゴンザしか冴島邸にしかいない。ゴンザにとってもいいことだ。」

「お前の家って誰も帰ってきていないのか?」

「まあな。姉はハーヴァード大学をもう卒業して今は母の企業の手伝いをしているしな。」

「ちょっと待て!お前今ハーヴァードて言ったか?」

「ああ。あそこは個性豊かな奴らが集まっていて設備面がいい。ただコーヒーがインスタント派が多いのが残念だがな。」

「なんでそんなこと知ってんだ?」

「特進で卒業しているかだ。」

「・・・・・・・・おい、マジか?」

「ああ。」

 雄二達はあさっての方向を向く。

「どうかしたか?」

「・・・・・・いや、なんでもない・・・・・」

「そうか。で、海の話なんだが・・・・・・さっきの提案でいいか?」

 鋼牙がそう言うと皆は返答した。鋼牙はザルバにゴンザに繋ぐように命令する。

『鋼牙様、どうかなされましたか?』

「ゴンザ、同じ悪口のものと一緒に冴島邸に泊まる予定が出来た。何時だったら大丈夫だ?」

『こちらはいつでも大丈夫でございます。』

「そうか。ではすまないが一週間後に二泊三日で頼む。予定場に吐く二日が限界でな。」

『左様でございますか。かしこまりました。では一週間後に。』

 鋼牙はゴンザに連絡を終えると雄二達の方を振り向いた。

「一週間後に三泊三日冴島邸に泊まることになった。各自、準備をしておくように。」

 鋼牙がそう言うと皆は返事をした。

「あ、それと秀吉。」

「なんじゃ?」

「お前は前にプールで来ていたあれを持って来い。」

「なぜじゃ!」

「よく考えてみろ。お前が海に行ったら一般の人に女性と勘違いされて挙句の果てには上着を着せられ海に入られなくなってしまうぞ。」

「確かにそれはありえるな。秀吉、鋼牙の言葉に従っておけ。」

「う・・・・・わかったのじゃ。」

「秀吉、今回は仕方ないわね。プライベートビーチだったらいいんだけど。」

「以外に維持費が掛かるんだ。それにゴミもよく捨てられてしまうからな。」

「よく知ってるんだな。」

「まあな。」

 

説明
コウナッテキタラコウガモデナキャイケナイナ。サテ、イッチョハデニイクカ。
「金色の怒り」
ソレヲイッタラシンジマウゼ。
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怒り 五つ 金色 バカとテストと召喚獣 

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